挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 幕間

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

388/518

閑話 ネルの冒険 5

 家の中で起こった異様な出来事。
 目の前であそこまで苦しんでいる兄弟(?)を見ても微動だにしない双子の片割れ。
 いや、双子ではないのか?

 一体何が起きているのか、ネルにはさっぱり理解出来なかった。
 いきなりあのようなショッキングな場面を見て気が動転してしまった事も原因の一つだ。
 だが、そのおかげで固有技能を思い出す暇すらなかったことは幸運でもあった。

『お~、いちち……。こればっかりは辛いな……』
『そんな事より兄貴、明日の用意は?』
『そんな事よりってお前……』
『毎日のようにやってりゃ慣れたとか言ってたじゃんか』
『そりゃそうだが、慣れたって痛いもんは痛いよ……言ったろ? それに、やっぱ自分の方がいい。どうにも違和感があるし』
『そんな事より明日の用意、終わってるのかよ? 終わってなきゃ俺が今から……』
『そっちはバッチリだ。鎧も手入れ済みだし食料もきっちりと買い込んでる。馬も隅から隅までブラッシングしてやったし、馬具も全てチェックし直したさ』

 そう言えば明日の朝には誰かとベンケリシュまで行くとか言っていた。
 その用意のことだろう。

『ならいいや。あとさ、これ、見てくれよ』
『あん? サンダル? それがどうかしたのか?』

 双子の片割れが腰にぶら下げた雑嚢からサンダルを一足取り出して見せた。
 いや、双子ではないようだから単に弟と呼ぶべきだろう。
 ネルも見るが……。

『どっかおかしいと思わない?』

 弟は取り出したサンダルの片方を兄に渡す。

『……これ! ゴム!? いいサンダルじゃないか!? どこで売ってたんだ?』
『今日帰りにナバスカスさんとダムル街に買い物に行った時に見つけた。ロンベルト産だって。もうそれ一足しか残ってなかった。二十二万Zもしたんだけど、すっげぇいいと思わねぇ?』
『高っけ! でも、これいいな。俺も欲しい』

 二十二万Zと言えばそこそこの宿に泊まりそこそこの食事を三食摂ってひと月暮らしてもまだ余る。
 勤めて数年の職人の月給並みだ。
 ネルの出身地なら四人家族の奴隷一年分くらいの給料でもある。
 大金だ。
 ネルはサンダル一足にとてもそんな金は出せない。

『いいだろ? 明日からのベンケリシュはこれで行くんだ』
『……ロンベルト産って言ったな……ロンベルトはゴムが採れるのか……』
『そうみたいだね』
『ゴムは樹液を乾燥させただけでも作れる。だけどそれではこんなに質が良くない筈だ。それに、この色……』
『あん?』
『加工品だ、これ。飴色に近いだろ? 硫黄が混ざってる。しかも結構精度が高い。ソールも二……いや、三種類のゴムが張ってある。こんなの、機械がないと作れないぞ……』
『え? 機械?』
『ああ、ゴムの製造はゴムの樹液(ラテックス)に硫黄とかカーボン……木炭とかを混ぜなきゃいけない。それは根性さえあれば人力でも何とかなるが、この面を見ろ。滑らかだろ? しかも切断面は均一に近い。これは大型の型抜きカッターなんかが必要だと思う』
『……兄貴……』
『ん?』
『兄貴はすぐ忘れるなぁ。魔法じゃねぇの? この前レーンにも見せて貰ったろ? エアカッターなら滑らかに切れるだろうし、そもそも型を作ってそこに流して押しこめば同じ形のものなんか作れるだろ』
『あ……そっか……魔法か……だが、それにしても加工品のゴムがあるのは妙だ』
『妙かね?』
『ああ、妙だね。これ、作ったの俺達みたいな生まれ変わりだろうな……』
『ああ、そういうことか。でもそんなの予想されてたじゃん。今更だろ』
『それもそうだが、こういうケースは初めてだな』
『なにが初めてよ?』
『俺達、いや、アレクやセルみたいな上級貴族でもない限りそうそう何か作ったりしてた奴はいなかった』
『フタミさん、目玉風船作ったって言ってたじゃんか』
『阿呆、そんなのとは一緒にならん』
『じゃあ、俺達だって黒色火薬は作れたぜ。鉄砲だって火縄銃だけど試作品出来たし』
『それに近い。だが、よく考えてみろ。黒色火薬も鉄砲も皆で知恵を寄せ集めた結果だ。時間も相当掛かってるし、何より結構な額の金を使ってる。アレクやセルがいなきゃせいぜい火薬作ってそこまでだ』
『そりゃそうだろ』
『このゴムはある意味で工業製品だ。お前の言うように魔法を使ってるんだろうが……外国であるこっちにまで流れてるってことは、量産に成功している筈だ。金も相当に儲けてるだろう』
『そういうことだな。でもさ、そういう奴がいたっておかしくはないだろ?』
『そうだな。おかしくはないし、不思議じゃない。それはいいんだ。ロンベルトにかなりの成功者か、そうでなきゃアレク並みの上級貴族が居るという可能性が高いという話だ。これは問題だぞ?』
『何がよ?』
『お前はもう少し頭を使え。そこまでの奴が日本人を集めてないと思うか?』
『あ……そうか。そりゃそうだ。その程度のこと当然……』
『ああ、日本人の徴集も限界があるってことだ。それがあと何人かは判らん。もうこれ以上は一人も集まらないかも知れない』
『ん……俺、兄貴、アレク、セル、ミュール、ツェット、レーン、アルコ、クリス、それにフタミさん。十人か……多いのか少ないのか……』
『こんな世界だし、もう死んでる奴がいても不思議じゃないから、そこそこは多いと思う。だが、ロンベルトにこんな奴がいるとなると……この倍はいないと安心できないな』

 つまりは日本人を集めている勢力が彼らの他にもあるということか。
 ネルは窓にひっつけていた顔をそっと離し、壁に背を預けて考える。
 こちらの勢力はデーバス王国でもかなり上位に位置する上級貴族がメンバーに居る。
 何しろ王太子殿下の親衛隊員なのだから。
 そして、もう一つの勢力(?)はロンベルト王国に居るらしい。
 こちらにもそれなりの立場の者が居るようだが、それは憶測の域を出ていない。
 だが、ゴムを作ってそれで手広く販売しているらしいことはわかった。
 一概にはどちらが良いとも言い難い。
 ネルは小さなため息を吐くと、再び体を起こして窓に顔を近づける。

『ん……そう言えばさ、例の侵攻作戦は秋くらいだってさ。今日決まったよ』
『ふうん、決まったのか。相当気合入れてるみたいだな。()()デンビル男爵が大将なんだろ? ツェットの副司令はともかく、あの阿呆なデンビルのおっさんを司令官にねじ込むのに頑張って工作したようだしな……』
『ああ、こっちが推薦したことがバレないよう結構苦労したらしいぜ。その辺りはセルの功績だろうなぁ。ま、何にしてもきちんと成功して貰わないとな。俺達の足場固めにも繋がるし……。ミュールも十人長で一緒だってさ。どうする兄貴? 二人で行くか? レーンと一緒ならまず大丈夫だろうし……』
『ん~、レーンの護衛とは言え奴隷の顔で戦地に付いて行くのも不自然だしな……適当な奴の顔になって行っても良いが、戦争だと時間切れのタイミングの調節がな……俺の顔を知っている奴が増える可能性は減らしたいし……俺達の方はともかく、あのナスカスだっけ、まぁいいや、フタミさん? 彼には最低限のレベルアップくらいはして貰わにゃならんしな……』
『ナスカスじゃねぇよ。ナバスカスだよ……まぁいいや。フタミさん、悪い人じゃないんだ。昔は良くして貰った事しかないよ』
『悪い人じゃないってのは俺もそう思うな。ま、レベルアップはともかく魔法は使えるようにしてやる必要はあるだろ。本人のためにもなるしな』

 侵攻作戦だとか人事工作だとか何やらきな臭い話が始まっていた。
 それにしても親衛隊員というのはここまで国家の中枢に関係ある仕事なのだろうか?
 ネルは前世から通して政治だの戦争の裏事情だのについて深く考えたことはなかったので、「責任の重そうな仕事なんだな」としか思わなかった。
 しかし、何やら重大な件について話している事だけは理解した。
 何しろ次の侵攻作戦について話題に出ているのだ。
 戦争計画なんて国家的な秘密だろう。

『しっかしなぁ……フタミさんの固有技能、ロッテン・アンド・ドレイン・トレランスってなぁ……使えねぇよなぁ……喜んでたのミュールくらいだし』
『それはフタミさんのせいじゃないし仕方ないだろ』
『でもよう……』
『気持ちはわかるが何でもかんでも戦闘だの工作だのに結びつけるな。そういう面で役立つのは確かに便利だし、わかり易い。しかし、そんなことで人を使えるだの使えないだの格付けするな。だいたいフタミさんはお前の先輩だったんだろ? 世話になったんだろ? それだけで当面の面倒見る理由には不十分か?』
『ん~、そうは言ってももう何十年も前の話だし……』
『それはそうかも知れん。だが、できる親切はしておけ。情けは人のためならず、だぞ。そういう恩ってのは受けた方も忘れないものだ。いつかは巡り巡ってくるものだとでも思っときゃいいさ』
『ちぇっ、相変わらず兄貴は先生なんだな。説教が板についてら』
『ふーっ……こんなのを説教だと感じるお前がどうかしてるよ。もう一回ガキからやり直しているとは言え、少しは成長しろよ……』

 何やらよくわからない。
 誰かの面倒を見る話らしいが。
 しかし、固有技能という単語が出たためにネルにも姿形が変わった件について理解出来た。
 きっとあれはあの男の固有技能なのだろう。
 つまり、兄貴と呼ばれてはいるが、確実に双子ではない。
 だが、顔つきからして本当の兄弟ではある可能性は高いと思われた。

『ところで秋の戦争だが、日程は決まったのか?』
『ああ、三ヶ月後の八月末までに……何つったけな……そうだ、ボンダイの街に侵攻部隊集結。編成と展開訓練にひと月。九月中にはそのまま侵攻。で、遅くとも二週間以内にはコミン村に迫る。で、そのタイミングで例の物が部隊に届くように工作する』
『ふんふん、アレクからの罷免状か』
『そそ、あと男爵の処刑命令書と次席指揮官の昇任命令書な』
『白鳳騎士団の食料横流しはなぁ……他の騎士団ならともかく白鳳騎士団はまず過ぎるだろ』
『うん。で、俺達、と言うか、レーンの出番だ。その為にそれまで俺達は粗食に耐えなければいけないけどさ』
『レーンがうんと言うかな?』
『それなんだよな。まぁ、アレクから罷免された上に処刑命令が出たのであれば、まして名指しで派手に処刑しろと言われりゃレーンもやるしか無いだろ。何しろ彼女の嫌いな汚職だし、それまでの食事も彼女が大嫌いな燕麦オートミールお粥(ポリッジ)ばっかりの筈だし。何より彼女のアピールにもなるし、それだけ優れた魔法使いが居るとなりゃ部隊の士気も上がるし。そのあたりの説得は俺とミュールの仕事だな』
『魔法の効果を知らしめて国立魔法学校の生徒を集めるとか言うのか?』
『その辺はその時考えるしか無いと思ってる』
『それもそうだな』
『とにかく、デンビル男爵が処刑された直後にツェットが指揮を引き継ぐ。で、レーンには魔法を存分に使って貰ってさっさとコミン村を陥落させる。ついでにその奥のワッカ村ってところも落とせれば最高だ』

 何やら白鳳騎士団の誰かを謀殺し、知り合いに手柄を立てさせようということらしい。

『で、ツェットとミュールが昇進か』
『うん』
『そう上手く行くかね?』
『兄貴だって賛成した方法だぜ? その為にデンビル男爵には何年も前から横流しをさせてたんだし』
『そっちじゃねぇよ。そっちは問題無いだろ。俺が言いたいのは戦争だってことだ。ツェットが指揮を引き継ぐのはいい。彼は良く勉強もしているようだし、騎士団での人望も厚いと聞いてる。だけど、部隊全体の司令官としては初陣だ』
『その件については最初から兄貴は心配してたな』
『そりゃそうだろ……俺にはお前も含めて皆が心配してないほうが不思議だよ』
『そこはミュールが補佐するだろうし、兄貴はともかく俺やレーンも居るから大丈夫だと思う。レーンがいて負けるなんてそれこそあり得ないだろ。ロンベルトの“黒の魔女”ってのも大したもんらしいが、なぁにレーン以上の魔法使いなんかそうそういないだろ?』
『ん……確かにな。レーンが居りゃあ大丈夫か』
『そうだよ。それに、“黒の魔女”はこの前の戦場に出てたらしいから秋のやつには出てこないだろ』
『……まぁ、“黒の魔女”がいない隙を狙ってもいたんだし……俺も行ったほうが良さそうだな』
『そう思うなら来てくれよ。何しろ俺もレーンも戦争は初めてなんだ』
『そうだな』

 つまりは汚職を掴んだ貴族を司令官として大将に仕立て、仲間を副司令にする。
 戦闘開始寸前に汚職を元に司令官を逮捕、処刑して副司令を臨時の司令官に繰り上げる。
 そして直後の戦闘で大々的に勝利を収めて息の掛かった仲間を昇進させるという作戦のようだ。

『ま、とにかく明日は早いんだ。そろそろ寝ておこう』
『まだ宵の口じゃねぇか。兄貴こそガキかよ』
『……いいから。もう寝よう』
『わかったわかった』

 彼らはそろそろ休むようだ。
 宵の口とは言ってもそろそろいい時間だろう。
 ()()()()()()()()()
 ネルの視界の右上に23/4/7448 20:12:59と出た。

『ん?』

 先に居間から出ていこうとした弟が驚くほど真剣な顔つきをして振り向いた。

『どうした?』

 その様子に気圧されたのか、兄の方は戸惑ったような声を上げる。
 ネルも不思議に思った。

『兄貴……』

 弟は兄に何か小声で耳打ちする。

『えっ?』

 驚きの声を上げる兄。

「……」

 耳打ちされた兄は何かを弟に命じ、自分は壁に掛けてある剣へと手を伸ばした。
 本能的に危機を感じ取ったネルは即座に三倍速を使用し、この場からの離脱を図る。

 振り返ってダッシュ!
 強引に生け垣を乗り越えようとする。

 ここでやっと気が付いた。

 視界に【時計タイムロード】の表示が浮かんでいない!
 つまり、三倍速になっていない!

「え?」

 もう一度三倍速!

 ……いつもなら瞬時に視界の左上に倍速値と残り時間。右上に日付と時刻表示、下にスケジューラーのメニューが浮かぶ。
 ほんのついさっき、時間を確認した時は問題なく……?

 バン!

 乱暴な音を立てて窓が開き、男が顔を出す。

「いたぞ! あそこだっ!」

 理由は不明だが覗き見していた事に気付かれてしまった!
 そして、こちらも理由は不明だが【時計タイムロード】の三倍速が使えない!

 ネルは必死に生け垣を乗り越え、大通りへ向かって走る。
 後ろは振り返らない。
 途中、多少速度が落ちるのを承知で何度かジグザグに走る。
 勿論、魔法や弓による攻撃を警戒してのことだ。

 向こうはこのランドグリーズに暮らして長いようだし、土地勘もあるだろう。
 宿に直行するような真似はしなかった。
 預けてある荷物は弓矢と槍、着替えなど身の回りの品だけ。
 高級品ではない、ごく普通の品だが武器は双方数十万Zはする。
 惜しいと言えば惜しいが身の安全には替えられない。
 現金は全て持ち歩いている。

 あんな話を聞いてしまったからにはどう考えてもまずいことになる。

 ネルはそう思って恐怖に駆られた。

 心臓が張り裂けるのではないかと思うくらい走って走って、走った。

 ランドグリーズから出ても安心はしなかった。

 そして、もうかなり離れたと思った時、恐る恐る後ろを振り返る。

 彼女が走ってきた街道はカルタリとネイタリが照らすのみで、追跡者の姿は見えない。

 そっと【時間タイムロード】を使ってみる。

 視界の右上に23/4/7448 22:16:32と出た。



・・・・・・・・・



『ツェットじゃないんだな?』
『ああ、もっとずっと華奢に見えた。女かも……』
『背の低い女で日本人か……』
『固有技能を使ったのは感じたんだ。本当だ』
『疑ってないから慌てるな。ふん……こっちの奴らじゃないならまだマシだ』
『どこまで聞かれたかな?』
『今日、家に帰ってから話した内容全部だと思っておいた方がいいだろうな。それより……』
『ああ、兄貴の件、気付かれたかな?』
『日本人なら会話は解るだろうから気付かれたと思うべきだろう』
『【変身】はどうかな?』
『そこまでは判らん。見られたかも知れん』
『兄貴みたいに誰かが匿ってたのかな?』
『……どうだろう?』
『それだと面倒にならないかな?』
『ん~、面倒にはなるが俺達の場合、言い訳は出来るから……』
『ああ、最悪の場合アレクやセルの影武者になれるって奴か』
『そうだ。その場合、知られずに成り代わるのは難しいが……』
『匿ってたとしたら誰だろう?』
『それもちょっと判らんな……だが、可能性を考えるのであればアレク以外には無理だろうな』
『あいつ、そこまでやるかな?』
『まずあり得ないとは思う。だが、一度見かけた以上……』
『糞っ! 面倒なことに……』
『とにかく明日レーンに相談した方が良さそうだな』
『ああ』
『それと……』
『ん?』
『フタミさんにも俺のことは明かしておいた方が良いかも知れん』
『ああ、味方になって貰わなきゃ』
『うん』
『明日はレーンと合流次第すぐに相談だ。ベンケリシュに行く途中でアレク達から追手が掛かるか何らかの連絡があるようなら、あいつの素性ははっきりする』
『そうじゃなければ……?』
『幾つか考えられる。まず、俺のことを知ったにもかかわらず泳がせている。だが、流石に日本人を集めようと頑張っているのにこれは不自然すぎる』
『そうだな』
『そうなると俺達とは今まで関係のなかった奴という可能性が浮上してくる』
『うーん。それはどうだろ?』
『なんでだ?』
『ランドグリーズに居てお触れを知らないなんてあり得ないと思わないか? なら何故出てこなかった?』
『日本人の集まりに興味が無いか、不信感を抱いている可能性もある』
『確かに……フタミさんも奥さんとお子さんを連れてこなきゃ絶対に協力しない、出来ないって言ってたからなぁ』
『ああ、あのお触れ、一箇所だけ抜けてるのは家族に言及していないことだよな。俺も抜かってた。こんなに若い時分から結婚して子供が居るってことがすっぽり抜けてたよ……俺もまだまだ若いな』
『話戻すけどさ、それだと単にあいつは誰とも接触していなかった人って事になるから……』
『ああ、それが一番楽観的で安心な見方だろう。その場合、最悪一人の日本人を仲間に出来る可能性が減少したってことだし』
『可能性が無くなったって事じゃないのかよ?』
『完全に敵対した訳じゃ無いだろ。こっちは盗み聞きに気が付いただけだ。敷地に侵入した不審者を追ったのも問題には当たらないだろう。それこそ説明すれば向こうだってそうそう怒りはしないだろうし、出来無いはずだ』
『じゃあ今のところ出来ることは?』
『無い。尤も、明日は用心して行動すべきだろうがな……仮にアレクが匿っていた奴だとしても、俺達はあいつに敵対的な話をしていた訳じゃない。お前が俺を匿っていたという事がバレただけに過ぎん。それにいきなり日本人を殺すような真似はしないだろ』
『確かに……』
『……心配しても始まらん。寝ておこう』




ネルのお話は今はこれで終わりです。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ