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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第三部 領主時代 -青年期~成年期-

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第八十三話 接触者 4

7449年10月13日

 さて、実験だ。
 それも人体実験という、なんとも隠微な響きを伴う後ろ暗いものだ。
まぁ、責め殺すようなもんじゃあ無いんだけど。
 いや、結果的にはそうなるかも知れない……か?

 しかし、俺と親しくもない一般の人に対して掛けたチャーム系統の魔術がどの程度、精神に対する支配力を及ぼせるかを試す機会など今をおいてそうそう有りはしないだろうから、心を鬼にしてやるしかない。

 そのための貴重なサンプルとなってくれるこの二人には這いつくばってお礼を述べ、且つ許しを請わねばなるまい。
 心の中でだけど。

「それにしても二人共よく無事でいてくれたな」

 手綱を引きながら俺がそう言うと、二人は「いやあ、たまたまだったと思います。襲われた手口は鮮やかで、あっという間でしたから……」とか「殺されていてもなんの不思議もなかったです。下手人たちの腕はそれ程に……」とか返事をする。

「何にしてもまたこうして二人と出会えた事は私も嬉しい……」

 とかなんとか出来る限りフレンドリーな態度を心掛けつつ話しながら暫く歩き続け、コートジル城まで戻って来た。

「先も言ったが今日はもう遅い。あんな目にあったばかりだし、ゆっくりと休んでくれ」

 そう言ってエリーに馬の手綱を預けて二人を馬から降ろしてやる。

 地面に降りた二人はどこか納得の行っていないような不審そうな表情を浮かべたままキョロキョロと城の中を見回していた。
 黙って見ていると、それとなく馬房を見たり、兵舎の大きさを確かめているような感じも受ける。

「どうした? そんなにあちこちを見て。城が珍しいのはわかるが、こんな小さな城なんか飾りもないし、見るようなところなんか何もないぞ?」

 そう言ってやると、はっとしたような顔つきをした。
 ……ふぅむ。
 かかりが浅いとかそういう問題とは少し違うようだ。
 まぁこの魔術にかかりが浅いとか深いとかないとは思うんだけどね。

 でもこうなるとますます、実験は念入りに行うべきだろう。
 金を掛けて買った奴隷や領地に住む人々にはとても出来ない実験となる。

 俺やミヅチの使うエンチャントメントやディヴィネーション、チャーム系統の魔術はミラ師匠やカールによると「失われた魔術」とでも言うべきもので、今ではその使い手は殆どいないという。
 まして、それらの魔術を使うのに必要な魔法の技能レベルも結構高いものが多いので、必要な技能を持っていたとしてもそう簡単に使えるようになるとも思いにくい。

 しかし、俺はともかくとしてミヅチやダークエルフたちという実例もある以上絶対ではないし、そもそもミラ師匠たちは元々使えたのだから広い世の中、探せばどこかに居るであろう事くらいは理解している。

 従って、出来るだけ早いうちにこれらの魔術を掛けられた第三者(俺が掛けられてもそうと気付くことは出来ないからね)の様子などを詳細に観察しておかなくてはならない。
 ついでに対抗策というか、対応策でも確立出来れば……いや、流石にそこまでは無理か。

 まぁそういった事は置いておいても、こういった魔術を使う機会などそうそう多くはないので、俺としても魔術を利用した情報収集の練習にもなるし、場合によってはズールーなどの奴隷に任せて拷問などによる情報収集の実践の貴重な機会になる。

 え?
 最初、ダークエルフの傭兵たちにあれだけ殺すなと言っておきながら殺しちゃうのかって?

 うん。

 いや、当然間者(ザイドリッツ)への連絡員であるという確信を得た後の事だけどね。
 多分ないと思うけど、万が一、億が一、間者とはなんの関係もない可能性だって残されているので、本当に関係がなさそうなら解放するつもりだったが、あの様子だとな……。

 だけど連絡員なりなんなり、間者の関係者であるという確信が得られたのであれば、気が付くことの出来た最初の連絡員であるこいつらは色々な実験台にして殺す。
 こいつら、と言うか“連絡員という仕事”に殺されるほどの悪行があったかなどはこの際どうでもいい。
 誰かに(十中八九でまず国王だろうけど)命じられて仕事しに来ただけだということも理解している。
 当然、帰る家や家族なんかもいるだろう事だって想像はしている。

 見た感じ、いい奴らそうだし可哀想だよね。

 でもね、間者は見つけ次第殺すのが普通な世の中だ。
 即殺すかどうかはおいておいても、地球の多くの国家、日本だってスパイに対する刑は刑法でも最上級の罪として定められている。
 あのゾルゲ諜報団に対しても適用された実績はないけどさ。

 今のところロンベルト王国の一部である俺の西ダート地方に王国中央が送り込んでいる現地調査員やそれに対する連絡員を“間者スパイ”と呼称するかどうかという問題はあるが……ま、高確率でそうだと推測されているザイドリッツ夫妻は今のところ確かな証拠を掴んではいないし、表向きは俺の従士でもあるからねぇ……。

 そういった事情はともかくとして、この実験は出来るだけ早いうちに済ましておかねばならない。
 そうしないと、いつか俺の家族や、俺に付き従ってくれた皆の家族に取り返しのつかない被害が及んでしまう可能性がある。
 そうでなくとも領民たちの身の上に大きな被害が出るかもしれない。

 確かでもない未来の状況を心配するあまり、今彼らの命を弄ぶ(俺にそんなつもりなど毛頭ないが、単なる修辞上の表現だ)など残酷すぎるという意見もあるだろうが、その確かでもない未来の心配を出来ない奴に為政者の資格はないだろう。

 この地の支配者である俺にはこの地に住まう全ての人々に対する責任があるのだ。
 今何もせず、後であの時ちゃんとやっていたら……と後悔することだけは許されない。

 まぁ、喜んで人体実験とか拷問をするような奴だ、と思わないでくれればそれでいいよ。

 俺にしてみれば、今後の戦争などで捕虜を得た場合、軍事上や政治上の情報をどうやったら効率的に得られるだろうか、また、こっちはあわよくばだけど、捕虜になった人のために対抗策を編み出したいというだけのことだ。
 領民たちの生活や財産を守ることができるのなら反吐が出るような人体実験や拷問なんか何人だってやってるさ。



・・・・・・・・・



「寝室になる部屋の掃除をさせているから、この部屋で待っててくれ」

 使っていない兵舎の空き部屋に二人を詰め込んでから外に回り、窓の隙間に指先を当てるとスリープクラウドの魔術を使った。
 暫く待ち、そっと窓を跳ね上げると【鑑定】を使って部屋の中を見る。

 二人共睡眠ガスを吸って床の上で眠りこけているのが確認できた。

「どっちでもいいから一人は別の部屋に移して見張っとけ。そう簡単には目を覚まさないから見張ってるだけでいい」

 ベンとエリーに命じているときにズールーが戻ってきた。
 因みにミヅチには「とっととまともな服に着替えて寝とけ」と言っておいたのでもう寝ている……寝てはいないだろうなぁ。
 寝室の明かりが点いたままのようだし。

 あいつに人体実験の片棒を担がせたくはないという気持ちも見抜かれていると思う。

 俺が戻るのを寝ないで待っているのだろう。

 スリープクラウドの催眠ガスが無害化するまで待った後、ベンとエリーがエズムンド・バケイラを担いで部屋を出たのを確認すると、ズールーに命じて残ったケンダクト・ダーガンを眠ったまま椅子に座らせた。

 俺とこいつらとのレベル差は二四。
 放っておけばあと四時間近くは魔法的な睡眠の影響下に置かれる。

 もう時刻も二三時近いから俺もさっさと試すことを試しておかねばなるまい。

「ズールー。俺が呼ぶまで部屋の外で待っていろ」

 ズールーを部屋から出すとアンチマジックフィールドの魔術を使って魔術的な眠りを解除し、椅子の背に凭れて眠っているダーガンの頬を軽く叩いて目覚めさせた。
 勿論、起こしてやる前に嘘看破ディテクト・ライの魔術は使用済みだ。

「……う? あ?」

 口の端から涎を垂らしたダーガンは目をしばたたかせている。

「余程疲れが溜まっていたようだな……バケイラはもう寝室へ行ってしまったぞ」
「あ、これは閣下。面目ない」

 ダーガンは少し恥ずかしそうに頭を掻いた。

「私も寝ようかと思ったのだが、どうもまだ先程の立ち回りの興奮が収まらんようでな。寝る前に少しばかり話し相手になってくれないか?」
「そりゃもう、お安いごよ……んんっ!」

 ダーガンは途中まで言いかけて自分の言葉に少し驚いたようで慌てて咳払いをして誤魔化している。
 ふーむ……。

「そういえばまだ聞いてはいなかったな。そなたらは何の用があってべグリッツに来たんだ?」
「そりゃあ、へい(ロム)……ロムデール商会が護衛を募集してたからですよ」

 今言いかけたよな?
 陛下ロムスって。
 ロムデール商会という今日来た隊商の護衛と言って誤魔化したが、アクセントが違うからな。
 ダーガンは自分で言いかけた言葉に混乱している様子になって落ち着きがなくなった。
 因みに、ここまでのダーガンの発言に嘘はない。
 お茶っ葉を買わされた商会の護衛で来たということ自体は事実なのだろう。

「ロムデール商会という事は、今日来た隊商の護衛か。王都からここまではきつかったろう?」

 俺がダーガンの態度や言葉になんの興味も示さないで発言に乗ったので安心したようだ。

「ええ。結構な距離ですしね……」
「そうだな。時間もかなり掛かったろうしな。ところで、べグリッツに着いて早々、なんで街の北の方へ? あのあたりには飲み屋なんか一軒もないぞ?」
「そ、それは……」

 言葉に詰まっている。

「エズミーと一緒に護衛に行く時、初めての街はまず見て回ろうと……」

 が、必死になって頭を働かせたのか、僅か数瞬でとっさに嘘を捻り出したようだ。
 ダーガンが吐く息が魔術に反応しているしな。

 それはそうと、バケイラの愛称はエズミーって言うのか。
 オズマとか適当に言わないでおいて良かった。

「おいおい、私に隠し事は止してくれ。私とそなたの仲で嘘なんか吐かないで欲しいものだな」

 少し大げさに肩を竦めながら言った。

「そんな、嘘なんかじゃ……!」

 勿論、この発言も嘘だ。
 そして、かなり焦りを含んでいるようだ。
 いや、焦りでは……ないな……。
 混乱か?
 どうも彼の精神内で大きな混乱が起きているようだ。

 恐らくは間者としての義務感と俺への妙な気安いような気持ちで揺れている、というとこだろうか?

 よくわからん。

 言ってはいけないことまでもつい口走りそうになってしまっている自分自身に混乱していると表現した方が適切かもしれない。
 人物魅了チャーム・パーソンに掛かった奴は、術者に対して好人物であろうという意識が働くようで、余程の事情でもない限り普通は嘘を吐きたがらない。

 これについては俺とミヅチの間で実験しているから大体判っている。
 人物魅了チャーム・パーソンを掛けられた奴は術者に対して兄弟よりも親しい、同性の幼馴染みのような気持ちになってしまうのだ。
 それも、対等な付き合いではなく、どういった表現が適切なのかは困るが、自分の人生において小さな借りのある幼馴染みだ。
 例えば、一緒に悪さをして、それが露見した時に庇ってくれて、その事について今でも誰にも言わずに黙っていてくれているとかそういう感じかね?
 ミヅチは小学校の教室内で一人浮いている自分に唯一普通に話しかけてくれ、クラスの皆に溶け込ませてくれたような相手になる感じ、とか表現していたので、人それぞれ受ける感じは異なるのだろう。

 総合すると、同性の、何でも話すことが出来て、相談出来る頼りになる幼馴染みって感じが近いかなぁ?

 勿論、そんな幼馴染みとは言え、他人であることに変わりはないので全幅の信頼を置けるような相手とまでは行かないんだけど。
 うーん、どう言ったものか……。
 自分の貯金についてはその大体の額は話せるけど、兄弟とか家族の貯金額まではたとえ知ってても言わないって感じかな?

 ん? ミヅチとはどういう実験をしたのかって?
 ん~、あんまり話したくはないんだけどな。

 誰にだって墓場まで持って行きたい秘密ってのはあるだろう?
 そういった事まで話せるかどうかという実験だよ。

 当時、俺とミヅチのレベル差は八だったので、ミヅチが俺に掛けた場合は魔術が成功するまで何回も掛け直す必要があった。
 反対に俺が掛けた場合はミヅチに抵抗されて失敗する可能性は低かったので、俺の方は失敗するまで何度も掛け直した。
 だけどそのおかげで魔術が成功した時と失敗した時の反応の違いや、掛けられた方が受ける感覚について、実感として知ることができたのは貴重な経験だった。

 例えば、俺はあいつが小学校五年生までおねしょをしていたということと、大学生の時にたった一人で……何と言ったっけ……ああ、同人誌だ。ゲームの同人誌を作ってイベントで売ろうとしたものの、三〇〇部も作ってたったの四〇部しか売れなかった事を白状させた。尤も、その後その四〇部を買った人たちが同人誌の出来が良いとネットなどであちこちに宣伝しまくってくれたそうで、結局は全部売れて黒字になったらしいけど。

 因みにあいつはあいつで俺の過去の女関係を吐かそうとしたのだ。
 その時はこんな感じだった。

----

『ねぇ、最初の彼女っていつ? どこまでした?』

 あれ? 知らなかったっけ?
 当時は親しい友達にどうだったのか聞かれて白状させられた……。
 ミヅチはいなかったんだっけ?
 あれ? まぁいいや。

『ん~。高校一年のときだな。夏休みにネズミーランドに行ったなぁ』
『ふ、二人でネズミー……な、何という羨ま……いいなぁ』
『え?』
『何でもない、で?』

 なんだかミヅチの顔が変だ。
 なんでこいつがこんな羨ましそうな顔を……?
 ああ、俺の女じゃないか。
 こりゃ変なことを言ってしまったか?
 でも……。

『そんな顔しないでくれよ。高校生なら普通じゃないか?』

 高校生くらいになれば遊園地でデートくらいするだろう?
 そう珍しいことじゃないと思うし、その程度、可愛いもんだと思うんだけどな……。

『……うん。そう……だね……ふつーって何よ』
『え?』
『何でもない』

 何をブツブツ言ってんだ?

『あそ。で、夕方になるとさ、エレクトリカルパレードやるじゃんか』

 あん時ぁ、今日こそキスしてやると意気込んでいたんだよな。
 一九八〇年代の半ばだし、当時の高校生なんてそんなもんだ。
 すっかり忘れてたけど、話し始めたら思い出したよ。

『知ってる。綺麗だよね。私も家族で見た』

 家族と一緒かよ……ネズミーランドってあのあたりに住んでた奴のデートの定番だったはずなんだが……。
 ん?
 ミヅチってどこに住んでたっけ?
 まぁいいや。

『ああ、綺麗だよなあれ。非現実感満載でさ。それ見ながらキスした。ロマンチックな感じだったし、今しかないと思ったね』

 エレクリカルパレードが始まってすぐ、確か俺はガムを噛み始めた。
 彼女の方も俺に気取られないようにそっとガムを噛んで適当な頃合で包み紙をポケットに入れていた事を思い出した。
 因みに、キスは唇と唇が触れるだけの可愛いらしいものだった。

『え、エレクトリカルパレードを背景に、ち、チッスですと!? ……私、そんなことしてもらって……』

 ああ、なんで俺は……幾ら言えって言われたからってミヅチにこんな事……。
 なんだかすごく悪い事をしでかしてしまった気持ちになった。

----

 な? 変だろ?
 でも、後でこの時の事を思い出しても魔術に掛けられてしまったなんて記憶はない。
 変な会話をしたもんだとも思うが、なんだか焦りに似た感情に急かされていたような妙な気分だったなぁ、と思うだけだ。

 ん? その後どうなったかって?

 『今愛している人は誰?』と尋ねてきたので『何言ってるんだ、お前しかいないだろう』と答えたら照れ出した。

 あんときゃあ確か、俺も相当に照れてた。何故かと言うと、術者であるミヅチの事は自分の恋人(結婚前のことだったからね)であると認識はしているんだけど、同性の幼馴染みに愛を囁くような、物凄く微妙な気持ちだったんだ。俺の中で大きな葛藤があったことは確かだが「同性だろうがなんだろうが、ここで嘘は吐きたくない」という気持ちのほうが勝った、という感じに近い。

 魔術の効果が切れた後できちんと言うことが出来た自分を褒めてやりたい気持ちになったもんだ。
 だけど、冷静に考えてみると、単に自分が持っている本当の気持ちについては魔術でも左右できないんじゃないかと思うんだ。
 だって、人物魅了チャーム・パーソンを掛けた相手に術者が敵対的な行動を取ったら、魔術は簡単に効果を失うから、元々そう強い効果ではないのだろうからね。

 道徳に反した行動を命じる程度なら、効果は持続されるが普通に拒否される。
 犯罪行為をさせようとしたら効果は切れる。

 なお、それ以来ミヅチは俺の過去について一切尋ねてくるような事はしなかった。

 ちょっと脱線してしまったが、まぁそういう訳で確実に人物魅了チャーム・パーソンの影響下に置かれているにも拘らず俺に本当の事を言おうとしないばかりか、嘘を吐いた、いや、嘘を吐けたというのは……。

 ここらでちょっとカマをかけてやるか。

「おいおい、夜中だぞ。そう大声を立てるな。私にはわかっている。陛下に言われてザイドリッツのところへでも……」
「なっ!? 何で!? 馬鹿な……」

 あ……解けちゃったかな?
 ……っぽいな。

「ズールー!」

 俺が声を掛けるとズールーが部屋に飛び込んできた。
 それと同時にエアバッシュの魔術をダーガンに向かって放った。

「……べグリッツまで来た目的を吐かせろ。但し、もう一人の方が終わってから地下室でやれ」

 ダーガンを後ろ手に縛り上げているズールーに命じた。
 今後数ヶ月もの間、ダーガンに人物魅了チャーム・パーソンは効果を発揮しない。
 そればかりか仄めかし(サゼッション)嫌悪リパルションなどと言った精神に効果を及ぼすような魔術も効果を発揮しない。俺が使う場合だけだけどね。
 ズールーも人物魅了チャーム・パーソンを始めとする精神系の魔術の実験台になって貰ったことがあるからこれらの事情は理解している。

「は。ですが先程も申し上げました通り……」
「ああ、全部吐かせたか、どうしても吐かないようであれば殺せ。ああ、時間も掛かるだろうし、明日の仕事もあるだろうから、しっかりと縛り上げて今日はもう寝ちまえ。週末の休みまで放っておいて、弱らせてからでもいいぞ」
「は。では土曜まで水だけで済ませるとします」

 気を失ったダーガンを担いだズールーが部屋から出て暫くすると、ベンとエリーの二人が眠ったままのバケイラを運んできた。

 さっきまでダーガンが座っていた椅子を起こし、そこにバケイラを座らせている様子を見ながら、俺は考えていた。

 俺のカマの掛け方が悪かったのだろうが、あの程度で効果を発揮している人物魅了チャーム・パーソンを打ち破れるとはな……。
 あのダーガンには何らかの、余程強い思いがあるのは確かなのだろう。
 それとも、絶対に知られていない筈の事柄を俺が口にしてしまったからか?

 どこまでが大丈夫で、どこからが駄目なのか。
 個人差はあるのか。

 そういったことは碌に判っていない。

 当面の間、ザイドリッツに接触してきた連絡員つなぎは全員とっ捕まえて試すか?
 しかし、流石に全員だとまずいか……。

 何にしてもバケイラ(こいつ)人物魅了チャーム・パーソンに加えて仄めかし(サゼッション)も使ってみよう。
 とにかく、折角の機会なんだし、絞れる情報は絞っておきたい。

 ああ、間者に対する連絡内容とか、実はあんまり興味がない。
 どうせおんなじ国なんだし、相手は国王だ。
 配下の大貴族に対して間者を送り込み、その動向を調査するなんてやってない方がどうかしているというもんだ。

 俺としても敵対するつもりもないからね。

 このあたり、江戸時代の将軍家と大名のような諸侯との関係に近いのかな?
 この表現が正しいかどうかはわかんねぇけど。

 
この週末は久々にまとまった時間が取れそうです。
溜まってしまった修正など、この機会に全部終わらせるつもりでいますm(__)m
+注意+
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