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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第二百四十二話 The Un-Dead 5

7447年7月15日

 今ので四十か……。
 勿論、通路の左側に連なっている小さな倉庫のような小部屋の数だ。
 大体五、六十mおきくらいで小部屋があった。
 一応出てきた小部屋の入り口の前の床と壁には墨で目立つようにでっかく「1」と書かせているから戻る時にも見落としはありえない。

 前方を見る限り小部屋はここで終わりのようだ。
 その最後の小部屋に入る。
 相変わらず殺風景で塵や埃しかない。
 足跡も最近の物だと確信出来る程はっきりした物は最初の部屋以外からは発見出来ていなかった。

「この先にはもう部屋はなさそうです。あの明かりが強くなっている辺りまで三百mというところでしょう。あそこまで行こうと思います。何か意見はありますか?」

 バースもジルも意見は無いようだ。

「あんまり行き来は無いみたいですね……」

 ヘンリーが右の通路に続く足跡を見てポツリと呟く。

「そうだな。でも、足跡自体は結構な数だ。見た感じ毎週とまでは行かないが一月に一回くらいは往復されていたようには見えるな……」

 ここまで通路の足跡を観察していたらしいバースが答えた。
 確かに彼の言う通りだ。
 古い足跡の上に新しい足跡が幾つもあり、その上にまた新しい足跡が出来ているようだしね。

 この足跡の歴史は地面の埃の堆積の仕方から言って百年やそこらじゃない。
 何百年か、事によったら何千年も前からこの通路はあるように思える。
 ならばあのヴァンパイアの生誕(?)以前から何度となく往復されていたという事だ。
 問題ない。

 通路の先を目指す。



・・・・・・・・・



 通路の先は一度直角に右に曲がっており、数m先でまた直角に左に曲がっていた。
 そして、その先はまた数m程で小さな部屋に続いていた。
 直径七、八m程度の少し歪んだ感じの円形の部屋だ。
 部屋が確認された時には天井の高さも上がるのかな? と思ったがそんな事はなかった。
 天井の高さは転移してきた小部屋やこれまで通って来た通路同様、三m半程度で変わらないままだ。
 俺達が入って来た出入口の反対側にも同様に別の通路に続く出入口があり、右手の方にも一箇所同様の出入口がある。

 それと、部屋の中にはモンスターがいた。
 四層や五層で部屋の主になっているようなグールだ。
 数は八匹。
 レベルは全て十以上で、それを考慮すると四層や五層どころではない。
 結構強いと思われる。

 更に【鑑定】で見てみるとどうもゴブリンだのオークだのが元になっているようではない。普人族ヒューム精人族エルフ山人族ドワーフ矮人族ノームなどなど、雑多な種族がグール化しているように見える。
 でも、四層と違うのは湿度があまり高くないからか比較的綺麗な肌の奴が殆どで顔が崩れているような事もない。
 だからかどうか知らないが、全員個有名まで残ってる。

 まぁでも、こんなのは氷漬け一発だろ。
 普段ならグールが自ら足を千切って動きまわらないように下半身全体を氷漬けにするが、その氷に登るための成形が面倒だし、そもそも自分で足を千切るのにもある程度時間が掛かる。
 全員で強襲を掛けるならレベル五の水と火魔法による膝上くらいまでの氷で充分だ。

 奴隷たちに強襲を掛けさせて一気に始末させた。
 バースやジルにも今更大きな驚きも無いようだ。

「魔石は後にしとけ。先を急ごう」

 グールが完全に死んでもう蘇らない事だけを確認して右手の通路を目指す。

 正面の通路の方は、偵察させたところ今まで通って来たような通路が続いており、部屋を出る際の左右の折れ曲がりも一緒だった。部屋を中心とした線対象になっている感じと言えばいいのかね? また、俺たちが辿って来たのとは別の古い足跡も発見されたが、全ての足跡は右手の通路の方が多いように見えたのだ。

 右手の通路は真っ直ぐに続いている。
 しかし、百m程で左右に別れるT字路のようになっているようだ。
 足跡が残っているからあそこまで行けばどっちかは判るだろ。

 埃を掃除させていないズボラな自分を恨むんだな。ロードさんよ。

 T字路まで進むと、期待していた通りに通路上を往復していた全ての足跡は左の方へ曲がっていた。
 右の通路へ続く足跡は無い。

 あ、さっきの部屋からここまで罠について感知の魔術を忘れてた。
 ここまでは罠はなかったけど先は判らないし、忘れずに使っとくか。

 ……ん、見える範囲には無いみたいだ。

 ヘンリーとメックを先頭に、また足跡を辿って通路の先を目指す。



・・・・・・・・・



 進んでいた通路が右に折れ曲がり、先を窺うべく右側の壁に張り付いているメックを見ている時にふと思い出しただけなんだけど、そう言えばヘンリーとルビーはレベルアップ寸前だった。
 エンゲラもこのところ強敵相手にかなりの大活躍を見せていたからレベルアップしている筈だ。
 確認だけしておくか。

 【鑑定】の視力を使う。

 が、ヘンリーの後頭部に視線を合わせようと目線をずらした時に気が付いた。

 今俺の立っている十m程先の、右に折れ曲がる正面の壁に輝度が上昇する扉のような板状の物があった。
 扉は床から天井までの高さがあり、幅は二m強くらいだろうか。

 思わずぎくりとしてしまう。

 そのまま周辺をサーチしてみると扉を見付けた正面左側の壁にも同様に鑑定可能な壁がある。
 まずい。

 後ろを振り返って今まで通って来た通路を見ると幾つか同様の扉があるのに気が付いた。
 ついでに俺の立っているすぐ脇にも。

 だが、不意打ちを掛けるように扉が開く様子はない。
 そもそも、周囲の壁と一体化しているようにしか見えず、見分ける事自体が困難、と言うよりまず不可能だ。
 【鑑定】以外には。

 そっと合図を送り、皆が前進しないようにその場での待機を命じた。

 考え込むふりをしながら俺の脇の扉を丹念に観察する。
 壁に右手の前腕を着けてその手に額を当てるような姿勢だ。
 ちょっと唸ってみたりもした。

 やはり鑑定を使わければ周囲の壁と見分けが付かない。
 何より、肉眼では隙間すら見付けられなかった。

 取り敢えずそのまま鑑定してみる。

引き戸(スライドドア)
【-】
【状態:劣化(経年)】
【加工日:-/-/-】
【価値:-】
【耐久:854692435】
【性能:-】
【効果:全体がスライドする事によって、ある空間と別の空間の出入口を任意に遮断したり開放したりすることが可能なもの】

 まぁ納得の行く【状態】と異常な程多い【耐久】、当然のような【効果】以外は記載がない。この耐久値だと俺の攻撃魔術を以てしても破るのは困難だ。理論的に破れない訳ではない、と言うだけの、要するに壁とおんなじだろ、これ。
 それはそうと、開き戸じゃなくて引き戸だったのね。
 因みに開き戸だとスライドの所が【一辺を中心に回転する事によって……】に変わるだけだけど。

 しかし、所々記載がない事を棚に上げても不自然だ。
 それ以前にスライドドアであればスライドさせる空間が必要になる。こんな風に壁と一体化させるような構造は無理だ。一度奥か手前に扉全体をずらさない限りは開閉は不可能である。二次元上の存在じゃない限り。

 床を見ても通路側に堆積している埃に変な跡はないから奥に引っ込んでから左右か上下に……ああ、上下にスライドする可能性はあるのか。

 むぅ……。

 どんなに見つめてみても扉部分と壁の境については全く見分けが付かない。
 触ってみたとしても毛ほどの筋一つ見付けられそうにない。
 手袋脱ぐのは不自然過ぎるからそこまではしないけど。

 こりゃ要調査だな。
 後でだけど。

 あんまり長い間壁に向かっているのもあれなので先に行くことにする。



・・・・・・・・・



 こうしてかなりの時間を歩いた。
 ジルが大体の地図を描いているが、全員とっくに気が付いている。
 ここは四層じゃない。
 四層にはこれだけの空きスペースなんか無い。
 皆、黙っているが俺には(多分、ズールーとエンゲラもだけど)確信がある。
 ここは、十二層か十三層だ。

 途中、さっきのグールが居たような部屋みたいな広間は二つあった。

 一つはワイトとかいう、グールだかゾンビだかが黄色っぽく光を纏ったようなモンスターが三匹居たが、【鑑定】で結構遠くから見えた。特殊能力の一つに【精力吸収エナジー・ドレイン】を持っていて危なそうだったので、威力マシマシにしたファイアーボールを鑑定した場所から部屋の中に十発くらい撃ち込んだら全滅してた。

 俺の経験値は二十万以上も増えてレベルアップした。こんなに増えるなら氷で固めて戦闘奴隷に始末させればよかったとちょっと後悔しちゃったよ。魔法の武器じゃないと傷つけられないらしいけど、アンデッドモンスターみたいだったので死霊討伐グレイヴ・ストライクなら効果があったと思う。

 もう一つの広間にはスペクターという往年の暴走族みたいな名前のモンスターが一匹だけ居た。でも、半透明で幽霊みたいな奴だったので氷漬けは効かないだろうと思ってこいつも魔法を連発して殺そうとしたが、結構素早いのな。慌ててMPを五〇〇ばかり注ぎ込んだ超特大のフレイムスロウワーでこんがりとローストしてやった。

 【精力吸収エナジー・ドレイン】も持ってたし危ないよね。驚いたことにこいつの経験値は一匹で十八万もあった。何か言ってたような気もしたが、声が小さくてよく聞こえなかったし、「何だお前」みたいな感じで始まっていたからロードとやらが引き篭もっている場所への門番みたいな奴だったんだろうと思う。

 因みにこの幽霊、生意気に魔法も使えるようで最初は俺のフレイムスロウワーに対してアンチマジックフィールドで対抗して来やがった。でも、四〇〇くらいしかMPが無かったので結局は俺の魔術に押し負けてぎゃーすか喚きながら死んでいった。最期だけ結構うるさかった。

 こいつだけは魔石を三つも落としたので(死体が残らなかったのだ)行き掛けの駄賃に拾っておいた。ああ、複数の魔石を落とす魔物は知られてる。俺は今回が初めてだけど、ドラゴンみたいな強大な奴なんかがその代表例だ。前にも言った事あるし、知ってるだろ? 大きさは大した事がなかったけど色は白を通り越して完全に透明に近い美しいものだった。【鑑定】したらその価値は一つ一〇〇万を少し超えてた。うっほ、これだけで二千万以上か。

 バースとジルが目を白黒させているがもう気にしてない。

 ついでにこの部屋の隅には小汚いゴミだか埃だかの山があった。魔石を鑑定しつつジェスに命じて調査させたが、よく解らない汚い小さな板のようなものが堆積しているだけでやっぱりゴミだったらしい。

 ゴミを漁っている時間はないので調査については後回しだ。

 至る所に扉を発見していたが当面気にしない事にして先を急ぐ。
 今のところ罠は見付かっていない。



・・・・・・・・・



 そして急いだことを後悔した。
 ある曲がり角を曲がって少しだけ進んだ時の事だ。

「ブツッ……ザザッ……告ぐ(ダフ)……此の上(デ・ミッス)……を戒む(カル・メインリー)……ザザッ……は……疾く(ビーク)見分ける(バルトー)属する(ヒーヴ)デッシ……さい……ば……取り除きます(ダカル・フィーク)……うちに(ログ・ヒ)去ね(クリュグ)……参つ(ミーム)

 は?

 古い感じのラグダリオス語だ。
 壊れる寸前のスピーカーを無理やり鳴らしているような途切れ途切れのアナウンスが突然流れて来た事に度肝を抜かれ、意味を解釈するのに手間取ってしまった。

 一斉に足を止め、今のアナウンスがどこから聞こえたのか周囲に気を配るも不審な点は見当たらない。
 だが、俺にはなんとなく意味が解った。

「ブツッ……ザザッ……(警)こく…(これ)…以上…(の接近を)…を禁じます……ザザッ…(有資格者)…は……至急認識票…(を提示して下)…さい…(さもなく)…ば…(危険人物として)…排除します…(これから三秒)…以内に退去しなさい……スリー

 多分こうだ。

弐つ(ニーム)

「戻れっ!」

 回れ右だ。

壱つ(ヒーム)

 全員慌てたような俺の警告に従う様子だ。
 しかし……!

無し(レム)

 しかし、先頭を歩いていたヘンリーが目に見えない攻撃を受けて倒れてしまった!
 助け起こそうと近寄ったメックも同様にダメージを受けてその場に倒れた。
 後ろの方を歩いていた俺たちより曲がり角までの距離があったからだろう。

 ズールーとエンゲラが慌てて引き摺って通路の曲がり角まで戻った。

 そして、通路の角を曲がったところでアナウンスは止まった。

「どこをやられたっ!?」

 ズールーとエンゲラが引き摺って来たヘンリーとメックに尋ねる。

「っぐ。あ、足です」
「わ、私も足です」

【ヘンリー・オコンネル/23/9/7445 ヘンリー・オコンネル/27/8/7445】
【男性/19/4/7422・普人族・グリード士爵家所有奴隷】
【年齢:25歳】
【状態:熱傷】
【レベル:16】
【HP:89(119) MP:5(5)】
【筋力:19】
【俊敏:20】
【器用:19】
【耐久:18】
【特殊技能:小魔法】
【経験:562269(680000)】

【メイスン・ガルハシュ/23/9/7445 メイスン・ガルハシュ/27/8/7445】
【男性/14/3/7424・獅人族・グリード士爵家所有奴隷】
【年齢:23歳】
【状態:熱傷】
【レベル:15】
【HP:90(120) MP:15(15)】
【筋力:20】  
【俊敏:20】
【器用:13】
【耐久:18】
【特殊技能:瞬発】
【特殊技能:夜目ナイトビジョン
【特殊技能:地魔法Lv.3】
【特殊技能:水魔法Lv.3】
【特殊技能:無魔法Lv.3】
【経験:524256(560000)】

 ヘンリーもメックも命には別状ないようだ。少しホッとした。

「今治してやる! 何にやられたかわかるかっ!?」

 二人の太腿には銃で撃ち抜かれたような跡があった。
 丈夫な革ズボンに直径数㎜の焼け焦げたような穴が開いており、僅かに血が出ている。
 傷は後ろから前へ貫通しており、前の出口も入り口の様に小さな穴が空いているだけだ。
 傷口は焼かれたようになって、それが同時に止血の作用も果たしている。

 これは……銃じゃない。

 恐らくは魔術か?

 だけど、こんな魔術は知らないぞ。

 とにかく今は治療が先だ。
 キュアーオールを連続して掛けてやった。

 二人とも右足に一箇所の傷を負っていた。

「わ、判りません。後退しようと振り返ったら急に……」
「私も判りません。申し訳ありません、ご主人様」

 二人の治療を終え、周囲を見回した時には全員が殺気立って警戒体勢を取っていた。
 それ以外、特に異常はない。

 攻撃もない。

「メック、剣を貸せ。いや、鞘だけでいい」

 メックは腰の剣帯から長剣ロングソードの鞘を外して差し出した。
 受け取った俺は鞘の先だけを今戻ってきた通路に少しだけそっと差し出す。

 何事も起こらない。

 もっと差し出して上下に振ってみたりもした。

 何事も起こらない。
 ふぅむ……。

 思い切って左手を……怖ぇな。

 ここは戦闘奴隷に……いや、自分でやるべきだ。
 たとえ指を吹っ飛ばされたとしても俺なら治療が可能だ。
 あ、籠手壊されたらやだな。
 そう思って左手の籠手を外し、手袋を引き抜こうとした時だ。

「ご主人様、危険です! おやめ下さい!」

 ズールーが制止する。

「囮なら私が!」

 エンゲラが進み出る。
 ……こいつらに任せるのもアリか?
 いや、ダメだ。
 俺ならアンチマジックフィールドも一瞬で使える。
 そもそもアンチマジックフィールドを張って左手だけ出すつもりだったし。
 とか思ってるが、実は手や足、体全体を晒したとしてもすぐには攻撃されないだろうとは思っている。

 さっき攻撃をされたのは警告らしきアナウンスの後で、あの曲がり角を十mくらい進んだところだ。
 アナウンスの内容も一定距離に近付いたから追い払うというものだった。
 ついでに言うと攻撃も足を狙ったもので、傷自体も大した出血もなく、あのまま放っておいてもすぐに死ぬようなこともない。

 つまり、あの程度の接近であれば殺す気は無い、と言うことだ。

「ダメだ。俺が行く。ロープを」

 腰にロープを結び、何かあったらすぐに引っ張って回収して貰う。
 ロープを狙い撃ちされたらそれまでだが、何もしないよりはいいだろ。

 まず、左手にアンチマジックフィールドを張り、ちょっとだけ出してみる。
 手を上下に動かしたりして数十秒待ったが、何事も起こらない。

 もう少し手を伸ばして同じことをしてみる。
 それでも何も起こらない。

 思い切って体も晒す。
 何も起こらない。

 予想通りか。

 一度戻って手袋と籠手を嵌め直す。
 また右に曲がる通路に身を晒す。今度はアンチマジックフィールドはなしだ。

 そして、「罠発見ファインド・トラップ」と「縄罠及び落(ディテクト・スネア)とし穴感知(ズ・アンド・ピッツ)」の魔術。

 解った!

 約百五十m先、通路が左に折れ曲がるあたりの床の両脇に罠が取り付けられているのを感じる!
 遠くてよく解らないが……あの形は……!
 砲台!?
 いや、銃!?

【あー・で・らー・く-3型】
【-】
【状態:劣化(経年)】
【加工日:-/-/-】
【価値:-】
【耐久:1269】
【性能:モードⅠ/30:モードⅡ/90】
【効果:対侵入者用自動警備システム(セントリー・ガン) 。ハウザー&レコン社製対人熱線銃(ブラスター)け・えー・る43をセンサーと接続して自動化したもの】

「なっ!?」

 思わず声が出てしまう。
 ああ「あー・で・らー・く」ってのはラグダリオス文字(コモン・レター)四文字がそう並んでるだけで、多分型番か何かだ。
 目を見開いて一瞬固まった俺だが、即座に攻撃魔術を叩き込むことだけは忘れなかった。

 ファイアーカノン!

 もう一丁!

 アイスカノン!

 誘導ミサイルは付けずに素早い連射だけを考慮した。
 あと、熱線銃(ブラスター)という物騒な解説に反応して二種類の弾頭に使い分けた。

 セントリー・ガンは俺の魔術弾頭を迎撃することなく呆気無く破壊された。
 どうやらセンサーとやらは魔術には反応しないようだ。

「ブツッ……たれぞ、そこな者は? またワズムンか? 獲物を運んで来る時には認識票を忘れるなといつも言っておるだろう……さっきは出来たのに……これだから原始人は……今切りに行ってやるから待っておれ……ブツッ」

 アナウンスがあった。

 だが、録音や合成音声の類ではなく肉声に聞こえた。
 しかし、今の内容は一体何だ!?

 俺の右、通路の影で皆もぽかんとした顔をしている。
 バースとジルは色んな意味でぽかんとしていたようでもある。
 あんな派手な攻撃魔術、生まれて初めて見たんだろうしね。

「罠は排除した。行くぞ! 急げ!」

 そう言うといち早く立ち直ったズールーから差し出された銃剣を受け取って走りだす。
 走りながら奴隷たちに声を掛け、武器に死霊討伐グレイヴ・ストライクの魔術を掛ける。
 バースとジルの剣にも掛けた。
 あの声の主がロードかどうかは知らないが今話していた場所からどこかに移動する筈だ。

 破壊したセントリー・ガンの残骸の傍を通り抜ける。
 ここまでの間に一応センサーらしきものが無いか確認しながら走ってきたつもりだが、残念ながらそういった物は何一つ発見出来ずじまいである。
 相当巧妙に隠されているか通路の壁の奥にある、ということだろう。
 残骸のすぐ先で通路はまた左に九十度折れ曲がっていた。
 その数m先は……行き止まりだ!

 だが、俺の【鑑定】の視力はその行き止まりの壁にドアがあることを見抜いている。

 どこかに開閉用のスイッチがある筈。いや、無きゃおかしい。
 近寄って調べようと足を踏み出した時、ドアは「プシューッ、ガッ、ガッ」と建て付けの悪いような音を立てて下に沈み始めた。

 自動ドアか?

 そして、自動ドアの奥には多分先ほどのアナウンスの主だろう知らない奴が立っていた。
 相手の頭頂部らしきものが見えた瞬間に【鑑定】する。

【マーセット・デイオーク/13/3/5912】
【男性/1/1/5911・普人族(イモータル)・デイオーク家次男】
【状態:ヴァンパイア(真祖ロード)】
【年齢:268歳(1536歳)】
【レベル:28】
【HP:498+1269(498) MP:508+50(558)】
【筋力:90(30)】
【俊敏:90(30)】
【器用:90(30)】
【耐久:90(30)】
【固有技能:耐性(状態異常)(MAX)】
【特殊技能:吸血ドレイン
【特殊技能:麻痺パラライズ
【特殊技能:強毒ヴェノム
【特殊技能:石化ペトリフィケーション
【特殊技能:精力吸収エナジードレイン
【特殊技能:霧化ミスト・フォーム
【特殊技能:蝙蝠化バット・フォーム
【特殊技能:同族化コンジナー・クリエイト
【特殊技能:不老イモータル
【特殊技能:肉体固定グロウス・フィクス
【特殊技能:地魔法(MAX)】
【特殊技能:水魔法(MAX)】
【特殊技能:火魔法(MAX)】
【特殊技能:風魔法(MAX)】
【特殊技能:無魔法(MAX)】

 いらいらするほどゆっくりと降りていくドアの向こう、頭頂部だけで【鑑定】した俺の目に飛び込んできた衝撃的なステータス。

 そんな事よりも俺の注意を引きつける真祖ロードという単語。

 そしてイモータル。

 その中に紛れている血のように赤い文字。

 何よりもカークとサラのように経験値の欄が消えている。

 何一つさせてやらん! 先手必勝!

 
+注意+
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