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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第二百十七話 それぞれ

7447年3月4日

 昨晩遅くに八層の転移水晶の間に辿り着いた俺達は、一人頭八時間のたっぷりとした睡眠を取って、充分に鋭気を養ってから九層に足を踏み入れた。勿論八層の基地に置いてある網撃ち銃を始め、余裕を見た量のトレント材も持ってだ。そして昼過ぎには九層の守護者であるミノを撃破して少し遅目の昼食を摂った。

「今日はこれから十層に?」

 ベルに問いかけられた。前回は初日に十層を少し覗いたんだよな。だが、俺は迷うことなく「いや、今日はやめておこう。明日以降、丸一日行ける時にしたい」と返事を返し、ギベルティに渡してあった鉄鉱石を彼の行李の底から引っ張りだした。

「ああ、まずは銃ですか」

「うん。あのレッサーヨーウィーなんかを考えるとまともな銃を作るのが先かな、と思ってね」

「連発銃を作るんでしたっけ?」

「そうだよ。火薬や弾丸も今日中に目処を建てておきたいし」

 黄銅鉱や銅鉱も持ってきている。勿論、綿も忘れていないし、黄色染料も補給済みだ。それに今回はトレント材を使って銃床ストック被筒ハンドガードも作ってみるつもりだ。前回胡桃材で銃床ストックを作ったが、初めて作ったにしてはなかなか良く出来ていると思っている。尤も、過去に幾つか木銃を作っているから初めてとは言えないんだけどね。

 まずは火薬と銃弾の製造か。こっちはもうかなり慣れてるからすぐに洗浄工程にまで進められる。銃弾についても炸薬量の調整についてほぼ問題のないレベルになっているから、機関部などの肉厚についてもかなりスマートに製造しても問題ないだろう。

 最初の頃は炸薬量が多過ぎた時なんか発射後に回転弾倉シリンダー内で薬莢が爆発に耐えられずに膨張(爆発の温度による膨張もあるだろうが、爆圧による膨張がメインだった)して、空薬莢を引き抜けず、最悪の場合壊すしかなかったりもしたのだ。エジェクターロッドなんて付けてなかったからね。これについても薬莢の肉厚を多少厚くする事で強度を上げて対応を可能にした。その分薬莢の長さは少し長くなったけど。出来れば威力は犠牲にしたくなかったんだよ。

 弾頭や薬莢も新たに補充しないといけない。雷管もだ。薬莢は最近作ったものはちゃんと肉厚なので使い回しが可能だから少な目でいいか。

 さて、綿から酸類を洗浄する間、空いた時間を使っていよいよ銃の作成だ。

 今回作るのはボルトアクションライフル……と言いたいところだが、それは流石にいきなり複雑になり過ぎる。リボルバーをライフル化したリボルビングライフルを作るつもりだ。ついでに中折れ式(トップブレイク)を排し固定式ソリッドフレームにした。現代の一般的なリボルバー拳銃と異なり、回転弾倉シリンダー振り出し(スイングアウト)ではない。脇のローディングゲートから空薬莢を一発づつ排莢して、また新たな弾丸を一発づつ装填する必要があるが、その分構造を単純にできる。ついでに単純な分、強度も上げられる。

 射撃機構もシングルアクションのみとした。勿論部品形状を単純化出来るからだ。部品点数も少ない。何しろ、最小でバネ二つ、引き金、撃鉄、撃鉄を引き起こす時に連動する弾倉を回転させるハンド、回転する弾倉を定位置で止めるラッチのみだ。ダブルアクションも似たようなものだが、形状が少し複雑になるし、数も一つ二つ増える。そっちはこの次だ。撃針ピン? ああ、直接雷管を叩けばいいから今のところは必要ないだろ。

 勿論ガスシーラーなんかある訳ないので、発射時には回転弾倉と銃身の隙間(シリンダー・ギャップ)から発射炎が漏れるので銃身を支える左手には長い手袋が必須となる。火傷覚悟なら無くてもいいけどさ。

 一時間程で最初の銃の部品を作り上げた。今回も銃身内部のライフリング部分についてはクロムを使っている。タングステンを使うのはある程度自信が付いて、ちゃんと形になってからでいい。銃床と被筒についてもアタリを付けながらトレント材を削って大体の形を整える。組み合わせれば機関部に回転弾倉がある以外は一昔前のライフル銃のような形になる筈だ。銃身を収める被筒を削るところだけ専用の治具を作って銃身外周とほぼ同じ形に削れるようにした。

「細かいところは自分で削って調整してくれ」

 と言って、ベルに紙やすりの代わりのカワハギ類に似た魚の皮を渡してやった。弾丸の方はそろそろ選別工程だろう。行ってやらなきゃな。

 こうして九層での最初の日は暮れていった。明日は朝飯を食って暫くしたら復活したミノを退治して今日の続きだ。十層は明後日以降までお預けだな。



・・・・・・・・・



7447年3月5日

 ズールーやエンゲラも含め、全員に射撃の指導を行っていたのだが、問題が発覚した。

「顎を引いて、もっと右脇を締めろ。銃床はきちんと肩に当てるんだ。左手はもっと前を……」

「そんなこと言われたってぇ~」

 グィネだけは体が小さいため、相応に腕も短く、ライフル銃を扱うのにきちんとした射撃姿勢が取れなかったのだ。

 まずは射撃姿勢だけでもちゃんと教えておこうと思ったのだが、早目に気が付いて良かったとも言える。左手は殆ど回転弾倉シリンダーの前にまでしか届いていないので幾ら手袋があったとしても危ないし、そもそも狙いをつけるのも苦労するだろう。銃床が長過ぎるんだ。グィネやゼノムには専用の銃を作るべきだろうか?

 網打ち銃の試射の時はベンチレスト射撃で引き金に結んだ紐を引っ張らせていただけだったし、可搬型の網撃ち銃の試射時もベル以外は腰だめに構えさせていたからすっかり見落としてたわ。

 うーん。このタイプをもう一丁作るのは流石になぁ……。銃床を交換すればいいけど、いちいち交換するのも面倒だしなぁ……。交換の度にバラしてたら癖が変わって命中精度にも影響が出るだろうしなぁ。ちゃんとした実用性の高いボルトアクションライフルを作った時にすればいいか……。

 でも、ボルトアクションライフルの前に全員に射撃を教えておきたかったんだよなぁ。まぁ、ダブルアクションのリボルビングライフルを作るのもいいか。そっちをグィネやゼノムでも使い易い大きさにしよう。いずれカームやケビンなどにも使って貰うつもりだから無駄にはなんないだろ。

 と、言う訳でこの日も午後から結局銃を作っていた。お陰で用意しておいた鉄鉱石は結構減ってしまった。弾丸の弾頭数は予定してたより一割くらい減るな、こりゃ。それどころか今日から始めた射撃訓練で解ったけど、予想より弾丸の消費ペースが早い。ああ、弾頭を回収しても使い回せない。トランスミュート・ロック・トゥ・マッドで泥に出来るのは一回だけなんだ。勿論、溶かして型に流し込むなりすればもう一回や二回くらいは使えるだろうけど、鉄鉱石の価格と手間を考えたらわざわざやる程の事じゃない。

 予定よりかなり早目になるだろうが一度戻るべきだろう。



・・・・・・・・・



7447年3月6日

 六層まで食料を補給に行った。転移した時に、たまたまだろうが丁度ゼノムに率いられた虐殺者ブッチャーズが休憩中だった。今日はそろそろ四層に戻るところだったらしい。

「今回も長いの?」

 ミースが尋ねてきた。

「ん~、そのつもりだったけど、多分今月の十一日に一度戻るよ。だから次は九日にここに来るのが最後だから、そのつもりで頼む」

 そう答えると順調に行っていないと思ったらしいゼノムが心配して言う。

「何か問題があったのか?」

「いや、問題って訳じゃない。一回地上に戻って補給しなきゃならないものが出来ただけだよ。ところで、結構稼いだみたいだな」

 ロッコとケビンがオーガのものらしい魔石を幾つも握って重さを測ったり色合いを見て何やら騒いでいた。その周りではカームを始め、ビンスやキム、ジェルなんかも上機嫌なようだ。魔石の数は十個くらいあるんじゃないか?

「ああ、運が良かったのもあるが、今日は一匹二匹のオーガと数多く出会えてな。合計九匹も倒せた」

 そりゃ凄い! 七百万以上じゃねぇか! ヘンリーとルビーは頭数には入らないから俺の取り分は九分の一。経費を差っ引いても七十万は儲かったな。こりゃ虐殺者ブッチャーズも上機嫌な訳だ。

 だが、それを聞いて少し考えた。殺戮者スローターズに一人頭八十万Zのボーナスを出すには四千万の稼ぎが必要だ。今回、ちゃんと計算はしていないが俺達は往路でその半分くらいしか稼いでいない。

 これから七層、八層、九層を抜けるにしても一日で戻るつもりだから七層でオーガを求めて悠長にうろつくつもりはなかった。ふむ。一日くらい本格的に十層を探索しても……だめだ。ゼノムとラルファを欠いたままモン部屋に行くのは怖過ぎる。初見のモンスターも居るだろうし、焦りは禁物だ。せめて銃がちゃんと扱えるようになるまでは……。

「数が少ないのばっかりだったから、皆、入れ替え戦の予行演習をしたがったが流石にそれはなぁ。全部きっちりと相手したから心配しなくていい」

「ああ」

 勿論、ゼノムは軽々しい事は絶対にしない。多分他の誰だってしない。そこは信頼してるさ。



・・・・・・・・・



7447年3月8日

「撃つ時に目をつぶるな。しっかり目標を見ておくんだ」

「はい、申し訳ありません、ご主人様」

 エンゲラに射撃の指導を行いながら遠くで白兵戦の訓練をしているミヅチ、トリス、ベル、グィネ、ズールーを横目で見た。暇だからか相当熱を入れてやっているようだ。バストラルは百m程先の的に使っている岩の様子を確認に行かせている。的を確認したバストラルは手で大きくバツ印を作っている。

「外れたな。目をつぶると目標に当たらないと思った方がいいぞ。ま、何にしても早く慣れることだ」

 そう言いながらバストラルに戻って来いと手で合図を送った。観測役は一番大変だ。何しろ射撃場所と的まで行ったり来たり。のろのろしてると俺に怒鳴られる。ま、これもトレーニングの一つだ。

「は、はい。解りました」

 エンゲラはそう言うと耳栓を詰め直してヘルメットを被った。轟音とともに火を噴き、大威力の弾丸を発射する銃については未だに怖がっているようだ。しかし、これでもズールーと比較するとエンゲラの方がまだマシではあるんだけどね。

 その後も射撃役や観測役を交代して射撃訓練は続けられた。



・・・・・・・・・



7447年3月11日

 先日ゼノム達に言った通り、一度地上に戻ることにした。実は弾丸は昨日で切れていたのだ。今日は朝から十層の通路で出現するモンスターの調査を行っていた。銃が使えなくてもやれる事、やらねばならない事は多い。正直言って地上に帰らなくても復活するミノを倒しまくっていても良かったんだけどね。ま、そこはそれ。俺としても折角ライフル銃を作ったのであるからして、早く使いたい気持ちはあるんだ。

 昨日の夜、よく考えたら今回俺自身は一発も撃ってなかった事に思い当たり、やっぱり予定通りに戻ろうと思ったんだよ。いざ銃を使う段になって俺の射撃が一番下手だったりしたら洒落にならんわ。

 夕方頃に地上に戻ると虐殺者ブッチャーズから聞いていたらしくラルファたち根絶者エクスターミネーターズも地上にいた。

「どうしたの? 今回は綿なんかも沢山持って行ってたんでしょ?」

 ラルファがバルドゥッキーを齧りながら尋ねてきた。

『弾頭が足りなくなったから補給』

 トリスが小声で答えているけど、日本語なら小声じゃなくたっていいじゃんか。まぁいいけど。

「ゼノム、ラルファ、今日で交代だ。虐殺者ブッチャーズはミヅチ、根絶者エクスターミネーターズにはトリスを出す」

 今回、これを見越して途中からミヅチとトリスには重点的に射撃練習をさせていた。お陰で二人共それなりに扱えるようにはなったと思う。

「次はいつから入るんだ?」

 ゼノムが尋ねる。珍しいね。

「今回は合わせて戻ってきてくれたから、丁度いい。いつも通り、明日から三連休で十五日から入って月末まで出ない。あ、勿論十四日は全体訓練な」

 ゼノムへの返答を借りて全員に予定を伝えた。ゼノムは明日王都まで燻製を買いに行きたかったらしい。丁度良かったのでエンゲラも連れて行って貰って鉄鉱石を多目に買ってきて貰うようにお願いした。バルドゥックの鍛冶屋でも買うつもりだけど、王都の方が少し安いしね。あ、ズールーはこの話題の時少し情けない顔をしていたので免除してやった。どうせムローワの姉ちゃんと一緒に居たかったんだろうし。いいさ。

 バストラルは晩飯も食わずに王都に向かうらしい。こいつには黄色染料と綿を追加で頼んでおいた。



・・・・・・・・・



7447年3月30日

 また二週間半に及ぶ長い迷宮行から戻ってきた。予め予定は伝えているので虐殺者ブッチャーズ根絶者エクスターミネーターズも全員が地上に揃っている。

「三連休を挟んで来月四日、また迷宮に入る訳だが……。そろそろ十層の通路の魔物についても大分判ってきた。次は十層の魔物の部屋に挑むつもりだ。九層の守護者のミノタウロスはまだ復活を続けているから、こっちはそのまま倒し続けるしかないけどな」

 次回、まずミノタウロスに対してライフルを使うつもりだ。今回地上に戻る時に八層には網撃ち銃だけじゃなく、ライフルも一丁持って行っている。往路で九層のモン部屋の主や通路の魔物に対して実戦に使ってみて威力を試すつもりだ。問題が無いようであればミノにも使うつもりだし、そのまま十層でも使うつもりでいる。

「まぁとにかく、九層については現時点で一応問題なく抜けられる目処はついた。次の迷宮のあと、入れ替え戦をするぞ。希望者は名乗り出てくれ」

「また挑戦するわ」
「私も」

 カームとキムだ。予想通り。

「勿論、俺もな」
「私も」
「当然よね」

 ジェル、ジンジャー、ミースか。これも予想通り。

「当然私も挑戦しますよ」
「「我々もです」」

 ロリック、デンダー、カリム。判ってた。

「ああ、俺達もやるぜ」
「当たり前だ」

 サンノとルッツか。そうだよね。

「私は単独で」

 ビンスか。前回も挑戦したっけ。

「私も単独になるわ」

 ヒス。燃えてるな。頑張ってくれ。

「ふっ」
「俺達を」
「「忘れてもらっちゃ困る!」」

 ロッコとケビンか。全員じゃねぇか。

 ちらりとバストラルとエンゲラを見た。二人共不敵に微笑んでいる。
 ここのところ探索をサボりがちだとは言え、その分かなり濃い訓練を行っている。
 それに、なんだかんだ言ってもトロールやミノなど、オーガより経験値の高いモンスターも結構斃している。
 贔屓目抜きでも結構力を伸ばしていると思うよ。

 でも、かつての殺戮者スローターズのように彼らだって魔物を殺しまくり、相当経験を稼いでいる。
 流石に俺が居ないから回復し放題という訳ではないけど。

 さて、どうなるかね?
 お互いに一筋縄では行かなくなってる筈だ。

「よし、全員が挑戦者か。わかった。この休みが終わる迄には改めてちゃんとした評価方法も決めるようにするから」

 明日は俺も王都の商会に顔を出すつもりだし、工場も見ておきたい。移動中にでもゆっくり考えられるだろ。

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