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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第三部 領主時代 -青年期~成年期-

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第二十八話 贈り物

7448年10月26日

 しっかし、参ったねこりゃ。
 伯爵になったこともあって、王都でもバルドゥックのドラゴンスレイヤー、アレイン・グリードの名前は相当に売れていると思ってた。
 要は、俺の商会に手を出す奴なんか居る訳無いと思い込んでいたってだけなんだけどさ。

 これも俺の思い上がりと言え……なくもないだろうが……いやいや、伯爵でドラゴンスレイヤーの男が経営する商会に盗みに入るって、これ物凄いバカか余程盗みの腕に自信を持っている自信家だぞ?
 元々ジョンに気が付かれなきゃ普通に盗めていたであろうから、後者かもしれない。

 取り押さえることも出来ずステータスも確認出来ていないから、今のところ相手の正体は不明だ。
 だが、挽き肉機を使った物で商売を、それも手広くやれば一発でばれるだろう。
 少なくとも俺たちにはね。

 それが予想出来ない程の大間抜けであれば何も問題はない。
 騎士団に通報して一発……?

 ん?
 俺は目撃者じゃない……。

 つまり、俺が貴族であるというアドバンテージは無……くは無いか。
 挽き肉機が俺の、グリード商会の物であると証言すればいい。

 ……いや、駄目だ。
 もしも盗んだ相手が俺と同様に上級貴族なら、その反論は俺の発言と同価値である。
 そうなると他の者、当事者の証言が採用されるが、俺の方の当事者は奴隷のジョンと早めに出勤してきた奴隷のガキしかいない。
 実行犯の階級は何であれ、その後ろにいる奴が貴族で、しらばっくれられたら俺が挽き肉機を所有していたという証明が必要になる。

 以前、適当な鍛冶屋にダミーの部材を発注しているとは言え、あれだけの精度で挽き肉機を作れるのは今のところ俺だけだから証明なんか簡単だろ……。
 何しろ工場には同様に俺のお手製の挽き肉機がまだ四台も残っているのだ。
 部品を取り違えても問題が無いように完全に同型にしているところも重要なポイントだ。

 暫く放っときゃ盗んだ奴が大々的に名乗りを上げて商売を始めるだろう。
 それから追い込めばいい。
 ま、今日のところは騎士団に被害届を出して通報の実績を作っておけば充分じゃないかな?

「ジョン。お前を責めたりしやしないから安心しろ」

 工場に向かう間、顔をぐじゅぐじゅにして気落ちしているジョンに声を掛けて落ち着かせようとした。
 だが、ジョンはなかなか泣きやまない。
 工場に到着すると丁度バストラルも着いたところだった。
 彼は俺と待ち合わせのラーメン屋に向かう途中で商会にいると思って迎えに行った奴隷と鉢合わせしたらしい。

「おはようございます。アルさん……」

「おはよう。ちょっと待ってくれ。テリーが打ち身をしているらしいから……」

 怒りと戸惑いが混ざったような表現のしがたい表情で挨拶してくるバストラルを遮って、怪我をしたというテリーの治療をしてやった。
 テリーもジョンと同様に相当気を落としており、泣き顔で俺の罰に怯えていた。

「……これで大丈夫か? もう痛くないな? テリー。怖い思いをさせてすまなかったな」

 実は他の奴隷たちへの見せしめも必要かと思って、最初はジョン共々怒鳴りつけようかとも思ったんだ。
 だけど、所詮は戦闘訓練なんかしたこともない十四歳の小僧二人。
 包丁なんかを使って本気で抵抗したところで殺されるか、運が良くて大怪我だ。
 ステータスを見ようと抱きついただけで充分だ。
 お陰で全身殆どを衣服で覆っていた事が判明し、それなりにちゃんと計画だてられた犯行だと判ったんだし。

 こいつらが命に関わるような大怪我をしなかっただけ幸運だった。
 他人にとってはそうでもないだろうが、俺にとっては二年も俺の所で教育を受け、芽が出かけているこいつら二人の方が、材料さえあれば幾らでも作れる挽き肉機なんかより余程貴重な財産だ。
 ……いや、確かにまた挽き肉機作るのなんか心底嫌だけどさ。 

 でも、それはそれ、これはこれ。

「お前らに工場の警備まで任せた俺の責任だ。気にするな」

 ああ、これじゃ幾らなんでも冷たすぎるな。

「勘違いするなよ? 俺は別にお前たち二人が役立たずだなんて思ってはいないからな? ジョン、テリー。俺の奴隷アドゥーン小頭リギャンガーならいつ迄もピーピー泣くな。ほら、他の皆も見てるぞ」

 さり気なく昇進させてやった。
 昇進とか笑っちゃうけど。

 ジョンもテリーも、傍にいて聞いていたバストラルやキャシー、数人の奴隷たちも一瞬ぽかんとしている。

 うむ。よく解らない階級の付与に伴って、こいつら二人が授爵のお祝いに貰った三人の大人の奴隷は疎か、元騎士のヘンリーとメックよりも上になってしまった。
 奴隷小頭なんて聞いたことないけど。
 よし、ヘンリーとメックも小頭にしてやろう。
 ギベルティーは……ズールーに次ぐ古株だし、強いて言うなら中頭イムギャンガーかね?

 んなこたどうでもいいんだよ。

「バストラル、キャシー。他に被害がないか確認してくれ。ほれ、お前らも確認しろ。今日の仕事はその後だ」

 パンパンと手を叩いて行動を促した。

「じゃあお前……ヘルンだったな。ひとっ走り行って、誰でもいいから騎士団員を引っ張ってこい」

 手近に居たガキに命じ、残った皆で被害確認だ。

 目立った被害は挽き肉機が一台だけ。
 他は空箱が崩れていたりしたくらいで被害と呼ぶのものおこがましい程度だ。
 ジョンとテリーの部屋を仕切っている壁に隠してある仕入用の現金は丸々無事。
 昨日作って倉庫に寝かせてある、本日の営業用の麺も無事。
 在庫になっている少量のバルドゥッキーも全部無事だ。

 ガキの通報で駆けつけた騎士団員に事情を説明し、盗難届と言うか、被害届と言うか、とにかく特殊な物、真鍮工芸品である挽き肉機を盗まれたと訴えた。



・・・・・・・・・



7448年10月27日

「あたしさ、来週結婚するから」

 姉ちゃんから呼び出されて第一騎士団の駐屯地に行ったら、耳を疑うようなことをさらりと言われてしまった。

「えええっ!? 何それ? 聞いてないよ!」

「そりゃそうよ。まだ誰にも言ってないし。知ってる方が驚きだわよ」

 当たり前だとでも言わんばかりにミルーは平然としている。
 そりゃあさ。兄貴とは違って家督は絡まないし、実家とは物理的に遠く離れているから……結婚相手を誰かに紹介したりするなんて事は仮に本人が希望したとしてもそう簡単に行かないのは当たり前だ。

 でもさぁ……俺だって結婚するよりも大分前にミヅチを紹介しているんだし、そんなに遠く離れている訳じゃないんだし、一言くらいさぁ……。

「何よ? その顔は。仕方ないでしょ? 私も昨日決めたんだし」

「は? 昨日決めたって……全く知らなかった……」

 おいおい、昨日決心したって事は随分前から付き合ってたのかねぇ?

「嫌な顔するのね……あ! あんたまさか……やっぱり私のこと!」

「いい加減に下らない話で混ぜっ返すのは止してくれ。それより相手は誰?」

 誰だとしても姉ちゃんが選んだ相手にケチを付けるつもりはない。
 ただ、希望を述べさせてもらうなら、やはり第一騎士団の騎士がいい。
 将来大物になりそうなら言うことはない。
 去年、正騎士の叙任を受けたロバート・ブッシュさんとか、色男だし姉ちゃんと年も釣り合ってるし最高だろ。
 何より彼はまだ結婚もしていないしな。
 それに、去年の暮だったかな? どうもブッシュさんはモノ好きにも姉ちゃんに気があるらしいと聞いた事もあるので密かに応援していたのだ。

 うん。
 あんまり話したことはないけど明るくて朗らかそうだし、あの人なら義兄あにと呼んでもいいと思う。

「ん~。あんたは知らないと思う」

 あれ?
 ブッシュさんなら知ってるよ?
 姉ちゃんも居るところで紹介されたこともあるしさ。

「あんた、失礼にも程があるわね。私だってあんたの知らないところに知り合い位いるわよ」

 姉ちゃんの言葉にぽかんとしてしまったが表情に表れてしまったらしい。
 いやいや、確かにその通りだ。
 よくよく思い出してみれば姉ちゃんは結構モテてたんだ。
 結婚の申し込みとかそれなりの量が来てた。
 早とちりだったな。
 選びたい放題じゃねぇか。

「ごめんごめん。で、どこの誰さん?」

「マーティーよ。マーティン・ハミル」

 知らん。
 っつーか、ハミル?
 ハミル家ねぇ……。
 大物貴族に居たかな?

「知らないのも無理ないわ。平民だし」

 ……そりゃ無理ないわ。
 でも第一騎士団でハミルなんて居たっけかな?
 全員覚えてると思ってたんだが……。

「マーティーは凄く優しいの」

 ほー。

「よく気がついて働き者だし」

 へー。

「いい旦那になると思うのよね」

 ふーん。

「幾つの人?」

 年齢は重要だよね。

「私と同じ。来月二十五になるわ」

 むむむ。俺のチェックも甘かったようだ。
 姉ちゃんと同年代の人は全員……第一騎士団の人じゃないのかな?

「そうか。それなら釣り合い取れるね。で、どこの騎士団の人? 俺からも挨拶に行くべきだと思うんだ。伯爵として」

 俺の言葉を聞いた姉ちゃんは怪訝そうな顔をした。

「騎士団? マーティーは王国騎士団とは関係ないわよ。……無くもないか」

 あら。じゃあどこぞの田舎貴族か?
 そこの騎士かな?
 結婚の申し込みがたくさん来てたし、掘り出し物が紛れていてもおかしくはない。

「ああ、ごめん。早とちりだね。どこのご領地の人? 俺からもそこのご領主様に挨拶を……」

 その地を治める領主への挨拶は必要だろう。
 大切な人脈にもなるし、今後の交易なんかでもお互い関税の優遇措置とかお近づきになるような話をしておいた方が良いと思うんだ。

「え? うん、ご領主は陛下よ。当然じゃない」

 天領の人か……。
 でも、あの国王おっさんには今更何も言う必要はないだろう。

「そっか。じゃあ今更だな。でもそうすると騎士団辞めるの?」

 中隊長目指してたんじゃ……ま、いいか。

「辞める訳ないでしょ。結婚した後はすぐ東北地方に国境警備に行かなきゃならないんだし。そもそも私が騎士団辞めてどうすんのよ?」

 ……あれ?

「私も正騎士だからいつでも家は興せるわ。結婚するし、新しいグリード家を作るのよ」

 姉ちゃんが家督を持つのか。
 ってことは、マーティンさんは入婿ってことになるんだな。
 長子じゃないのか。

「ま、見てなさい。流石に伯爵は無理にしても子爵……いや、女爵……流石に無理か……准女爵くらいは……まずは士爵を目指すわ」

 うん。堅実に中隊長を目指したほうがいいと思う。

「そのマーティーさん、何やってる人?」

 聞くの忘れてた。
 どうせ騎士団関係か、どっかの貴族関係だと端から思い込んでいた。
 だって、結婚の申し込みがあったのってそういう人ばっかりだったから……。

「仕立屋よ。鎧下とか、騎士団関係の物の扱いが多いわね」

 ……。
 いや。別にいい。
 でも納得した。

「そっか。言い忘れてたけどおめでとう、姉ちゃん。姉ちゃんが選んだ人なんだからきっといい人なんだろう」

 最初に言うべきだったが、いきなり来週結婚するとか言われてどっかにすっ飛んでた。
 だけど、心から祝福したい。

「ん。ありがと」

 姉ちゃんははにかみながら笑った。
 子供の頃、バークッドを出て行った時の面影が俺の胸に蘇る。
 あの時は泣き笑いだったな。

「俺はやらなかったけど結婚の宴会とかやるの? そうならホーンドベアー狩りに行ってくる」

 ちょっと遠出しなきゃならんが、そよ風の蹄鉄ブリーズ・ホースシューがあるからな。
 ホーンドベアーが出るような田舎に行っても数日もあれば充分だろ。

「バークッドじゃあるまいし、やんないわよいちいち。でもホーンドベアーくれるんならやろうかな」

 昔食べたホーンドベアーの味を思い出したのか、蕩けるような表情を浮かべている。
 俺もあの濃厚な味を思い出してしまって口の中に唾が湧きだすのを抑えられなかった。

「ラッセグたちも居るんだし、やっても良いんじゃない?」

「……ん。でもやっぱりやめる。家も建てたいし、店も作り直してあげたいし、結婚早々無駄遣いするのはちょっとね」

 別にその程度の金、なんとでもなる。
 こうしている間にも俺の殺戮者パーティーは地面の下を這いずり回って稼いでいるのだ。
 だが、幾ら金持ちだとは言ってもそれは姉ちゃん、いや、新たなグリード家の家長としてのプライドが許さないだろう。
 元々姉ちゃんは第一騎士団に入団した頃から高給取りの割には金を使わない人だった。
 貯金なんか一億Zを超えてても不思議じゃないから金はあるはずだ。
 でも、宴会くらいはやっても良いんじゃないかな?

「ううん。いいの。私も領地を貰うつもりだからね。その時奴隷も買えない方が嫌だわ」

 言われてみればその通りだ。
 俺みたいにガキの奴隷を中心にするなんてあり得ないだろうし、農奴を大人で揃えるならかなり金が掛かる筈。
 それに、姉ちゃんが自分で決めたのなら俺がこれ以上口を挟む謂れはない。

「分かった。姉ちゃんがいいならいいよ。でも、何か贈り物くらいさせてくれ。テーブルとかどう? 椅子も込みで食卓一式だ」

 柘植つげトチとかの奴は高級品だし、一枚板ならかなり値が張るが一生ものだ。
 トレント材を奮発したっていい。

「ごめん。それ、ゲンダイル団長が贈ってくれることになってるの。何でも大昔に退治されたトレントから採ったっていう一枚板の奴」

 そうか。

「じゃあ箪笥でも買ってやろうか?」

 桐箪笥な。
 結婚にあたって嫁入り道具の定番だろう。
 オースでも箪笥を持たせる事はある。
 入れる服なんか殆ど無いだろうが、そんなものこれから増やせばいい。

「ああごめん。それはビットワーズ副団長から貰うことになってるの」

 ……。

「なら、食器棚は? 家を新築するなら必要だろ?」

 うん。
 我ながら良いチョイスだ。

「食器棚はケンドゥス隊長がくれるの」

 …………。

「それなら、鏡台は? 結婚したら姉ちゃんだって化粧くらいするだろうしさ」

 オースでは透明度の高い平らなガラスは作れないし、銀の蒸着なんか絶対に無理だ。
 でも俺なら現代日本のような精度の高い平らなガラスを作ることは可能だ。
 二枚作ってその間に水銀流し込んで額を嵌めれば行けるだろ。
 領地に落ち着いたらミヅチに贈ってやろうと思ってたんだけど、ま、練習だと思えばいいさ。

「一言余計なのよ、あんたは。でも、ごめんね。それ、第三中隊の皆が贈ってくれるって……」

 こっ……くそ。

「むむむ……服? 服は? 家長にふさわしい奴」

 ちゃんとしたものを仕立てたらそれなりに金が掛かるからナイスアイデアだ。
 旦那が仕立て屋らしいけど鎧下とかサーコートとか軍装品が中心らしいからパーティーなんかで着るような艶やかな服は苦手だろう。
 これは幾らあってもいいし、他の人と重なっても大丈夫だと思う。

「服ねぇ。なんでか知らないけど、ユールスフォル妃殿下がもう着ない奴沢山くれるって仰られるのよ。昨日、本部で結婚するって報告した時にたまたまそこにいらっしゃったんだけど。サイズ同じなのよね」

 王族の服とか……たとえ中古だとしても勝てそうにない。
 勝つってなんだよ。

「……何か欲しい物ないの? 何でもいいぜ」

 困り果てた俺がそう言うと姉ちゃんは「そんなに気を遣わなくたっていいわ。気持ちだけでいい」と笑って言った。

 それでもと詰め寄ると暫く顎に人差し指を当て、斜め上を見て考え込んでいたが、はっと気が付いたように俺を見た。

「剣。剣がいい。昔贈って貰った剣、流石にね……」

 少し寂しそうに笑うと剣を抜いて見せてくれた。

【ロングソード】
【鍛造特殊鋼】
【状態:良好】
【加工日:30/12/7438】
【価値:140541】
【耐久:464】
【性能:122-192】
【効果:無し】

 確か耐久値は四〇〇〇を超えていたはずだ。
 手入れを行う度に耐久の最大値は一づつ減っていくからこの十年、毎日のように手入れを欠かすことはなかったんだろう。
 丈夫な鋼材を使っているから耐久値自体は減りにくいので、この状態でもそこらの剣よりは大分マシだけど。
 耐久の最大値の減少とともに価値もかなり落ちている。
 そういえば兄貴は毎日鉄を作っているんだろうか?
 レシピは残してきたから俺より魔力が低いとは言えどもそれなりの量が……。
 よそう。

 鋼材なんか鉱石さえあればその気になりゃ幾らでも作れるんだ。

 ……アルノルトが居なきゃ無理か?

「良い鋼材もあるからフッグス剣商にでも注文しようか?」

「ううん。あんたが作った奴の方がいい」

 駄々こねるなよ。
 でも、鉱石から直接合金で取り出せると言っても俺に鍛えは無理だ。
 やったことないし。
 時間もないし。

 困った顔をしていると姉ちゃんはニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。
 あの顔……嫌な予感しかしねぇ。

「今持ってるそれでもいいわ」

 こここここれ?
 屠竜っすか!?

 思わず左腰に手をやってしまった。

 魔法の剣だけに、使い方は柄をしっかり握ればアホでも理解できる。
 姉ちゃんが使えば、いざという時に必ず助けになってくれることだろう。

 シャドウ・ドラゴンのロンガルザムリュゾルファレンと戦って生き残っているのは俺だけだから、十三層で入手した物は全てなんのしがらみも無く俺個人の物だ。
 煮て食おうが焼いて食おうが誰にも文句は言われない。
 勿論、姉ちゃんに贈ってしまってもいい。

 だけど……これは……こいつは……こいつだけは。
 俺にはエンゲラが遺してくれたような気がしているんだ。

 死ぬ直前、ドラゴンに咥えられて泣き笑いのような表情していた彼女。

 これだけは譲れない。

「あのさぁ……魔剣を寄越せなんて、ましてドラゴンを倒して得たものを取り上げようだなんて本気で言う訳無いでしょ」

 ……あんたなら言いかねないと思ったんだよ。

 結局、鋼材を用意して次回バークッドから隊商が来た時に預けることにした。
 当然、姉ちゃんの出征には間に合わないけど仕方ない。
 今の剣だってあと一年位は持つだろうし。
 鑑定が使える俺が居ないから品質は落ちるかも知れないけど、フッグス剣商の剣よりは良い物が出来るだろ。

 しかし、剣ねぇ。
 相変わらず色気のねぇ姉貴だわ。

 相手のマーティーさんもよくこんなのと結婚する気になったよな。

 その後、二人でラーメンを食いに行ったんだけど、姉ちゃんは何度か来てたみたい。
 慣れないながらもそれなりに箸は使えてたし、替え玉までしっかり注文してた。

 
本業の方も一段落付いたので今週から週二回更新に戻せると……今週末は花見の予定で詰まってるので今週末だけ無理かも知れません。
その時はごめんなさい。
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