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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第三部 領主時代 -青年期~成年期-

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第九十一話 政略結婚

7449年11月28日

「ふう~っ、ふうぅぅ~っ……」

 コートジル城の地下室の片隅でバケイラが唸っている。
 その髪は濃い赤紫色をしているが、以前は白髪なんか全く無かった筈なのに、今では所々白髪が混じっている。

「うるさいぞ、貴様」

 ズールーはそんなバケイラの腹に勢い良く爪先をめり込ませた。

「がっ……!」

 一声上げてバケイラは静かになる。

「頼む。もう止めてくれ。俺達が知っていることは全部話したじゃないか!」

 椅子に縛り付けられたダーガンが哀れみを含んだ声で懇願した。
 その頬をパンパンと平手で張ると何発目かで鼻血が出た。

「よけるなよ。ほら、鼻血が出ちゃったじゃないか」

 汚い物でも見るかのような表情と冷たい声音を心がけてダーガンに言う。
 勿論、椅子に縛り付けられているダーガンが俺の平手打ちをよけられる訳はない。
 わざと鼻を狙って叩いたんだ。

 彼の目には確かな憎悪の炎が揺れているのが見て取れる。

 ここのところ毎晩のように責め立てているので彼ら二人からは絞れるだけの情報を搾り取ったと思っている。
 思ってはいるのだが、正直なところダーガンのこの目つきが気になっている。

 バケイラの方は一週間ほど前から死んだ魚のような目になり、それ以降は何かをしようとすると完全に怯えを隠さなくなった。
 痛めつければ泣き叫び、挙げ句の果てには殺してくれとまで言うようになっている。
 恐らくバケイラについては本当に全ての情報を搾り取れたと判断してもいいと思う。

 しかしながら、ダーガンは未だに意志の光を目に宿しているように見える。
 まだ何か隠している情報があるか、嘘を吐き通しているのを隠しているかのどちらかだろうとしか思えない。
 なかなかのもので、見上げた根性だと言えるだろう。

 なお、既になんの役にも立たないバケイラを処分しないのには理由がある。
 当然ながら最終的には二人共きっちりと処分するつもりだが、どちらかを先に処分するようなことはしない。
 全部吐いたら殺されると思うだろうし、そうでなくとも殺されることで楽になれるとは思わせないためだ。

 しかしまぁ、急ぐ必要はないとは言え根比べをやりたい訳じゃない。
 今の状態でも吐かせた情報の質量共に納得はしているからダーガンが喋らなくてもあまり問題にはならないだろう。

 因みに、今までに吐かせた内容で「今のところ」重要度レベル1だと思う部分は以下の通りだ。

・代々のロンベルト国王はラッパと呼ばれる諜報組織を飼っている
・この組織は初代建国王、ロンベルト公爵ジョージ一世が作った
・組織の原形は建国前から仕えていた戦闘奴隷たちである
・現在、組織は四名の「かしら」が合議制で指揮を執っている
・ラッパを組織として最初に育てた人物は名前すら伝わっていないが、初代の冒険者時代の手下の一人らしい(ラッパの中では頭のうちの誰かの祖先だろうと言われている)
・四人の頭の名は聞いており、ジラード・ザイドリッツ、ゼンメル・ラフローグ、スペサイドとマクダフのエンブリー兄弟がその名だ(エンブリー兄弟については当初別の名を言っていたが、後述する件に関連して思い当たることがあったので引っ掛け質問を繰り返して結局白状させた)
・四人はそれぞれおおまかに国内工作、宮廷内工作及び諜報、国外諜報、国内諜報を受け持っている
・また、当たり前だが外国にも同様の組織を持つ国も多く、国外諜報担当者はそういった外国の諜報組織の情報収集も任務に含まれるが、これは国王の命令ではなく、単にラッパの仕事をやりやすくするため
・因みに外国組織ではグラナン皇国の「夜刃」やバクルニー王国の「イヌワシ部隊」と「鷹の目」、カンビット王国の「ハズマーン」、デーバス王国の「赤」という組織の名が判明している。当然質量ともにロンベルトのラッパが最大で最高(本当かよ?)
・国王はラッパの他にも独自の諜報ルートを持っているらしいが専門的なもので、諜報の範囲は限られている(恐らくはヴィルハイマーやアンダーセンなどがその代表だろう)

 ここまでは「ほう、そうなのね」という点で、以下はレベル2。

・ラッパに所属する人数は不明だが、アクティブなメンバーで三桁はいるうえ、普段は碌に働いていない、クサと呼ばれる「休眠」メンバーも併せると数百人か、事によったら千人近くに上る
・全容については四人の頭すら把握出来ていない可能性がある
・休眠メンバーはその大部分がロンベルティアに居るが、国中の大都市には一人二人は居ると見てもいい。勿論、いない、とされている都市もある。また、僅かながら国外にもいる
・やはりデーバス王国の「赤」についてはサグアル家が主導しているらしい(これを聞いて【偽装】を思い出したので引っ掛けてエンブリー兄弟について白状させた)

 更に俺や領地などに関連する情報。レベル3。

・エンブリー兄弟は猫人族キャットピープル
 ※【偽装】はエンブリーの家系に遺伝する先天的な技能。恐らくはミュンと同じものだろう。
・兄のスペサイドは国外諜報担当
・弟のマクダフは国内諜報担当
・ダーガンは国内工作担当のザイドリッツの配下
・バケイラはマクダフの配下

 そして以下は関連して何らかの対策を講じるのか、それとも当面は何も講じずに放っておくのか判断が必要なレベル4。

・当然、俺の従士、ガロン・ザイドリッツはザイドリッツの配下で、頭の一人であるジラード・ザイドリッツの遠縁
・彼の任務は俺や領地の情報収集に加え、シンパを作って将来の休眠メンバーを増やすこと

 これについては当面放っておく。
 可能なら監視を続け、数年も経ってほとぼりが覚めた頃にまた適当な連絡員を捕らえて尋問をしてもいいだろう。

・バケイラの同僚でマクダフの息子であるヴィシャスという奴がグリード商会に入り込んでいる
・その任務はグリード商会の内情調査

 来月王都に行くついでに確認し、本当なら排除するか?
 排除するにしても方法が問題だ。
 頭の息子だと殺すのは大きな恨みを買いそうなので躊躇われる。
 害がないようならこれも放っておいた方がいい。
 内情を知られても別に困る事はないのがその理由だ。

 ダーガンにはまだこれ以上の情報があるのだろうか?
 ある気がする。

 だとすると、第二段階へ移行するしかないか。
 どんなに優れた訓練を受けていたとしても絶対に抗えない方法で、俺の知る限り本来の目的での失敗例は無い。獄吏の目を盗んで自殺されたりとかは失敗例とは言えないからね。

 方法は非常に簡単で、且つ古典的でもある。
 欠点はそれなりに人手が掛かる事と、大抵の場合始めてから二日くらい経つといつ何時喋り始めるか予想がつけられないという点だ。
 人手についてはルビーとジェスに加えてマールとリンビーの四人を呼べばカバー可能かな?

 ゲロり始めた時に俺やズールーがいないとちょっと面倒になるが、その場合は運が悪かったと諦めるしかないだろう。
 今まで得た情報だけでもかなりのことが判っているのだから、あまり欲をかく必要もないからな。



・・・・・・・・・



7449年11月29日

 朝から不愉快な小雨のぱらつく日。

 遂にキールからジャバ、もとい、ハリタイドがやってきた。

 彼の到着の報を受けたのは俺が行政府の執務室で事務仕事をしていた時だ。
 少し早く着いたんだな、と思って何の気なしに窓から見下ろす。

 すると、小雨のぱらつく中、行政府前のぬかるんだ水溜りの真ん中に着飾った巨大な脂肪の塊が臣下の礼を取ったままピクリともせずに跪いていた。
 犬人族ドッグワー特有のだらりと垂れたレトリバー犬みたいな耳が濡れそぼっているようだ。
 ハリタイド、もとい、ジャバの後ろには彼の使用人らしい者も数人いて、彼と同様に跪いている。

 ふぅん。
 こういうの、嫌いじゃない。
 と言うか、ラルファあたりは絶対にしないであろうから好感が持てる。

 ならば俺も急いで行ってやるべきだろう。
 お気に入りのボロインバネスを羽織ることなく、出迎えに向かう。

 相変わらずでかい体だな……。
 目の前で畏まるジャバを見てちょっとだけ変な感心をしてしまう。

「遠路はるばる、ご苦労だったな」
「は。伯爵閣下のお呼びです。苦労など何もございませんでした。それよりも手前の我儘で参上が遅れました由、どうかお赦し下さいますよう」

 俺が声を掛けるとジャバは面を上げることなく返事をする。
 殆ど定形のやり取りだけどね。
 貴族のやり取りについてそれなりに学んでいると見える。
 ま、元々知っていてもおかしくはないかな?

「ふふ。かなり勉強したようだな」
「まだまだでございます」

 ジャバには一年間仕事を見た上で、働きが良ければ士爵位をくれてやると言っている。
 彼はそれなりに金は稼いでいるので、年収三〇〇〇万Zという破格の給料には見向きもしなかったが、これには相当な魅力を感じたらしく食いついてきたのだ。
 勿論、当面は領地を持たない役所に勤める公務員貴族で、それは彼も納得している。
 が、いずれ働き次第では村の一つや二つくらいくれてやってもいい。
 上級貴族でなければ代官を立てられないというのはロンベルトの国法だからね。


「付いて参れ」

 せっかくの衣装がこれ以上汚れないうちに中に入れてやろう。

 ところで、ジャバが乗ってきた馬車は二頭建てで、本人と御者だけが乗っていた。
 重過ぎて運べなかったのだろうか?
 荷物は別の馬車が一台あって、そこに積んでいた。
 また、身の回りの世話をさせる奴隷も三人ほど伴って来ていたが……娼婦上がりのいい女で揃えているのかと思ったら全員屈強そうな男奴隷だった。

 少し、そう、ほんの少しだけ残念に思ってしまった。
 だって、あん時見かけたすごい好みの子……六年も経ってりゃ変わってるか。

 なお、ジャバが経営していた娼館のリットンだが、商会長はまだジャバのままだ。
 今は番頭のセバスチャンに任せているらしい。

 こっちでもやるのかね?

 聞いてみたい気もしたがそれは止めておいた。



・・・・・・・・・




7449年11月30日

「ぐ……」

 ダーガンが意識を手放しそうになる。

「おい! 寝るんでねぇ!」

 ルビーが怒鳴りながらダーガンの髪を掴んで引き起こし、明かりの魔道具を目の前に突き出した。
 ダーガンはもうまる二日寝ていない。

 そもそも拷問を受けて弱っているところだったので全く寝れないのは辛そうだ。

 それでも今日の昼くらいまでは耐えていたらしい。
 でも、流石にもう限界が近いようだ。
 そろそろ尋問を始める頃合いと見て、小一時間ほど前から尋問を開始している。

「ダーガン。ラッパが入り込んでいるのは俺の商会と従士が一人だけなのか? 嘘だろう? 答えろ。答えたら眠らせてやると言ってるんだ」

 腕を組んで壁に寄り掛かりながら問う。

 バークッドではここ数年、奴隷を増やしている。
 ゴム製品の増産に対応する為もあるが、流石に購入したばかりの奴隷にはゴムの樹液(ラテックス)の採取程度の仕事しか任せていないと聞いている。
 まぁ、地味に辛い作業なので奴隷は増やさなければいけないのは確かだ。
 尤も、筋の良さそうな奴隷を職人として仕込むことも始めているらしいから、従士たちの生活も近いうちには更に楽になるだろう。
 奴隷たちだってその恩恵は受けると思う。

 とにかくバークッドが奴隷を増やしている状況である故に、兄貴たちが購入している奴隷の中にラッパが紛れていると踏んでいるのだ。

「……っ。頼む。もう寝かせてくれ……」
「ああ、寝かせてやっともよ。但し、ご主人様のご質問に答えてからだ」

 明かりの魔道具から顔を背けようとするダーガンの頭を掴んで、ルビーはまた彼の目の前に魔道具の光を当てる。
 大して明るいものではないが、至近距離だと目を瞑っても充分に瞼を通すくらいの光量はある。

「……き、キンバリー商会……豚肉を卸してるキンバリー商会はグリード商会の内情を探るために設立されたんだ」

 ほう?

 キンバリー商会ね。
 俺の記憶には……あった。
 確かバストラルからの報告書に書いてあった名だな。
 イミュレークの後釜の牧場だった筈だ。

「他には?」
「……これで最後だ。なぁ、もういいだろ?」
「他には?」
「だから、これで最後だって。他は無いよ」

 本当に限界が近いようだ。

「嘘だな。おいルビー。目を開かせろ」

 ルビーは片手で崩れ落ちそうになったダーガンの頭を上げさせると、もう一方の手で無理やり片目を開かせた。

「……は、ハミルの家はクサだ」

 その言葉を聞いて、意識せずとも俺の片眉が跳ね上がる。

「全部喋れ。俺が納得したら寝てもいい」

 一度喋り始めたらダーガンは眠さのあまりか底の抜けたバケツのように勢い良く喋り始めた。
 この拷問に耐えられる奴はいないからな。
 でも、どうやらバークッドの実家の方は俺の杞憂らしい。

・姉貴の旦那で、俺の義兄のマーティーさんの実家であるハミル家は休眠メンバーでザイドリッツの配下
・結婚は姉ちゃんの魔法の技能が遺伝する可能性を狙った、政略結婚のようなもの

 これを耳にした瞬間は殴られたようなショックを受けた。
 姉ちゃんはそれについて知っていて納得ずくなのか、知らないまま騙されるように結婚したのかは不明だ。
 そこまではバケイラもダーガンも知らないそうだが、恐らく姉貴は知らないのではないかと思う。

 因みに、政略結婚とか非常に一般的なのでそこは勘違いをして欲しくない。
 政略結婚はお見合いの延長のようなもので、夫婦どちらかもしくは双方の感情に不満がある()()()を除けば何一つ悪い部分はない。

 日本でも恋愛結婚が主流になったのはほんの数十年前でしかないのだ。
 大正から昭和に移り変わる頃には恋愛結婚の割合がそれなりに増加して三割くらいになったらしいが、半数を超えたのは戦後の事みたいだし。

 前世、俺が子供の頃にもお見合いなんてまだまだ沢山あったし、大人になってからも数は少ないが全く無かった訳じゃない。平成になってからでもカップルの一割くらいがお見合いで結婚していたんだから。
 特にネットが発達した西暦二千年代からはお見合い・婚活パーティーなんかがかなり開催されて復権の兆しさえ見える。

 今生では親父が恋愛結婚だが、兄貴のケースなんか半分くらい政略結婚のようなものだしな。

 実際、オースだろうが地球だろうが政略結婚は不幸なケースも幸せなケースもある。
 これは恋愛結婚にも言える。世の中には不幸せな恋愛結婚なんか掃いて捨てるほどある。

 どちらが良くてどちらが悪い、どちらが上等でどちらが下等という性格のものでもない。
 最終的に幸せな結婚生活を遅れるかどうかが問題なのであって、どうやって出会ったとか知り合ったとかなんだっていいのだ。

 オースにはこんな格言がある。

――もし愛故に結婚するというのなら、その愛が無くなることだってあるだろう。

 別に正しい事を言っている訳ではないと思う。
 だけど、真実の一端を突いてはいるんじゃないかな?

 これは前世の日本の統計だが、恋愛結婚はその後離婚する割合がお見合い結婚とは比較にならないほど高いという。確か、恋愛結婚での離婚率は四〇%、見合い結婚での離婚率は一〇%だったかな? 離婚するカップルの数自体、恋愛結婚が圧倒的に多いので、離婚カップルのほとんど全ては恋愛結婚ということになる。

 まぁ、惚れた腫れたの勢いだけで結婚しちゃうのは思慮の浅い若い人が多いからだろうし、同じ若いうちの結婚でも見合いの場合はお互い冷静に判断している上に、二人の付き合いは結婚がスタートになるからだろう。

 ハミル家には【偽装】の遺伝子はないと思われる。姉ちゃんとの結婚の時にマーティンさんは勿論、両親ともども【偽装】は持っていなかった。

 なんにしても姉ちゃんはマーティーさんと結婚しており、子供まで生まれた。
 今更外野である俺が何をしたって後の祭りだろう。

 だが、考えようによっては悪い話じゃないと思い直した。

 そう判断した理由は、まず第一に姉ちゃんはマーティーさんとの結婚について俺に話をする際、最初に「マーティーは凄く優しいの」と言ったからだ。
 これは姉貴にしては大いに照れた発言だ。正直言って「働き者」だとか「いい旦那になりそう」みたいな評価なんかより先にこの言葉が出てきたので、姉ちゃんはマーティーさんに惚れてるんだな、と思った。

 問題はマーティーさんが姉貴についてどう思っているかだ。
 俺が彼に抱いた第一印象は朴訥な人柄が好感の持てる、非常に感じの良い方だなということで、時折僅かに暗い表情を見せるのが引っ掛かっていたくらいだ。
 今となってはあの表情は政略結婚に対する後ろめたさの表れなのかも知れないなぁと思う。

 あの時点で彼が姉貴を愛していたのかはわからない。
 ラッパ組織の休眠工作員なのだから、軍隊内しか知らず、碌に世間を知らない女の心を手玉に取ることくらい訳はないのかも知れないし、俺を含めミヅチやバークッドの従士たちをたばかることくらい朝飯前なのかも知れない。

 でも、彼が姉貴を見る目つきは心の底から姉貴を愛しているような印象を受けた。
 今のところは大事にしてくれているみたいだし、そもそも腕っ節で姉貴に敵う訳はない。

 さて、次の理由だ。
 姉ちゃんは軍人で、今でこそ給料は高いが単なる一介の平民だから大怪我(自ら治癒魔術なんか使えないほどの大怪我だ)をして若くして引退してしまっても食いっぱぐれはなさそうだ、という点が挙げられる。
 まぁ、第一騎士団で正騎士になった時点で一生年金は出るんだけど、旦那に生活力があるというのはそれだけで安心材料だしな。

 そして最後の理由。
 ラッパ組織は国王直属の諜報組織だ。
 単純に言って国王に直接仕えるならそれだけで田舎士爵の長女としては大した出世と言える。
 いや、姉ちゃんが国王に仕えている訳ではないからちょっと不適当な表現だな。

 ……糞。
 姉ちゃんの結婚について、出来るだけ冷静にいいところを挙げようと考えてはいるけれど、本格的な人質になったも同然だ。

 ふん。
 元より覚悟の上じゃないか。

 とは言え……どうしたものか。
 あ、手を固く握りすぎていたらしい。
 気が付かないうちに掌に血が滲んでいた。

 
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