挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第三部 領主時代 -青年期~成年期-

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

408/518

第十七話 美味なるもの

7448年9月23日

 ロンベルティア城にある豪華な内装の一室。
 この部屋にいるのは宰相として中務なかつかさ尚書を務めるバスボーン公爵、内務尚書として天領の行政を取り仕切るザーム伯爵、城軍尚書として軍隊や警察機構を管理するベストール伯爵、そして将軍として王国四騎士団を率いる各団長達だ。

「では、やはり此度の侵攻の目標はリーグル伯爵領というのはほぼ確実か……」

 バスボーン公爵はそう言うと薄笑いを浮かべる。
 彼が仕える国王陛下はデーバス王国軍集結の報を耳にした晩、こう言ったのだ。

――今回の侵攻について確実に撃退し、我が国の力をあの小僧に見せつけろ。ぐうの音も出ない程完璧にな。あの野郎、生意気に商才はあるみたいだからそれなりに潤うはずだ。安全保障費の割合を高めたいんだよ――

 宰相として優秀なバスボーン公爵は国王の言わんとするところを正確に理解した。
 確実に撃退は当たり前なのでいい。ただ、国力を見せつけてぐうの音も出ない程完璧に防ぐということは、過剰な兵力を出すのではなく、当たり前の兵力できっちりと防衛可能であることを証明しろ、ということである。

 多くの兵力を出せば勝てるのは道理だが、それは単に大兵力を揃えられるというだけの、力の誇示にしかならない。国力が高い証明にはなるが、逆に言うと彼我の兵力差を見積もる事も出来ない、相手の兵力の見積もりや偵察力を含めた情報収集能力の疑いにも繋がりかねないし、多くの兵を出す分費用も嵩む。

 とは言え、今回は奮発して完全な即応大隊を二個も出している。過剰とまでは言えないが、彼我の兵の練度の差や士気の多寡を考えると充分以上の戦力と言ってもいい。

「は……。また、つい今しがた到着した伝令もデーバス王国の部隊は未だ……今月十七日現在もボンダイの街で展開訓練を行っていると伝えております」

 ベストール伯爵が重々しい声音で口を開いた。

「デーバスの奴原も馬鹿ではありますまいから、もう侵攻部隊集結の報がここに届いていることは予想済みであると思われます。万が一、目的地欺瞞の意図があろうと、今更の変更では我が方の後手に回る可能性が高いと存じます。せいぜい、最南端のガルへ村の左右にあるラッド村、ベージュ村のどちらかでしょう」

 将軍である第四騎士団長のハリソン・ボーエン子爵もベストール伯爵の言に追随して発言した。

「それに、もうそろそろダート平原の中央部から東部にかけて陽動の為の散発的な攻撃、または部隊移動が確認されるでしょう。攻撃の方は規模としては二~三百人程度、恐らくは隣のランセル伯爵領の最南端にあるコミン村か、その北東のカーダン村だと思います。目的は最短距離に駐屯する当方の有力な守備隊の移動を封じるためです」

 こちらの発言は第三騎士団長であるミレイユ・イツーリン女爵だ。陰湿な感じの目つきが目立つ中年の精人族エルフの将軍である。しかし、その目つきとは裏腹に明朗快活、公明正大が売りの女傑として名を馳せている。

「私は戦術には明るくない。みなも同じ考えなのだな?」

 バスボーン公爵が会議の参加者を見回して言う。
 会議の議題はここ数日に亘って何度も話し合われ、検証されてきたデーバス王国による侵攻の動きとその対策についてだ。
 勿論、防衛部隊として第一騎士団の一部と第二騎士団の即応二個大隊は一週間以上前に進発させているし、第四騎士団から抽出した後方部隊についても三日前に進発させている。事前に与えた命令が妥当であるか、見落としがないか、もしあれば前線指揮官として今回の防衛戦の全権を委任している第一騎士団の第一中隊長であるヴィシュール・バルキサス士爵に対してそれらの情報について後追いでも伝えねばならないからだ。

 会議の参加者たち全員が頷くのを確認してバスボーン公爵は閉会を宣言した。



・・・・・・・・・



7448年9月24日

 翌日の昼、会議は再び招集された。
 参加者の中には仕事を中断させられた者や、さぁ今から昼食を、と言う者も多く、苛ついた空気が立ち込めている。

「何事か?」

 一番最後に現れたバスボーン公爵が招集者であるベストール伯爵に言う。

「は……その、先ほどまた伝令が到着致しまして……」

 ベストール伯爵の言を聞いて、文官を中心に苛ついていた空気はたちまち霧散した。
 大きな動きがあったのであれば日々の仕事などは後回しだ。

「デーバスの指揮官の名が判明致しました。デーバス最精鋭と言われる白鳳騎士団、そこの第二副団長を務めるヒューグリム・デンビル男爵らしいです。また、展開訓練を行っている部隊の中には割合までは不明ですが白凰騎士団の存在も確認されました」

 騎士団長連中の中にはニヤリと笑みを浮かべる者も数人いる。
 ヒューグリム・デンビル男爵は過去に一度ロンベルト側の捕虜となり、高価な身代金を支払って解放されている。
 ロンベルト側の評価では戦術立案能力も低く、指揮能力もそう高くないと見られている。
 ただ、攻勢になると嵩にかかって無茶な追撃を行い、思わぬ大手柄を上げることもある。
 個人的な武勇は高く、魔法抜きの一騎打ちで捕えるのは非常に困難な相手だ。

 また、白凰騎士団であるが、ロンベルト側の評価としては第二騎士団と同等かそれ以上、第一騎士団にはとても及ばないと評されている。デーバスには珍しく、実力の伴った精鋭騎士団だが、やはり出身の家柄が大切にされているらしく実力が伴わない騎士もそこそこな量で混じっている。因みにデンビル男爵の実家は有力な侯爵家である。

 ベストール伯爵はそれらの情報を簡単に説明した。

「その程度の事でまた全員に招集を掛けたのかね?」

 少しだけ苛ついたように言うバスボーン公爵。
 このところ数日おきに招集される会議だったが、昨日で確認する事項はほぼ全て確認が終わり、当初の戦術案で問題無いだろうとの結論を得た筈である。その中には侵攻部隊が白鳳騎士団であると想定したものも多かった。
 余程大きな動きが確認されたのであればいざ知らず、今回の情報は相手の指揮官が判明したというだけだ。
 まして、その指揮官は過去に我が方に大敗を喫し、捕えられて虜囚となった程度の男である。

 バスボーン公爵は忙しい。
 この会議に参加している者で暇なのは目の前に居るベストール伯爵くらいのものである。

「は……その、伝令が到着した折にゲンダイル子爵が傍で聞いておりまして……子爵がどうしても招集しろと……」

 ハンカチで汗を拭きながらベストール伯爵が答える。
 それを聞いた全員の視線が第一騎士団長のタクラード・ゲンダイル子爵に集中した。

「ゲンダイル卿、どういうことかね?」

 溜息を吐くと同時に喋るという特技を見せながらバスボーン公爵がゲンダイル子爵に発言を促す。

「は。今回の件、私はもう少し慎重に考えたいです。確かに今年初頭の戦場はコミン村でしたし、その際には首尾よく撃退出来ました。いつもの通りであればまた同じ場所に攻めて来る事は考えづらいです。コミン村の農地の立て直しも終了しておりませんし、占拠してもこちらに与えるダメージは少ないですからな。従って勿論、先方の第一目標はガルへ村かその周辺であることは疑いの余地はないのですが……」

 ゲンダイル子爵は奥歯に物が挟まったような言い方で喋り始める。

「しかし、デンビルが指揮官と聞いては……どうにも臭い」

 そして、難しい顔をして腕を組む。

「ゲンダイル卿は余程ご心配なようね。私もバスボーン閣下同様に貴卿ら程に戦術には明るくはありませんが、これでも十代の頃に第三騎士団で騎士に叙されております。今回は相手の規模もいつもと変わらないようですし、幾ら白鳳騎士団であるとは言ってもこちらの想定に反して戦力を割ることもありますまい。まして、相手の指揮官は以前捕らえたこともあるデンビルなのでしょう? 貴卿らも先ほど猪武者だとお笑いだったではありませんか」

 内務尚書のザーム伯爵が口を開いた。
 五十代の少し太めのおばさんである。なお、彼女の兄はザーム公爵として天領の東に広大な領地を構えている。
 リーグル伯爵領以東に並ぶ三つの伯爵領は天領であるために天領全般の上流の行政を取り仕切る者として会議に参加している。
 今日まで碌に口を挟まなかったのは、自分が騎士としては然程優秀ではなかった事を知悉していたからだ。
 だが、会議が始まって以来、ゲンダイル子爵の態度が煮え切らず、長引きそうな雰囲気であることに苛ついていた。

「まぁまぁ、閣下もそう嫌味をおっしゃいますな。私もゲンダイル卿は些か心配症だとは思いますがね。ですが、卿がご心配なことについては私も解ります。デンビルが指揮官と聞いて私も少し不思議な気持ちですし」

 つい先日、第二騎士団長を拝任したばかりのドゥーガルド・ヴァルモルト准男爵が言う。

「うむ。単にデンビルに先年の雪辱を晴らさせてやるつもりなのかも知れんが……どうも引っ掛かる。奴個人が強いのは認める。だが、所詮は個人の武勇と貴族位であそこまで昇進したに過ぎん。指揮官として無能なのはデーバスも解っている筈だ」

 発言するゲンダイル子爵の顔を全員が「それで?」と言うように見つめる。

「……だとしたら……だとしたら、せめてもう少し多い兵力を与えるのが道理だと思うのだが……」

 呟くように言ったゲンダイル子爵の言葉に頷く者は少なかった。
 だがそれは否定の意味ではない。別の可能性について考え始めているだけだ。
 この会議に参加している者に無能はいない。

「すると、ボンダイに駐留しているデンビルが指揮する部隊は囮で、他にも侵攻部隊がいる可能性があると……?」

 少し心配げな顔つきでバスボーン公爵が言う。

「しかし……ラコルーシやカズランの街に駐屯する兵力に変化は見られないそうじゃないか」
「まだ見つかっていないだけかも」
「馬鹿な。見つからない程度の兵力なぞ、それこそ国境駐屯部隊で充分だ。相手にすらならん」
「確かに……」
「デンビルが指揮官だというのが誤報の可能性は?」
「それは考えられるが、誤報を疑いだしたら切りがないぞ?」

 バスボーン公爵としては軽々しく増援の決定は出来ない。
 予定外の費用も掛かるし、王都の治安についての綻びも大きくなるからだ。
 それ以前に国王からの命令もある。
 命令自体は簡単に言うと「適正な兵力で蹴散らせ」というものだから、至極尤もな内容だ。
 無理や無茶を要求されている訳でもない。

 結局、この日は二度手間になる可能性を承知しつつ指揮官であるバルキサス卿に対して「デンビルが指揮官だそうだけど努々油断することのなきよう」という、曖昧な内容で伝令を発しただけに終わった。伝令がバルキサス卿の下に到着するのは約一週間後、彼がガルへ村に到着するのと前後する程度だろう。



・・・・・・・・・



「ここです」

 ベストール伯爵が言う。
 王城から徒歩十分程度のグルド通りにある飯屋。
 会議のメンバーは奢ると言う伯爵の言葉に、せっかくなので全員で昼食を摂りに来たのだ。

 飯屋には真新しい看板が掛かっており「メン屋・グリード」と読める。
 店の奥では先日まで王城の門の脇に飾られていた巨大なドラゴンの頭部が剥製となってそこそこに広い店内を睥睨していた。

 かなり人気のある店のようで、広そうな店内の割には客が店の外にまで列をなしている。
 客の服装はまちまちで上等な服を着込んでいる大商人か貴族のような者もいれば、粗末な服に身を包み、大事そうに硬貨を握りしめたどこかで働く奴隷のような者もいた。

「ちょっと! なに? この匂い?」

 顔を顰めながらイツーリン女爵が言う。
 確かに店からはえも言われないような、独特の強烈な匂いが漂い出しており、道行く人の中には女爵と同様に露骨に鼻を摘んでさっさと通り過ぎようとする者も多い。

「臭いな」
「そうか? 私にはいい匂いに思えるな」
「本当ですか? 私もこの匂いは苦手ですな」

 口々に言う連れを宥めてベストール伯爵は列の後ろについた。

「ははは。最初はそう思うのも無理はありません。しかし、騙されたと思って食べてご覧なさい。私はこのところ毎日ここで食べていますよ」

 ベストール伯爵は少し太り気味の腹を揺すって言う。

「……それはいいが……並ぶのか? 儂が?」

 すぐに食べられそうにないのが不満気なバスボーン公爵。
 宰相であり、公爵であるからには無理も無い。

「うむ。閣下といえど並ぶのがこの店のルールです」

 重々しく答えるべストール伯爵。

「メン屋? なに?」
「グリード? リーグル伯爵と関係があるのか?」
「さぁ?」

「うむ。よくぞ気が付いたな。この店はリーグル伯爵が経営している。例のドラゴンも店の奥に飾られているぞ」

「ほう?」
「へぇ」
「む……ならばバルドゥッキーもあるのか?」

「売り切れていなければありますよ。まだ残っているかは……今日は遅いので無理かも知れませんが」

 とかなんとか会話をしているうちに順番が来た。

『ヘラッシェー!!』
『ヘラッシェー!!』
『ヘラッシェー!!』

 店員と思しき子供の奴隷が揃って威勢よく意味の分からない声を張り上げて出迎えた。

「ヘラ? 何だ?」
「さぁ?」

「この店では客が来ると必ずそう言うんだ。意味は解らん。客が来た、という隠語だろうな」

「ベストール閣下。さっきから解説して貰って申し訳ありませんが、この店、大丈夫なのでしょうな? 公爵閣下のお口に合うような物なので……」

「うむ、心配はいらんぞボーエン卿。バルドゥッキー同様、きっとお気に召すだろう」

 案内されたテーブルに腰掛け、「ラーメン七つ」と慣れた様子で注文するベストール伯爵。
 残念ながら今日の分のバルドゥッキーは売り切れなようであった。

「これはなんだ? うっ」

 テーブルの中央に並んだ小さな壺の一つを開けたゲンダイル子爵は顔を顰める。
 中には擦り下ろしたニンニクがたっぷりと詰まっていた。

「こっちは胡椒みたいね?」

 別の小さな壺を開けて中を確認したザーム伯爵も言う。

「へぇ、じゃあこっちは何だ?」

 そう言いながら中身を見て不思議そうな顔をするヴァルモルト准男爵。

「それは生姜の漬物だ。今から来るラーメンを途中まで食べたら少しだけ入れてみるといい」

 そう言いながら店員から釣り銭の銅貨を受け取るべストール伯爵だが、財布に戻さずにテーブルの真中に積んでいる。

「それは?」

 不思議そうに尋ねられても伯爵はニヤリと笑うだけで何も答えない。

「しかし、酷い匂いね。目が回りそうだわ……」

 少し涙目になったイツーリン女爵がハンカチを取り出して鼻を覆う。

「まぁまぁ。卿もすぐに慣れる」

「だといいのですけど……」
「あら? 私はもう慣れたわ。言われてみれば食欲をそそる香りよね」
「ザーム閣下……」

「む? これはチョップスティック……? 王家にのみ伝わると聞いていたが……。な!? あんな下郎までがチョップスティックを使っているだと!?」

 不器用に箸を使って、細長い妙な料理を口に運ぶ汚い身なりのドワーフを見てバスボーン公爵が驚く。

「お望みでしたらフォークもあります。ですが、私はもうチョップスティックに慣れました。皆さんも是非お使いになられては?」

 調味料らしき壺と一緒にテーブルに並ぶ箱には細長い木の棒が何十本も立っている。
 そこから二本取り、べストール伯爵は片手で器用に開いたり閉じたりして見せる。
 自慢気な顔つきが全員の神経を逆なでした。

「お待ちどう様です。ラーメン七つ、お持ちしました」

 年の頃十二、三の娘がお盆に七つの丼を乗せて持ってきた。

「食べ方のご説明は……ああ、いつもありがとうございます」

 すっかり常連になっているべストール伯爵の顔を認めて店員は挨拶する。
 伯爵も説明は自分がするから必要ないと断った。

 全員が目の前に置かれた底の深い器の中を覗く。

 白濁し、表面に少し油のようなものが浮いたスープ。
 茹で卵らしきものも乗っているが少し茶色っぽい色が着いている。
 生の玉ねぎのみじん切りと豚肉の煮込みを薄く切ったようなものも一切れ。
 それと得体の知れない黒っぽい縮れたような細長いものも乗っていた。

 丼には馬鹿でかいスプーンも一つ入れてあった。

「まずはスープを一口飲んで見てください」

 べストール伯爵はそう言うと丼に入っていたスプーンで湯気が立つほど熱そうなスープを掬い、口をつけた。

 他の全員も見よう見まねで同じようにスープを口に含む。

「ほ!」
「これは……!」
「旨い!」
「むぅ……」
「熱っ!」

「あとはお好きなように」

 そう言うとべストール伯爵は箸を丼に突っ込み、細長い料理を引っ掛けて口に運び始める。

「ぶほっ! 熱くて咳が出るな」
「げへっ! でも美味しいな、これ!」
「これ、ケンルッジ(キクラゲ)じゃない?」
「まさか、そんな高級な輸入食材……この歯応え……け、けんるっじ……この量で一〇〇〇Z近く取るだけはあるわね……」
「おい、この卵、味が付いてるぞ!」
「え? む。本当だ。旨い!」
「食いにくいな、おい、フォークをくれ!」
「こっちもだ」
「この豚肉、柔らかく煮込んであって旨いな。味もいい」
「なぜだ!? するすると食える。止まらん」

 皆の様子を確認したべストール伯爵はテーブルの壺からニンニクを一匙、次いで刻んだ生姜も一摘み自分の丼に入れた。
 それを見て全員が真似をする。

「おおっ!?」
「これは……私はこっちのが好みだな!」
「味が変わるのがいいわね」
「ええ、飽きが来ないわ」
「そなたら、黙って食え、うるさいぞ」

「ああ、スープはまだ全部飲んではいけませぬぞ」

 暫くしてほぼ全員が食べ終わる。
 べストール伯爵はおもむろにテーブルに積んだままの銅貨を一枚手に取ると店員に向かって手を上げた。

「カエダマ!」

「カエダマ一丁入りましたぁっ!」

 打てば響くような店員の声。

「なんだ? カエダマ?」

 質問するバスボーン公爵に意味ありげなほほ笑みを返すべストール伯爵。

「ふふふ。まだこの店の客の間でもあまり知られていないのですがね。皆さんもまだ食べられるでしょう?」

「そりゃあ、あれだけだとな」
「うむ、少し少ないと思っていた」
「私も」
「女だてらにまだ食べたいとは言えなかったわ」

「へい、カエダマお待ちっ!」

 店員は皿に乗っけた新しい細長い料理を持ってきた。
 受け取ったべストール伯爵はそれを自分の丼に入れた。

 奪うようにテーブルの銅貨に手を伸ばし、声が唱和する。

「「カエダマ!」」

 
遂に決算時期に突入して、例年通りスケジュール的に辛くなってまいりました。
無理をしてもしょうがないので3月いっぱいまで更新については週一になるかと思います。
なお、4月以降はまた元通りのペースで行けるかと思います。
勿論、可能な時には週二更新も行うつもりですが期待はしないで下さい。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ