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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第二百九話 十層へ4

7446年10月29日

 結局九層の転移水晶の間に留まり、十層を覗きながらも復活してきたミノタウロスを後ろから不意打ちして倒した。九匹同時に復活するのかと思っていたらそんなことはなく、まず最初に七匹が数分違いで復活し、残り二匹は復活すると目される場所に霧が渦巻き続けるのみで一向に復活しなかった。三十分以上、そのままの状態だったので復活した七匹を後ろから瞬殺したのだ。

 死体を鑑定してみるとレベルは軒並み八とか九の一桁であった。

 業物、と言う程ではないがそれでもかなり上等な武器を七本追加で入手し、ラルファの腕輪の魔力が回復する前だったので仕方なく死体を引き摺って柱の後ろに放り出した。

 ここで俺はまた悩むことになっていた。

 最初に俺とエンゲラたちが相手にした凄腕のミノタウロスは、俺の相手が三十二レベル、エンゲラたちの相手が三十レベルであった。今までモンスターの集団を相手にしたときはここまでレベル差がある集団を相手取ったことはない。モンスターの復活にしても俺が直接見て観察したのは一層の部屋の主が数種類だけだ。復活するのがスライムやジャイアントスパイダーなどの集団でも、レベルは全部一緒か、違っても一レベルくらいだった。

 確かに復活の兆候である霧が出るのは同時でも、完全な復活には微妙に時間がずれていることもあったが数秒~せいぜい数分くらいのものであり、誤差程度であるとしか思っていなかった。

 ここから考えられるのは、モンスターの復活にはレベルが絡んでいるのではないだろうか、ということだ。

 レベルが高いほど復活に時間が掛かると考えるのが妥当だろうか。

 仮説の検証には気が遠くなるほどの復活数サンプルが必要だろう。仮説はあくまで仮説としてガイドライン程度にとどめておく必要がある。

 また、覗いた十層だが、見た感じ八層や九層とさほど変わらないように見えた。二匹のミノタウロスが復活しないので覗いただけでさっさと戻ってしまった。



・・・・・・・・・



7446年10月30日

 いい加減、緊急用の保存食も限界だ。
 今日で戻ろう。

 相変わらず二匹のミノタウロスが復活するであろう霧は未だ渦巻いたままだ。その傍には七匹のミノタウロスが新たに復活している。悩んでも仕方ない。芸がないが、また後ろからの不意打ちで始末した。

 昨日の死体と合わせて十四体のミノタウロスの死体をラルファが水に変え、再度十層に顔を出してみる。

 また蟹だの便所コオロギだのが出てくるのだろうか。オーディブルグラマーの魔術を使ってモンスターを呼び寄せるのもいいが、たまには少し移動してみようか。ミノタウロスの復活を待ってずっと転移水晶の間に居たので歩き回るのもいいだろう。

 気持ちを初心に戻し、慎重に歩を進めていた。

「何か来ます! 一匹……速い!」

 ベルが警告を発し弓に矢を番える。
 全員が得物を構え臨戦態勢に入った。
 俺も【鑑定】の視力で洞穴の奥を見つめる。

 ……なんだあれ? 見た感じは体長四m程の大きなトカゲに見えるが、足の形はまるで昆虫のようであり、ついでに六本足だ。騒々しい足音を立ててガサガサとこちらに向かって来る。

【 】
【男性/1/12/7444・レッサーヨーウィー】
【状態:良好】
【年齢:462歳】
【レベル:11】
【HP:603 MP:1(1)】
【筋力:21】
【俊敏:35】
【器用:18】
【耐久:55】
【特殊技能:毒息ポイズンブレス
【特殊技能:振動感知バイブレーション・センシング

蜂矢壱番アローヘッド・ワン!」

 言うが早いかファイアーアーバレストミサイルを飛ばし……弾かれた!?
 それを見た皆も驚きの声を上げている。
 炎の矢はあらぬ方向に飛び、洞穴の壁に当たって飛散した。
 モンスターの体表を覆う細かな鱗に弾かれたようだ。
 命中した角度が浅かったのか?
 それとも結構丈夫なんかね?

 すかさず貫通力に定評のある(と俺が考えている)ストーンアーバレストミサイルを放ち、今度は速度を多少落としたものの、背中の真上から垂直に近いようにぶち込んだ。

 流石にこれは見事に鱗を貫通し、深く突き刺さってまるで標本のように地面に縫い付けた!

「シギャアアアァァッ!」

 嫌な叫び声を上げた口の中に誰かの放ったファイアージャベリンと矢が連続して突き刺さる。
 口にはずらりと牙が並んでおり、そこだけはワニを彷彿とさせる。
 続いてグロウススパイクの魔術を使って下からも串刺しをお見舞いしてやった。

「ゲッ、ギャブッ!」

 苦しみの声を上げながら虫トカゲはむせるように毒液のような茶色い液体を吐き出したが、その勢いは弱く、五mも飛ばなかった。勿論こちらに被害はない。

 そして、ゼノムの斧がくるくると飛び、頭に突き刺さるとまた戻っていった。

 これ、ものの数秒……三秒を切るような速度でミサイルを使える魔術師がいないと相当苦戦するぞ。

 俺の魔術が作った穴を拡げる様に切り開き、ズールーに魔石を採取させた。
 魔石の価値は約六万。売れば四十万Zを超える。

 このように、レッサーヨーウィーの他、色違いで更に凶暴になったブルーバトルクラブやキラーマンティスをぶっ殺して進むと、やはり、と言うべきか、転移水晶があるのを発見した。

 今回はこれで戻ろうか。



・・・・・・・・



「ああ、ご主人様! ご無事で!」

 八層の転移水晶の部屋に戻るとギベルティは涙を流さんばかりに喜んで俺たちを迎えてくれた。

「心配をかけてすまんな。詳しいことはあとで話す。何か食わせてくれ」

 保存食を食い伸ばして耐えていた俺たちはギベルティが用意しておいてくれた、バルドゥッキーをキャベツやニンジンと煮込んだポトフとパンで腹一杯になるまで食べた。

 なお、暇だったギベルティはやっと乾パンの原型というべきものを完成させていた。製法自体は二度焼きのビスケットだし、難しくないからね。火を通り易くするために針穴を開けたり、ホップや胡麻、砂糖だけでなく塩を追加させ、ラードを何度も煮て不純物を漉した高品質なものを添加することを教えた甲斐があるというものだ。

「味はそこそこだと思います。軽いし、携帯性も良いと思うので今回お召し上がり頂いた保存食は補充しないで、この休みの間に皆さんの分も含めて沢山作っておきますね」

 合格を言い渡した俺に向かってギベルティは嬉しそうに宣言した。縦横七㎝程の正方形に焼かれた乾パンは確かにそこそこ良い味になっていた。この、そこそこというのが実は大切だ。どんなに上手に作っても乾パンは美味すぎてはいけない。普段から食っちゃうからね。まぁ、そこまで美味くなったらなったでお菓子として売り出すことも出来るけどさ。

 バターが超高級品なので美味しいお菓子はなかなかないんだよ。当然バターなんか使ってないからどう頑張っても大して美味くはならないんだけど。

「ああ、この『カンパン』のレシピな。完全だと思えるものが出来あがったらしっかり記録しておけ」

 後々ギベルティから俺が買い上げてもいいし、場合によってはギベルティ個人のものとして売ってもいい。勿論俺が領地を持った後の話だけど。確かこいつの夢は飯屋をやることだったしね。

 余ったもののうち、野菜類など足の早そうな食材だけを持って地上へと帰還した。



・・・・・・・・・



「……と、言う訳で何とか九層は突破できた。十層も九層と似たような感じだったけど、魔物は新しいのが何種類かいるみたいだし、まだ魔物の部屋には行っていないから部屋の主がどんなもんかは判らない」

 虐殺者ブッチャーズ根絶者エクスターミネーターズに簡単に十層到達の報告を行い、守護者のミノタウロスをぶっちめて奪い取った戦利品を披露した。

「使いたければ貸すよ。国王に報告した後になるけどな。多分返してくれるだろうしね」

 そう言ったらケビンが片刃シングルエッジ戦斧バルディッシュを使いたがった。おお、流石に目が高いね。以前入手していた両刃ダブルエッジ戦斧バトルアックスは使わないのも勿体ないと思ったので結局ロリックの戦闘奴隷のカリムに使わせていたのだ。

 ケビンが使うと言ったこともあり、極上の業物が沢山あることに興奮した皆は結構武器を入れ替えようとする奴も多かった。

 ジンジャーは十文字クロススピアに興味津々だし、ジェルは逆刺バーブ三叉槍トライデントをご所望のようだ。キムは流石に今使っている得物が長柄過ぎるので代わりになるようなものは無かったので諦めざるを得なかった。

 ルッツは単なる槍から長柄ポール戦斧ブージに得物を変えるようだし、俺の戦闘奴隷のルビーには幅広刃ブロードポイント斧槍ハルバードを、ジェスにはリボン付き三角槍パルチザンを与えることにした。

 戦鎚ウォーハンマーを使っていたロリックの戦闘奴隷、デンダーは何故か変えようとはしなかった。薙刀グレイブが浮いたけどまあいいや。バストラルも使い慣れた槍がいいと言うしね。

 その後は暫く国王への報告などで留守にするから殺戮者スローターズ全体の迷宮行自体は休みにしないが、殺戮者スローターズは俺がいないので休み(俺抜きで新しい階層は恐ろしい)にするが虐殺者ブッチャーズ根絶者エクスターミネーターズは今まで通り殺戮者スローターズからリーダーを派遣するので三日後からまた迷宮に行って貰うことを了承させた。



・・・・・・・・・



7446年11月3日

「……こちらが九層の守護者であったミノタウロスの集団を倒して入手した武具にございます」

 魔石も同時に差し出しながら戦利品を見せびらかした。今回も国王と第一王妃のモーライル妃殿下の二人、そして警護は王子で第一騎士団の小隊長を務めるリチャード殿下の前である。
 あれ? それはそうと、この謁見室の隅の冷蔵庫リフリジレーター……どっかで見たぞ?

冷蔵庫リフリジレーター
【ビーチ材・鉄】
【状態:良好】
【加工日:18/7/7444】
【価値:12800000】
【耐久:465(492)】
【性能:内部温度4度;1489価値/1日】
【効果:内部に収納された物品を冷蔵保存可能。湿度調節機能なし】

 ……なるほどね。

「……確かに……。九層を突破したようですね、グリード。大したものです」

 モリーンが感心した様子で言った。リチャード殿下も両親のご相伴に預かって武器や魔石のステータスを見て目を見開いている。ふふん、どうよ?

「どこが大したもんか。結局碌な獲物を得られなかったからこんなんでお茶を濁してるだけじゃねぇか」

 けっ、と吐き捨てるように国王が言うが、あれはご先祖様の功績を抜かれて悔しいだけだろう。その証拠にモリーンやリチャード殿下にその態度を窘められている。

「ところで、それはそうと、なぜそなたは前回に引き続いて今回も報告に参ったのじゃ? 前回は前人未到の偉業であるし、解るのじゃが……」

 モリーンが不思議そうに言う。
 そんなん、俺が「十層に行った」とか言っても世間がそれを本当だと知る証拠なんかねぇし、証拠を正式に認めて欲しいからに決まってるだろ。建前は。

「ああ、なるほど」

 自分で尋ねて置きながらも、どうやらモリーンは瞬時に理解してくれたようだ。
 いや、そりゃさぁ、褒めて欲しいから、見直して欲しいからだよ、とは言えないよなぁ。俺もガキだなぁ。

「だぁっはっは! 言われてやがる、この小僧! その通りだ! なに? 褒めて欲しかったのか? え? 凄いでちゅね。流石はバルドゥック一の冒険者でちゅね。頑張りまちたね。偉いでちゅね~!」

 国王が真っ赤になって腹を抱えて笑っていた。クソ、見透かされてる。恥ずかしいなぁ、もう。

「あ……その、陛下に途中経過をですね……」

 俺の顔も赤くなっているのだろうか。

「ぶひぇ、途中経過ぁ!?「もうそれくらいになさいな」

 モリーンは呆れて国王を遮った。少し国王に対して腹を立てているような気もする。

「グリードよ。己の功績を誇るのは良いことです。ましてやジョージ・ロンベルト一世陛下でも到達し得なかった十層、誠に素晴らしき所業です。同行したそなた以外の者らの為にも大いに誇るべきです。それを公に認められるのが我らだけだからでしょう?」

 モリーンが微笑みを浮かべて言った。建前を建前として認めてくれる有り難さよ。

「ははっ」

 ただ平伏しか出来ない。

「前回同様、王室の名に於いてそなたの偉業を発表しましょう」

 前回、あのあとすぐに王室からは「アレイン・グリードなる冒険者が一命を賭してバルドゥックの迷宮の八層を突破。九層へと到達せしむる。この名誉を王室は讃える」というお触れが出回ったのだ。おかげで今まで以上にバルドゥックの街で俺たち殺戮者スローターズはでかい面が出来るようになっていた。殺戮者スローターズへの参加を希望する有象無象も更に沢山来るようになったが。緑色団ベルデグリ・ブラザーフッド黒黄玉ブラック・トパーズが無理をし始めたのもこの頃だ。

「ははっ、ありがたき幸せ」

 そうそう、褒めて欲しかったんじゃない。
 俺を含む皆の業績を公式に認めて欲しかっただけだ。
 そう思っておこう。



・・・・・・・・・



7446年11月4日

 昨日王城からの帰り道、鍛冶屋で鉄鉱石を仕入れてきた。
 ついでに、なんの処理もされていない、綿花から採取したばかりの綿を大量に(十㎏程)定期的に購入出来るように専門の商会にも注文を出している。
 また、染物屋に行き、黄色染料を購入してきた。
 黄色染料はDDNPジアゾジニトロフェノールの主原料となるピクリン酸(トリニトロフェノール)で作られていた歴史がある。
 もし、オースの黄色染料がピクリン酸であれば儲け物だ。

 王都の宿の一室で鉄鉱石を桶の中に鎮座させ、トランスミュート・ロック・トウ・マッドの魔術を使って泥に変える。その後鉄分を選別、分離させついでに成形も行う。ふむ。

 ……。

 …………。

 まずは一番単純なリボルバーのような機関部だけだ。弾倉の自動回転機構まで廃した(弾倉の回転は発射する度に手で行う必要がある。加熱するだろうから手袋は必須だろう)、ごくシンプルなものだ。ついでに言うと銃把グリップすら単なる鉄の板だ。こいつを万力か何かで固定して引き金トリガーに糸でも付けて遠隔で発射する。これで弾丸のテストを行い、完成度を高めていった方が良いだろう。火薬を使うから安全についても多少考慮する必要があるしな。

 その他、弾頭を含めて薬莢や雷管の部品も大量に製造した。

 選別、成形の際の感覚を掴むため何度か作り直す羽目になったが、挽き肉機である程度のコツを掴んでいたためか、すぐにぴったりの大きさで作れるようになった。一応薬莢は通常のライフル弾のようなボトルネックがある形式とした。網打ちにはそれなりの装薬量も必要だろうしね。

 あとは、発射薬ガンパウダーは良いとして、起爆薬デトネーションパウダーを込めた雷管の製造だな。
 迷宮内のモンスターの復活ですが第二部第百三十三話『窮地』のあとがきにも基本的になことは記載しています。(併せて読んでみてください)
 モンスターの集団(適切な表現ではありませんが、集団は一匹のみで構成されていることもあります)が倒された場合、倒された位置に関係なくその出現範囲と設定されている範囲内のどこかに新たなモンスターの集団が復活します。元の集団の種類や数は関係なく、設定された範囲内での種類や数がランダムで決定され復活します。また、その範囲内が何か異物で埋まっている場合には一番近い何も無い空間に復活します。
 集団が全滅しない限りは復活しません。但し祭壇の部屋だけは異なり、ガーゴイルは十~十五時間(1d6+9時間)のランダムで四匹になるように復活します。召喚されたモンスターが倒されなかった場合には十~十五時間でモンスターはどこぞへ帰還します。
 九層の守護者であるミノタウロスは「一匹の集団が九つある」とお考え下さい。

レベル 秒数 分や時間など
1 1
2 2
3 4
4 8
5 16
6 32
7 64
8 128
9 256 4.2分
10 512 8.5分
11 1024 17分
12 2048 34.1分
13 4096 1.14時間(68.2分)
14 8192 2.25時間(136分)
15 16384 4.55時間
16 32768 9.1時間
17 65536 18.2時間
18 131072 36.4時間
19 262144 3日
20 524288 6日
21 1048576 12日
22 2097152 24日
23 4194304 48日
24 8388608 97日
25 16777216 194日(0.6年)
26 33554432 388日(1.08年)
27 67108864 776日(2.157年)
28 134217728 4.315年
29 267435456 8.59年
30 536870912 17.26年
31 1073741824 34.52年
32 2147483648 69年
33 4294967296 138年
34 8589934592 276年
35 17179869184 552年
36 34359738368 1104年
37 68719476736 2209年
38 137438953472 4418年
39 274877906944 8837年
40 549755813888 17674年
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