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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第一部 幼少期~少年時代

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第四十話 反省

7438年4月28日 午後

 さてさて、シェーミ婆さんに婆さんの家から放り出された俺はとぼとぼと歩きながら、どう婆さんを切り崩したものか悩んでいた。ちょっと整理してみよう。

1.魔法を使うには呪文の詠唱は必要ない
2.その場合、魔法に慣れれば一瞬のうちに発動することも可能になる
3.但し、精神集中が必要で、魔法の発動前に精神集中が途切れると魔法失敗
 (一瞬とは言えゼロではないので精神集中は必ず必要)
4.呪文を詠唱して魔法を使う場合、呪文の詠唱終了まで魔法は発動しない
5.精神集中は呪文を詠唱したほうが低減される(半自動になる)
6.呪文は魔法毎、個人毎に異なり、相性のある言葉を探す必要がある

 ちょっと補足しておこうか。2に述べている一瞬とは魔法によって異なる。使用する魔法の系統が少なかったり必要な魔法のレベルが低いならば文字通り一瞬──長くてもせいぜい1秒くらい──だが、必要なレベルが高かったり、多くの元素魔法が必要になると一瞬とは言え2~3秒は要する。慣れていない場合は1分以上、場合によっては数十分もかかることはザラにあるのでそれらと比べた場合には充分に一瞬と呼んでも差し支えないだろう。

 次に、3の精神集中だが、これは勿論文字通りの精神集中だ。使うと決めた魔法の完成に必要な魔力を練りあげ、それを行使するために極度な精神集中が求められる。正直なところ、イメージする魔法を使うと決め、魔力を練り始めてから完成するまでは他の事は一切出来ないと思うくらいで丁度いい。よほど慣れた魔法であれば多少の身体行動くらいは出来るがせいぜいそれまでだ。だから、動揺していたり、何かに気を取られていたりなどするとそもそも魔力を練り始めることすら出来ない。当然何らかの魔法を使ってそれを維持している最中に別の魔法を使うなんてことは出来るはずもない。

 問題は6だよな。こればっかりは盲滅法でなんとかなるものではないだろう。ちょっと軽々しく婆さんの前でわざと自身を傷付けたのはあまりに軽率だった。どんな理由があろうとも子供が己の体に自ら傷付けることはどう贔屓目に見ても感心されないことぐらい気が付きそうなものだ。なんであんな馬鹿な事をしてしまったのだろう。まぁ後悔先に立たずだ。やってしまったことを悔いるより今後にどう活かすかを考えたほうが精神的に健全だ。

 次は治癒魔法の呪文を唱えられるようになりたい目的だ。なぜ呪文が必要なのか。これは一つしかない。

・自身の体の重要部に大怪我を負ったりなどした場合に、痛みやショックなどで魔法に対する精神的な集中力を維持出来ない可能性を捨てきれないから

 これだけだ。別に呪文を唱えれば魔法への集中力が必要無くなる訳ではない。魔法への集中力が軽減されるだけだ。半自動で呪文に対応する特定の魔法のための魔力を注ぎ込んでくれる、というだけだ。要するにどんな場合でも魔法に対する集中力の維持さえ可能なら呪文は必要ない。必要な集中力の低減以外にはなんのメリットもないのだから。だから俺は手足の怪我くらいであればたとえ戦闘中に欠損したとしても治癒魔法をかけて傷口を塞ぐ程度は出来るくらいには治癒魔法の修行をしたのだ。多分これは戦闘中だろうが何だろうが出来るだろうと思えるくらいには何回も修行を重ねただけあってかなりの自信がある。

 ただ、胴体などあまりに重要な器官が集中している場所については修行のためとは言え自ら傷付ける勇気がない事と、胴体部への怪我の痛みを押して治癒魔法を咄嗟にかけられる程度の集中力を発揮出来る自信が無いだけだ。多分相当痛くても時間さえかけられるのであれば、胴体に重傷を負ったとしても治癒魔法をかけることは出来るだろう。だが、魔法に対する集中に時間が掛かりとても戦闘中には出来ないだろうとの考えから修行をしたいだけだ。ただでさえ重要な器官を多数内蔵する胴体部に大きなダメージを受けた場合、出血によるショックや、魔法が効果を発揮するまでに失血死しないかどうかや内臓が傷ついたことによる恐怖と戦いながら落ち着いて魔法が使えるか……。

 自信なんかあるわけない。しかし、それを言うならそんな状況で正確に呪文を唱えるのだって難しそうだ。血液が気管や食道を登って来たりしたら正確な発音も無理だろうからそうなると呪文には本当に意味が無くなる。呪文はただ決まった言葉を発音しさえすれば良いと言う物では無いし、シャルが言う通り発声できない状況では文字通り何の力も発揮することはない。

 うーむ、今はしょうがないのかなぁ……。今考えたように胃や腸などの消化器官や、肺を傷つけて血を吐いたりなんかすれば呪文を唱えるどころじゃないしなぁ……。でもなぁ……。胴体はでかいから目標になりやすいから傷を受けることも多いような手足で防御するからそうそう傷を負うことも無いような……。いやいや、出来るだけ悪い状況を想定すべき……。

 しかしだ、普通に考えてみればシェーミ婆さんの言っていることは全く反論の余地がない。僅か10歳の小僧が「胴体部に重傷を負った場合の治癒の練習をしたいから腹に剣を突き立てているんだ」とか言って来たとして、俺がシェーミの立場なら確かに「ふざけんな、馬鹿」だろうしな。そこで認めて「よしよし修行熱心だね。じゃあ教えてあげよう」なんて言う奴がいたら気違いとしか思えんわ。もう少し大きくなってから再度教えを乞うしかないのかな? だいたい治癒の練習とかバカ正直に言ったのが悔やまれるわ。

 例えば魔法で攻撃しながら防御したり走ったりしたいから、で教えを請う理由としては充分だろうに……。なんであんな事を言ってしまったんだろう。いつも出来るだけ話した相手の受け答えを考えて発言するようにしているのに今回は全く考えなかった。これも年齢に精神が引っ張られているからなのだろうか? いやいや、もしそれが本当だとしても自分がアホ過ぎただけだろうと思うようにしないとまた似たようなことをする可能性がある。良い事は他人のおかげ、悪いことは自分のせい。こう考えないと成長はないしな。

 村の中心部にあるシェーミ婆さんの家から戻る道すがら、肩を落としながらこんな益体もないことを考えていた。



・・・・・・・・・



 昼になりミルーが起きてきたのでメイドのソニアに作ってもらった昼食を摂り、姉弟二人で剣の修行に行く。行くと言っても家のすぐ脇で修行をするのですぐに到着するのだが。遠征に行かなかった従士の子供たちと共に木刀などで模擬戦をし、適当なところで切り上げて今度はゴム製造だ。皆既に充分に慣れているので流れ作業のように各種のゴム製品を作っていく。俺はぼーっとしながらその光景を眺めていたら夕方になったので家に帰り用意されていた晩飯を食う。

 なんだかしゃっきりしないので今晩は狩りにでも行くかなぁ……。夜に一人で狩りに行けば気持ちも引き締まろうってものだ。それに、あのホーンドベアーへの対抗手段は治癒魔法なんかではなく、レベルアップすることのはずだ。咆哮をあげる時にはあたかも魔法を使うときのようにホーンドベアーにも隙が出来る。その隙を狙い撃ちすれば剣や槍でも充分にダメージを与えられるし、魔法で撃ち抜いてもいいだろう。

 俺はミルーが寝たのを確認するといつものようにそっと家を抜け出した。銃剣を持ち、誰にも見つからないように村の外れまで行くと今日はどのあたりで狩りをしようかと首を捻るが、今はとにかく経験値を得てレベルアップを目指すのが一番の早道なので経験値の高い魔物が多いところを目指す。

 村の北から北西の方へ行くとスライムがいるあたりに行けるはずだが、あの辺りはいつかホーンドベアーの番に襲われたところだ。ホーンドベアーを除けばこの辺りではスライムが経験の高い魔物なので出来ればスライムを狩りたいのだが、なんとなくあれ以来足が遠のいている。今迄夜には遠目ですらホーンドベアーを見かけたことは無いので多分ホーンドベアーは夜行性では無いと思うが、あそこまでは流石に遠い。

 仕方ないので村の東に行こう。村の東はゴブリンの集団が出やすい辺りだ。他にはラージバットやジャイアントラット等が夜行性の魔物としてうろついている。場合によってはホブゴブリンと言うゴブリンよりかなり経験値的に美味しい魔物に出会えることがある。ホブゴブリンに期待だな。

 村から1時間半程歩くと魔物の集団を発見することが出来た。期待通りホブゴブリンだ。索敵代わりに使っていた鑑定でおもむろに集団のうち、一番体のでかい一体を鑑定してみた。

【 】
【男性/17/5/7428・中鬼人族・バズ氏族】
【状態:良好】
【年齢:9歳】
【レベル:4】
【HP:70(70) MP:2(2)】
【筋力:12】
【俊敏:13】
【器用:5】
【耐久:10】
【特殊技能:赤外線視力インフラビジョン

 こんな感じの奴らが12匹いる。どうやら焚き火をして何か食べているようだ。見張りを周囲四箇所に置き、残りの八匹が焚き火を囲んでいる。こいつは何とも実入りがいいな。多分全滅できたら7~8000くらいの経験が入るような集団だ。こんな大集団は初めて見るから興奮してきた。おっと、こんな時こそ落ち着けよ、俺。

 ホブゴブリンは通常だと数匹くらいの集団でいることが多く、今までに倒した事は一匹しかない。集団のうちの一匹でもある程度の傷を与えるとそいつを守って退却してしまうからだ。ゴム採集の時に何度か出会ったことはあるが、こちらは大抵五人以上の集団なので向こうから襲撃してくることも殆どないから戦闘回数自体が少ないのだ。見た目はゴブリンと似ているが、大きさを150%くらいにして、体格はゴブリンよりずっとがっしりとした感じでほぼ普人族の成人と同じくらいかちょっと小さいくらいだ。だが、戦闘力はゴブリンのふた回りどころでは無く、かなり強力な魔物と言えるだろう。なお、特殊技能の赤外線視インフラビジョンはいいとこ2~30m程しか見通せない。村のエルフやドワーフなど、同じ特殊技能を持っている亜人に確かめたので間違いはないだろう。ああ、念の為鑑定してみるか。

【特殊技能:赤外線視力インフラビジョン
 レベルあたり3mまでの距離の遠赤外線を探知可能な視力。視力のモード変更にはこの技能を使用すると意識しないといけない。モード変更後に目に映る映像は遠赤外線放射量に応じた色となる。遠赤外線を放射しないか放射量が微量な対象は黒く見え、放射量の増加とともに赤くなっていく。そして更に放射量の強い対象を視界に収めるとその対象は赤を通り越して白く見える。この視力は場合によっては対象との間に壁があっても有効である。視力器官から赤外線を放射してその反射を見ているわけではないので傍に大きな遠赤外線を放射する物体などがあると視界は真っ赤になったり真っ白になったりして有効ではなくなることもある】

 うん、やっぱり一緒だ。心配はなさそうだな。

 焚き火が傍にあるのでなんとなくだがあまり脅威ではないし、視力の及ぶ範囲も短い。明かりのない家屋内などではかなり有効だろうがある程度距離を取れるなら無いも同じだ。

 本当は訓練の意味からも一体ずつ肉弾戦で相手をしたいところだが、多分一対二になった場合、かなり分が悪くなるだろう。それに今日は訓練ではなく、経験値を得に来たのだ。見張りを出来るだけ静かに始末してから残った集団を纏めて土で埋めるか、氷漬けか……。流石に見張りごと全滅は出来ないことも無いだろうが端っこ同士の見張りの距離があるのでちょっとMPの効率が悪すぎる。一匹か二匹、見張りを処理してしまえばいいだろう。

 俺は魔法の射程ギリギリの200m弱までそんな事を考えながら用心深く近づくと、見張りに対してアイスジャベリンミサイルの魔法で狙いを付ける。勿論手の光を見られる可能性を考慮して左手にゴムの袋を被せてから魔法を使うことにする。全く光が漏れない訳ではないだろうが何もしないよりは比べ物にならないほどマシだろう。

 鑑定で見張りのシルエットを際立たせて見張りが別の方向を向いた瞬間を見計らって槍を加速して飛ばして最初の見張りを始末する。また、別の見張りに近づいて同じように始末した。側頭部に氷の槍を突き立てられた見張りは一撃で死亡した。殆ど音はしなかっただろうが、見張りが倒れた音はしたはずだ。だが、ホブゴブリンたちは見張りの半数が既に倒されたことに気がついた様子はない。

 何やら聞き取りづらい言葉を大声で話しながら食事に夢中だ。よし、これなら残りの見張りも上手く始末できそうだ。俺は少し大回りをしながら焚き火を迂回して三匹目の見張りも首尾よく始末した。

 もういいだろう。一気にあの焚き火と残った見張りを巻き込むように土を出して埋めてしまえ……。

 埋めてから20分程待ち、全員窒息したことを確信してから『アンチマジックフィールド』で土を消した。『アンチマジックフィールド』の魔法は広範囲にかけるとかなりMPを消費するんだよな。これで今日は残りのMPはもう数百程度しか無くなったのであとは魔石を回収して……もう面倒くさいな。この辺りに死体を放っておいても別の魔物や肉食獣が始末してくれるだろうし、そうすると魔物が集まってくることになるから更に経験を稼げるようになるかな? 放っておこうか。

 いやいや、それで変な魔物が来たりしたら大変だ。面倒でも死体は始末したほうがいいだろう、仕方ない。やるか。

 俺はさっさと哀れなホブゴブリンの死体にナイフを突き立て、胸から魔石を回収すると同時に死体を焚き火跡の一箇所に集めて『フレイムスロウワー』を使って焼き上げた。シャルが使っていたように火炎放射器のようにしながら温度だけ1000度くらい上昇させる。時間をいくらでもかけられるから温度をかなり上げて焼いてやればすぐに灰になるからな。

 今日はもう帰って明日に備えよう。シェーミ婆さんにはまた明日話をすればいいさ。何とかなるだろうよ。

 
シェーミ婆さんのデータです。

【ハンナ・シェーミ/20/9/7386 ハンナ・オズガウル/14/6/7368】
【女性/12/1/7367・普人族・自由民】
【状態:良好】
【年齢:71歳】
【レベル:11】
【HP:39(39) MP:45(45) 】
【筋力:6】
【俊敏:10】
【器用:16】
【耐久:7】
【特殊技能:地魔法(Lv.5)】
【特殊技能:水魔法(Lv.5)】
【特殊技能:火魔法(Lv.4)】
【特殊技能:無魔法(Lv.5)】
【経験:182456(210000)】
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