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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第三部 領主時代 -青年期~成年期-

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第八十二話 接触者 3

7449年10月13日

 捕らえられた二人はウラヌスの背に載せられていた。
 だが、ご丁寧にでかいボロ布を被せられていたのでぱっと見だと馬の背に何か荷物でも載せているようにしか見えない。

 馬の背に載せられている二人にしても馬の足元の地面が見えるかどうかだろうし……ああ、目はウェッブで覆ってるのか。
 呼吸に必要な鼻と口しか開けてないって?
 ミヅチが言うには耳もウェッブで覆っているとのことだ。
 そうなると柔らかい素材の耳栓を詰められたようになるから外の物音は殆ど聞こえなくなる。

 予め打ち合わせておいた通り、ズールーはギジェラルスから手綱を受け取って城から出ていった。
 城の周辺を適当に歩き回って時間を潰し、仕込みをするためだ。

「どのくらいに見られた?」

 ズールーの後ろ姿を見ながらミヅチに訊く。
 目撃者の人数と、可能ならどういう奴に見られたかの確認だ。

「殆どいないと思うけど、行政府の警備をしていた騎士団の従士が合計四人と、どっかの酔っぱらいが七・八人くらいかな? 荷物の中身の正体を知っているのは騎士団員だけだと思うわ」

 衛士である騎士団の従士はどうでもいい。
 しかし、一〇人近くもの酔っぱらいに見られているのは……まぁ、仕方ないか。
 布も被せてあったし、仮に布の下を見られたとしてもウェッブで簀巻になっているから、人であると見抜けるのはウェッブの魔術を知っていて、且つそういう状態の人を見たことのある奴だけだろうし。

「奴らにお前たちの姿は見られたか?」

 これも確認しておかねばなるまい。

「そんなヘマするもんですか。あんまり静寂しじまのミヅチを……」
「わかったわかった」
「それに、闇精人族ダークエルフは三位戦士階級だって相当ヤルんだから」
「ああ、うん……」

 ミヅチたちは話し声すらも立てていないらしい。

「じゃあ、そろそろお芝居と行くか……カルスロン、ギジェラルス。もう一働きしてくれ。なあに、適当に動き回りながら俺と剣を打ち合わせればいい。ああ、その時には出来るだけ粗野な叫びでも上げてくれ。殺される時には思いきり大きな声で断末魔を頼む」

 畏まっている二人に対して手短に指示を与える。
 外に出てふらついているズールーと合流し、ゴロツキとなって二人の誘拐犯をやり、俺に斃されて死体になるという、誰にでもできる簡単な仕事だ。

「暫く死んだふりでもしておいてくれ。それが終わったら特別ボーナスを出すから……行政府の近くならまだやってる酒場もあるし明日の昼くらい迄は好きに過ごせ」

 二人にはそれぞれ一万Zの特別報酬を渡してやり、ベンから屠龍ドラゴン・スレイヤーを受け取り天守に戻った。

 まずは着替えてから……えーっと、仄めかし(サゼッション)かな? ああ、人物魅了チャーム・パーソンが先だな。

 ……それよりも前に【鑑定】して奴らのレベルを確認しておくべきだが、今の俺のレベルは三〇を超えている。幾らなんでも間者だとかその連絡員つなぎをしているような奴のレベルが二〇以上なんてことはないだろうから【鑑定】は魔法の後でもいいだろう。

 仄めかし(サゼッション)人物魅了チャーム・パーソンなどの魔術は術者と対象とのレベル差が大きいと抵抗出来ないのだ。



・・・・・・・・・



「畜生ぉぉぉっ!」

 目の前の獅人族ライオスが大声で叫び、ドサッと音を立てて道端に倒れた。
 道端には既に今倒れたズールーの他、カルスロンとギジェラルスの二人が転がっている。
 どこかの大根役者バストラルとは異なり、三人は抜群の演技力を発揮して大立ち回りを演じて見事に散っていったのだ。

「この馬を本部まで連れて行くついでに適当に何人か連れて戻ってこやつらの死体を片付けろ」

 ベンに命じてウラヌスを連れて行かせる。

「災難だったな、そなたら」

 ウェッブで簀巻きになったまま馬から下ろした二人に声を掛けた。

「この変なもの、魔法で消してやるから少し待て」

 と言ってスリープクラウドの魔術で眠らせる。
 すぐにアンチマジックフィールドを使ってウェッブを解き、まだ眠っているうちにもう一度スリープクラウド。
 起き上がってきたズールー達と一緒に簡単な身体検査をした。
 武器らしいものはナイフ一本すら携帯していないあたり、よく訓練された間者だといえる。

 因みに二人は共に普人族ヒュームで年齢は三四と三〇、レベルは二人とも八だった。
 二人共ごく普通の【ロンベルト公爵家従士/○○家当主】という所属の平民であるのが俺の領民ではない事を物語っているが、これを以て国王の間者だとか連絡員つなぎであるとか断ずることは出来ない。

 王都ロンベルティアには三〇〇〇弱の平民家があると言われているが、そのうち三割程度の家が【ロンベルト公爵家従士】という所属になっているのだ。
 勿論、所属が示している通り王国騎士団に所属している人もいるし、中には本物の従士として直接王家に仕えている人もいるだろうが、大半は先祖がそうだった、とういうだけの肩書だけの人ばっかりだ。

「よし、もういいぞ。すまんがまた寝ててくれ」

 ズールーたちにもう一度死体になって貰う。
 ダークエルフの二人はうつ伏せに、且つ上半身は道端の草むらに突っ込むようにしているのを確認する。
 なお、ズールーはどうでもいい。

 さて。

 報告の通り、二人の首には小さな傷がある。
 連続してキュアーオールを掛けて傷を治療してやった。

 ……まずはこいつから行こう。
 年上の方、ケンダクト・ダーガンという男にもう一度アンチマジックフィールドを使い、単なる睡眠状態に戻す。
 すぐに軽く頬を叩いて起こしてやり、目を開いた瞬間に人物魅了チャーム・パーソン
 もう一人のエズムンド・バケイラの方も同様に人物魅了チャーム・パーソンを掛けてやった。

 続いて二人には解麻痺リムーブ・パラライジズの魔術を掛けて麻痺を解いてやった。

「大丈夫か? 痛むところはないか?」
「え? あ、ああ、大丈夫……です……グ、グリード、いえ、リーグル伯爵!?」
「な、なぜ……!?」

 ライトを掛けた石を転がしておいたからか、俺の顔が見えたのだろう。
 二人共目を丸くしている。
 今、俺は彼らの目にはヒーローのように眩しく映っているのだろう。
 それも、何年も前から付き合いのあるヒーローだ。

「ふっ、何故とはお言葉だな。私がそなたらの窮地を救うのに理由がいると思うのか?」

 微笑を浮かべながら優しい表情を心掛ける。
 ま、今は多少大根でもなんとかなるからあんまり気にしなくてもいいんだけどね。

「い、いえ……」
「そ、その……」

 そっと目を背けたりうつむいたりして頬を赤らめるなよ……。
 汚ねぇ無精髭のままなんだしさぁ。

「追い剥ぎにしては妙な奴らがいて、二人の男を魔術で捕らえて逃走したと報告があってな。騎士団総出でべグリッツの周囲を検索していた。そなたら、べグリッツで捕らえられたのか?」

 俺の問いに二人は首肯した。

「ケムンズ通りの北の方か?」

 今度は二人揃って顔を見合わせている。
 通りの名前までは知らなかったのか、誤魔化そうというのかは解らない。
 多分知らなかったのだろう。

「そなたら名は何という? 私の領民か?」

 二人は素直に本名を名乗ったが、同時に自分の事を忘れるなんて酷いとも言ってきた。
 うん。魔術は完全に成功しているな。

「そう言うな。これも騎士団の規則だからな。許せ」

 俺は名を尋ねたことについて許しを請いながら立ち上がる。

「目撃者の農奴には感謝するんだな。しかし、攫われた二人組というのがそなたらとはな……立てるか?」

 ある程度の間、麻痺させられていたためか、簀巻にされたまま馬の背に揺られていたからか、体の節々が痛むのだろう。だが、先程痛むところはないとの返答だったので気にしないことにした。

「よし、今日はもう遅いし、私もそなたらを探して走り回ったばかりか……こいつらの相手をして些か疲れた。そなたらもこのような目にあって気疲れもあろうし、空きの兵舎もあるから今日は城に来い」

 遠慮する二人を強引に俺が乗ってきたミヅチの馬、玉竜の背に乗せると自ら手綱を取って歩き出した。

「どうせ麻痺であちこちが強張ったままだろう? そんな足では暫く満足に歩けまいし、遅い。私が歩いたほうが余程早い。なぁに、歩くのはバルドゥックの迷宮で慣れている。そなたらもよく知っておろうが……」

「あの……それもそうですが、下手人の方は……」

 む。
 かかりが浅いのか?
 完全に人物魅了チャーム・パーソンの影響下に置かれていながらも二人はズールーたちの調査をしたがった。

「もうとっくに死んでいる。後で騎士団の者が片付けるから身元の調査などはその時にでもやるだろう。放っておけ。それとも伯爵で騎士団長の私自らがこのような者たちの調査を、しかも今すぐにやれと言うのか?」

 少しばかり強めに言うとすぐに詫びてきた。
 うーん、魔術はちゃんとかかってる筈なんだが……何が抵抗させているんだろうか?
 確かに人物魅了チャーム・パーソンに掛かっている者のステータスにはサブウインドウがあり、魔術についての説明が見れる。
 しかし、レベル差が一〇もあれば抵抗の可能性はゼロの筈……【精神的に何らかの強い目的意識を持っていれば魔術に掛かってもその目的意識に反した行動を取らせるのは難しい】というような趣旨の文章もあったような……。
 ふん。あの国王おっさんもどうしてなかなか慕われているようだな。

 ここからコートジル城までは歩いて二〇~三〇分くらいはかかる。
 その間にもう少し親しくなっておくとするか。

 誠に面倒だが人物魅了チャーム・パーソンは何度か掛け直しておいた方がいいだろう。
 ライトを掛けた石があれば俺の目が光っても気づかれることはないだろうし。
 勿論、魔術の効果時間が切れたとしてもこいつらに「魔術を掛けられた」という記憶は残らないが、俺と親しく会話をした記憶は残る。
 可能なら二重スパイに仕立て上げたいところではあるが、それは欲張りすぎだろうな。

 
人物魅了チャーム・パーソンの魔術については第二部 第九十一話のあとがきに少しだけ触れられています。
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