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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第一部 幼少期~少年時代

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第二十九話 少年期へ

 さて、ここらでちょっとまとめてみよう。

 俺が今やっていることは

1.ゴム製品の製造の監督及び製造方法の伝授
2.ゴム製品の改良
3.ゴム製品の開発
4.剣の修行(但し、素振りだけ)
5.魔法の修行(MP消費によるMP成長も含む・可能なら1日3回)
6.ミュンに連絡を取ろうとする連絡員つなぎの始末

 なんと、大別して6個も仕事がある。あ、4以降は仕事じゃあないな。
 児童福祉法はどこ行った? ねーよ。
 順番に考えてみよう。

 まず1だ。これは今のところ大きな問題はない。とにかく地魔法と風魔法と無魔法を併せて大量にMPを注ぎ込むことで型さえ作ってしまえば後は特にやることもない。皆が怪我をしないように見て回り、固まる前のゴムをきちんと型に流し込んでいるか、流し込めているか確認するだけだ。手間もあんまりかからない。

 次に2だ。改良と言っても、要望がなければ改良しようもない。何しろ、作った時には自分では満足しているのだから、誰かに指摘されなければ改良点なんかあるわけもない。まぁ自分で製品を使っていて気づくこともあるから全く無いわけではない。それよりも誰か改良の要望を上げてこないとこの仕事はあまり無い。

 そして3だ。これはいろいろある。問題なんか山積みもいいところだ。未だリムが作れないのでタイヤの製造は中断しているしな。そろそろ生活用品のゴム製品もつくる時期かも知れないし。ゴム紐なんて、本当に便利なんだぜ。細いゴム紐を数本束ねて薄い布チューブを作ってその中に通せば簡単に衣類に使えるゴム紐が出来る。これは使ってみないと便利さはわからないだろうなぁ。あと、コンドームもそうだ。バークッドでは性病は流行って無いようだが、古来性行為を感染源とする病気は世界中で猛威を振るって来たのだ。是非完成させないといけない。

 で、4。これも時間を見つけてやっている。俺が監督や指導しないといけないことは少ないので、実は剣の修行時間に困ることはない。素振りだけだし。畳一畳程の面積が野外にあればそれでいい。

 それから5。これも朝起きて朝食を摂った後に魔法の修行も兼ねてMPを消費している。最近だと金属の選別にも使っている。後は夕食の後と真夜中だ。たまにはミュンと夜の狩りに行くので出来ない夜もあるが。

 最後に6。今までに1人始末した。その後任(?)の男は始末こそしなかったが出兵の情報を掴ませたのであと10年近くは問題無いだろう。と思いたい。だが、根本的な解決にはならない。根本的な解決方法は3つだ。一つ目は間者の大元であるデーバス王国のサグアル家を潰すこと。だが、これは困難だ。二つ目はキールに居るとかいうべグルという男を始末すること。一つ目と比較すると楽ではあるが、根本的な解決かというと疑問符が残る。三つ目はミュンが死んだと偽装すること。これが一番現実的でなかろうか? 何かのタイミングで連絡員つなぎが来ている時に連絡員つなぎの目前でミュンが死ぬか殺されるかの偽装をして連絡員つなぎを帰してやればいい。その後べグルなりを始末出来れば満点だろう。当面の時間は稼いでいるので焦って解決しなくていいのは救いだ。

 となると、当面の課題は3のゴム製品の開発だな。あとは問題と言えるようなものでもない。早速取り掛かるか。ヘガードやシャルが帰ってきた時にいろいろ新製品が増えていたらびっくりするだろう。



・・・・・・・・・



 ゴムへの添加物の調整も慣れてきたのでまた衛生用ゴム製品の開発に取り組むが、どうにも上手く行かない。何しろ自分で試すことも出来ないし、誰かに試してもらうことも出来ない。両親に試作品を試してくれと言ったらどんな顔をされるのか……。まぁ半分趣味のようになりつつあるし、あまり先々のことは気にしないようにして今日もゴム膜の改良に勤しんではいるが、薄く均一な厚さの膜を作るだけでも一苦労だし、その膜を、なんだ、その、ナニの形にするのでも苦労する。当面諦めて趣味に留めておくしか無いのだろうか。

 新製品の開発と称して自宅の倉庫兼作業部屋に閉じこもってそんな事をぼうっと考えていたら、突然閃いた。今まで、ゴム膜は表面をつるつるにタイル状に加工した地魔法で作った板の上に適量のゴムをたらし、上から同様の板で抑え付けて膜を作っていた。それを加工して筒状にし、先端を塞いでいた。だから筒の継ぎ目や先端が歪になり、厚さが変わってしまう場所ができてしまう。その厚さの変わり目から裂けたりしてしまいやすかったのだ。なら、考え方を変えて外形の型を作り、そこにゴムを適量流し込む。風魔法で一気に空気を送り込んで流し込んだゴムを型に沿って広げると同時に乾燥の魔法で一気に完成させるというのはどうだろう?

 風魔法を使うから俺にしか出来ないが、そのうち村からも風魔法を使える人間も出てくるだろうし、これ、行けるんじゃないか? よし、早速試作してみるか。

 完全な型を作るのは時間がかかりそうだったので、取り敢えず型は適当でいい。生ゴムを流し込んで……風魔法、乾燥! ……どうだ? 一応出来たな。継ぎ目もないし、綺麗だ。空気を吹き込んで風船にしてみたり、水魔法で中に水を入れて水風船のようなものを作ってみたりして遊ぶ。モトが風船や水風船用に小さく作った物ではないのでかなりでかいな。でも……これは成功じゃないか?

 うっひょー、光が見えた。外形の型さえきちんと作ればいけるな、これは。ゴムも大した量は使わないし、風魔法さえきちんと使えるなら量産に支障はない。……いや、それなりにMP使うからまずいかな? まぁ今からそんな心配しても始まらん。これでいいのだ。

 衛生用品ばかり作って遊んでいても仕方ないので、他にも考えてみる。浮き輪とかどうだろう。ゴムボートもいけるかも知れん。バルブと言うか、栓の工夫さえしっかりやればいけるだろうな。あとは何だろうな。ゴム手袋なんかも良いかも知れない。でも、ゴム手袋の使い道ってなんだ? まぁあって困るものでもなし、試作はしておくか。



・・・・・・・・・



 ゴム製品の試作や蛭を退治して経験値を稼いだりしているとあっという間に4ヶ月が経ち、ヘガード達バークッド村派遣部隊が帰還してきた。戦死者は0で、喜ばしい限りだ。ヘガードやシャルを始めとする派遣部隊の面々は村に辿り着くとその日は疲れも溜まっていたのだろう、全員がすぐに休んだ。疲れも癒えた2日後に、ヘガードは派遣部隊の面々を集めて言った。

「さて、皆ご苦労だったな。結構きつかったが戦死者が出なかったことは何よりだ」

 全員がヘガードに注目している。

「で、だ。ここらでそろそろ使った武具について、良かったところと改善して欲しい所を言ってくれ。あのゴムの防具はアルが作ったから、アルに直接言った方が良いだろう。アルも質問があれば都度尋ねてわからないことがそのままにならないようにしろよ」

「お屋形様、例の件もお話しした方が宜しいのではないでしょうか? アル様も急なことで戸惑っておられますぞ」

 従士長のベックウィズが急に話題を転換させてきたヘガードを窘める様に言った。うんうん、急にプロテクターの良い所とか改善点とか言われてもな。メモ板すら持って来てないよ。

「あ、お、おう。そうだな。アル、喜べ。ゴムのブーツとサンダルは騎士団長のセンドーヘル様も実際にご使用になられて優秀性について大層お喜びになられていた。それに鞍のクッションについてもお褒めの言葉を戴けた。サンダルとブーツは消耗品だから半年で300と100だったが、今後は全面的なご採用をして戴ける。納品の量は3ヶ月で300と100になった。ゴム引き布は500m分だ」

 おお、それはすごいな。まぁ今の生産量だとまだなんとかなる量だな。

「あとな、帰りにキンドー士爵のところにも寄って来た。士爵も喜んでおられた。次はサンダルだけでなく、ブーツやクッションも買って戴けるそうだ」

 む、そういえばキンドー士爵にも納入してたんだっけ。流石にやばいかな?
 俺の顔が浮かないものになったのに気づいたのだろう、ヘガードは不思議そうに言う。

「ん? どうした? 売れれば儲かるし、馬も買えるだろう? ……何かまずかったか?」

 最後に恐る恐る言うヘガードを父親なのにちょっとかわいいと思ってしまった。

「いえ……。それだけの量となりますとゴムの生産量が恐らくギリギリです。余裕がありません」

 俺の心配が理解できたのだろう。ヘガードも事態の深刻さに気づいたようだった。

「む……。そうか、それはまずいな……。生産量を増やすにはどうしたらいい?」

「そうですね。新たに開墾してゴムノキの種を植えて木を増やすしかないでしょう。ですが、僕は試したことが無いので上手くいくかどうか……。それに、上手くいったとしても新たな木が育って樹液が採れるようになるには何年もかかります。ですから、すぐには増産は難しいです。どうしても、となれば手を付けていない木からも樹液を採れば当面はしのぐことは出来ますが、木を傷つけるのでいつかは樹液が満足に採れなくなる筈です。それまでにゴムノキを増やすことに成功しないといけません」

 流石に俺も真剣な表情で答えた。

「ふむ……そうか……。普請で開墾をするしかないか……」

 なんだか皆の雰囲気が暗くなってきた。この空気は嫌だなぁ。

「それはそうと、ゴムの防具の改善点ですよね。いま、忘れないようにメモ板を取ってきます」

 俺は暗い雰囲気を振り払うように努めて明るく言うと、メモ用の板を取りに行った。

 その後は和気藹々とした雰囲気で、皆の手柄話を聞きつつプロテクターの改良点を聞いていく。思いも寄らない改良点も出てきた。改良には時間もかかりそうだ。一番の問題は蒸れる事らしい。肘や肩はそうでもないのだが、胸や腹、腿だとゴムとエボナイトで作るプレートの面積もそれなりに広くなるので、そこが蒸れるらしい。また、股間の防具も同様だ。これについては穴を開けることでの対処は防具の機能を損ないかねないので止したほうがいいだろう。ちょっと重量が嵩んでしまうが、裏側に空気抜き用の突起をいくつもつけることで対処できないだろうか? あとで試してみよう。

 なお、バークッドの派遣部隊が防具をデザインや材質に至るまで揃えていた事は、結構好評だったようだ。戦闘でも充分に役に立ったとも言って貰えたのでそこは一安心だ。

 こうしてゴム製品の改良や開発、月に数回の狩りなどで俺の6歳は過ぎ去ってゆく。

 
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