挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第一部 幼少期~少年時代

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

29/509

第二十七話 増産

このゴムの商売って、ブーツ代と布代しか仕入れにお金がかかってないですから原価率考えたらぼろ儲けですね。
まぁ人件費を考えればもっと原価は上がりますが……人件費安いだろうなぁ。
私も一度でいいからこんな粗利稼げる商売してみたいですわ。
「今回持って行った製品は全てウェブドス侯爵の騎士団に販売した。合計で900万ゼニーで引き取って貰えた。多少値引きはしているが、これは現時点で持っていった品物は先方の要求を完全に満たしていないので、その分割り引いたから少し安くなっている」

 えーと、サンダル98足、ブーツ20足、布49m、クッション10個だっけ? 俺一人で適当に作ったものがそんなに高く売れたのか……。馬一頭数百万ゼニーだそうだから、あの程度で馬一頭買っていくらかお釣りも来るということか。最初に心配していたことが馬鹿みたいな売上だ。

「今回の売上で今後ゴムを作っていくためにいろいろ必要だと思われる道具を買ってきた。センドーヘル様のお声掛かりもあって少し安く買えた。買ってきたものがこれだ」

 ヘガードはそういうと振り返って荷馬車に被せてあった布を引き剥がした。荷馬車にはかなりの荷物が載っているように見えていたが、カバーを外されて中身を見ても良く判らないものが多い。袋開けなきゃ中身わかんねぇよ。まぁ袋以外にも金属製の鍋や釜のようなものも見えるし、なんだろうな。

「これはキールで廃業した鍛冶屋から設備を買ってきた。他にゴムを流し込むための鍋やゴムを作るのに必要な桶も買ってきた。あとは、分解してあるが、犂も1つ買ってきた。犂は後で組み立ててうちの馬の1頭を使って畑を耕すのに使う。必要な奴は言って来い。まだ料金は決めてないが、馬ごと貸し出すぞ」

 ヘガードが自慢げに言うと犂のあたりから皆から歓声が上がった。うえー、犂と馬貸し出すのに金取るのかよ、と思ったが、無償で貸し出すと順番とかで揉めるかもしれないし、貸し出しの金額を安く設定すればあまり問題にはならないだろう。とにかく、これで農業に家畜を導入する事が出来るようになったわけか。経緯はどうあれ、目標を達成することが出来たのには満足感があるな。

「犂については明日以降詳しく発表する。それと、最後に一つ話をしなければならん。今のところゴムについては家のアルが作っているが、これからは作る数も増えるし、かなりの力仕事も必要になる。だから手伝いの為に人を増やさねばならん。当面は最初の注文分を作らねばならんし、やることは多い」

 ヘガードはそう言ってまた皆を見回す。

「テイラー、エンベルト、アルノルト……あとは、そうだな。ダイアンと……ミュンだな。ダイアンは今は居ないが、後で伝えてくれ。明日からアルにゴムの製造について学べ。既にファーンとミルーが学び始めているが、細かい内容についてはファーンから明日説明させる。いいな。あと、当然だが、給金も出すぞ」

 呼ばれたのは従士の息子や娘だ。ミュンだけが20代だがあとは全員10代で若い面子だ。エンベルトとダイアンは今年成人したばかりの15歳だし、アルノルトも17歳でまだまだ若い。ドワーフなのでちびで髭が生えているが。テイラーは19歳でミュンを除けば一番年上だが、日本の常識で言えば社会人としては小僧にもなっていないような年齢だ。だが、若いということは頭も柔らかく、覚えはいいだろう。せいぜい鍛えさせて貰おう。

「それと、この商売が軌道に乗れば……上手くいっても3~4年はかかるだろうが……約束は出来んが俺はこのゴム製品の製造について最終的に村の産業にしたいと思っている。ゴム製造について今後も皆の手を借りると思う。そうなったときにはこの中でも農業を辞めてゴム製造に専念して貰う奴も出ると思ってくれ」

 皆は素直に聞いていたが『農業を辞めて』のあたりで不安そうな顔をするものもいた。先ほど呼ばれた若手とその親達のようだ。素直にゴム製造に関わったほうが幸せだと思うよ。

「あとは何か質問はあるか?」

 ヘガードは話はこれで終わりだ、とばかりに締めにかかった。すると何人かから手があがる。ヘガードは従士長のベックウイズを指名した。

「あのぅ、結局帰り道にキンドー士爵の所には寄られたのでしょうか? 先ほどお伺いしたご様子ですとキンドー士爵もゴムの注文をしたがっていると存じますが」

 それを聞いてヘガードを始め、立っていた全員の顔色が変わった。まさか……な。

「あ……その……。忘れてた。まずいな……俺が行かないとダメだろうしな……。明日またドーリットまで折り返してくる……」


・・・・・・・・・



 その日の晩、ヘガードはまた食事の後で話をした。

「ファーン、ミルー、ゴムは作れるようになったか?」

「はい、ですがまだアルの用意してくれたメモが無いと作れないと思います」

 ファーンが言う。そりゃそうだよ。ラテックスの採取からやってるんだし、まだ三ヶ月くらいだしな。

「そうか、ならば明日はアルがラテックスの採取から指導してやれ。ああ、指導するのはテイラー達にだぞ。ファーン。お前は一日も早くゴムを一人でも作れるように、完全に混ぜ物の割合を掴める様になる事が当面の目標だ。お前は来年か再来年にもウェブドスの騎士団に入団するのだから、その前には完全に出来るようになっておけよ」

 ヘガードはそう言うと今度はミルーに向かって言う。

「ミルーは魔法でのゴムの乾燥は出来るようになったか?」

「はい、父さま。もう出来る様になりました。アルにももう大丈夫って言われたんだから」

 うん、ミルーは風魔法以外全部使えるから効率は俺ほどではないが問題なくゴムの乾燥が出来る。

「よし、アル、明日から頼むぞ。三ヵ月後には馬も何頭か買えるだろうし、厩舎の増築も必要だ。厩舎の増築はあと10日もすればドーリットから職人が来て取り掛かるはずだ。皆、失礼の無いようにな。グリード家全体が舐められるぞ。職人達は厩舎の増築の前にゴム製造のための小屋も建ててくれるように発注してある。小屋の場所は川沿いの空き地だ。アルは使いやすい小屋を考えて置けよ。それを俺から職人達に伝えよう」

「はい、父さま。わかりました。あと、質問があるのですが、いいですか?」

 俺は自分の中で興味のあった鍛冶道具について聞きたかったのだ。

「ん? なんだ?」

「鍛冶道具ですが、バークッドで誰か使えるのですか?」

「大体のところは俺がわかる。あとはお前が何とかしろ。人を使ってもいい」

「え? 僕?」

 意外だった。だが、物は考えようだ。ヘガードが基本的なところが分かっているならそれを聞いて魔法でなんとか出来ないだろうか? いやいや、出来れば儲けものだ、くらいに考えておかないとな。



・・・・・・・・・



 翌日、ヘガードは朝早くから再びドーリットへ向かった。俺は朝のMP消費からの休息を経て昼過ぎには庭に集まったメンバーを前にしていた。取りあえずゴムノキの場所まで採取に行く。全員農作業や剣の修行などで鍛えられているので片道2時間程度の道のりなど物ともしないようだ。尤も俺の脚で2時間なので大したことは無いのは本当だろうが。

 ラテックスの採取法を教えながら実地で採取をしていく。既に200本のゴムノキに小さな桶を設置してあるのでその桶の内容物を集めるだけだ。集めると同時に木の幹に新しい傷を付けるのだが、過去に付けた傷跡も残っているので迷うようなことはない。慣れていないとは言え、流石に何人もでやれば順調に採取が進み、あっという間に終わってしまった。

 その後、採取したラテックスを村まで持ち帰り(ラテックスは200本の木から10日あたり40Kgくらい採取出来る。ゴムに生成すると半分弱になる)ファーンとミルーに渡して終了だ。今日はもう夕方なので、ファーンとミルーはラテックスに混ぜる木炭と硫黄鉱石を魔法で粉末にしていたが、実際に混ぜて各種ゴムを生産するのはまた明日だ。

 翌日はゴムを精製し、型に流し込む作業だ。こちらも大して難しい仕事じゃない。型は既に用意してあるのだから、溢れないように注意して流し込むだけだ。流し込んだら俺達姉弟で順に乾燥の魔法を掛けていく。ゴム製品がどんどん出来上がる。一人でやるより兄弟3人の方が効率は良くなっていたが、人数が増えて更に効率は良くなった。

 ラテックスさえあれば騎士団への納入品は実質10日もあれば作れるんじゃないか? 一番手間がかかるのが、ゴムの使用量が一番少ないブーツというのもなんだかなぁ、という気持ちになって来るが、これは仕方が無い。ブーツ自体は作れないからな。村でも豚を潰した時には皮でいろいろ作ったりするのだが、ブーツを履いている、いや、履けるような余裕のある人間は家の両親だけだし、製造ノウハウがないのは仕方ない。取りあえず今はブーツの中敷と底、プレート取り付け用のベルトをちょっとだけ作っておくに留めた。ヘガードが買ってきたブーツを改造してゴム底を取り付けやすくしたりする、地味に面倒な作業については一足だけ見本でやってみて後はテイラーとエンベルトに任せた。

 彼らにゴムの特徴や上手な型への流し込み方などを説明しているだけでも時間はどんどん過ぎていく。人に教えていると急速に時間が経つのは本当だよな。



・・・・・・・・・



 ヘガードも戻り、キンドー士爵の追加注文も受け、ゴムの作業小屋や厩舎の増築も進んでいく。今のところ問題はない。と油断していた。

 そんなときにミュンから報告があった。ドーリットからの大工職人のなかに連絡員つなぎが居るらしい。

 そう言えばそうだった。職人達の作業はまだ終わっていない。また殺したら面倒なことになるだろうか? ミュンに聞いて相手を特定して鑑定してみた。何だよレベルは6か。いつも口を半開きにして頭も回らなそうな顔つきだ。まだ日は高いし、どうやって始末したものだろう。夜まで待つか?

 
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ