挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

364/518

第二百四十八話 遥かな旅路 2

前話に目玉をミヅチに渡すシーンを追加しています。
話の流れに変更はありません。
7447年7月17日

 部屋の中は最後に出ていったそのままだった。
 ヴァンパイアロードの死体を始め、女とタイガーマンのヴァンパイアの死体も魔石を抜かれたそのままの状態で転がっている。

 戦闘していた部屋の入口近辺、少し開けた場所をキャンプ地と定め、ギベルティに夕食の用意をさせる。
 俺たちは何か情報を得ることが出来ないか手分けして捜索だ。
 この前、碌に時間を掛けていなかった為に、当然見落としは多数あるものと思っている。
 前回はゴミだと判断したものについてももう一度見直す。

 数時間後、すっかり夕食の準備も終わった頃。

 幾つかの情報材料が集まっていた。
 まず、生活用品。
 衣類を補修するような布切れや糸、針などだ。
 これだけはタブレット等と異なってステータスに名前も出ていたし、思った通りの鑑定結果もあった。おそらくは船内(?)にあったものとは異なり、ヴァンパイアロードかなにがしかが外部から持ち込んだ一般のものであろう。

 更に前回見落としていた数々の魔法の品(マジック・アイテム)
 【満腹感の指輪グラット・フィール・リング】が一つ。
 チャージ数が五回残っている【巨人支配の角笛ジャイアント・コントロール・ホーン】が一本。
 先端に手鉤の付いた【登攀のロープ(クライミング・ロープ)】が一本。
 チャージ数が二百三十八回残っている【幻影の錫杖イリュージョン・セプター】。

 そして重要だと思われる品物。
 俺が持ち帰ったのと同様のタブレットが二つ。
 但し、電源(?)は入れられないし、俺の【鑑定】でも一つは壊れているような表示になっているし、もう一つは【い・みゅー・く-六七どーの残骸】と出ている始末だった。
 また、壊れた熱線銃も追加で二丁。
 これらは【鑑定】は出来るがステータスは見えない。
 酒を含む大抵の液体なんかにステータスオープンを掛けてもハイフン表示になるが、それと同様にステータスウインドウには名前が表示されない。
 船内(?)由来の品物はこんな感じになると思われる。

 それから最後に設備。
 部屋の奥の棚の上の方、床(天井)に立っているだけでは見えない位置にコントロールパネルのような幾つかのスイッチ類が発見された。但し、殆どのスイッチはそもそもハードウェア的に馬鹿になっているようで、オンオフを行っても何も変化は見られなかったが、一つだけ有効なものがあった。
 部屋の照明の半分だけなんだけどね。

 冗談はともかく、天井(床)から生えているようなコンソールには例のタブレットを差し込むのに丁度良いスロットを発見していた。
 殆どのコンソールのスロットは埃が詰まっていて、使えるにしても掃除しないと絶対に無理だと思われたが、二つのコンソールのスロットだけは使用されていたように掃除が行き届いていた。

 充電用のクレードルのような使い方が出来るのだろうか?
 そうでなきゃ困る。
 そもそも電気で作動しているかどうかすら不明だからなんとも言えないけどさ。

 下手に突っ込んで壊しでもしたら最悪なのでまずは手持ちのタブレットについての調査から始めようということになった。

 スイッチを長押しして電源(もう面倒だから電源でいいよな?)を入れる。

 僅かな間を置いて入力を促すようなカーソルの点滅を確認。

「どうしたら良いの?」

 ラルファが画面と俺を見比べて言うが、それはこっちのセリフ……画面に「どうしたらいいの」と表示され、次いで「間違い」と出た。
 慌てて電源を切る。

「音声入力の様ね」

 ミヅチが言うのに頷いた。でも、ここまで高感度とは思わなかったよ……。
 では、気を取り直してもう一度だ。

 どうせあのヴァンパイアロードの名前だろ?

「マーセット・デイオーク」

 タブレットには「まーせっとでいおーく」と表示され、次いで「間違い」と出た。
 電源を切る。

「あれ?」

「だめじゃん」

 ラルファがバカにしたように言うが、これだと思ったんだよなぁ。

「その名前って、転生前の名前?」

 ミヅチが言う。
 あ。
 確かに転生後の名前の訳ないよね。

 俺の聞いた転生前の名前は……まずはフルネームらしいこっちか。

「カミラ・エリスナー」

 タブレットには「かみらえりすなー」と表示され、次いで「この機材は機関科備品です。別科所属者の使用にはグループのパスワードをどうぞ」と出た。
 電源を切る。

 知らねぇよ!

 だが、もう一つ知ってる、こっちはフルネームじゃないけど。

 電源入れ直す。

「ゲイン」

 タブレットには「げいん」と表示され、次いで「げいん・ふぁぐりあ・ばーはっづ」と出た。僅かな間を置いて「ようこそ、ゲイン・ファグリア・バーハッヅ一等機関員。個人動作環境を起動します」と表示される。

「お!」

 あとは遥か大昔に扱ったスマホだのパッドだののようなデスクトップ画面が表示されてアイコンが幾つも並んでいる。右上にバッテリーの残量のような棒グラフがあり、全体の八割くらいの残量があることが確認された。

「よし……」



・・・・・・・・・



 少し弄ってみたが、こういうのはマニュアルがないとよくわからん。
 あーでもない、こーでもないと捻り回すのは、得意そうなミヅチやベル、トリスに任せ、俺達は先に晩飯を食う事にした。
 勿論、ミヅチたちにも声は掛けたのだが「今いいとこだから」とか言って先に食ってろとまで言われたのだ。

 仕方ないので彼女たち三人を除いた俺、ゼノム、ロリック、ラルファ、グィネ、バストラル、ギベルティの七人で先に食っておくことにした。

「この部屋の光景って少し懐かしい気がしますね……」

 ロリックの言葉にゼノムとギベルティ以外の全員が頷く。

「機械……『コンピューター』か……こんなの見たの、生まれ変わってから初めてですよ」

 改めて部屋の奥を見ながらバストラルも言う。

「確かにそうですけど、どこか変な気もしますよね。デザインとか」

 グィネがホットドッグを片手に呟く。
 彼女の言う通りだ。
 ここの天井(床)からぶら下がるように生えているコンソール類は地球の香りがしない。

 ぬめぬめした感じの曲線を多用したデザインで、操作卓の前にある作り付けの椅子に腰掛けると正面と左右に傾斜した机のようなコンソールがある感じだ。
 この机面ですら平面ではなく、中央が凹んだような曲面を描いている。
 コンソールにはボタンらしきものは一つもなく、キーボードのようなものすらない。
 計器類が山のようにある訳でもない(一つもない)。
 勿論、液晶やブラウン管のモニターもない。
 ああ、モニターはホログラフィみたいなのを空中に投影するんだっけ。

 スイッチ一つ見つけられないが、一体どうやって操作するのか?

「確かに……あんまり気持ちよくないデザインだよね……」

 そう言いながらもラルファは特に気にした様子もなく平静を保ってホットドッグに齧り付き、スープで流し込んでいる。
 飯はもっとゆっくり食えよ。

「しかし、これが空を飛ぶなんて信じられん……シコーキとも違うと言うし……」
「私にはもう何がなんだかさっぱりですよ」

 ゼノムとギベルティはもう考えるのを手放したようで、便宜上ゴミ箱として使っている箱を眺めつつ溜息を吐いてぼそぼそとキャベツのサラダを食べ、スープを啜っている。

「……!」

 少し離れた場所でタブレットを弄っていたミヅチたちの方から何やら声が上がる。
 ラルファが何事かと興味を覚えたようでホットドッグを咥えたまま這って行った。
 俺も行こうかと思ったが食事中なので終わってからでもいいかと思い直す。

 何しろ大したことのないアプリケーションソフトらしきものが立ち上がる度にあんな感じなので、もう誰も反応しなくなって久しいのだ。

「ギベルティ、豆茶淹れといてくれよ」

「はい、ご主人様。暫くお待ち下さい」

 ギベルティに豆を煎らせているのを眺めながらロリックたちと会話する。

「……多分、あいつは宇宙船を修理したかったんだろうな……千年以上も頑張って……」

 ヴァンパイアロードの死体を眺めなら呟く。

「アンデッドになれば睡眠も必要ないでしょうからね……」

 バストラルが少し悲しそうな表情を浮かべながら追従した。

「俺だって帰れそうな手段があれば……」

 ロリックも天を仰いで言う。

「私も……でも、私にはさっぱり解らないからどうしようもないかぁ」

 お髭さんは最初だけ寂しそうな顔をしたが、すぐにあっけらかんとしてサラダを食べた。
 それには俺たち三人も顔を見合わせて苦笑を浮かべるだけだ。

 豆茶を飲み始めた頃、やっとミヅチたちもタブレットを放り出して食事に来た。

「どうだった? 何か判ったか?」

「ん~、幾つかね」

 お!?

「あのタブレット、コンソールに入れて使うのが本当のようです」

 ベルが言うが、それはなんとなく全員が予想していた事だ。
 だが、コンソールのスロットに突っ込んでも何も変化が無かったのは確認済みだ。

「あれだけ使って『バッテリー』は殆ど減っていないみたいです。あとまる二日くらいは『充電』しないでも弄ってられそうですよ」

 トリスが朗報を言う。万が一充電出来ないとなれば無用の長物と化すのでこれは良い情報だと言える。少なくともあと二日は色々試せることが判明したのだ。

「字や言葉についてはあんまり問題ないかな? 『英単語』は使われてないけどオースの言葉に準じた物になってるし」

 ミヅチの言う事は俺も予想していた通りだ。

「そうか。飯の後、俺たちは外にある隠し扉で開きそうな物がないか探してみる。このフロアでまだ行ってない部分もあるしな。その間、お前たちはタブレットの方を頼むわ」

 簡単に方針を伝えて豆茶を啜った。



・・・・・・・・・



 結論から言うと全ての隠し扉(?)は幾らIDカードを提示してもダメ。
 扉本体や、傍の壁にカードを接触させてもうんともすんとも言わなかった。
 これは、手下のヴァンパイアにIDカードを持ったまま四層とあの部屋までを往復させていたのだから余計な扉については全てロックしているのだろうと予想された。
 ロックを解除するにはコンソールからしかるべき操作を行う必要があるのだろう。

 また、分かれ道の先を調査してみたが結局行き止まりになっており、そこまでの間には開かない隠し扉が幾つもあっただけで、モンスターすら居なかった。

 しかし、肩を落としながら例の部屋に帰った俺達を待っていたものは大きな進展だった。

 そろそろ夜も更け、真夜中近い時間だ。
 睡眠を取った方が良いことは確かだが、進展を目の当たりにするととても寝てなど居られない。

 あるアプリケーションを起動したままコンソールに突っ込むことでコンソールが通電したのだ。
 だが、コンソールの機能もかなり失われている(勿論俺のディレイドブラストファイアーボールが一番大きな原因だろう)上に、天井(床)に張り付いているから操作については困難を極めていた。

 この時からゼノムとギベルティ以外の俺たち全員は、殆ど不眠不休で二日以上も情報の収集に努めた。

 まずはそこそこ重要な所から話そう。
 本当に重要な事は一番最後に話す事にするよ。

 あのタブレットの持ち主(本当の持ち主かどうかは判らない。ミヅチたちによると本来の持ち主は別に居るらしいとの事だ)の権限ではアクセス出来る情報に制限があった。それでもかなりの事が判ったんだけど。

 この船(?)自体は実は宇宙船ではない。

 宇宙船本体(宇宙船の名前は判明しなかった)はオースに墜落して完全に失われてしまったようだ。しかし、脱出艇という訳でもないらしい。この名前は表示された近い言葉からの推測に過ぎないけど“第六収集端末兼変性装置”というのが今居る場所の本当の名前のようだ。

 母船となる宇宙船にはこれと同じような物が合計八個搭載されており、そのうちの一つらしい。

 この装置(?)自体は宇宙船とは呼べず、惑星の環境改造化テラフォーミングを行うことが主目的の物のようで、そもそもはこの星の改造をするために宇宙船から地表に撃ち込まれた物であった。

 なお、俺たちが“オース”と呼んでいたこの星だが、“ルーグ3”と言うのが宇宙船を作った文明における正式な名前のようだ。ルーグ3星系は主星であるルーグ3を中心に、恒星である太陽がその周りを公転する、宇宙でも非常に特殊な星系らしい。

 主月のカルタリも副月のネイタリもオースことルーグ3の惑星だった。なお、ルーグ3自体も自転している。この星系には合計九つの惑星があるが、二つの月は第一と第二惑星であり、太陽は第三惑星でもあった。それ以遠に六つの惑星もある。

 そして、俺達の出身である太陽系(この文明風に言うとドゥーヴァイン4星系と言う事になる)は銀河系の別の渦状腕に位置している。

 宇宙船の元々の目的は遥か大昔、地球を含めた複数の可住惑星に撃ち込んだ収集端末兼変性装置から何らかのデータを吸い上げ、それとは別にルーグ3に新しい収集端末兼変性装置を八個撃ち込む事であった。

 本来この二つの作業に接点は無い。

 それぞれが独立した別の作業である筈だった。

 しかし、データ収集についてはなんの問題も起きず、滞り無く進められたものの、その後の超空間航行ハイパードライブ中に何らかのアクシデントが発生した。これが一体どのような物なのかは不明だ。

 通常空間に戻り、目的地であるルーグ3に収集端末兼変性装置を撃ち込む際にもトラブルが発生したらしい。このトラブルが元で宇宙船はルーグ3の大洋のど真ん中に墜落し、乗組員は全員死亡した。

 が、気が付いたらこの星の住人として新たな生を受けていた。
 この部分については俺達と一緒だとも言える。

 この内の一人がカミラ・エリスナーだ。そして、ゲインこと、ゲイン・ファグリア・バーハッヅ。なお、ヴァンパイアロードのマーセット・デイオークは元の名をタルボ・ファクナーと言うらしい。

 勿論他にも何人も居る。生きていたコンソールの一番アクセスしやすい場所にあったファイルに、恐らくは記録者であろうタルボ自身が判る限り詳細に書き込んでいた。

 この人名録以外のこれから話す部分については俺たちが全員で話し合った推測も多分に含まれている。
 本当かどうかはそれこそ神のみぞ知るところだろう。

 転生した乗組員たちは出会った者も居れば誰とも出会えずに死亡した者も居たようだ。
 これについては転生後に出会えなかった人はそもそも転生しているかどうかすら怪しいからなんとも言えないと思ったけど、そう推測されていたし、転生後のレベルアップ時に神様に転生者の一覧を見せて貰っていたのであれば“転生している”という確信になるだろうとの結論になった。

 そして、幸運にも出会った者達はいつしか二派に分裂して争いを始める。

 一派はカミラ・エリスナーやゲインが所属しており、タルボはもう一派に所属していたようだ。優勢だったのはカミラ・エリスナーやゲインが所属していた派閥のようだが、タルボの派閥に居た某かのメンバーが宇宙船の決め手となる情報を握っていたようで勝負はつかなかった。
 タルボたちの派閥はなんとか宇宙船を探し出し、修理しての帰還を望み、もう一派も似たようなものだったが思想的な違いかなにかで袂を分かったらしい。

 ついでに補足しておくと宇宙船の墜落時も含めてそれらがいつ頃起きたのかは判らない。
 勿論、この収集端末兼変性装置が搭載されていた宇宙船がいつ建造されたかというのも判らないし、地球に収集端末兼変性装置がいつ撃ち込まれたのかという事すらも皆目見当もつかない。

 大昔だろう、程度の推測しか出来ない。

 そうなると地球との時差というものについてもさっぱり不明なんだけど、こうしてあんたに話している以上、あんまり大きく離れているようなこともないと思うんだよね。

 トリスやミヅチは生前SF小説なんかにも手を出していたらしく「タイムスリップでもあったんじゃないのか?」と仮説を述べているけど全員に否定されたらムキになって「光速を超える速度を出すと過去や未来と繋がる可能性が……」とか「むちゃくちゃ距離が離れるだけで時間の進み方が……」とか訳の解らない妄想を垂れ流し始めたので、皆は始末に負えずに閉口して「はいはい」としか言わなくなった。

 次はこれらの事実だと思われる事についてよりはかなり信憑性が落ちる、ほとんど妄想に近いものだ。

 地球を含めた幾つかの可住惑星から吸い上げた何らかのデータだが、本来は宇宙船のデータバンクに収蔵される。しかし、航行中のアクシデントのためか人為的なものなのか、原因については全く不明だが、そのデータの一部がルーグ3に撃ち込まれた収集端末兼変性装置にも反映されてしまう。

 この収集端末兼変性装置については生物の脳波などから文化や文明についての情報を収集する機能があろうことはまず間違いないと思われるが、どのようにして惑星を改造するのかについては全く以って不明だ。

 少なくともこの第六収集端末兼変性装置においては英語圏や日本の文化圏の情報が反映されたものになったのだろうな、という程度の推測だ。文字はともかく言語の端々なんかに現れている。

 モンスターについてもそうではないか、と思われ話し合いがなされたが結論は出なかった。地球の文化データの一部が反映されたと考える者も居れば、そりゃないだろうと言う者も居る。

 地球の各地に伝わる伝説なんかはひょっとしたら地球に撃ち込まれた収集端末兼変性装置にもこのデータの逆流現象があり、僅かにそれが反映されたと思うと主張するミヅチやトリス。

 アホくさ、と否定してかかるベルやロリック。

 そんなの考えても判る訳ねぇし、判った所で今後に意味があるとは思えないからもっと有効な事に頭を使えと言う俺やバストラル。

 思考を放棄して転がっていたガラクタの中から円形の部品を見つけて来て、おはじきを始めたラルファとグィネ。

 目を白黒させるばかりで全く話に付いて来れず、髭の手入れを始めたゼノム。
 それを横目に飯炊きが自分の仕事だと言わんばかりに野菜を刻み始めるギベルティ。

 とにかくアクセス可能な情報が少ないうえに、決定的な情報(確実に真実だろうと断定可能なもの)については得られないので現時点でいくら推測したってあんまり意味は無い。

 リーダーの強権を発動させて無理やり調査を進めさせた。

 それにも拘らず、得られた情報はあまりにも少なく、結局推測だらけになってしまうのは締まらないけど、仕方ない。

 ベルが言うにはデーバスにあるという、ベンケリシュの迷宮もここバルドゥックのようにクレーター状の土地にあるらしい。
 第六とは別の収集端末兼変性装置なのだろう。

 将来的にそこの調査もしてみたいということになった。

 それはそうと、迷宮についてだが、このバルドゥックの迷宮については収集端末兼変性装置がある程度の管理を行っているようだ。と、言ってもかなりの機能障害を起こして久しいらしく、正常ではないようだけど。

 迷宮のモンスターについての情報は何一つ得られなかったが、どうも本来は炭素系生物を生み出す何らかの実験設備らしい。そしてそのデータは元々持っていたものとは違うらしいということだけは判った。生物の変異や突然変異を引き起こすためのものでもある可能性すらある。この時点でトリスとミヅチの主張は退けられ、彼らは肩身の狭そうな表情になる。

 最後に本当に重要なことだ。

 まず、魔法について。
 これだ、という情報については何も得られなかったが、唯一判ったことは宇宙船の乗組員も魔法については生まれ変わってから初めて触れたらしいということ。
 つまり、魔法はオース独特のものである可能性が高いことが判った。

 次に神について。
 やはり神というのは実在するらしい。
 高次の生命体なのか、宇宙の意志なのか、何なのか全く不明。
 でも、何らかの方法で神として昇神することも可能ではあるらしい。
 これ以外は良く判らないままだ。

 で、他の隠し扉について。
 これはこの収集端末兼変性装置全体の概略図などのデータにアクセス出来ず、それに伴って扉のロックを解除出来ない事が判ったのみで、非常に残念な結果に終わった。
 あのタルボの言葉だとまだ何処かに情報を得られる端末なり何なりがありそうだ。

 それから、オースの地図について。
 宇宙船ではなかろうとルーグ3(オース)全体の地形データがどこかにあるだろうと散々調査したが、アクセス可能な場所にはそういったものについては何一つ転がっていなかった。
 これについてはもっと上級の権限でログインするか、どうにかして隠し扉を開いてその奥にあると想像される端末を使えるようにしない限りはどうしようもないと諦めるしか無い。

 そして、これらの情報を得られたコンソールを含めた設備について。
 迷宮を維持するエネルギーとこのコンソールやタブレットに充電するためのエネルギーは全く別のもので、このコンソール類を維持するエネルギーは既に殆ど枯渇状態であり、あと幾らも持たない、と言う事が判明した。

 そのため、調査はここで打ち切る事になる。
 これ以上はコンソールやタブレットの操作方法について今以上の権限が必要だ。
 なお、攻撃魔術などで無理矢理にでも隠し扉を開ける方策については諦めざるを得なかった。
 理由は正規の手順以外で特定の部屋に侵入した場合、その部屋の設備が生きているのであれば部屋に置かれている端末の全データは瞬時に抹消されるというセキュリティの情報を得たからだ。
 部屋の設備が生きていないのであればそもそもデータを見る事も出来ない。
 生きていたら消去される。つまり、手詰まり。

 何丁もの熱線銃が修理されずに放っておかれたことについても納得した。
 単にタルボに修理の知識が無いだけでなく、修理方法や構造の資料も無い。
 修繕の道具すら満足に無い。
 彼も元から壊れていたコンソールを何とか修理しようと相当頑張ったようだが結局碌な修理は出来なかったようだ。

 こうなると現時点では手の出しようがない。
 それなりの情報を得たことで満足するしかない。

 
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ