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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第一部 幼少期~少年時代

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第三十二話 いろいろと思うこと

 バークッドでは小麦のほかに大麦やライ麦、各種野菜やイモ類などの根菜、綿花やタバコなども栽培している。今回話す中で重要なものは綿花だ。こいつを魔法で分離選別した硝酸と硫酸に漬け込みしばらく放って置く。その後水魔法でも何でもいいがよく煮込むと同時に洗い、更に籠の中に入れて流されないように紐で何かに結びつけて川に沈める。同時に紛れ込んでいたゴミなどの不純物を完全に取り除く。あとは乾く前に出来るだけ細かく裁断して粉状にまで出来れば言う事はない。

 粉状にまでしなくて綿のままでもいいが使いにくいのだ。何を作っているかというとニトロセルロースだ。銃弾の薬莢の中に入れる火薬の主原料と言った方が通りが良いかも知れない。本当は粉にしてからトルエン(こいつも石油や場合によっては特定の木からも作れる)から酸で処理をしたジニトロトルエンをちょっと加えて可塑剤兼燃焼抑制剤であるフタル酸ジブチルを混ぜれば一般的に言う無煙火薬になる。フタル酸ジブチルはなくてもいい。本来は更に安全のために安定剤を加えたほうがいいが、今は別にいい。火薬として必要なものはニトロセルロースだけで、あとは添加剤として使うものだ。なので、安全や劣化に気を配らないのであればニトロセルロース以外はいらない。

 ちなみにニトログリセリンのために植物油からグリセリンを取り出そうとしたがあまりにも効率が悪いのであほくさくなってやめた。また、酒類を醸造する際の糖分から作り出そうとしたが、酒を盗み飲みしようとしていると誤解されたので当面ニトログリセリン製造は諦めたからコルダイト火薬は作れない。多分防衛大学校で特定の授業を習っていない人間だとそもそも発想すらできないだろうから別にいい。

 硝酸や硫酸は硝石(北の山にごろごろしている)やミョウバン(動物の皮をなめすのに使う)から幾らでも分離選別できるので問題なく作れることは確認済みだ。最初はほんのちょびっとだけ作ってみた。乾いた処理済の綿花だったものに火をつけてマグネシウム程ではないがかなりの光とともにあっという間に燃え尽きて灰が残らないか殆ど残らなければ成功だ。

 何度か失敗したが、概ね出来るようになった。今は俺の拳ほどの量の綿花で試しているので出来上がっても量はほんのちょっとなので失敗して爆発したりするような量でもない。また、安定剤などもないのでちょっとした温度変化や湿気にも弱いが、ニトロセルロースを作ることは出来たようだ。

 ふむ、ステンレスと併せれば最悪でも火縄銃はいけるな。これが確認できただけでも今のところは充分だ。あとはおいおい、というかバークッドではやらない方がいいだろう。いつか小規模でも完全な俺の領地が出来たときだ。

 領地が出来なかったら? ……そのままお蔵入りに決まってる。
 いや、俺用に少数だけ何とかするくらいか?
 とにかく今はこれでいい。
 黒色火薬?
 あんな簡単なもの、すぐに真似されるだろうし魔法を介さない火薬を作りたくなんかない。いつか敵にまわるじゃないか。
 少なくとも魔力を大量に使わなければいけない物であれば俺の生きている間くらいはそうそう真似されないだろうし出来ないはずだ。

 いやらしい言い方をすれば刀剣類や弓の改良くらいはある程度の技術など流出しても大きな問題にはなりにくいだろうが、銃砲類は駄目だ。絶対に俺の陣営以外で使われないようにしないといけない。来るべき時までは絶対の秘密だ。いろいろなアドバンテージを持って生まれた俺だが、死ぬときは簡単に死ぬだろう。これから体を鍛え、レベルアップしていけば刀剣や弓などではこちらには魔法もあるからよほど運が悪くないと即死はそうそうないと思いたいが、銃だけは即死の危険が付きまとう。下手したら遠くからレベルの低いやつの放った弾丸や、場合によっては流れ弾などで致命傷を負う可能性がある。

 銃は刀剣や弓と比較しても短い訓練期間で扱えるようになることも利点だが同時に敵に銃が存在する場合、短所にもなる。俺自身が使用する場合も注意が必要だろう。当面は誰にも見られない場合にしか使えないだろう。だから今は銃の試作すらしたくはない。

 今のところ火薬と銃の話はこれで終わりだ。



・・・・・・・・・



 さて、いつもの村の話に戻ろうか。

 ファーンが騎士団に入団する前に、1つだけやらなければいけないことがある。それは餞別の作成だ。ファーン用のゴムプロテクターは勿論だが、ファーンは14歳になったばかりでこれからも暫くは体の成長があるだろう。特にここ数年は大きくなるはずだ。プロテクターを作ってもすぐに使えなくなってしまうだろう。ある程度の密着は捨て、暫く使えるようにしたほうがいいだろう。

 が、プロテクターはおまけなのでやらなければいけない事では無い。俺は赤ん坊の時にファーンに剣で守られた。だから、剣を贈りたかったのだ。ステンレス鋼による剣も作ってみたが耐久性や切れ味などは今までのほぼ鋳造だけで作られている剣とは比較にならないほど優れていたが、手入れが面倒だ。刃を研ぐのが手間だし、単純な切れ味は俺の持つ64式銃剣もどきの方が上だと思う。錆び難いのは大きな利点だが、剣の手入れをしっかり出来るならあまりアドバンテージにはならない。

 ここは64式銃剣もどきを更に改良して大型化したほうがいいだろう。ヘガードとアルノルトに相談してみると二人とも賛成してくれた。ヘガードは騎士団で剣は貸与してくれるとの情報も言ってくれたが、鍛造の剣の性能についても理解を示しているので俺の考えには喜んで賛成してくれた。おそらく本物の日本刀ほど優れたものなど作れようはずも無いだろうが、オースの場合、鋳造やステンレスの剣より優れてさえいれば文句は無いのだ。別に俺も日本刀を再現したいわけでもない。

 へガードはすぐにドーリットまで行って良質な鉄鉱石を買ってきてくれようとしたが、俺は自身で選別した鉄を使いたかったのでそう言って見るとあっさりと許可された。今まで貯めていた3Kg程の鉄をすべて使い尽くすつもりで剣の製造が行われた。鑑定を使い続け、鉄材の耐久力の変化を見ながらとにかく二人に鍛えてもらった。剣はファーンが出発する4日程前に完成した。

【ロングソード】
【鍛造特殊鋼】
【状態:良好】
【加工日:26/3/7436】
【価値:879000】
【耐久:4160】
【性能:120-190】
【効果:無し】

 切れ味なんかは非常に優れていたし、耐久性も高い。
 ちなみにヘガードが使っている長剣は

【ロングソード】
【鉄】
【状態:良好】
【加工日:3/9/7418】
【価値:112400】
【耐久:610】
【性能:82-152】
【効果:無し】

 だし、俺が未だに隠し持っているブロードソードは

【ブロードソード】
【鉄】
【状態:良好】
【加工日:3/9/7428】
【価値:97500】
【耐久:500】
【性能:100-150】
【効果:無し】

 という程度だ。ああ64式銃剣は

【ショートソード】
【鍛造鋼】
【状態:良好】
【加工日:4/5/7435】
【価値:291000】
【耐久:1520】
【性能:95-115】
【効果:無し】

 ショートソードだってさ。
 剣とプロテクターを贈られたファーンは感激していた。
 喜んで貰えるのは嬉しいものだな。

 研ぐときは水ではなく、オリーブオイルなどの油を使うことと、手入れの最後には刀身に油を薄く塗っておくのを忘れないように伝えるとファーンは

「必ず2年で騎士になって見せます」

 とヘガードに誓っていた。
 お、俺には?

 程なくしてファーンはヘガードや護衛の従士達とともに村民に見送られながらバークッドを旅立っていった。



・・・・・・・・・



 更に一月が経過した。
 明後日はミュンの結婚式だそうだ。
 あれからボッシュといい仲になったのは聞いていたので知っていたのだが。
 結婚が決まったことは俺はちょっと前まで知らなかった。
 あんだけ発破をかけてやった俺に一言も無しかよ。
 おっちゃんは悲しいよ。
 前世でも社内で誰かが結婚する場合、直前まで知らなかったなんてことは無かったのに……。
 そう言えば俺の部下の結婚が決まったときなんか、真っ先に俺に報告に来た。

 とか思って不貞腐れていたらミュンが馴れ馴れしく話しかけてきた。
 ふん、所詮は間者かよ。
 俺のことなんてどうでもいいと思ってたんだろ。

「アル様、今晩あたりいかがですか?」

 夜の狩りの誘いだ。
 腹が立つから断ろうかと思ったが、二人きりになれる最後かもしれないので文句でも言ってやろう。

「わかった」

 これで終わりだ。時間はいつも20時から21時くらいの出発なので打ち合わせる必要は無い。
 その晩、いつも落ち合う場所に行くとミュンは既に来ていた。
 ミュンは俺が傍まで来ると言う。

「アル様、最近私のことを避けていませんか?」

 もう遠慮はいらねぇ。

「当然だろ」

「何故です?」

 何を言っていやがる。

「胸に手を当ててよーく考えてみろよ」

 本当に胸に手を当てて考え込み始めた。あほか。

「わかりません。何か失礼なことでもしましたでしょうか?」

 どうやら本当に解らないらしいな。まぁいつまでもへそを曲げていても大人気ない。子供だけど。体は子供、でも心は大人な俺は広い心で許すべきか?

「ふーん、わからないんだ? 俺が言わなきゃボッシュと一緒になれなかったのに」

「え?」

「結婚するって聞いたのなんか5日前だぞ、しかも父様からだぞ」

「それが、なにかまずかったですか?」

 なん……だと?

「はぁっ? おかしいだろ? 普通最初にミュンから俺に言ってきてしかるべきだろう? しかもこんなギリギリまで俺は知らなかったんだぞ? いきなり父様から聞かされた俺のショックはでかかったんだぞ!」

「いえ、私も結婚を聞いたのは5日前ですが?」

「えっ?」

「えっ?」

 何かおかしい。話が変だ。

「えっ? ミュンかボッシュが結婚するって決めたんだろ?」

「えっ? 何故私が? 私はトーバスの一人しかいない娘ですし、ボッシュが婿入りしてくればボッシュがお養父様の跡を継いで従士になるじゃありませんか。勝手に結婚なんか決められるはずありません」

 えっ? そうなの? 驚いて何も言えない俺にミュンは言葉を継ぐ。

「当たり前です。従士の跡継ぎのことですから、お養父様と旦那様が決めるに決まってるじゃないですか?」

 あら? じゃあミュンも知らないうちに結婚が決まったのか?

「常識ですよ。トーバスの家に私より上の兄弟がいるか、下でもお養父様が跡継ぎに決めた兄弟がいれば別ですけど、勝手に結婚なんか出来るはず無いでしょう?」

 あらら? 言われてみればそれもそうか、と思う。

「じゃあ、結婚を決めたのはダングルと父様なのか?」

「そりゃそうでしょう。ドンネオルの家の家督は今はラッセグが持っていますからラッセグには話くらいは通したでしょうが」

「じゃあじゃあ、ミュンかボッシュが本当は結婚したくないと思っていたら?」

「もしそう思っているなら、私はボッシュに何も話さなかったでしょうし、ボッシュも私から話があったときに断っているでしょう」

「いや、そうじゃなくて、付き合った後で、ああ、やっぱりこの相手はダメだと思ったら、だよ」

 もう、理解が悪いな。

「付き合うってなんですか?」

「え?」

「ですから、付き合うというのはどういうことですか?」

 そこからかよ……。

「だから、結婚する前や、結婚するような年齢でもないときでも好きな人ってのは出来るだろ? そういうときに、お前が好きだ、付き合ってくれって言うじゃんか。で、相手がそれを了承したときに付き合いは始まるんだろ? だいたい、お前、ボッシュに何て言ったんだよ」

「それは、決まってます。好きなので結婚してほしいと言いましたが」

 なんと……。途中全てすっ飛ばしていきなりそこかよ……。ん? まてよ?

「ひょっとして、結婚前になんだ、その……、キスしたり遊んだりしないのか? 俺は結婚前のそういう状態のことを付き合うと言っているんだが……」

「ああ、そういうことですか。家の相続が絡まない人たちはそういうこともあるようですね。ですので私には縁の無い話です」

 お、おう。そうなのか。覚えとくわ。

「そうだったのか。ならミュンから結婚の話が聞けなかったのは仕方ないのか……ごめん、ミュン。勝手に俺が考え違いをしていたようだ」

 俺はミュンに詫びると、おそるおそるミュンを見上げる。

「もう……大丈夫ですよ。怒っていませんから」

 ミュンはそう言って笑うと俺を抱きしめてくれた。
 出来ればミュンには幸せになってほしいと思う。
 俺に何か出来るだろうか?
 武器なんか今更だろうし、ゴム製品なんか腐るほどある。

 ちょっと考えてみよう。

 
設定資料に最初から記載のあった綿花はこういう使われ方なのでした。
ところで、アルの技術開発は当分なくなると思います。
当然ゴム製品の新規開発や鍛冶で農機具や武器は開発し続けるでしょうが、技術的な開発を含むアイテム開発は暫く無くなります。
分子だとか酸の分離だとかいうようなちょっとファンタジーくさくない単語とは暫しお別れです。

ファーンは暫く出番が無いのでちょっと現時点のステータス置いておきますね。
今後はこのスペースを使っていろいろデータを置くようにしてみます。

【ファンスターン・グリード/18/2/7423 】
【男性/21/1/7422・普人族・グリード士爵家長男】
【状態:良好】
【年齢:14歳】
【レベル:5】
【HP:65(65) MP:334(334) 】
【筋力:11】
【俊敏:11】
【器用:8】
【耐久:9】
【特殊技能:地魔法(Lv.4)】
【特殊技能:水魔法(Lv.5)】
【特殊技能:無魔法(Lv.5)】
【経験:19213(28000)】
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