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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第百八十六話 お願い1

所用のためちょっと短いです。
また、明日の更新も出来ません。ごめんなさい。
7446年9月1日

「おお? アルぅ。ミヅチと一緒に死んだのかと思ってたさね」

 島の中央の大きな樹の下でカールに呼びかけたら反応してくれたのはカールの姉のミラ師匠であった。

「あ、これはミラ師匠。一年も来れず、申し訳ありませんでした」

 ミラ師匠が最初から出てくるとは珍しいな。

「今日も一杯干物を持って来たんですよ」

 ミヅチもミラ師匠に愛想を振りまいた。

「おうおう、そりゃあ有難いねぇ。あたしらは海の魚に目がないからすけ」

 ミラ師匠も相好を崩して答えてくれる。
 俺は樹の洞にしまわれてあったコンロの魔道具を引っ張り出すと、早速道中拾ってきた魔石をセットして火を付けてみた。コンロの魔道具は問題なく青い炎を吐き出す。すぐに火を消してリュックサックから干物を取り出すと周囲を飛び回ったりしていた妖精たちから歓声が上がり、妖精はますます大喜びで宙返りを打つ者まで現れた。

 よし、ちょっと待っててくれ。すぐに焼いてやるから。

 メイネイジの干物を取り出し、コンロの上に五徳をセットしてまずは五徳を熱する。充分に熱くなったら上に干物を乗っけるのだ。こうすると干物の身や皮が五徳にくっつきにくい。

 現金な妖精たちはいつもの如くコンロを囲んで周囲に座ったり俺やミヅチの頭や肩に止まったりしている。ミラ師匠もコンロ前で腰に手を当てて炎に炙られている干物からなかなか目が離せないようだ。

「ところで師匠、カールは?」

「ああ? カール? カールならそろそろ起きると思うけどの。ついこの前からカールもしきりに眠い眠いと言ってたからの」

 へぇ。そういえばミラ師匠も最初にここに来た時は寝てたんだっけ。

 ぴる! ぴる! ぴるるるるっ!

 ミラ師匠は樹の上の方を見上げて何か叫んだ。カールに向けて叫んでいるのだろうか。

「ふふん。驚いて跳ね起きたようだいねぇ。すぐに来るすけ、待っとれ」

 なんだ、カールはお寝坊さんか。っつーか、カールは返事をしたのか。周りで妖精がぴるぴる言ってるから分からなかった。

「それでミラ師匠、今回は「魚食ってからさね」

「……はい」

 一年も間を開けたことに腹でも立てている……って訳でもなさそうだ。思い返してみるとここに来た時はいつも最初に魚を饗していたような気もする。メイネイジから薄い煙が立ち上り、干物が焼かれる良い匂いが周囲に溢れる。

 妖精たちは匂いが拡散すると共にだんだんと静かになり干物がコンロの上で焼かれていくのをジッと見つめる様になってきた。

 と、樹の上から妖精が一人、俺の方目掛けて飛んできた。

 カールだろう。

 うん、やっぱりカールだ。

 うわ、こいつ、びしょ濡れじゃないか。

 風呂でも入ってたのかよ。

「やぁ、アル。久しぶりだね。ミヅチと二人、生きてたようで何よりだよ」

 ふむ。覚えててくれたのか。

「やあ、カール。元気そうだな」
「久しぶりだね、カール。元気そうで何より」

 俺とミヅチの挨拶を聞いたカールはずぶ濡れの頭を犬のように振って水滴を飛ばすと、ミヅチの肩に止まった。落ちないように彼女の髪を掴み、俺に向かって何か言いたそうな顔をしたが、すぐに目を瞑って鼻をひくひくとさせた。

「ああ……いい香りだ。メイネイジって言ったよね。この魚」

「うん、メイネイジよ」

 相変わらず現金な奴だ。俺は苦笑いを浮かべて干物をひっくり返す。皮目に軽く焦げ跡が付き食欲をそそる。しかし……ふむ。カールとはちゃんと会話になっている。成長って大事だよな。

 暫くして干物は焼き上がり、新しい干物を取り出すと焼けた干物をぶら下げて持った。

「よし、焼けた。さぁどうぞ」

 言うが早いかミラ師匠を始めとする妖精たちはまた歓声のようなぴるぴる声を上げて俺の手にぶら下げられた干物に群がった。瞬く間に干物は骨だけになる。座ったミヅチの膝の上ではまだ小さい妖精が大きな妖精から干物の肉片を受け取りにこにこ顔でかぶりついている。

 ま、妖精たちに喜んでもらえて何よりだ。少し温かい気持ちになって妖精たちの食べっぷりを見回した。ミヅチも俺と同様の気持ちになっているのか、薄く微笑んでいる。

「ははっ! 美味しそうだねぇ!」

 相変わらずミヅチの肩に止まったままのカールは、やっと干物を飲み込んだらしく、脂だらけの口を開くとそう言って俺に笑いかけた。ちっ、魚の脂だらけの手でミヅチの髪を掴むなよ、羽虫が。っつーか、何が美味しそうだねぇ、だ。たった今自分の分を食ったばかりじゃないか。美味しかった、だろうがよ。人の干物を羨ましそうに見るなよ。カールはまだまだ食う気まんまんの顔でコンロで炙られている次の干物を眺めている。



・・・・・・・・・



「さて、待たせたない。さっき何か言いかけてなかったかね?」

 三匹目が骨だけになってやっとミラ師匠は俺たちに意識を向けてくれた。

「ええ。今回は魔術をお教え頂く前に、もしご存知であれば少しこの迷宮についての事柄をお教え頂きたいと思いましてね」

 俺の言葉を聞いたミラ師匠は少し不思議そうな顔をして口を開く。

「ん? どういう事かいの?」

「今私たちはこの迷宮の九層に挑戦しています。実は八層の中心部に行く時にミノタウロスが番人として立ちはだかっていましてね……」

「ああ……」

 ミラ師匠は知っているのか知らないのか……妙な顔つきだった。

「まぁ、そちらの方は何回も倒せばそのうち出てこなくなると聞いたので良いのですが……」

「へぇ」

 カールが口を挟んできたがこの様子じゃ知らないだろうなぁ。

「九層や十層、それ以降にもいると思われる番人について何かご存知ありませんか?」

 俺の言葉を受けるようにミヅチもミラ師匠に尋ねる。

「守護者が居たことは知っとるわいの。じゃが、そんな詳しいことは知らんよ」

 ん? 守護者が「居た」と言ったのか。番人じゃなくて守護者ね。意味は一緒だけど言い回しの違いなんだろうな。そう言えば国王や王妃も守護者と言っていた。呼び方なんざどうでもいいからすっかり忘れてたわ。

「そうですか……ご存知の所だけでもお教え戴けませんか?」

 少しでも情報が欲しい俺としては頭を下げるしか出来ることはない。

 
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