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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第一部 幼少期~少年時代

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第二話 転生

設定厨乙の巻。

2013年9月16日改稿
(く、苦しい……)

「!”#$%&’(」

「|~=)(’&%$」

息苦しく、体も締め付けられるようだ。
なにが起こったのだろう?
ああ、そうだ、列車事故で俺、死んだんだ。
いや、苦しさを感じるってことはまだ生きてるのか?
助かったのか!?

スッっと頭を締め付ける感じが緩んだ。
目は開かない。そして、相変わらず呼吸は出来ない。

「#%%&’%’(&)」

若い男の声だ。
なんだか遠くから聞こえる感じだ。
あの列車事故で巻き込まれた人だろうか?

体の締め付けがなくなった。
肩の辺りと顎に手を掛けられて頭のほうへ引っ張られる感じがした。
これは? 一体? 何かの治療なのか?

目は開かない。そして、相変わらず呼吸は出来ない。
苦しい。
と、俺の体は温かいお湯に包まれた。風呂か?

(く、苦し、い)
「げほっ、げぶぉっ」

むせるように呼吸が出来るようになった。何だ?血の味がする。

「げぼっ、げへっ」

口の中の血液だか液体だかなんだかを吐き出しつつ呼吸ができるようになってきた。

「>’#)&!”&##%?」

中年の女の声がする。姿は見えないので中年かどうかは定かではないが。

「$?%、’(#&’#&~#”?」

さっき聞こえた若い男の声だ。

(これは、まだ治療じゃないのか? 俺は血を吐いたのか?)

「>%、%$$、#”%!! #”$#$!!」

俺、一体どうなったんだよ?

「%$$”、’=&=、#%=~&!!」

まだ苦しい。トリアージの順番待ちなのだろうか?

(おい! 俺は助かったのか!? どこの病院ですか?)
「うげ! うぎゃ、うぎゃああ!? うぎゃああああ?」

(あれ? 喋れないぞ?)
「うごぁ? うびゃああ?」

「”+、*?}&!、¥^-・、*:(’、;=%」

この看護婦(?)、何言ってやがる。日本語喋れよ。

「#”$”#$、0-&。”#$#:、;*】&%! #$&”!」

(くそっ、なにがどうなってる?)
「うぎゃっ!うぎゃうぎゃあぁぁあ?」



・・・・・・・・・



 大怪我なんかしてなかった。ぶつけた筈の肩もまったく痛くない。
と、言うか、うまく喋れないわけもなんとなくわかった。俺は生まれたばかりの赤ん坊になっていた。目は開いたが乱視が酷いのだろうかよく物が見えづらいがなんとなくわかった。

 体中をまさぐってみたところ俺の手はぷくぷくとしたかわいらしい指がついており、腕もぷくぷくしていた。うまく体を動かすことはできないが、動きは阻害されていないし、痛みを感じることもなかった。手を目の前に持ってきて観察することは出来たが、うまく起き上がれない。寝返りを打つことも出来ない。

 どうも体に力がないようだ。手を見た感じ赤ん坊なので筋力がないのだろうか? 出来るだけ体を動かしてみようと努力したがうまく力を入れることが出来ず、ぐにぐにと動くだけな感じだ。

 と、誰か男が俺を覗き込み、喋りかけてきたようだ。やはり先ほど聞いた単語のとおり外人面っぽい感じがする。なんとか喋りかけようと努力してみたが、声帯をうまく動かせないようで「あぐぁ」とか「ほぐぁ」とかしか声が出せない。まずい、俺は障害持ちで生まれてしまったのだろうか?

「%-&、*;*;、%%=#。>”=^¥&%$:)#”&%」

 くそ、変な抱き方すんなよ。あんたの手の平が硬くて痛ぇんだよ。文句を言おうとしたが、この怒りの感情を制御できず、激情のまま叫んでしまう。

「うぎゃ、うぎゃあああああああ」

 ああ、畜生、痛いが我慢できないほどじゃないし、こっちは何とかコミュニケーションを取りたいだけなのに。



・・・・・・・・・



 多分三ケ月くらいかけていろいろ判ってきた。

1.おそらく俺は生まれ変わった。記憶を持ったまま。

2.生まれ変わった場所は外国。ヨーロッパか?
 英語を喋っていないことは確実だ。ドイツ語やフランス語でもないので、俺の知らない(詳しくない)国なのだろう。
 東ヨーロッパか北欧、またはスペインやポルトガルのようなヨーロッパの西端かもしれない。
 死んですぐに生まれ変わったと仮定するのであれば、時期と気候からいってもっと南の気がする。
 ひょっとするとメキシコあたりかもしれない。
 しかし、いくつかの名詞は共通していた。一体何語なのだろう?

3.家の中の調度品類から推測するに先進国でもないだろう。
 電化製品がひとつも見当たらない。
 ラジオすらないってのはいかがなものか?
 東ヨーロッパの旧ソ連から独立した発展途上の小国かも知れない。
 ちなみに家は木造で床は俺が見た範囲では板張り。畳や絨毯などはない。
 窓にガラスもなく、下開きの鎧戸のようなものをつっかえ棒で支えるだけだ。
 夜はつっかえ棒を外すと窓が閉まる。
 窓ガラスはないが食器にはガラスがあった。

4.一日は日が昇る少し前に起き朝食の準備を始める。
 日が沈む間に夕食の準備を始め、準備が終わり次第暗い家の中でランプを点けて夕食を摂り、就寝する。
 あ、昼食は取っているようだ。俺はまだ離乳食にもなっていないのでメニューはよく判らない。
 電気が無いという生活は非常にきついものがあるな。

5.家族構成は俺を除いて5人か6人。
 全員毎日見かけるが、人数がはっきりしないのは後述する。

・一人目は当然俺。赤ん坊だ。おっぱい吸って寝て、うんこしっこして寝てなので正確なところはわからないが生後3ヶ月。ちなみにおっぱいはまずい。薄い牛乳みたいだ。

・二人目は多分父親。金髪で髭面のおっさんだ。尤も、死ぬ前の俺よりはだいぶ若いだろう。三十代半ばではないだろうか? 青い瞳をしている。

・三人目は多分母親。二十代後半から三十代前半か? 父親と違って結構美人だ。あと美乳。母親も金髪だ。明るい緑の瞳。

・四人目は多分俺の姉。十代後半から二十歳くらいか? 美人とは言いがたいが愛嬌は有るかもしれない。母親らしき人と共によく俺の面倒を見てくれる。姉とは言ったがおそらく年齢から言って姉ではなく父親か母親の妹ではないだろうか? もしくは俺の従兄弟とか。茶髪。薄青い(水色か)瞳。

・五人目は多分俺の兄で長男だろう。小学校に上がる前くらいだろう。五~六歳くらい。ちょっとやんちゃな感じがある。年相応に可愛い。茶髪。薄緑の瞳。

・六人目は多分俺の姉で次女だろう。兄よりちょっと下くらい。三~四歳? たまに兄と一緒に俺のことを覗きに来る。いい笑顔で笑う。将来は美人な感じ。綺麗な金髪だ。こげ茶色の瞳

・七人目は父親より少し年長の男で声は毎日聞こえる。顔を見たのはこの一ヶ月で二~三回だ。多分叔父じゃないかと思う。なので家族カウントからは外した方がいいだろう。こいつも髭があるが親父ほどわしゃわしゃと生えてはおらず、綺麗に揃えている。暗い金髪。緑色の瞳。

6.父親の仕事は不明。
 朝飯を摂った後、どこかに出かけているようだが、昼食には帰ってきて、昼食を摂ったら夕方まで戻らない。

 とりあえずこんなところか。家の部屋数はまだ不明。俺は両親の寝室と居間兼食堂しか見ていない。他にもドアがあるのは見ているが未だに一人で立ち上がることはできず、ほぼ寝たきりだ。母親の乳を吸うときと、おしめの交換、着替えのときくらいしか構ってもらえない。

 あと、大事なことだが、どうも感情の制御がうまくいかない。腹が減っても我慢することが出来ずに泣くし、粗相をしてもこれまた不快感が極まって泣いてしまう。どうみても赤ん坊です、本当にryな感じでとても四十代半ばとは思えない。俺はどうなってしまうのだろうかと不安になる。そして不安感から泣いてしまう。

 当然泣くだけではなく、兄や姉が俺をあやそうとしたりして変顔をすると大して面白くも無いのになぜか嬉しくなってきゃっきゃと笑ったりする。しばらくするとまた不安感に押しつぶされそうになって泣き喚いてしまう。俺は痴呆なのか?



・・・・・・・・・



 そうこうしている内に半年も経つと更にいろいろ判明してきた。

1.当面の問題であった感情面の制御だが、慣れてきたのかある程度進歩した。
 大きな感情の波も2回に1回はきちんと制御できるようになってきた。
 これは嬉しい。

2.はいはいが出来るようになった。
 立ち上がるのは体のバランスがうまく取れずまだできない。
 二足歩行のおもちゃでバランサーが壊れている感じ。
 但し、これも慣れればうまくいきそうな感じがする。

3.言語についてある程度理解が進んだ。
 声帯を上手く使えないのか発音はまだあまり上手く出来ないが聞き取りはかなりできるようになったと思う。
 文法自体は日本語と大差無いようだ。
 助詞や格助詞の変化、接続詞や動詞の変化については今一自信がないが、喋っている内容はだいたい判るようになった、気がする。

4.言語に対する理解が進んだため、情報量が急激に増えた。
 まず俺の名前。アル。嘘だと言ってよ○ーニィ。
 父親の名はヘガード。筋肉すごい。プロスポーツ選手みたいな体。
 母親はシャル。美人で美乳。性欲は湧かない。俺が枯れてるのか?
 年上の姉と思ったがメイドはミュン。朝出勤してきて夜帰るようだ。休日もないみたいでブラック企業真っ青な労働環境だ。  
 兄はファーンかファン。人によって多少呼び方が違う。愛称か? 小僧。
 姉はミルー。小娘。
 叔父と思ったが父親の部下?はジャッド。ミュン以外には敬称のようなものをつけて名前を呼んでいるようなので多分部下とかそんな感じだろう。
 その他に数人、名前はまだ覚えられないが家の前までは来ている様だ。中まで入ってこないので顔はまだ判らない。
 ついでに自分の家名もまだ判らない。これはある意味当然だろう。普段から家族で家名を呼ぶ筈も無い。

5.住んでいる村? 町? バークッド。バークッドシュンと聞こえる。
 このシュンは村なのか町なのか市なのかは判らない。バークッドだけで終わるときもあるので名前がバークッドなのは確かだろう。
 多分国名ではないと思う。
 そんな国名は聞いたことはないし、あまり頻繁に国名を発声する事もないだろう。
 大概の名詞は共通しているのだからここも共通でいて欲しかった。

6.現在年月日は不明。
 カレンダーのようなものは見たことがないし、新聞もない。
 生まれ変わったのであれば2015年以降だとは思うのだが……。
 当然のように時計すらない。

7.多分家から数百メートル程度のところで鶏を飼っているようだ。
 毎朝鳴き声が聞こえる。
 この国だとクックドゥードゥルドゥーなのかコケコッコーなのか……。まぁ別にどうでもいいが。



・・・・・・・・・



 言うのを忘れていたが、俺は冬に生まれた。その後、日本ほどはっきりとはしないが四季らしきものを迎えているのでそろそろ一年が経つ頃だ。列車事故で死んですぐに転生したのであれば北半球のどこかであろうと推測ができる。
 近頃は感情の制御もかなりできるようになってきた。また、筋力がないのだろうか、長続きはしないが立って歩くことも出来るようになった。日本語にあった母音を多く含む語であれば発音も出来る。ちょっとここまでで新たに理解したことをまとめてみよう。

1.感情面で制御できなくなることは激減した。
 ただ、大きな喜怒哀楽を感じると暴走の気はまだある。
 例えば空腹を感じることぐらいでは問題ないが、それが1時間ほど続くと簡単に我慢の限界を超えてしまい、泣き喚いて母親かミュンを呼んでしまう。
 また、転んだりしたときもある程度であれば我慢は可能だが、何かの拍子に頭をぶつけたりなど、前世であれば痛くて涙目にはなるものの泣き喚く程では無い様な事でも簡単に我慢の限界を迎えて泣いてしまう。
 単純に感情制御や我慢のマージンが足りないだけだろう。
 これは想像でしかないが、生まれ変わったことで知識は別にしても精神性は肉体年齢相応、もしくは引き摺られているのではないだろうか。

2.立って歩いたりよたよたと走ることができるようになった。
 まだ乳幼児であるため常にそばに誰か(母親やメイドのミュン、兄姉いずれか)がいるため外に出ることは出来ない。
 だが、家の構造はほぼ把握できた。
 家は木造二階建てだが二階は実質的には屋根裏部屋だろう。何室あるのかは不明。
 一階部分は十畳強の居間兼食堂、四畳ほどの厨房、八畳ほどの両親と俺の寝室、六畳ほどの部屋が三つあり、うち一つは子供部屋、残りは一室が応接? 一室が客間? になっているようで、玄関から廊下が伸びており部屋にはドアがある。
 トイレはあるが汲み取りのようだ。
 浴室はない。たらいにお湯を張って布で体を拭くことで入浴代わりにしているようだ。

3.言語はほぼ覚えた。
 母音が六個あるが文法的にはほぼ日本語そのままなので習得は容易と言っていいだろう。
 今では家族間の会話であればほぼ間違いなく意味を理解することができると思う。
 たどたどしいが喋ることも出来る。
 一般名詞に英語とかなりの共通部分があることが大きい。
 一歳に満たぬうちからたどたどしくではあるが喋り始めたので家族は俺のことを天才だと思っているようだ。
 気違い扱いや悪魔憑きみたいに扱われることを警戒し、生まれ変わって転生してきたことは言っていない。
 そもそも常識で考えて転生とか生まれ変わりとか信じられないだろうし、日本のことを話して認められたとしても既に俺は死んでいるし、葬儀も済んでいるだろう。
 この国の政府から日本に連絡が行っても面倒なだけだ。
 確かに美紀や父母に会いたいというのも本音だが、俺は死んでいるのだ。
 万が一助かっているということもあるだろうが、それはそれで問題がある。
 同一人格で同じ記憶を持っている人間が二人いることになるし、どちらが本物かで日本人の俺と争ってしまうかもしれない。
 そんなことはごめんだし、記憶を持って生まれ変わったのならば「この俺」が「この俺の人生」を歩む上で有利だろう。

4.地理および社会情勢だがここバークッドは村で、なんと父親は村長というか、庄屋というか、領主のような扱いっぽい。
 村の主な産業は農業で、狩猟もある程度は行われているようだ。
 そして、これは非常に驚愕したのだが……いや、これはあとで話そう。
 この後のまとめでも驚愕したことは多いが、一つひとつの項目毎に驚愕がついて回るのでやはりあとでまとめて話すことにする。

5.度量衡の単位だが、ほぼメートル法だろう。
 俺の感覚的にメートル法だと思うが、正確な定規となるような秤がないため詳細は不明。
 不便なので俺の中ではメートル法で考えることにする。単位や発音もほぼ一緒だ。

6.数学についてだが、十進法を採用している。
 計算は簡単な四則演算であれば両親共にできるが、教育水準が低いのだろう、兄と姉は計算が苦手なようだ。
 日本ではちょっと考えにくい。
 掛け算や割り算が小学校入学程度で出来ないのは解るが数もまともに数えられないのはいかがなものか。

 とりあえず転生してからの一年間ほどで判明したうちの重要ではない(・・・・・・)ことは以上だ。ここからは重要なことを話そう。

1.現代じゃない可能性がある。
 と言うか、その可能性が高い。
 第一にロンベルト王国というのがこの国の名前だそうだ。
 そんなの聞いたことないし、旧ソ連から分割独立した国に王国はない筈だ。
 あとは生活水準や雑貨などからの推測になる。
 アフリカの小国じゃなければタイムスリップなのか?

2.ロンベルト王国は封建制で王が国を治めている。
 王を取り巻く貴族が王直轄領以外の土地を領土として半ば自治領としている。
 バークッド村はウェブドス侯爵領の一部だ。
 親父は一応領主で士爵とのことだ。俺、貴族だったわ。
 家は兄が継ぐことになるだろう。姉は嫁に出るとしてこの国での次男の扱いはどうなるんだろう? 時代によっては冷や飯食いになるかのも知れん。
 早いうちに何らかの対策を立てないといけないだろう。

3.最後に税だ。
 バークッド村の主な産業は農業で小麦を栽培している。
 勿論ほかの野菜類も栽培しているが主力は小麦だ。
 農民はその収穫高のなんと六割を税として親父に納めている。
 親父はその六割を更に上級の領主(ウェブドス侯爵かどうかは判らない)に納めているそうだ。
 収入の六割も取られるとか無茶苦茶だ! と一瞬思ったが現代じゃなければ当たり前だし、親父には村の総生産の24%が入ることを考えると充分か、とも思う。
 実は当然の事に、24%も入らないのだが。
 村のインフラ整備は領主である親父の責任なので費用は持ち出しになる。
 村の人口が不明なので(多分たいしたことはないだろう)総収入は不明だが、左団扇で安楽、と言うほどではないだろう。調度品や食事で大体予想がつく。

 とにかくあまり目立たないようにおとなしく情報収集に努めた一年間だった。怪しまれたりして変に問い詰められて口を滑らすことになったりでもしたらまずい。せいぜい、多少早熟で、一歳で片言ながら言葉を解し、かなり上手によちよち歩きができる将来有望そうな子供、という程度にしないといけない。

 なに、まだ一歳だ、あまり生き急いでも仕方が無いだろう。情報収集の時間はまだたっぷりあるし、現代ではないのであれば、運動をしたりして体力練成もする必要もある。ゆっくりやればいいさ。

 生まれてからの一年間にわたって慎重に慎重を重ねて暮らしていたが、ここに書いたことなんか吹っ飛ぶような出来事が立て続けに起こったのは、こんなふうに情報の収集と整理をのんびりとやっていた数日後だった。

 
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