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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第二百四十五話 The Un-Dead 8

7447年7月15日

 ヴィルハイマーの野郎、HPが回復して……ん?

 ヴィルハイマーとヴァンパイアロード、どちらを先に始末すべきか。
 当然厄介な方だ。
 となるとヴァンパイアロードになるんだろうが、どうせ邪魔されるんだろうなぁ。
 ヴィルハイマーは赤く光る虚ろな目で俺を見ているが、先ほど立ち上がった身のこなしを考えると結構厄介そうでもある。
 こいつだけならディスインテグレイトで一発だ。
 さっさと塵にしてやるのもいい。
 その程度の魔力は十分過ぎる程ある。

 だけど、バースやジルもいることだし、せめて死体くらいは魔石と共に残しておいてやりたい。
 ヴァンパイアロードの方はヴァンパイアロードの方で目ン玉を採らなきゃいけないからディスインテグレイトなんて以ての外だ。

 僅かに逡巡したが、肚は決まった。

 まず、ヴィルハイマーを倒す。
 然る後にHPを回復させているヴァンパイアロードだ。
 やっぱりこいつ、戦闘は素人だ。
 それだけの魔法の技能レベルと魔力(MP)があるなら回復なんかよりライトニングボルトでもファイアーボールでも使えよ。
 女とタイガーマンがデス・ナイトになることは心配していない。

 なぜなら、ヴィルハイマーを【鑑定】するとHPとMPについて、括弧書きの上限の方がゆっくりと落ちて行っていた。その代わりに能力値の方がゆっくりと増えている。気になって魔力感知ディテクト・マジックを使ってみたら女とタイガーマンからヴィルハイマーとの間に魔力の線が繋がっているのが見えた。

 ヴァンパイア複数を生贄のようにしてヴィルハイマーをパワーアップでもさせたのか。

 さっき、二人の死体から武器を取ろうと見せかけていたのは触るためか……。

 ヴィルハイマーの野郎は今こんな感じだ。

【ロベルト・ヴィルハイマー/24/2/7404】
【男性/19/3/7403・精人族・ヴィルハイマー家四男】
【状態:ヴァンプリック・デス・ナイト】
【年齢:45歳(0歳)】
【レベル:20】
【HP:200+36(200) MP:60+16(60)】
【筋力:39(19)】
【俊敏:51(25)】
【器用:49(24)】
【耐久:43(21)】
【特殊技能:赤外線視力インフラビジョン
【特殊技能:吸血ドレイン
【特殊技能:麻痺パラライズ
【特殊技能:石化ペトリフィケーション
【特殊技能:精力吸収エナジードレイン
【特殊技能:霧化ミスト・フォーム
【特殊技能:蝙蝠化バット・フォーム
【特殊技能:倍速化ダブル・アクセル
【特殊技能:魔法抵抗マジック・レジスタンス100】
【特殊技能:地魔法Lv6】
【特殊技能:水魔法Lv6】
【特殊技能:火魔法Lv6】
【特殊技能:風魔法Lv5】
【特殊技能:無魔法Lv6】

 何にしても連発可能な魔術(?)ではないのだろう。

「グリィィィドォォォ……貴様ァァァ……!!」

 やけに嗄れたような声でヴィルハイマーが吠える。
 その顔は急速に水分が減ったかのように皮膚は乾いて目は落ち窪み、頬も大きく痩けている。
 相変わらず口の端からは乱杭歯が覗き、瞳は今までよりも強く赤光を放っている。

 放っておけば更にパワーアップしそうだから時間を掛ける訳にはいかない。
 粘れば勝手に自滅してくれそうな気もするけど。
 ヴァンパイアロードの方もいつまでも黙ってくれているとは思えないし。

 死霊討伐グレイブ・ストライク魔法抵抗マジック・レジスタンスを通るのかは不明だが、いま暫くは効果時間が続くはず。
 幸いこの場所は多少開けている。
 暴れるには充分な広さだ。

 正念場だろう。

 行くぞ!

「うぉぉっ!」

 小楯バックラーを構えるヴィルハイマーへと突撃した。

 盾に埋め込まれたスパイクの突きを躱そうと身を捻るが、ヴィルハイマーは恐るべき反応速度で突きの方向を修正してくる。
 とっさに銃床でスパイクを弾き、腹に蹴り。

 ヴィルハイマーは尻餅をつくように倒れた。

 チャンスとばかりに木銃を回転させ胸の辺りを見ながら膝と腿の装甲の隙間に銃剣を突き込んだ。

 俺の視線誘導に惑わされたのか、とっさに小楯バックラーで胸を庇おうとする。

 その御蔭で見事に突きが決まってくれた。

 だが、その瞬間に銃剣から陽光が失われてしまう。
 しかし、肉に食い込んだ手応えは本物だ。
 HPにもきっちりとダメージが入っている。
 あんまり多くはないけど。

 ヴィルハイマーは素早く転がる。
 【倍速化ダブル・アクセル】だろうか。
 予想よりずっと速い。

 が、少しだけ意外に思う。
 なぜ避ける?
 この機を逃すな!

 ストーン・アローの弾頭を八個にしたものを脇の下や脇腹、太腿の前面以外など装甲が無いか、薄そうな場所に連射する。
 多少外れてもいいのだ。

 とにかく可能な限りの速度で連射した。

 起き上がるまでに何十発も命中した。
 勿論外れたものもあるし、盾や鎧の装甲を利用して弾かれたものもある。

「……効かん」

 嬉しそうに嗤いながら跳ね起きる。
 尤も、連射速度や弾頭を増やしている事自体にはびっくりしていたようではあった。

「何ッ!?」

 ヴァンパイアロードの方が余程慌ててしまったようで、驚愕に震えた声が漏れている。
 ついでにその時使っていた魔術も集中力が乱されて失敗しているようでもあった。

 跳ね起きたところに銃剣を構えて突進し、顔面目掛けて突き!

 素早く避けられて銃剣の穂先が小楯バックラーの二本のスパイクに絡め取られた。

 なんという素晴らしい反応速度!
 だが、俺はそうなるべくして突きを放っていた。

 こいつは囮だよ!

 銃剣から左手だけを離し、右手も逆らわずにグリップから手を離してスリングストラップを掴むと再び左手から攻撃魔術を放つ。
 今度はフレイムアローを八本弾頭だ!

 至近距離から放ったにも拘らず、ヴィルハイマーは超速度の反応でその殆どを小楯バックラーで弾き、弾き切れなかった数発はこれまた空いている右手で使った風魔法の反動を利用して全て躱していた。
 銃剣を取り戻す。

 ふん。思った通りだ。
 用心のため俺もフレイムアローの魔術を放った直後、眼前に風魔法を使って距離を離していたんだけどね。
 アンデッドも痛みを感じるようではあるが、その時だけのものなんだろう。
 流石に膝と腿の間に突きを決めている痛みを無視して魔術が行使出来るとは思えない。

 先ほど俺の攻撃魔術を大量に食らったとは言え、魔法抵抗マジック・レジスタンスの残りはまだ充分にある。
 にも拘らず回避や防御を優先しようとした。
 以前の意識、生前の冒険者の意識とヴァンパイアの意識がまだ抜けきってねぇな。

 俺なら多少ダメージを貰っても回避や防御を捨てて攻撃一辺倒にする。

 事実、フランケンやドゥゲイザーはそうしていた。

 なら、やることは一つ。

 ヴィルハイマーが慣れていないうちに魔法抵抗マジック・レジスタンスを削りとってやるだけだ。

 距離があるため魔術行使に問題はな……い、速!

 盾のスパイクを振りかざして突進してくる速度は凄まじい勢いだった。
 膝に傷を負っているのに……骨じゃないからか!?

 もう一度風魔法を使って後ろに吹っ飛びながら再び八本弾頭のフレイムアローを今度はミサイルにしてヴィルハイマーの足を目掛けて放つ。

「じゃっ!」

 跳び上がって躱そうとするヴィルハイマー。

 少し遅れて火の矢(フレイムアロー)が急上昇し、全て命中した。
 当然命中と同時に掻き消えたけど。

 当然着地を狙ってもう一回!

 幾つか弾かれてしまったが、命中弾もある。
 それも勿論、命中と同時に消滅したんだけど。

「やるなァァァ、お前ェェェッ!!」

 そう言いながら着地と同時にこちらへ突っ込んでくるヴィルハイマー。
 再度銃剣に死霊討伐グレイブ・ストライクを掛ける時間しか無かった。

 スパイク付きの盾を左手にしたヴィルハイマーはスピードで勝負をするつもりらしい。

 スパイクを躱し、銃床で胴を薙ぐ。
 それを超反応で躱されたところにしゃがみ込みつつ、傷付けている右膝に回し蹴り。
 当然のように足を引いて躱される。

 勢いを殺すことなく転がって、転がりながら千本に死霊討伐グレイブ・ストライクを掛けて投げる。

 ケツに命中!

「痛ぇなァッ!」

 立ち位置を入れ替えた。
 魔法抵抗マジック・レジスタンスはあと二十三か。

 急げ!

「お前には、攻撃魔術は不利か……だが、一撃で骨までへし折ってやれるぜぇぇッ!」

 解ってるじゃねぇか。
 ストーンアローを一本放ち、それを躱したところにもう一発!
 盾で弾かれる。
 更にもう一発!
 また盾で弾かれる。
 そしてもう一発!
 当然、盾で弾かれる。
 今度はミサイルを付加してもう一発!
 体の中心線を少し外すように放つ。

 ヴィルハイマーは用心深く盾を構えている。
 弾く瞬間を狙って魔法を掛けていない(掛けられないタイミングだ)千本を投げる。

「グッ!?」

 脇腹に命中。
 即座に八本弾頭のストーンアローを放つ。
 同時に突進!

「クゥッ!」

 転がるように横っ飛びで避けるヴィルハイマー。
 流石にダメージを受けた直後は即座に風魔法って訳には行かないようだな!
 俺の突進はフェイントで、すぐに風魔法で後方にすっ飛んで戻ったけど充分に引っ掛かってくれたよう……糞。

 転がった先でヴィルハイマーは自分の長剣ロングソードを拾い上げていた。

 だが、そこに狙いすましたライトニングボルト!
 当然掻き消える。
 こいつは弾いたり出来まい?

 そして筋収縮を起こしているところにフレイムアロー!

 ってまた弾かれたよ。
 筋収縮起こさないとか、反則だろ!
 よく考えたら掻き消されてるんだから命中とは言えない。
 筋収縮なんか起こりっこ無かった。

 って、引っ掛かりやがった!
 今、奴との距離は十mはある。
 俺の驚いた顔を見て愉しそうに顔を歪めている。
 調子に乗って突っ込んで来い!

「ふしゅあぁぁッ!」

 小さな気合と共にこちらに突っ込んで来る。

 今だっ!

 ファイアーウォール!

 瞬時に高さ三m程の炎の壁が生まれる。
 どうせ掻き消しながらそのまま来るだろ?
 残念、炎の壁のすぐ手前にグロウス・スパイク!
 百五十本セットの大盛りでなぁぁッ!!

 地面から石のスパイクが生えてくる速度は大して速くはない。
 だが、中途半端でも魔法抵抗マジック・レジスタンスを使わせるのが目的だからいいのだ。
 そのために距離を取り、視界を塞ぐために炎の壁(ファイアーウォール)を掛けたのだ。

 スパイクの高さは十㎝に成長している。
 最初の一歩で二本が右足に踏まれて消える。

 二十㎝。
 七本程が更に踏み出す左足に蹴られて消えた。

 ヴィルハイマーの上を狙ってファイアーアロー!
 跳ばさせてやらん!

「クソッ!」

 三十㎝。
 更に十本程が勢いのまま体当りされて消えた。

 恐るべき身体能力で急停止するヴィルハイマー。

 当然ヴィルハイマーはファイアーアローが飛び抜けた時点で残りの石の杭(スパイク)を跳び越そうとする。
 もう四十、いや五十㎝には達しているからな。
 そして……。

 ファイアーカタパルトミサイル!

 勿論八本弾頭だ。

「グギャッ!!」

 一本弾くのがせいぜいだったろ?
 あれじゃあネガティブHPすらも残っていない筈だ。
 即死と言ってもいいだろう。

 さあ、次はいよいよヴァンパイアロード。お前さんの番だぜ。

 俺の残りMPは二千弱。
 グロウススパイクのトラップで千五百以上食われたのは痛いな。
 でもあれは仕方ない。

 ズールー達はまだ手間取っているようだ。
 俺がこの部屋に飛び込んでからまだ二、三分だろうが、手間取りすぎだろ……。
 仕方ないけど。

 【HP:0+751(498) MP:32+50(558)】

 ふん、それなりに回復しちまったようだ。
 MPもかなり減っている。
 とは言え、カノンを使える以上、俺を何回か殺せるくらいは残ってる。

「充分だ……」

 ヴァンパイアロードは部屋の中程より少し奥、ベッドらしいものから立ち上がって満足そうにほくそ笑みながら俺を見る。
 遠くて何を言っているのかは解らない。
 そうかよ。
 俺の位置はまた部屋に飛び込んだばかりの辺りまで戻っている。
 俺との距離は二十m以上か。

「むぅん!」

 予備動作なしに突っ込んできた!
 風魔法か。

 ほぼ同時に飛んできたストーンボルトをアンチマジックフィールドで消す。
 ヴァンパイアロードはそのまま突っ込んで来る。

 またも魔術を交えての高速白兵戦をご所望か。

 正直言ってヴァンパイアロードが相手だとこれが一番きつい。
 もう風魔法で吹き飛び続けて俺の体はガタガタだ。

 加えてヴァンパイアロードの身体能力はパワーアップしたヴィルハイマーより上だし。
 地を蹴っての突っ込み速度や突き出す手刀の速度は未熟であろうテクニックを補って余りある。

 突きを潜り、銃剣を振り回し、それが躱され、更に蹴りをいなされる。

「風魔法で逃げないのか?」

 俺の様子を見たヴァンパイアロードが嘯く。

 くっそ。
 とにかくでかいのを使って目眩ましでもして仕切り直しをすべきか?

 そう思った瞬間……!
 目の前のヴァンパイアロードが残像でも残したかのような超速度で踏み込んできた!

「グッ、オオアアッ!?」

 体の力が一気に抜けるような感覚に陥った。
 俺の左腕の肘の内側に手刀が突き刺さっている!
 麻痺!?
 即座に解麻痺リムーブ・パラライジズの魔術、そして死に物狂いで風魔法を使って離脱。
 左手に治癒魔術。

 ついでに【鑑定】……やはりか……。

【アレイン・グリード/5/3/7429 】
【男性/14/2/7428・普人族・グリード士爵家次男】
【状態:良好】
【年齢:19歳】
【レベル:31】
【HP:249(251) MP:1828(7453) 】
【筋力:40】
【俊敏:57】
【器用:36】
【耐久:42】
【固有技能:鑑定(MAX)】
【固有技能:天稟の才(MAX)】
【特殊技能:地魔法(MAX)】
【特殊技能:水魔法(MAX)】
【特殊技能:火魔法(MAX)】
【特殊技能:風魔法(MAX)】
【特殊技能:無魔法(MAX)】
【経験:3300001(3600000)】

 なんてこった!
 傷は大部分塞がっているが、さっき上がったレベルが落ちてやがる!

 それも大問題だが、体の力が抜ける感覚がきつい。
 こうなったら最後の手段だ。

 ディレイドブラストファイアーボール!
 威力十五倍!
 遅延一秒!

 ころん、と転がしたダイヤモンドのような結晶を見たヴァンパイアロードの顔が歪む。

「貴様! ここがどこだか……!」

 知るか!

 同時に使い慣れた七百MPのアンチマジックフィールド!

 直径六十㎝以上の巨大なファイアーボールが炸裂した。
 どんなに身体能力が高かろうとこいつの礫全ては躱せまい!

 
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