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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第三部 領主時代 -青年期~成年期-

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第十九話 防衛者

7448年10月14日

 ガルへ村。
 ロンベルト王国の南に広がるダート平原西方にある開拓村の一つだ。

 現在この村には常にない大人数の軍隊が駐留している。
 目的はこのガルへ村を含む付近一帯の防衛である。

 防衛部隊の司令官に任ぜられているロンベルト王国第一騎士団、第一中隊長のヴィシュール・バルキサス士爵は篝火を前にして考えこんでいた。

 つい先日、王都から援軍である第二騎士団の第一大隊と第三大隊二〇〇〇人の戦闘員が揃って到着した。
 また、防衛軍の段列として天領南部に駐屯していた第四騎士団からも四個中隊分に当たる人数を引き抜いてガルへ村の北にあるミドーラ村に補給用の後方陣地を構築させている。
 ガルへ村とその東西にあるベージュ村、ラッド村に対する補給線を整え、場合によっては彼らを予備兵力として活用するための組織化がその狙いだ。

 その他の布陣としてはガルへ村を擁するリーグル伯爵領第二の都市、ウィードに駐屯していたザーム公爵領の郷士騎士団も二〇〇人全員を強制的に防衛軍の一部隊として組み入れて西方にあるラッド村の防衛部隊に追加している。

 今は予めガルへ村に駐屯していた第二騎士団の第五大隊に所属する第四中隊、通称二五四中隊の人員を中心に付近の村に対する連絡網の構築がやっと終わったところである。

 そして日付が変わったばかりの深夜、東隣にあるランセル伯爵領の開拓村、コミン村に対するデーバス軍の来襲が告げられたのだ。
 予めコミン村かその北東のカーダン村に対する陽動攻撃があろうことは想定されていたし、今月の初頭にデーバス軍から二〇〇程度の小部隊が先発しているという情報も入っていた。
 だからコミン村に対する攻撃それ自体に対しての驚きはない。

 士爵の迷いはコミン村への援軍を出すかどうかではない。
 援軍は出す。
 問題はその規模だ。

 今から援軍を手配してもコミン村の防衛戦には間に合わないかも知れない。
 コミン村の守備隊のみでデーバス軍に対して優勢に戦っている可能性もあるし、その後に遅れて到着するということもあるだろう。
 だが、万が一という事態も考えられる。
 援軍の到着がたとえコミン村の陥落後であってもその北に位置するワッカ村やカーダン村まで陥落してしまっては目も当てられない大惨事になってしまうからだ。
 その際にはこの援軍はコミン村ではなく、ワッカ村やカーダン村の防衛部隊への援軍となればいい。

 かと言ってこのガルへ村が侵攻目標であろう、総数で二〇〇〇以上と見込まれているデーバス軍を無視して大人数を割く訳には行かない。

 要するに援軍は送るがどの程度の大きさの援軍を送るか。
 それが彼の悩みなのであった。
 だが、徒に時を費やすのは事態をより悪化させるだけであることは彼もよく理解している。

「コミン村を防衛する二四三中隊は二〇〇程度の戦力だったか……」

 報告が正しいのであればコミン村に対して攻撃してきたデーバス軍の戦力もその程度であった。
 完全な撃退は難しいにしても、かなり長い間防衛戦闘を維持するには充分な数だ。

「バルキサス卿、これは陽動だと思います。おそらくは援軍を引き出し、こちらの本隊から戦力を削ぐのが目的です」

 第二騎士団の中隊長が意見を述べた。
 だが、そんなことは今までも予想されていたことであるので今更である。

 バルキサス士爵は奏上者を丁寧に無視すると口を開く。

「他にボンダイから別働隊が発したという情報は無いのだな?」

 士爵が装着しているバークッド産の黒い鎧の装甲が篝火を反射する。

「はっ、ありません」

 畏まって返答したのは士爵の直属である第一小隊の小隊長、ロンバルド公リチャード・ロンベルトであった。
 この春に新調したという黒天鱗と銘打たれた魔法の鎧に身を包んだ高貴な身分の男だ。
 将来的には彼の息子が王位を継ぐのではないかと噂されている。
 その際には摂政として国王を輔弼するであろう立場になる。

「……よし。二一五中隊と二三五中隊のうち、騎士のみは今すぐにコミン村防衛へ出発。また、道中でも各地を防衛する最上級者を除き、騎士は全員編成に組み入れる。明日中には到着させろ。指揮官は……ま、いいだろう」

 進み出てきたのは二一五中隊の中隊長である。

 こうしてガルへ村の防衛部隊から騎士が合計一六〇人ほどコミン村への援軍として出発した。
 彼らがコミン村へ到着するのは早くても明日の夕方だろう。
 それまで戦況が膠着しているのであれば彼らは状況を大きく動かす絶大な戦力になる。



・・・・・・・・・



7448年10月15日

 ガルへ村の南側の畑の外れ。
 一帯は急いで森が切り開かれ、簡易的な防御陣地が構築されている。
 この陣を迂回して村に攻撃を仕掛けたとしても、移動しやすい畑を荒らす覚悟で軍を飛ばせばその横腹に痛撃を与えられる。
 従ってここを無視することは攻撃側の指揮官がどんなに愚かな人物でも有り得ない。

「バルキサス卿、遂に来たようですぞ」

 第二騎士団の第一大隊長がバルキサス士爵に進言してきた。

「うむ。総員、合戦用~意ッ!」

 大声で戦闘準備の命を下すと士爵は自らの軍馬に騎乗した。
 他に騎乗しているのは各部隊の指揮官のみで、たとえ騎士だろうと直接の戦闘要員は下馬している。
 森の中では突撃のスペースがないことが多いので軍馬は戦闘の邪魔になるのである。
 指揮官のみは配下に指示を行う必要が有ることと、戦況の把握のために邪魔でも騎乗せざるを得ないのだ。

 暫くすると士爵の高い視点は敵軍の姿を捉えた。

 樹の幹の間に進軍してきた敵兵の姿が見え隠れする。
 彼我の距離は六〇~七〇mも離れている。

「弓隊! 前へ! 三射で後方へ!」

 陣の前方に弓隊が移動し、各小隊の指揮官がそれぞれの部下に目標を指示する声が響く。
 何本か命中したようだが森の中では弓の効力は大きく削がれる。
 本来は開けた場所で面制圧を目的として使う兵種である。
 普通は斜め上に射撃し、山なりの放物弾道を描いて敵の頭上から落ちて来るように撃つのだ。
 そもそも、直射射撃ポイント・ブランクで狙える距離は腕の良い射手であってもいいとこ三〇m程度である。

 バルキサス士爵がそれを知悉していながらも敢えて弓による射撃を行わせたのは敵への心理的な圧迫と地理的な要因から使いにくい弓隊を最初に使うことでこちらの総数や能力を相手に見誤らせることを目的にしていた。

 要するに「効力の低い弓を使うなんて、それだけ人数に余裕があるのか?」とか「相手の指揮官はアホだ」と思わせることが出来ればいいという程度である。

 確かに矢を射られたデーバス軍は慌てて盾を構えたりして、その進軍速度は鈍った。
 森の中で矢を射掛けられるとは予想していなかったのだ。

 勿論、すぐにデーバス軍も殆ど効果がないことに気付く。
 怪我を負わせられた数も数えるほどである。

 だが、一時的に進軍速度が鈍り小さな混乱を引き起こしたことは確かで、その間に出来た余裕を利用して弓隊は何一つ被害を受けることなく後方へと退くことに成功した。

 そうしているうちに彼我の距離は二〇mを切った。
 もう互いの顔が見える距離だ。

 デーバス軍の前衛はセオリー通り盾と剣を装備した歩兵で固めており、その隙間から後列の槍兵が槍を突き出すか、長さを利用して上方から殴りつけるように振り下ろすスタイルである。
 防御側のロンベルト軍は木材で作った簡易バリケードの隙間から槍を突き出す。

 怒号が乱れ飛び、悲鳴が交錯する。

 そして数分後。

 デーバス軍は後退を開始した。

 最初の戦闘は激しかったがロンベルト軍の陣前に取り残された雑兵の死体の数は二〇にも満たない。
 まずは小手調べであり、一当りして様子見をしただけだ。

「両翼に注意の伝令を」

 バルキサス士爵は陣の左右で指揮を執っている部下に対して注意喚起の伝令を発する。
 彼には二〇〇〇人の軍隊とは思えない程相手の人数が少なく感じられたのだ。

「相手の指揮官は猪武者のデンビルらしいからな。ひたすら守って守って守り抜け。そのうちに痺れを切らして突撃してくる筈だ。勝負はそれからだ」

 しかし、この日はもう一度同様の攻撃が行われたのみで双方とも大きな被害もなく日が暮れていった。



・・・・・・・・・



 さて、同時刻。
 ここは戦場となったガルへ村から東に数十kmにあるコミン村だ。

 村の北側の柵で起こった大きな爆発は特大のファイアーボールの魔術によるものであると思われた。
 信じられないことに簡易的な柵とはいえ、たったの一撃で柵の一部が崩れてしまったのだ。

 守備隊である二四三中隊の中隊長、ベグローズ准爵は一瞬だけだが確かに唖然として壊れてしまった柵の一部を見つめた。

 幸運なことにファイアーボールが着弾した周囲には誰もいなかった。

 准爵はハッとして被害を確認させる。
 柵の修理自体は可能なようであるが、それにはそこそこに時間が掛かりそうであった。

 苦虫を噛み潰した表情をしながら伝令を出そうとしたところで、再び腰を抜かさんばかりに驚愕する。
 もう一発、壊された柵から少し離れた場所にも同様のファイアーボールが着弾し、爆発したのだ。

 第二騎士団にも普通のファイアーボールを放てる程度の魔術師は何人かいる。
 だが、連発なんてとても無理だし、一撃の威力もあれとは比較にならないほど低い。
 人に直撃すれば殺せる程度である。
 柵は普通のファイアーボール程度なら直撃しても耐えられる程度には頑丈に作っていた筈である。

 だがあれはそんなものより余程高威力であり、直撃せずとも近くで爆発しただけでも充分に人を殺せるだろう。

 直後、我に返った准爵は矢継ぎ早に命令を下す。

 まずは伝令だ。
 威力を増大したファイアーボールを二連発で放つことが出来るほどの魔術師がデーバス軍にいること。
 そして、あれだけの威力を持つ攻撃魔術が柵の内側に向けて放たれた場合、大きな被害は免れないであろうこと。

 要するに至急援軍を請うという伝令を出さねばならない。

 しかし、同時にこうも思う。

 あれだけの威力増加であれば相当な魔力を注ぎ込んでいる筈で、それを二連発。
 で、あればいかに相手の魔術師が優れていようとあと数時間は休息が必要だろう。

 今のうちに柵を修理させるか、多少の被害を覚悟したうえでいっその事突撃をするか。

 だが、万一突撃を敢行しても魔術師を討ち取ることが叶わなかった場合、大きな被害を受けているであろう自軍の人数で村を守り切れるかどうか……。

 結局、部下に命じて柵の修理を優先させることにした。
 被害が出るにしても守勢に徹していればいずれ援軍もやって来る。

 そう言えば先日走らせた伝令ロブの方はどうなったのか?

 相手もこちらと同程度の人数なのだから、どこかで遊んでいる中隊くらいは引っ張ってきてくれるはずだ……。

「おい、ゲールとゼドは?」

 資材を担いで通りかかった部下に尋ねる准爵。
 ゲールとゼドの二人は敵の魔術師を専門に狙う弩射手クロスボウ・スナイパーである。
 有効射程は八〇m。
 一般的なファイアーボールの射程は八〇m程度なので、相手方に存在を気取られなければその射程ギリギリから狙うことも可能だ。
 今日までの防衛戦闘ではクロスボウの所持を見せたくなかったので使用していなかった。

「はっ、すぐに呼んで参ります!」

 部下が駆け出していく。

 その後姿を見ながら准爵はまだ相手の魔術師の姿すら確認していないことを思い出す。
 まずはもう一発か二発、また魔法を使わせて魔術師を特定する必要がある。

 柵の外を注視し続けなくてはならないので、次回は犠牲者が出てしまうかも知れないが、これはどうしても必要なことだ。

 程なくして准爵の下に二人のスナイパーがやってきた。
 准爵は魔術師の視認のため、二人には適当な家の屋根に上ることを命じた。

 そして、それを命じながらも暗い気持ちになっていくのを自覚した。

――あれだけ威力を増大させられるのであれば射程だって延長可能だろう……。すまんな、ゲール、ゼド。だが、遠くから撃ってくれるのであれば気が付きさえすれば充分に躱せるはず……。



・・・・・・・・・



「うひょ~、凄ぇ!」

 レーンが発射したファイアーボールが柵に命中して大爆発を起こしたところを見たミュールは思わず喝采を上げる。

『うーむ、確かに凄い威力だな……レーン、今のはファイアーボールなんだろ?』

 彼女の隣に立つツェットも感心して尋ねた。

『ええ、そうよ。柵を壊さなきゃならないから威力は増したけどね』

 少しだけ疲労を滲ませた表情で答えるレーン。
 彼女が普段使うことのない威力であった為か、精神集中の開始から発射までに二分近くもの時間を必要とする以外は非の打ち所がない。

 周囲ではレーンの護衛を買って出たヘックスと彼の戦闘奴隷、ジャック(ヘックスの前世の兄、アーニク・ストライフが変身した姿)が盾を構えながら警戒を続けている。
 スナイパーからの視認を警戒してもっと近距離に小部隊を幾つか配置してあるが、用心に越したことはないからだ。

 レーンが放ったファイアーボールは、通常の三倍程に射程を延長し、威力まで五倍程にしているという。

『なぁ、レーン。今のよりも凄いの撃てるって本当かよ? 昔見せて貰った時ぁ、あんなレベルじゃなかったと思うけど』

 興味津々といった表情でミュールが尋ねる。

『ええ。普段は今の倍くらいの威力にしてるわ。それに、あの頃はファイアーボールにはそんなに慣れてなかったから……』

 風に吹かれた髪を掻き上げならレーンが答える。
 少し長目の黒髪は艷やかなストレートだ。

『たはーっ! おい聞いたかツェット!』
『ああ……流石は宮廷魔道士コート・ウィザードだな』 

 ミュールとツェットは感心した声を上げる。

『それはそうと、あの威力をあとどのくらい撃てる? 騎兵の突入口はダミーも必要だからあと五ヶ所は欲しいんだが』

 ツェットの問いにレーンは肩を竦めて『五発くらいなら大丈夫よ。でも、全部ここからでいいの?』と平然としていた。

『よし、次は東側に行こう』

 ツェットが宣言すると彼らは周囲に居る部隊に声を掛けて移動を開始した。

 その時。

「あっ!?」

 村の北門が少しだけ開くと二騎の騎馬が東西に向かってバラバラに駆け出した。

「伝令だっ!」

「潰せっ!」

 口々に怒号が響き、周囲では兵士が弓を構え始める。

「レーン! 頼む!」

 ツェットの声が響く。

「くっ、邪魔よ! そこどいてっ!」

 レーンがファイアーアーバレストミサイルで仕留められた伝令は一人だけであった。

『まずいな』
『援軍の要請だろう。あとはレーンの報告か……』
『どうする?』
『援軍の到着までにあそこを落とせば問題ない』
『ま、そらそうだ』
『急ぐぞ』



・・・・・・・・・



7448年10月16日

 深夜。
 ガルへ村に駐屯するロンベルト軍の本陣に伝令が到着した。
 伝令が伝えてきたのはコミン村の戦況である。

「何だと!?」

 報告を受けたバルキサス士爵は声を荒げてしまった。
 戦闘二日目の今日も大きな被害も受けずに首尾よくデーバス軍を撃退できたガルへ村の戦線と異なり、コミン村の戦況は思わしくない。

 コミン村を守備する二四三中隊の人数は二〇〇人程度。
 襲撃を掛けてきたデーバス王国軍の部隊とあまり変わらない人数である。
 陣地を構築しての防衛戦であれば同程度の人数が負けることは、まずありえない。

 本気で攻め落とすのであれば攻撃側は防御側の三倍くらいの人数でないと、たとえ攻め落とせたとしてもその後の維持が難しいし、襲撃に当たっては当然犠牲者や怪我人も多く発生する。
 治癒魔術の使い手自体はそれなりにいるが、一度や二度の治癒魔術では刀傷や矢傷が完治することはない。
 それに、魔術師の魔力にも限界がある上、魔法への精神集中を行っていると精神的な疲労も溜まる。

 しかし現実としてコミン村の戦線は膠着状態から急速に苦戦へと転がり落ちている。
 その原因はコミン村への侵攻部隊の中にかなり腕の立つ魔術師が含まれていることであった。

 第一騎士団の別の部隊には黒の魔女の異名を取る程に非常に優れた魔術師が居るが、コミン村が襲撃されるに当たってデーバス王国軍が使用した魔術の報告を聞くに、その黒の魔女が過去に見せた威力に匹敵する程のファイアーボールなど相当高度な攻撃魔術が使われたとの事であった。
 また、十秒とかからずに土塁を築くなど、攻撃魔術だけでなく、成形の魔術に対しても非常に高度な技術を有することも報告されている。

 まさに宮廷魔術師クラスとでも言えるほどの高度な技、多くの魔力を有していることの証左である。

 それらが本当であればコミン村に駐屯している二四三中隊の戦力だけでの防衛戦が不利な状況であるのは当たり前だ。
 それどころか場合によってはコミン村が陥落してしまってもおかしくはない。

――ううむ、デーバスめ……。それ程に強力な魔術師を隠していたか。囮の方にそれだけの大駒を配する余裕があるとはな。糞。

 バルキサス士爵は迷う。

 コミン村の方は本当に囮なのだろうか?
 伝令の報告にはコミン村の方こそ本隊の可能性もあるという言葉もあった。
 しかしながら、どれだけの大魔導師だろうとたった一本の流れ矢で戦闘不能に陥るし、魔術への精神集中の最中は無防備に近い。

 いかな宮廷魔術師クラスの魔法使いとは言え、集中力だけは永遠に続かない。

 魔力が多かろうと少なかろうと、魔法を発現させる為の精神集中に掛かる精神的なエネルギー消費は確実に、誰であろうと等しく気力を削いで行く。

 大人数を擁する軍隊同士の戦闘ではそういった魔術師を専門に狙うクロスボウ・スナイパーも付帯している事が多い。
 当然、二四三中隊にだってそういう訓練を受けている射手の二人や三人程度はいる。
 七〇~八〇mくらいまで接近する必要があるが、熟練のクロスボウ・スナイパーが落ち着いて狙うのならばそのくらいの距離でも狙った相手に中てることは可能だ。
 金属鎧プレートメールでも着ていない限り、急所に当たれば一発死亡すらあり得る。
 そうでなくとも命中しさえすれば傷が癒えるまでの間、かなりの時間に亘って戦線から離脱させられる。

 そんなことで貴重な大駒を失う訳にはいかないので、普通は大戦争でもなければそこまで強力な魔法使いが前線に出てくることはない。
 ロンベルトの黒の魔女は騎士団に所属する正騎士なので例外中の例外と言える。
 実際、彼女に気取らせない形でその同僚達には「王族だと思ってその身を挺しても護れ」と厳命されている。
 彼女が生きている間はどんな相手が攻めて来ても必ず撃退可能なほどの強大な力を持っていると評価されているためだ。

――ひょっとして、コミン村の方が本命か? まさかな。有り得ない。デーバス国内で知られていなかったミルーみたいな奴がたまたま参戦していたという方がまだ納得が行く……。

 バルキサス士爵は床几に腰掛けたまま腕を組み目を瞑る。
 彼の前には荒い息を続ける伝令の騎士が膝を突いたままだ。
 また、部下である第一騎士団の精鋭達や第二騎士団の主要なメンバーも揃っている。

――今日の夕方には先発した援軍がコミン村に到着しているはず。……彼らが頑張ってくれていれば、あるいは……いや、願望にすぎん。それに、ちまちまと増援を送っても……糞。仕方ないな。

 士爵はすっと目を開き決定を口にした。

「防衛部隊を半分に分ける。これを指揮するのは私だ。ロンベルト卿、貴様はここで残る本隊の指揮を執り、一両日中にあるだろうデーバスの攻撃に対処しろ。私の方はミドーラ村に居る第四騎士団も糾合してワッカ村の守備に急行する」

 士爵の言葉を聞いた部下たちはあまりに意外な内容のため絶句した。
 コミン村が陥落することが前提となっていたからだ。

「惚けるな、貴様ら! すぐに準備に掛かれ!」

 士爵が怒鳴り声を上げ、部下たちは弾かれたように動き出す。
 半分は士爵に付いてすぐに移動を開始しなければならないのだ。

「ロンベルト卿」

「は……」

 一人士爵に声を掛けられたロンバルド公リチャード・ロンベルトは気落ちした声で答える。

「ガルへ村についてはこのまま推移すれば、こちらの数が半分になったとしても勝てるだろう。何しろ兵の練度が違ううえ、相手の指揮官はデンビル男爵らしいからな。だが、もしも……万が一、コミン村に出てきたような魔術師が戦線に投入されたことが確認されたら……」

「は……必ず死守致します」

 リチャードは決意を固めた表情で答える。

「違う。いや、違います。ここは殿下の部下に任せ、殿下ご本人は即座にロンベルティアに後退して下さい。……いや、これは命令だ。復唱しろ、ロンベルト卿」

「そんな……!?」

「復唱しろ!」

 バルキサス士爵は断固として強い口調で命じた。

 
 レーンの使ったファイアーボールですが、第一部三十九話に最小限の使用だと10MPと書いていますが、それだととてもファイアーボールとは呼べません。爆竹に毛が生えたようなものです。

 第二部の魔法設定のところにある23MP(無魔法は圧縮と持続にそれぞれ5MP使う感じでです)が最低だとお考え下さい。
 但し、威力については23MP中の8MPが弾頭部ですので、ここが5倍になります。従って55MPで威力五倍のファイアーボールを撃つことは出来ますが、射程はそのままの80mです。ここを三倍にしていますから、レーンの撃ったファイアーボールは弾頭部分5倍で40、射程三倍で45MPの合計85MPを使った勘定です。

 レーンの申告した威力と射程が正しいのならばですが。
+注意+
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