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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第二百六十一話 獲得

7447年12月17日

 エンゲラに化けていたドラゴニアンは一日が経過するといつの間にかドラゴニアンの死体に戻っていた。化けの皮が剥がれたって事かね?

 皆は精力的に働いている。
 数人づつの組になって協力してドラゴンの死体から鱗を引っこ抜き続けている。
 鱗を引き抜くにはかなりの力が必要なようだ。
 見ているだけで難事業である事が手に取るように解る。

 戦闘に参加出来ず、そのせいで戦力が足りずにエンゲラが死んでしまったと皆は思っているようだ。
 その考えが合っているのか、それとも違っているのかは今となっては解らない。
 どちらにしても過ぎ去ってしまった時間を取り戻すことなど出来はしない。

 俺が石の上に黙って座り、暗い目で皆を見ていたからプレッシャーを感じていたのかも知れない。
 一言も喋らずに作業を続けている。

 ゼノムの荷物を漁って時計の魔道具を確認することも億劫でしていないので、ここに俺が座ってからもう何時間が経過したのかは正確には不明だが、二、三時間じゃないかね?
 石の脇の氷を見る。

 エンゲラは透明な冷たい棺の中で眠るように目を閉じている。

 俺がこんなだから皆も暗い雰囲気なのだろう。
 これじゃダメだな。

 ガタガタ震えていた状態から回復した際には早い奴でも最後に食事をしてから丸一日も何も食っていなかった。
 皆にはその時に乾パンを食わせただけだ。
 必要最小限の食事しかしていないので全員相当に空腹感を覚えている筈。

「おい、そろそろ飯にしよう。腹減ってるだろ?」

 石から立ち上がると意識して明るい声を出した。

 俺が声を掛けたことで全員がぞろぞろと集まり、乾パンを口にする。

 俺の雰囲気が変わった事が伝わったのか、それとも気を利かせてくれたのか、ゼノムが明るく話し掛けてくれた。

「なぁ、アル。こいつを仕留めるには相当骨が折れたんだろ? 聞かせてくれ」

 待ってました。

「ああ、聞いてくれよ。エンゲラは凄かったんだ。ドラゴンに咥えられても剣を振って……」

 ドラゴン退治についてひとくさり話し、エンゲラの活躍についてアピールした。
 ドラゴンの特殊技能に阻まれて、大ダメージを叩き出せる攻撃魔術が効かなかったこと。
 俺も槍で一突き入れたものの、エンゲラはライフル銃を何発も命中させてその度にドラゴンの精神集中を阻害し、魔術発動の邪魔をしたこと。
 そうやってドラゴンの意識を俺から逸し、自身が囮となって引き付けてくれたこと。
 ……そして、俺の目の前で死んでしまったこと。

 彼女がいかに勇敢に戦ったかを全員に伝えたかった。

 俺の話が終わる頃には皆が氷の中で眠っているようなエンゲラを見つめていた。
 遠くから響いてきたドラゴンの咆哮一発で失禁までしていたジェスなんかは尊敬の眼差しすら送っている。
 それでいい。そうしてくれ。



・・・・・・・・・



 食事の後、ドラゴンやドラゴニアンの復活に怯えながらも丸一日掛かってドラゴンの鱗すべてを剥ぎ取った。
 ミヅチも首尾よく心筋を採取出来ている。
 俺としてはこれで目的の殆どを達成出来たようなものだが、まだやることは残っている。

 戻る前にやらねばならないことは二つ。
 一つは言わずと知れた収集端末兼変性装置の調査。
 もう一つはドラゴンの巣穴(ミヅチが言うにはドラゴンってのは大抵の場合、巣穴で眠って過ごし、光り物中心の財宝を貯め込んでいるそうだ)の調査である。

 即物的で申し訳ないが、まずは巣穴の調査から取り掛かる事にした。
 あ、鱗は前回の轍を踏まないよう大きさ別に纏めてもう一回氷漬けにしたドラゴンの脇に置いてある。

 今のところこの層で見掛けているドラゴン以外のモンスターは、十二層の階層守護者であったと思われるドラゴニアンだけだ。
 だが、他に居ないという保証もないので油断は出来ない。

 全員が失点の挽回を目論んでいるかのように張り切って山頂を目指して歩き出すべく立ち上がろうとしたその時。
 ラルファがミヅチに声を掛けた。
 今までは雰囲気が重く、私語は憚られていたのだろう。

「ねぇ、ミヅチ。ドラゴンって食べられないの?」
「ドラゴンステーキとか話には聞くけど……」

 へぇ。まぁ爬虫類な感じだから食おうと思えば食えそうではあるよな。

「おお! ステーキか。ちょっと焼いてくれよ」

 すでに立ち上がっていたロッコがドラゴンの死体に向かって駆け出した。
 適当に肉を切り取ってミヅチに焼いて貰おうと言うのだろう。

「ちょっと、止しなさいよ。ドラゴンの肉なんて安全かどうか解ったもんじゃ……」

 カームが窘めるが、ロッコは気にせずに肉を切り出した。
 ミヅチが俺を見るので一つ頷いてやると、長剣に刺されたままの肉の塊へフレイムスロウワーの炎を近付ける。
 勿論、切り出して持って来た時に【鑑定】は済ませ、毒がないことは確認している。

「まぁまぁ、まずはロッコに食わせてみようぜ。食料が心許ないのは確かなんだし」
「そうだな。半日くらい経って何もなきゃ大丈夫だろ」
「ねぇロッコ。一口だけにしときなさいよ」

 ケビン、ジェル、キムがしょうがねぇなとばかりに言う。
 彼らの言うことも尤もである。
 調査にはそれなりの時間が掛かることは当然だ。
 食料の残量から考えてあと半日もしたら十一層で待っているギベルティの下へと帰らなければならないだろう。
 ドラゴンの肉が食えるのであれば暫くは食料の心配をする必要はなくなる。

 どうせ一口しか食べないのならと肉を小さくしたようだ。
 すぐに焼けた。

 ……。

 皆が興味津々で見守る中、ロッコはむぐむぐと口を動かしている。

「うーん。まずくはない。でもたんぱくな感じであんまり味がしねぇな」

 ……塩も胡椒も使ってなきゃそんなもんだろ。



・・・・・・・・・



 二時間ほど山道を登ると山頂の手前に大きな洞穴が口を開いているのを見付けた。
 因みに、山頂を挟んで反対側には収集端末兼変性装置が突き刺さっている。

 念のため、ズールーとジェスを偵察として送り込んだ。

 木陰に隠れながら暫く待機していると二人が駆け戻ってきた。

「ご主人様!!!」
「すごく大きな金塊が!!」

 ほほう!
 そりゃあ大した収穫だ。
 巣穴にモンスターが潜んでいたなんてこともないらしいし、見てみようかね。

 二人に先導されてぞろぞろと巣穴まで移動した。

 巣穴の断面は円く、その直径は一〇mはありそうだ。
 迷宮の通路くらいのぶっとい巣穴だった。
 そして百mほど奥にはゆったりとした直径三〇~四〇mほどの空間がある。

 そこには、一抱えもありそうな巨大な金塊に始まり、ピカピカと輝く他の金属の塊なんかも大量に転がっていた。
 ざっと【鑑定】してみると、金や銀、白金などの貴金属類はあんまり多くない。
 だが、ミスリル、ブルーミスリル、オリハルコン、ゲモ・オリハルコン、アダマンタイトと言ったどう考えても貴重そうなものや、タングステン、チタン、ガリウム、チタニウム、アルミニウム、クロム、ニッケル、モリブデンなど、既にお馴染みとなっている銀色の鉱物結晶が一面に転がっていた。

「おお……」

 誰かが自然と呟いた。
 次の瞬間には歓喜の声が木霊する。

 しかし、暫くするとそれも静まってきた。
 理由は二つ。

 一つは俺の戦闘奴隷たちが口を揃えて「これらの財宝は全てドラゴンを退治なされたご主人様のものです。戦闘に参加していない者に分け前を主張する権利は無いでしょう」と主張し、どういう反応をしたものかと俺が考えている間にカームやキムたちを始めとする救済者セイバーズたちも口々に「そうだそうだ」と言い始めたからだ。

「でも、十一層まで沢山の魔物をやっつけて……それに、こんなにあるんだもの、半額とまでは言わないからさぁ、せめて取り決めの二割くらいは分けてくれたっていいんじゃない?」

 と言ってぐずっていたのはマリーだが、ケビンやジェル、ミースらに「やめろ、みっともない! ズールー達に言われてみれば、確かにそれが道理というものだ。ただ震えていて何もしなかった奴には何一つ主張する権利は無い」と説得される始末だった。

「今回はそういうことで諦めろ。なぁに、ちゃんと働けばまだまだ幾らでも稼げるさ」

 折角のマリーの演技に乗る形で俺がそう言うと、皆も口々に賛同する。

「皆さんの言う通りだ、マリー。そもそも俺達はただここまで一緒に来ただけだ。ドラゴンを倒す手伝いなんか何一つしてないだろ」

 クローにも言われたことでマリーは渋々と引き下がった。
 マリーがわざと恥ずかしげもなくぐずってくれた事に気が付いたのは一体どれだけ居ただろうか?
 それは解らないが、少なくともマリーのお陰で全員が恥知らずな主張を諦めて、少なくとも表面上は納得してくれたことは確かだと思う。彼女には心からの感謝を。

 もう一つの理由は全員がライトの魔術の光を美しく反射する鉱物結晶のステータスを見たからだ。

 銀や白金かと思われた白銀に輝く金属結晶類はその殆どがタングステンやクロム、ニッケルと言った、大して金にならないようなものばかりが全体の九割近くを占め、金銀や白金など換金性の高い貴金属は五%程度。
 残りの五%強は価値こそ高いが換金には手間も時間も掛かりそうな魔法金属類だ。

「トリス、クロムってなんだ?」
「鉄の一種ですね」
「モリブデンは?」
「それも鉄の一種です」
「じゃあ……ステータスオープン……うわっ、ガリ……ウムは?」
「少しだけ溶けにくい水銀ってとこでしょうかね?」

 トリスは適当こいていた。でも、結構物知りだと当てにされるような地位は得ているようだ。

「おい、ロリック。このアルミニウムってのは売れるのか?」
「鉛ほどでは無いけど結構柔らかい金属だ。比較的軽いのが特徴かな? 大して値打ちがあるものじゃないなぁ」
「つまんねぇな……おっ!? ステータスオープン……ちっ、モリブデンかよ」
「ステータスオープン……ああ、これ白金ですね!」
「おお!! でかいな!」

 ロリックも適当こいていた。でもトリスより少しだけ親切な感じもする。

 今はミヅチが中心となってそれらのリストを作成している。

 そうしているうちに一つの魔法の品(マジック・アイテム)が発見された。
 無骨な長剣ロングソードだ。

屠竜ドラゴン・スレイヤー
【ゲモ・オリハルコン鋼】
【状態:良好】
【生成日:15/6/6445】
【価値:1】
【耐久:278241】
【性能:130-200】
【効果:対ドラゴンへの攻撃に使用するとオクタプルダメージ。また、剣の能力を使用することによって、1ヶ月間に3回まで以下の能力のうち1つを選択して使用可能。1.剣の周囲三m以内ならばいかなるブレスウェポンの効果をも打ち消す(持続時間1分間)。2.使用者に仇なす魔術の無効化(持続時間1分間)。3.使用者の半径五㎞以内に存在する敵対生物の注目を集める(持続時間1時間)。4.使用者の傷を癒やす(但し、外傷のみ。傷は幾つあってもよいが一回だけ)】

 柄にはバルドゥックの階層守護者の紋様が刻まれていた。
 刀身は何故かエメラルドグリーンをしている。
 それを見たミヅチが「ドルアー……」とか呟いていた。
 きっとドラゴンと言おうとして言い間違えたんだろう。
 因みに鞘は全く別の場所に転がっており、鞘にも同じ紋様が刻まれていたから元々はこれでセットだったのだろう。

 ……これが十三層の……そう思った時。

「おっ! こいつは……ステータスオープン……おおっ!?」

 ヘンリーが何か見付けたようだ。
 恭しく差し出してきた物を手にとった。

多用途の指輪ユーティリティ・リング
【ルビー・金】
【状態:良好】
【生成日:19/6/6445】
【価値:1】
【耐久:30】
【効果:1時間に1%のHPを回復する。また、装着者の皮膚全体に魔術的な防護膜を展開することによって、装着者に対するいかなる物理的な攻撃も貫通力を20%削がれる。更に装着者は外気温による悪影響を受けない。そして解放の指輪(フリーダム・リング)同様に装着者を束縛することが非常に困難となる】

 ふーん。こりゃ大した指輪だ。
 ……ああ、こっちが十三層の階層守護者の宝で長剣が十二層の宝だな、こりゃ。

 ドラゴニアンが6445年の6月19日に屠竜ドラゴン・スレイヤーを手に持ってこの層に襲撃を掛けたのかどうかは知らないが、とにかくその日に屠竜ドラゴン・スレイヤーを装備したドラゴニアンをあのドラゴンが殺したんだろう。
 この場所かどうかは解らないけど。

 日付から言って、ドラゴニアンたちはその数日前に十二層を後にしたってところだろうか。

 どうせ転移水晶の間には入れないだろうから飛んできたんだろうな……。
 ま、いいや。

 ん?
 あれは……?

 半ば金属鉱石に埋もれていて今まで気づかなかったが、きっと祠だ。
 しかも八層にあったでかい奴。

 何が入っているのか気になる。
 当然傍に寄ってみる。
 祠の扉が開いているかどうかは解らない。
 金属鉱石は非常に重いから乗っても崩れるようなこともあるまい。

 一気に登って祠の扉があろう場所まで行ってみる。
 祠の扉は金属鉱石が邪魔をして開いていなかった。

 ズールーたち戦闘奴隷を呼び、邪魔な金属鉱石を片付けさせる。

 祠の中には宝石のようなものが一つ。

 形からして勾玉に見える。
 大きさは大したことない。
 せいぜいが子供の頭くらいかな?
 そっと手を伸ばす。

【玉】
瑪瑙アゲート
【状態:良好】
【生成日:16/12/7447】
【価値:1】
【耐久:10】

 うーん。
 【性能】や【効果】欄が無いってことは魔法の品(マジック・アイテム)じゃあない、ってことか?
 念の為に使ってみた魔力感知ディテクト・マジックでもなんの魔力も感じない。

「何それ? 見せて」

 ラルファに請われたので渡してやる。

「『勾玉』みたいね」

 ミヅチやベル、ロリック、トリスなんかもステータスを見ては知ったふうに評論していた。
 因みにオースの人は一目見て興味を無くしたようだ。
 瑪瑙アゲートはその模様によっては高価な値が付くこともあるが、価格差が大きい。
 だが、概して宝石としての価値は下のほうだ。
 同じ重さの卑金属よりはマシな値が付く程度である。

 でも、まぁ、思うところはあるんだよね。
 祠から出る物の中には一見してハズレと思われているものも多い。
 これもそう思われたのだろう。

 でも、この特別製の大きな祠から出たんだ。
 ジョージ・ロンベルト一世は迷宮で得た財宝を元に建国したと伝わっている。

 十人程度で持ち帰れるような金銀財宝なんかでいきなり国なんか作れないだろ。
 ドラゴン倒したって貴金属は知れてる。
 それなりに量はあるみたいだけど、ここにある金銀白金を丸々売ったっていいとこ十億ってとこだろう。
 それじゃあねぇ……。

 ロンベルト王国が出来るまで、この辺りは小貴族の自治領が乱立していたそうな。
 まとめ上げる何かがあったんだろうねぇ。



・・・・・・・・・



7447年12月18日

 その後も調査を続け、広間の奥に通路を発見した。
 この通路も金属鉱石に埋まっていたために発見が遅れた。

 通路の大きさは縦横二、三m程度。
 奥は曲がりくねっている。

 効果時間を延長したライトの石を持たせた戦闘奴隷に内部の調査を行わせた。
 やはりと言うか、予想通りの展開だけど、奥は百m程先で部屋になっており、転移水晶が鎮座していた。
 金属鉱石を持って帰るのはそれほど苦労しなくても済みそうだ。
 それでもどう考えても一度に運べる量ではない。
 ここにあるもの全てを持ち出すとなると殺戮者スローターズを総動員しても優に一月以上は掛かるだろう。

 十三層の主、ドラゴンを倒したことについては暫くの間秘密だな。
 卑金属を中心に少しづつ金属鉱石を運び出し、貴金属、そして最後にドラゴンの頭でも持って帰るか。

 ……あとは、収集端末兼変性装置の調査だな。
 でも、あれ、外から入れるのかね?
 俺があのヴァンパイアロードだったら入れないように工夫する。
 中も閉まったままどうしようもない扉も沢山あったし。
 エアロック? ハッチ? だかはあるんだろうけど、中からロックして終わりだろ。

 それでも念の為に調査する必要はあるだろう。
 てくてくと森の中を突っ切って傍まで行ってみた。

 外から見ると巨大なビルのようだ。
 因みに、【鑑定】も出来ない。
 予想していた通り、ハッチのようなものを見付ける事は出来た。

 でも、こちらも予想していた通りどうやっても開けられなかった。

 あ、ドラゴンを食ったロッコには全く異常が見られなかったので、あんまり旨くないけどドラゴンステーキは全員が食ってるよ。
 ミヅチは食べると何らかの効果があるのかも知れないと言っていたが、誰一人として良い事も悪い事も起きていない。

 
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