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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第三部 領主時代 -青年期~成年期-

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第七十八話 ゆっくりでも着実に 3

また前半部分だけです。すみません。
7449年10月10日

 べグリッツからミード村まで、一〇㎞強と目されている線路のうち、六分の一、だいたい一・五㎞くらいの敷設が完了した。
 工事を開始した当初と比較して、敷設作業についてかなり慣れてきているのがよく分かる。
 現在では一日に当初の倍にあたる八本のレール(合計五六m分)を敷設できるようになっているとのことだ。

 線路敷設の工事チームはズールーが監督をする一チームしかない状況なので進捗状況はそこそこに順調だと言えるだろう。ズールーによるとベゾーレ商会(俺の屋敷の建設を発注しているアイアンボイル商会とは別口の工務店だ)から来ている連中に数人、目ぼしいのが育っているそうでそいつらを年明けからの工事監督にするのがいいだろうとの意見だった。

 と、すると、そろそろ工事人夫の募集を開始しておいたほうがいいので、べグリッツの街のほか、ミード村に対しても人夫の募集を通告した。
 まずは工事チームを四チーム増員したいので合計八〇人を募集する。

 賃金は成人一日あたり三〇〇〇Z。一二才以上の未成年の場合はそれなりに働ける力の持ち主であれば二〇〇〇Zとする。更に働きに応じて監督の判断で多少の上乗せの可能性もあると言っておけばいいだろう。
 農地の開墾など、領内における一般的な普請の工賃は一日二五〇〇Zが相場なので、少しだけマシな価格設定だ。領主直々の普請になるのだからこれくらいはしてやるべきだろう。これならば手持ちの奴隷に余裕のある人なども気軽に応募し易いのではなかろうか。
 普通、街道の整備など領主の唱える普請ならば相場の半額とか、酷い時には無償で強制的に請け負わせることも多いと聞くので人気取りの側面も強いのだが、これには他に大きな目的もあるのだ。

 そう、まずは民草の現金収入を増やす働き口の提供である。

 来年年明けから半年ほどはともかく、最終的には二〇~三〇人程度の工事チームを二〇くらい作るつもりだが、これだけで五〇〇人くらいの人に働き口を提供してやれる。
 人夫全員が成人だと仮定すると単純計算で一日一五〇万Zが飛んでいくことになるが、俺の総資産は現金化している分だけでも一七〇億近くあるから年間四億五〇〇〇万(週に一日は休みなので年間三〇〇日計算だ)程度、大きな問題はない。

 べグリッツの人口は九〇〇〇人、領内全部合わせても四万人いない……三万五〇〇〇人しかいないような土地で五〇〇人の雇用はでかい。

 一人あたりに直すと、月に二五日の労働で月収七万五〇〇〇Z、年収八〇万Zだが、一人年間一〇〇万Zの人頭税が掛かる自由民はともかく、税率の低い平民ならば自宅さえあるのなら問題なく生活可能だ。物価の違いは有るので一概には言いにくいが、バークッドあたりの奴隷を所有していない平民一家の収入が年間五〇万Z程度であることを考えると多少はマシな生活は可能だと言えるだろう。

 また、この辺りの奴隷の一般的な月収は衣食住を支給されている場合五〇〇〇~六〇〇〇Z程度、住だけを支給されている街中の奴隷でも三~四万Z程度が平均である。そう考えると、手持ちの奴隷に遊ばせている者が居ればそれなりに良い給与(奴隷にはその所有者に給料が払わられるため)だと言えると思う。

 行政府の調査では三万五〇〇〇人のうち、その八割が奴隷階級に属しているという。
 べグリッツやゾンディールのような街だと奴隷の割合は少し減り、農業が主体の村では逆に少し奴隷の割合が高まるようだ。
 また、奴隷以外の人のうち、ケンドール街(所謂スラム街)の住人である“名無し”はべグリッツの場合一〇〇人程度だろうと推測されていたが、このうちの半分以上にあたる六六人は先日の一掃作戦で俺の奴隷となっている。残りは多くても五〇人程度ではないだろうか。

 今回、八〇名の工事人夫を募集するにあたっての狙いは、まずこの名無しにちゃんとした職を与えることでもある。
 勿論、もしも名無しが応募してきたらその瞬間にひっ捕らえて全員俺の借金奴隷にしてやるつもりだ。名無しはそれだけで犯罪だからな。
 だから全員が全員応募して来るなどということはないだろうが、たとえ僅かでもまともな職を得てお天道さまの下を大手を振って歩けるようになりたいと願っている者だって居ないことはないのだろうと思うことにする。

 名無しは大抵の場合本来奴隷だが、名無しとして検挙されてから一定期間内に本来の所有者が名乗り出て誕生後から今までの人頭税を割増で支払わなかった場合、一律で領主が所有者であると見做される。因みに追加で別の犯罪を犯していた場合(大抵は犯している)、その犯罪に対する罰金についても所有者が支払わねばならないし、忘れがちだが名乗り出た所有者はその奴隷に対して未払いの給料を支払う必要もある。

 少し脱線するが一例を上げる。転生者でもある俺の奴隷のトールを例に取ると、彼は二一才で捕らえられた。

 奴隷には赤ん坊だろうが老人だろうが、働いていようが遊んでいようが、所有者は必ず給金を支払う義務がある。その金額自体は所有者が決めることが可能だが、奴隷への給金に限らず大抵のものには相場というものがあるので、名無しへの給金だけを極端に安価にすることが認められることはない。

 普通は相場を勘案して行政府から幾らだと言われる。トールの場合、生まれてから五歳になるまでは月に三〇〇Z、六歳から七歳までは五〇〇Z、八歳から九歳までは一〇〇〇Z、一〇歳から成人までは毎年二〇〇Zずつ増額。一五歳で四〇〇〇Z、以降毎年四〇〇Zの増額と言われていた。実際にはトールが脱走する七歳まで給金を支払ってはいたそうだが、名無しのためにそう主張しても認められることは無かったであろう。
 合計で五八万六八〇〇Zだ。勿論これが支払われた場合、トールに受け取りの権利がある。俺の場合は持ち主ではなかったのでこれを支払う謂れはない。

 それに加えて本来の所有者は年間一万Zの人頭税を割増で支払わねばならない。この割増分は支払われなかった一年毎に一万Zが割増として加算される。トールの場合は二一歳だったので本来は毎年一万Z、合計二〇万を過去に払って居なくてはならない。しかし、この割増を計算すると合計で二一〇万Zとなる。トールの本来の所有者であるダムル紡績商会の会長はこれら合計二七〇万Zに加えて罰金まで支払ってようやくトールを再び手に入れる事が出来るのだが、当然の如く彼はトールの所有を放棄した。

 自動的にトールはドランの領主であるウィリアム殿下が所有する事になったが、俺は殿下に直接交渉してトールの罰金を肩代わりするだけで所有権を俺の物にした。

 上記の理由から、ある程度纏まった金額が必要になるので、例え名無しがそれ以外の罪を犯していなかった(又は犯罪の立証が出来なかった)としても、本来の所有者が所有権を主張することはまずない。

 なお、追加の犯罪が行われておらず(立証出来ず)に、単に名無しだけが罪であった場合には税を支払えなかった自由民や平民などと同じ借金奴隷と同様の立場となる。この場合、給料は関係がなくなり、人頭税だけがその割増料金を込みで領主への借金と看做される。
 つまり、再び先のトールを例に取ると二一〇万Zの借金奴隷ということになり、一~二年のうちにその借金さえ返してしまえば自由民(又は領主が認めさえすれば平民)になる事も出来る。一般の奴隷よりも自分を買い取る為の金額は相当に安価になる事が多いと言えるだろう。

 これらの理由から俺は名無しでも人夫に応募して来る者は居るだろうと考えている。

 それはそうと人夫に支払う給料だが、大本の財布は俺なので、一見すると金が多く出て行くようにも思えるが、数年先、鉄道路線が西のヨーライズ子爵領や北のダズール伯爵領、東のランセル伯爵領まで伸び、交易路として発展すれば工事の先行投資分などン百倍になって返って来る筈だ。

 勿論、鉄道が利用される事で得られる運賃などでも幾らかは回収出来るだろうが、べグリッツやゾンディール、ウィードなどは交易や物流の中継地ターミナルとなる。集まった物資を捌くための市場でもべグリッツに作ってやれば更に大きく発展することだろう。物が集まれば商会も増えるだろうし、それに伴って領外各地から移民も来てくれると思う。

 そういう商人たちが商売を始めれば彼らのアガリの一割も自動的に俺の懐に転がり込んでくるのだ。俺の領内に本店登録のない商会に対しては市場の会員権という名の利用料を割増に設定してやればいい。

 その頃には俺の領地の真似をして鉄道を引きたがる領地も増えるだろうし、実際に似たような鉄道路線を作る領地も有るかも知れないが、そういう状況こそ大歓迎だしね。

 俺よりも上等な貨車を作れる奴なんかいないから、アホみたいに高いレンタル料金にしたって借り手は幾らでも出て来ると思うよ。

 ちゃんとしたボールベアリングを使って作った貨車の方が馬が牽ける重量は飛躍的に高まるんだからさ。

 
この続きは水曜に更新できるといいなぁ、と思っています。
早く水曜・土曜更新の平常運転に戻したい。
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