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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第百八十四話 成果

7446年8月12日

 本来ならあと一日、合計一週間迷宮内で過ごすつもりだったが、今日の夕方にはキャシーにバルドゥックへ戻れと言っている。根絶者エクスターミネーターズも二回は四層へ荷物を運べただろうし、虐殺者ブッチャーズの方もゼノムが付いているからそれら全てを全部六層へ運べたことだろう。って戻る途中で判るか。

 六層まで転移したらゼノムを中心に虐殺者ブッチャーズの連中は六層の転移水晶の間で駄弁っていた。俺達が戻るのを待って一緒に帰るつもりだったらしい。

「グリード君! ゼノムさんは凄いな!」
「おう! あのオーガをあっという間に片付ける手際、そりゃあ見事なもんだった!」

 ケビンとジェルの二人が興奮して捲し立てる。え? ゼノムがあっという間に片付ける?

「ファイアフリードさん、やっぱり頼りになるわ」
「そうね、お陰で残りの全員、オーガ一匹に集中できたから……」
「魔法も使いやすかった」

 ミース、カーム、ビンスもかなり助かったようだ。

「ああ、格が違うねぇ」
「うん、流石……」
「なんたって、攻撃の疾さ、正確さ、威力、タイミング全てにおいて素晴らしいわ!」

 ジンジャー、キム、ヒスも感心して評していた。俺を含め殺戮者スローターズの面々は当然というような顔をしているが、ラルファはニヤついてた。少しだけ微笑ましい気持ちになる。

 今までゼノムは何度も虐殺者ブッチャーズ根絶者エクスターミネーターズの指揮を執っていた。しかし、オーガほどのモンスターを相手に一緒になって戦ったことはない。僅かに、俺が暴れたところを一時的に見せただけだ。別に隠すようなことでもないが、あの斧を十全に活用したのか? そう思って話を聞いてみたが、魔法の斧の能力を完全に見せ付けた訳ではないようだ。まぁ、あの【手返りの投げ斧コールドアックス・オブ・リターニング】は普通に手持ちで使ったって物凄い高性能なんだけどね。

 ん? そう言えばロッコは黙って俯いている。
 この様子ならオーガを何匹か仕留められたのだろうし大儲けじゃないか。
 一番大騒ぎしそうな感じなんだがな……。

「ロッコ。怪我をしたのはあんただけよ。訓練が足りないのじゃなくて? あんたも走ったらどう?」

 ミースが俯いたロッコに説教を垂れ始める。怪我したのか?

「もう止せ、ミース。ロッコは精一杯やった。最初の踏み込みのタイミングは俺を含めても誰よりも思い切りが良かった。確かに出会い頭の攻撃を喰らってしまったが、それがオーガでなけりゃロッコなら充分に耐えられたはずだ。確かにオーガのオツムは弱いが棍棒を操る技は一流の手練の技だ。力も非常に強い。あれをまともに受け止めて盾を持つ腕の骨折だけで済ませるロッコも大したものだ」

 そんなミースをゼノムは静かに嗜め、ロッコを持ち上げる。なるほど、どっかでロッコがドジを踏み、それをカバーするためにゼノムは相手取ったオーガを瞬殺しなければならなかったのだろう。ゼノムは普段決して無理をせず、派手な戦いもしないが、パーティーが危機に陥った時には一転して一気呵成に攻撃的になることがある。

 ゼノムが言うには二匹一組のオーガを二回倒したとのことだ。そのうちの後の方の戦闘時にロッコが重傷を負った。二時間少し前のことらしい。もう暫くしたら俺達が転移してくるはずだということを根拠にゼノムは残り少ない魔力を注ぎ込んで自然回復不可能なレベルまでミースとビンスに一回づつ治癒キュアーの魔術を使うことを命じた。

 これは俺が普段から言っていたことだ。最悪でもMPを四しか使わない治癒キュアーの魔術であれば、大抵の場合、平気な面をしている魔術師ならその後の魔力(MP)の回復は出来なくても一回は使う余裕が有るはずだってね。ここには食い物は沢山あるし、最悪の場合でもゼノムの腰の後ろのサバイバルキットには拘束用の縄が収められている。

 幸いにして二人共魔力切れは大丈夫だったようだ。それに、ゼノムはロッコが勢い良く踏み込んだからこそオーガの突撃を足場の良い荒れ地で止められたとも言っていた。もう少しロッコが遅ければ少し足場の悪い草地での戦いになっていたらしい。

 ただ、ゼノムは「多少足場が悪くてもその程度の状況、なんとでもなるがな。よくわからん奴だ」と笑っていた。決断力はあっても判断力は……ってことかね? 俺はロッコに完全治癒キュアーオールの魔術を掛け、次いでミヅチにも完全治癒キュアーオールの魔術を掛けさせると「行いは誰かが見ているものさ」とロッコに耳打ちしておいた。

 この六層の転移水晶の間に集積された石鹸や予備の矢、蕎麦粉や小麦粉、鶏卵やオリーブ油と言ったある程度の保存食など各種の消耗品を中心とした物資は七十㎏以上もあり、次回の迷宮探索時には大いに役立ってくれるだろう。

 地上に戻り、ムローワが引き継いでくれたバルドゥッキーの屋台に向かうと、既に根絶者エクスターミネターズがバルドゥッキーを齧っていた。ズールーは売り子を務める獅人族ライオスの姉ちゃんと屋台の裏、広場の隅でなにやら楽しそうに話をしている。ま、いいけど。

 俺はチレ入りの辛口の逸品に囓りついてムローワの売上に貢献した。子供しかいなかった殺戮者スローターズの屋台とは違ってムローワの屋台ではビールも出すのだ。やっぱりソーセージにはビールだよね。冷えてないけどさ。心なしかムローワの屋台の方が客が多い気がする。あ、俺達が三十人も居るからか。



・・・・・・・・・



7446年8月16日

 三日間の休養を取り、再度迷宮へと足を踏み入れる。
 今回は豊富な物資の支えもあることだし、六層まで戻れば新鮮な食料の補給も受けられるから、二週間半(半月)の予定だ。月末まで出て来ない。
 九層で連続二週間を過ごすことになる。
 なお、最終日の八月三十日だけは午前中で切り上げ、その後の休みは俺とミヅチで王都の商会に行くと言ってある。

 虐殺者ブッチャーズは渋るミヅチが、根絶者エクスターミネターズには素直なエンゲラが同行し、殺戮者スローターズの探索を支援させる。

 キャシーには一週間後にはちゃんと三日間の休みを取るように伝え(勿論わざわざバルドゥックまで戻ってくる必要はない)、いつまでもべたべたと引っ付いているバストラルを引き離した。

「じゃあ、みんな、行くぞ」



・・・・・・・・・



7446年8月17日

 六層の転移水晶の間に辿り着いた。
 少しだけ心配だったが大切な物資類は全て異常なく無事だった。
 明日は八層の転移水晶まで行き、ミノをぶっ殺して荷物を置いたらまたここに戻る。
 そしてまた荷物を背負って八層まで行く必要がある。

 出来ればその次のミノの不意を突きたいから十七時間以内にまた戻らねばならない。
 その為、明日の夕方前に八層の奥に着くと仮定して、直ぐに戻る。
 そして、休まずに夜中までに七層を突破し、七層の転移水晶の間で休む。
 もし可能なら八層の転移水晶まで休みなく移動し、その後ゆっくりと休息を取るつもりだ。

 仮に時間がかるようなら最悪一日くらい潰しても構わないけどね。



・・・・・・・・・



7446年8月18日

 朝五時に七層へと出発した。
 転移運が良かったため、七層の転移水晶の間には朝八時に到着した。
 一時間ほど休憩を取った後、八層へと足を踏み入れる。

 首尾よくミノを倒し、八層の転移水晶の間に到着したのは十三時を少し回ったくらいであった。
 十七時間後は明日の朝六時位である。
 休憩がてら皆で相談したが、今日のうちに少し無理をしてもう一度往復してしまおうということになった。

 ……。

 一日で七層と八層を二回。

 やれば出来るもんだな。

 日付が変わる寸前、八層の転移水晶の間のベッドで毛布にくるまりながら「交代を考えてもみんな四時間半は眠れる」と思って安心した。
 魔法が使えないズールーとギベルティを中間に挟めば良いだけだ。
 俺とゼノムは六時間寝る。
 疲れていたのですぐにまどろみに落ちていった。



・・・・・・・・・



7446年8月19日

 さて、九層だ。
 今日から月末までの二週間、途中でまた六層まで戻って補給物資を調達しなければならないがたっぷりと九層を探索出来る。
 魔石を取ったミノの死体を遠くまで引き摺りながら気合を入れていた。

 本日の収穫は地図の空白を埋めただけ。
 祭壇の部屋にも行き当たらなかった。

 昼飯は弁当を喰ったが、夜はグィネが仕留めたカニを持って帰ってカニしゃぶで済ませた。
 カニはトリスの炎の剣(フレイム・タン)で殺されるとどうも新鮮な感じじゃないのだ。
 グィネの貫きの槍で一撃で脳を破壊した個体が一番新鮮な気がするのは気のせいだろうけどさ。
 かなりの数を仕留められるので出来るだけ綺麗な奴がいいよね。
 何食も連続すると微妙な気持ちになるが週に一回くらいだとカニ料理は物凄く美味く感じる。
 でもゴミは臭いから遠くに捨てに行かなきゃならないけど。



・・・・・・・・・



7446年8月20日

 いい感じに探索が進んでいる。
 今日も祭壇の部屋には行き当たらなかったが、主のいる部屋の壁から金鉱石が顔を覗かせていたのだ。
 持ってて良かったツルハシ。

 百㎏近くもある立派な金鉱石だ。
 流石に持ち運べないのでまた鼻血を流しながら時間を掛けて金の延べ棒にした。
 十㎏サイズを八本。
 以前六層で得た金の鉱石よりかなり純度が高い。
 調子に乗って一本目に『K24』と英文字とアラビア数字の刻印まで付けてしまったが、トリスやベルに突っ込まれたので元に戻す。
 冗談の解らない奴らだな。
 馬鹿なラルファは「純金じゃん!」と大喜びだったのに。

 手分けして持って一度八層へと戻った。
 キラキラと輝く金の延べ棒を部屋の隅に積み上げ、皆で弁当を食べてまた九層へと戻る。

 うっとりして、

「永遠に眺めていたい輝きよね」

 と言うグィネを引き剥がすのに苦労した。

 午後は探索だけで終わった。



・・・・・・・・・



7446年8月21日

 またタングステン鉱石を得る。
 今回も祭壇からだ。大きさは前回より少しだけ大きいようだ。
 一個だけなので探索を継続する。

 ……。

 ふん。
 多分このエリアはあれだ。
 八層の中心と同じく九層の中心だろう。
 やけにだだっ広い場所に出た。
 暫く壁沿いに移動してみたが、通路を彷徨いているようなカニも全く見当たらない。

 ボスが居るのかな?

 やっぱり居るんだろうなぁ。

 戦ってもいいが、どうせまた技能は使えない気もする。
 使える方に賭ける程楽天的にはなれない。
 だとするとミヅチが居る時の方が良いだろう。

 まだ十時過ぎだ。
 ここは別の通路を探索すべきだろう。
 部屋に繋がる別の通路に足を踏み入れた。

 途中で以前の探索の際、時間切れで引き返した地点と繋がった。
 なるほど。



・・・・・・・・・



7446年8月22日

 六層の転移水晶の間に戻った。
 新たな食料が置かれている。
 肉だ。
 野菜だ。
 おお、メイネイジの干物まであるじゃないですか!
 気が利くな、エンゲラは。
 流石俺の奴隷だぜ。

 ……ん?

 あれ?

 ちっ、黒黄玉ブラックトパーズまで六層を抜けてここに顔を出しやがったか。
 新たな野営道具が空いていた隅に設えてあった。
 シャワーの桶に緑色団ベルデグリ・ブラザーフッドみたいに金が入れてあった。
 あと、真新しい小さな手桶がシャワー室に置いてあり、炭か何かで「よろしくね」と書かれていた。
 苦笑いが浮かぶ。

 七層で時間を掛けてオーガを四十匹程仕留めた。
 黒黄玉ブラックトパーズとは出会えなかった。
 勿論、緑色団ベルデグリ・ブラザーフッドともだ。



・・・・・・・・・



7446年8月23日

 九層の探索は順調。
 いい感じだ。
 トリスの炎の剣(フレイム・タン)は今宵もトロールの血に飢えておるぞ。

 祭壇の間には行き当たらなかったが、かなり探索できた。
 鍋が良いという皆の意見を封殺し、メイネイジの干物にした。
 魚の干物はいつ喰っても旨いね。



・・・・・・・・・



7446年8月24日

 魔法の武器(マジカル・ウェポン)を手に入れた。
 矢だ。
 合計二ダース、二十四本。

盲目の矢アロー・オブ・ブラインドネス

 俺の【鑑定】によるとこの矢が突き刺さった生物はその傷の大きさや当たった場所の如何に関わらず、矢尻が完全に体内に隠れるまで突き刺さりさえすれば最低五分間完全な盲目状態に陥るらしい。
 但し、一度効力を発揮すると矢は魔法の効力を失い、普通の矢と何ら変わらないものになるそうだ。

 使い捨てか。
 売っちまうか。

 いや、剣や斧、その他の魔法の品(マジック・アイテム)なんかは別に売ってもいい。
 でも、こいつはダメな気がする。

「名前から言って当たった相手の目を潰すような感じですね」
「その他の能力は考えにくいでしょうね」

 バストラルとベルが話している。
 この名前で他の能力がくっついてる方が驚きだよ。

「うーん、考えようによってはオーガメイジとか魔法を使ってくる相手に良さそう」
「お、なるほど。冴えてるな」

 確かにラルファの目の付け所は良いな。
 魔法は目が見えないと大抵使えないしな。
 特に攻撃魔術はほぼ全て目標設定が必要になる。
 何かに触れてその何かに対してゼロ距離で放つのであれば全く無理という訳でもないが、逆に密着していると弾頭を飛ばすような攻撃魔術は余程強くイメージしないと発現しない。
 俺くらいの技倆で他に全く何もしない(呼吸すらしない)で集中し、それでも数秒から数十秒は掛かるんじゃないだろうか。
 治癒キュアーだの明かり(ライト)だのは目が見えなくても(目標が視認できなくても)触れてさえいればそれこそステータスオープンの様に使えるんだけどね。

 こいつはベルに渡しておこう。数が多いから矢筒には予備も入れて二本も混ぜとけば充分だろ。

 でも、一回使うと能力が失われるの、説明するのが面倒臭いな。



・・・・・・・・・



7446年8月25日

 また別のコースで九層の中心らしき広場に出る道を発見した。
 祭壇の間はあったがスカだった。
 つまらん。
 つまらんがきちんと地図が埋まっているので良し。



・・・・・・・・・



7446年8月26日

 今日も新たな祭壇の間と行き当たるもスカだった。
 うーん、残念!



・・・・・・・・・



7446年8月27日

 何もなし。
 なぁ?
 そろそろあんたも飽きてきたろ?
 え?
 そう?
 ならいいけど。



・・・・・・・・・・



7446年8月28日

 食料の補給のため六層へ行く。
 転移水晶の間には誰もいなかったが、明らかに黒黄玉ブラック・トパーズ野営キャンプには進化の跡が見られる。
 緑色団ベルデグリ・ブラザーフッドと同等にまで発展している。
 勿論、俺たち程ではないが、それでも充分な設備が運び込まれていた。

 午後には八層の転移水晶の間に戻り、九層の探索に赴いた。



・・・・・・・・・



7446年8月29日

 あ。
 これは。
 これはあれか!?
 豪華版の祭壇の間か!?
 と思ったら違った。
 単に魔物の部屋が二連続でくっついてただけだった。

 クソ。
 紛らわしい。
 おまけに普通の祭壇も無いと来てる。

 【盲目の矢アロー・オブ・ブラインドネス】を得てからこっち何も得られていないので少しイラついていたようだ。

 冷静に考えると今回は潜っていた期間以上に実績も得ている。
 鉱石二個に【盲目の矢アロー・オブ・ブラインドネス】という魔法の武器(マジカル・ウェポン)だ。
 今迄こんな短期間でこれだけのお宝を得たことなんかない。

 と言っても、処分するのは金の延べ棒だけなんだけどね。
 それだってあれだけの量だ。
 合計八十㎏。
 以前の時は精錬して二十㎏程度で三千万Zを超える値で卸せたのだ。
 今回はその四倍。
 楽勝で一億を超えるんだぜ!

 充分な実績は出ているさ。

 とは言うものの、ラルファ曰く金の亡者の俺としてはこれじゃまだまだ不足なのだ。

 とか言ってるそばから新たな祭壇から魔法の品(マジック・アイテム)だ。

冷蔵庫リフリジレーター
【ビーチ材・鉄】
【状態:良好】
【加工日:29/8/7446】
【価値:13500000】
【耐久:678】
【性能:内部温度4度;1490価値/1日】
【効果:内部に収納された物品を冷蔵保存可能。湿度調節機能なし】

 以前の奴より耐久値が高い分少し価値が高いな。
 大荷物だし、さっさと戻るか。
 うひひ。



・・・・・・・・・・



7446年8月30日

 さて、今日は最終日。
 午前中で切り上げるぞ。
 む。
 初めて以前と同じ場所に転移したか。
 幸先悪いな。

 もう一回転移し直した。
 今度は初めての場所だ。

 気を取り直して行こう!
 レッツらゴーだ。

 ラルファとグィネなんかは何の反応もしなかったがバストラルに『古いっすね』と言われた。

 そ、そうかな?

 転移した先はすぐに別れ道になっていた。
 とりあえず左かな?
 根拠ないけど。

 む。
 転移水晶があるな。
 こっちで正解か?

 ……。
 …………。

 またすぐに転移水晶だ。

 ……。
 …………。

 ほ。
 祭壇付きの部屋か。
 今日はここで終わりにしとくか。

 召喚されたグリーンポイズンリザードを膾にして、コボルドも焼き払い、ガーゴイルの首を刎ねる。

 はてさて、ラスト一発。
 何が出るかな?
 出ないかな?

「あっ!」

 今回はいつものようにエンゲラが居ないのでズールーに祠を探らせていたのだが、何かあったようだ。

「ご主人様! おめでとうございます! なにやら指輪のようです!」

「「おおー!」」

 俺も思わず声が漏れた。
 魔法の指輪って有名だしな。
 それくらい俺だって知ってるぜ。
 っつーか、ミラ師匠のとこで苛められた記憶が蘇る。

 祭壇から降りたズールーは両掌の上に指輪を載せて俺に差し出してくる。
 大柄の獅人族ライオスが背を丸めながら小さな小さな指輪を大切そうに扱う姿は少しユーモラスだった。

 ほほう。
 見た感じ幅五㎜はありそうな傷だらけでくすんだ感じの金の指輪だ。
 宝石が嵌っている。
 立て爪ではなく、直接嵌っているね。
 嵌っている宝石とは反対側に切れ込みがあって僅かに隙間が開いている。
 なるほど、フリーサイズ、という訳か。
 指輪だし、念のため。
 無魔法のディテクト・マジック。
 反応がある。
 右手の手袋を外して親指と人差し指の二本で摘みあげる。
 指貫手袋のズールーが触ったし大丈夫だろ。

「ステータスオープン」

守護の指輪リング・オブ・プロテクション

「おおっ!」

 また思わず声が出た。
 これいい感じの名前だわ。

「なに?」
「何ですか?」
「どんな名前だったんです?」

 皆興味津々という感じだ。
 当然だけど。
 ちょっと待ってくれよ。

守護の指輪リング・オブ・プロテクション
【金・サファイア】
【状態:良好】
【生成日:30/8/7446】
【価値:1】
【耐久:50】
【性能:ダメージ減殺;1HP】
【効果:この指輪を嵌めている対象はHPにダメージを受けるような事柄がある場合、指輪の魔力によって1HPだけ受けるダメージを減殺出来る。減殺可能なダメージは一日あたり1HPまで】

 しょぼいな。

「名前は凄いぞ。【守護の指輪リング・オブ・プロテクション】だそうだ」

「「ほおぉ!」」

 手近にいたベルの掌にぽとりと指輪を落とした。

 きゃいきゃい言いながら皆名前を見ている。

 これこそ売ってみようか。

 
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