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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第百四十八話 ニュービー1

7445年9月11日

 三日前からまた迷宮に入っている。今回の殺戮者スローターズのメンバーは俺を筆頭にゼノム、ベル、グィネ、バストラル、エンゲラの六人で、七層の転移水晶の間にギベルティが飯炊きとして鎮座している。トリスとラルファは虐殺者ブッチャーズへ、ミヅチとズールーはもうすぐ(スーナー)へと出向させていた。

 皆が迷宮へ行っている間、ソーセージについては販売は見合わせ、香辛料などの配合について更に詰めることになっている。キャサリンとジョンとテリーに任せる形にはなるが、オースの人の口に合った味を作るには彼女たちの方が良いだろうし、購入するのもそういった奴隷階級の人々や自由民が圧倒的に多い。好きなようにやってくれとバストラルは言っていたが、全く同意である。

 今日からは前回と逆にして午前中に七層のオーガメイジたちを殺して金になる魔石を稼ぎ、午後は八層のモンスターについて、調査を兼ねて経験値を得る作業だ。

 そう、作業だ。

 便所コオロギやカマキリ、ヤスデなどの虫の巨大化したようなモンスターを燃やしてやり、たまに現れるスカベンジクロウラーからは魔石の他に触手も頂戴しておく。新しいモンスターも確認出来たが、便所コオロギなんかの亜種のようで、外見に微妙に異なる部分はあるもの、斑点のつき方や色なんかが違う程度だ。押しなべてあんまり変わったところはない。鑑定した内容も能力値が多少異なる程度で、あとは軽い毒を持っているくらい。

 油断さえしなければ、火魔法をベースにした攻撃魔術で然程大きな問題も無く殺せる。皆と話し合った結果、念の為に今年一杯はこうしてモンスターを確認するつもりでいる。八層では半日でだいたい十回くらい「オーディブルグラマー」によるおびき寄せが成功して戦闘が出来る感じだ。

 一回の迷宮行のうち後半の三日間で約三十回。年末までに十三回の迷宮行だろうから四百回近い戦闘を八層で行う勘定になる。転移の回数は二千回を超えるだろう。殆ど情報も無い階層だけに、このくらいのサンプル数が無いとその階層をうろつくモンスターについて理解したとは言えないと思ったのだ。



・・・・・・・・・



7445年9月23日

 朝食を摂ったあと「奴隷の店 ロンスライル」へと足を運んだ。あれからもうそろそろ一ヶ月近くが経つ。二十六日からまた迷宮に入ってしまうので、可能なら今日のうちに奴隷を引き渡して欲しかったのだ。

「やあ、ロンスライルさん。躾の方は如何ですか? もし良ければそろそろお引き渡しをお願いしたいのですが……」

「あら、グリード様……んー、まぁ良いでしょう。彼らも素直なものでしたし、冒険者の訓練などもお有りでしょう。昼くらいに命名の儀式をやって貰えるように手配します」

 マダムはにこやかに返事を返してくれた。少し早いかな? と思っていた引き渡しの時期もほんの数日の違いでもあり、あまり問題は無いようだ。

「それは有難いです。では、私もその頃に出直すとします。ああ、そうそう、体は鈍らせていないでしょうね?」

「それは戦闘奴隷ですからね。勿論ですわ。毎日、木剣や木槍を振るわせていますよ」

 流石に模擬戦まではやらせていなかったようだ。怪我でもしたら大変だしね。

「では、昼食後にまた来ますね」

 そう言うと店を出て奴隷たちを宿泊させているシューニーへと向かった。四部屋確保しとかなきゃな。一応先月の時点で今月末から俺の奴隷を更に四人突っ込みたいとは言っているので考慮はしてくれているだろうが、月末と呼ぶには少し早いのが気になっていた。まぁ、空いてなきゃ次の迷宮に行くまでの僅かな間、適当な宿にすれば良いだけの話だ。シューニーは建物が木造二階建てだが十二棟もある馬鹿でかい宿なので、まず問題なく部屋は大丈夫だとは思うけどね。

 一棟は少し大型の家族向けの部屋が一階に廊下を挟んで向かい合わせに十二戸、二階は個人用の部屋がやはり向かい合わせに二十二戸の合計三十四戸がある。ゼノムとラルファは一時期ここに住んでいた。二棟は個人用の部屋だけで、合計四十八戸だ。ベルは最初ここにいた。最初に建てられた棟だけあって老朽化も目立ち料金は結構安い。各部屋の広さは個人用の部屋が四畳くらい、家族用の部屋はその倍くらいだろうか。延床面積は一階も二階も一緒のようだ。

 三棟は家族用の棟で合計三十二戸。四棟は一棟を少し大型化させた造りで、家族用十六戸と個人用二十六戸。ズールーとエンゲラもここに住んでいる。五棟と六棟、八棟は二棟と同じ造り、七棟と九棟は三棟と同じ造り、十棟から十二棟は四棟と同じ造りだ。トイレは共用のものが各棟の端に複数ある。また、広い敷地の中に八つの井戸も掘ってある。

 ちなみにギベルティは五棟に住んでいる。ジョンとテリーはギベルティの隣なので同じく五棟だ。もう一つ、もう少し小型の建物もあるが、そこは経営者や宿の従業員の居住用の棟となっている。

 一泊二千~三千Z(建物の古さや部屋の面積で値段は上下する)の、貧乏な自由民や多少裕福な奴隷、低い実力から中級くらいまでの冒険者が住む、バルドゥックで一番規模の大きな宿だ。このように、バルドゥックの街の人口の二割くらい(約七千人)はこうした集合住宅のような宿に住んでいる。一軒で五百近い部屋を持つのはこのシューニーくらいのものだが。合わせて千人以上は住んでるだろう。この宿だけでバークッド村が二つ分、余裕で入る。

 木賃宿に毛が生えたような程度だが、大部屋が無く、外側からは錠前、内側からはかんぬきで全て鍵の掛かる個室であるのが大きな売りだと言われている。宿を営むシューニー商会の会長は平民ながらバルドゥックの顔役でもある。

 部屋は当然のように問題なく取れた。常時何部屋かは空きがあるのだ。この宿に宿泊している冒険者も平均すれば毎月一人二人は死ぬだろうからね。特別な伝言や前払い無しに二~三日以上部屋を空けると荷物は処分されて空き部屋になってしまう。奴隷たちの宿の料金については必ず一月分以上の余裕を持って前払いするようにしているので、俺の奴隷にはそんな心配は無い。

 部屋をとった後、神社に行って金を下ろし、ボイル亭に戻った。

 ボイル亭へ戻る途中で、買い物帰りのバストラルやキャサリン、ギベルティ達に会った。鶏肉や牛肉も買ったらしい。いろいろな割合で挽き肉を合挽きにして試作品を作るのだと言っていた。午後には新しい戦闘奴隷も四人増えるので、材料に余裕があれば彼らにも食わせてやって欲しいと伝え、ゼノムの部屋に行った。予想していた通りラルファとグィネが居た。魔術の修行をしていたらしい。

「二人共、昼過ぎになったら戦闘奴隷が入る。命名の儀式行くか?」

 買いに行く時に一緒に居た彼女たちはそこまでは興味が無かったようだ。

「うーん、いいや。グィネと一緒に魔術の練習をしたら、今日はこれから王都に行って新しい服買うし。サージに言われたお使いもあるしね」
「ゼノムさんと三人で王都に行くんですよ」

 ああ、ケーシング(豚の腸)を買い付けに行くのか。

「おう、そうか。気をつけてな。夕方には戻るのか?」

 あ、そうだ。

「丁度良いや、ついでに商会の方にも顔を出しておいてくれ。ロズラルでも誰でも良いから、ゴムサンダル四つ分のゴムだけ確保しておいてくれって言っといてくれないか?」

「うん、解った。あと、晩御飯までには戻るよ。グィネはともかく、お父さんとあたしはもうすぐ(スーナー)と夕食があるからね」

 今回はゼノムとラルファがもうすぐ(スーナー)、ベルとエンゲラが虐殺者ブッチャーズだったな。トリスは八層で一生懸命剣を振り、止めを刺すことに集中していた。

「ああ、そうだった。ジンジャーやヒスなんかとはどうだ? 仲良くなれたか?」

「うん、そこそこかな。ロリックも話してみると良い奴だったしね」

「ん、そうか。仲良くやってくれ」

「私は向こうで一泊してくるつもりです。アンナちゃんとハンナちゃんに服買ってあげる約束してるんで」

 旧日光(サン・レイ)とあまり関わりのないグィネは王都で一泊するようだ。

「そうか、そりゃあ喜ぶだろう。ゆっくりしてくるといい」

 アンナとハンナは可愛がられてるな。亡くなった親父さんが商売をしていただけあって、母親のレイラも簡単な算数程度は出来る。今はレイラにいろいろと仕込まれているようだ。俺もいずれは時間を取って教育したいとは思っているが、キャサリンの様子を見るに、教育係についてはいっそバストラルに丸投げで任せるのも良いかもなぁ。

 勿論、グィネが教えることも大歓迎だ。アンナとハンナの二人も、出来れば将来のグリード商会の幹部になって欲しいが、彼女たちは単なる被雇用者であって奴隷ではないから強制も出来ないし、するつもりもない。グリード商会から離れたとしても算数が出来る事は彼女たちの大きな武器になると思う。

 部屋に戻るとミヅチが宿から帰ってきた俺の洗濯物を畳んで棚に重ねているところだった。

「午後にこの前の戦闘奴隷が四人入ってくる。今日はお前、何か予定あるか?」

「ううん、前に買いに行った時に躾の期間は一月くらいって言われてたし、今回の休みは特に予定は入れて無いよ。装備とか買いに行かなきゃならないでしょ?」

「ああ、悪いな」

「それより、実家の皆さんはまだ来ないの? ご両親へのご挨拶とかまだだし……」

「うーん、先月の頭に姉ちゃんが戻ってるからそろそろだとは思うんだけどなぁ……って、今回は親父かお袋のどっちかしか来ないと思うぞ。今後も二人同時は流石に無いんじゃないかな?」

 来るとしても多分親父だろう。お袋はゼットとベッキーへの魔法の指導にかかりっきりだろうし。正式な領主となった兄貴や義姉さんも流石にもうおいそれとは来れまい。

「何にしても早く来て欲しいよ……。売るものも無くなっちまったし、本当に困ったよ……」

 椅子に腰掛けると、ミヅチにお茶を淹れて貰った。



・・・・・・・・・



「これでどうだ?」

 鍛冶屋のおっさんが元騎士だった俺の奴隷に長剣ロングソードを渡して無愛想に言った。

 抜身の長剣ロングソードを受け取ったガルハシュは何回か振って首を捻り、しっくりとこなかったのか、オコンネルに手渡している。オコンネルは剣を振ると満足そうに頷き、別の振り方を試し始めた。

 鍛冶屋で今回購入した奴隷たちに在庫している刀剣を選ばせているところだ。ガルハシュとオコンネルの二人は正騎士の出身だから自動的に前衛を受け持たせる。ファイエルノートとマンゾッキの兵隊出身の二人にはスピアだの斧槍ハルバードだのの方が良いだろう。そっちは別の鍛冶屋に行かなきゃならん。

 在庫も数本しか無いのでそれ程選択肢が多い訳じゃない。二十分くらいで二人には剣を選ばせた。槍の方はもう少し時間がかかった。ファイエルノートとマンゾッキは兵隊出身なだけあって、リーチの長い武器を好むようだ。と、言うより、剣の使い方は軍隊ではやらなかったらしい。ズールーのように兵隊になる前から剣の訓練もしなかったようだし、子供の頃から槍などの訓練を行っていたとの事だった。

 話を聞いてみるとデーバス王国の軍隊はやはりロンベルトとは異なるようだ。この辺りは今はどうでも良い。ま、ベルやズールーから聞いて大体のところは知っていたが、地方ごとにかなり特色もあり、異なる部分が多いらしいことは理解出来た。他国の軍隊の軍制や訓練内容なんか、今から知っておく必要もない。今は魔物を相手にする冒険者だしな。

 革細工屋へ向かい、四人分の革鎧も注文する。結構散財したな……長剣ロングソード二本で二百万Z、スピアも二本で百万Z、革鎧が四着で二百四十万Zだから合計五百万Zを大幅に超えてしまった。奴隷自体の購入費用も考えたら七千万Z以上だ。簡単には殺さねぇぞ。

 ギベルティを呼び出して、夕方までに身の回りの必要な物を買いに行かせた。金は十万Zをギベルティに渡し、もし足りなかったら立て替えておけと言って宿の鍵を渡しておいた。

 奴隷たちと別れ、ミヅチと宿に戻ると夕飯まで二人で魔術の修行をして過ごした。



・・・・・・・・・



「四人とも、自己紹介しろ」

「メイスン・ガルハシュです。宜しくお願いします。得物は長剣ロングソードカイトシールドも使います。また、騎乗戦闘時にはスピアで戦うのが得意です」
「ヘンリー・オコンネルです。皆さん宜しくお願いします。私も長剣ロングソードカイトシールドも使います。騎乗戦闘時には馬上槍ランスで戦うのが得意です」
「ルバーノ・ファイエルノートだす。宜すぐお願ぇしまっす。ご主人様には斧槍ハルバードを買っていただきました」
「お、おらはジェスタス・マンゾッキですだ。宜しくお願ぇしますだ。おらの得物はスピアですだ。お役に立てるよう頑張りますだ」

 一人づつ席から立ち上がらせると同時にここにいる皆にも自己紹介をさせた。

「よし。今日はここには居ないがまだ何人も居る。今居ない奴にも追々会わせてやるから、今日はここにいる奴の名前を覚えればいい。あと、明日はお前たちを王都まで連れて行く。サンダルを作らなきゃいけないからな」

 俺がそう言うと一様に驚く四人。既成品の草鞋ストローサンダルではなく、革サンダルを注文するのかと思ったらしい。それを見たギベルティが自ら履いているゴムサンダルのベルトを外して脱ぐと手に持って見せびらかした。飯食うとこでやるなよ。苦笑いが浮かんだ。

「ゴムサンダルだ。履き心地も良いし、長持ちする。お前さんたちは俺と違って戦奴だからな。そのうちズールー様のようにゴム底のブーツも戴けるだろう。しっかりやってくれ」

 エンゲラはここに居ないから名前は出さなかったのかな?

「じゃあ、皆で最初の飯だからな。バストラル、どうだ?」

「ええ、今日もいろいろ作りましたよ。すぐに用意して来ます。まぁ味を見てやって下さい」

 旨いものを食って飲めば気心も知れるだろう。

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