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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第百四十話 新生

7445年7月30日

 余裕をかましていたら針を銜えた筈の魚に逃げられていた俺は、ひとしきり自分の惨めさについて思いを馳せた。何故ヒーロスコルは失踪したのか? 理由は幾つか考えつくが、どれであったとしても最早関係ない。少なくとも彼は自らの意思で皆の前から姿を消すことを選んだのだ。いなくなったヒーロスコルについては惜しいと言えば惜しいが、過ぎたことをグチグチと考えても仕方がない。

 転生者は既に六人が俺の傘下に居る。クローとマリーも加わってくれるのであれば八人だ。ここにファルエルガーズが追加されれば九人。失踪したヒーロスコルを入れれば十人だ。十人もの人がいれば一人や二人、俺と反りが合わない奴がいたっておかしくはないだろうよ。今回の件は今後の糧にするしかないだろう。

 オースに転生した日本人は俺を含めて三十九人。そのうち赤ん坊の頃に八人が亡くなっているから残りは三十一人。そして、デレオノーラも既に刑場の露と消えているので三十人だ。十七歳の時点でそのうち三分の一の居所を掴み、ある程度の気持ちを向けられている事自体は大きい。

 残り二十人程の中にまだ生きている奴はどの程度居るのだろう? 考えても何の手掛かりもないし、考えるだけ時間の無駄か。デーバスに居ると言う転生者の事も気にはなるが、今のところ何か出来る事もないし、そんな余裕もない。

 そもそも向こうは俺の、いや、俺達の事を知っている筈もないだろう。美紀が、いや、リルスが教えてくれなきゃ俺も知らないままだった。存在を予測出来る事と確信出来る事の間には天地の差がある。それだけでも俺は運が良いんだろう。

 空に浮かぶヒーロスコルの幻でも見つめているかのように、未だに空を見上げているファルエルガーズに一声「失礼します」と声を掛けると殺戮者スローターズの溜まり場となっているムローワへと向かった。あ、その前に顔くらい出しとくか……いや、後でもいいいか。



・・・・・・・・・



「アルさん、すみませんでした」
「最後に気を抜いてしまいました。ごめんなさい」

 ムローワに入った俺に気がつくとトリスとベルがすっ飛んできて謝ってきた。もう何度も聞いてるからいいよ。反省会もしたし。並んで頭を下げる二人に手を挙げてそれ以上何も言わずに良いと制そうとした。

「でも、皆を怪我させてしまいましたし、一歩間違えれば相当危なく……責任を取ります。何でも言って下さい」
「どんな危険な役目でもします」

 トリスとベルはそう言って殊勝に頭を下げる。少し腹が立った。

「おい、お前ら二人共。よく聞けよ。責任を取るとか簡単に言うな! 第一どうやって、何をしたら責任を取ったことになるんだ? 責任はな、何かあってから取るもんじゃない! 最初から背負うものだ! ……まだ解らんかも知れんがよく考えろ」

 強めに言ってから「次に役立てる事を考えろよ。お前たちは今後に繋がる経験をしたんだ」と言って座らせた。

 糞ガキ共が……ゼノムを見習え。ゼノムだって後悔も、反省もしただろう。責任も感じている筈だ。俺だってそうだ。だが、ゼノムも俺も自分の判断について責任を負う覚悟をしている。覚悟さえありゃ良いと言うつもりもないがね。反省会の時に責任だの何だの言わなかったから、てっきり解っているのかと思ってたらここで言うか。甘ったれてんじゃねぇ。

 勢揃いしている皆に向き合った。端っこにバストラルと並んでキャサリンも座っていた。別にいいけど。向こうから何か言ってくるまで彼女のことについては考える必要もないだろう。ビールと豚の串焼きを適当に注文した。今日の昼飯はこれでいいや。

 さて、糞面白くない話をするか……。

日光サン・レイは全員を殺戮者スローターズとして吸収することが決まったが、ヒーロスコルは別だ。彼の方から姿を消した事が分かった。ご丁寧に置き手紙まであったよ。暫く距離を置きたいそうだ」

 がやがやと何か聞いてくる皆を制して言葉を続ける。

「本人の判断だ。仕方ないな。しかし、少なくとも彼を除く十四人が俺達の傘下に入ることになった。一昨昨日さきおとといにもちらっと話したが、三パーティーとする。当然だが各パーティー間の戦力の均衡を図ることはしない。皆は基本的にはこのままだ。一人二人は殺戮者スローターズの二軍と三軍の指揮を執って貰うことになるがな」

 俺がきっぱりと宣言したことで皆は黙った。

「グィネとバストラル、それからギベルティ以外の皆は交代で二軍と三軍の指揮を執って貰うようにする。俺も含めて八人で順繰りに回すが、いつも一人だけで行くとは限らない。ラルファ、ズールー、エンゲラ。お前たちは当分の間一人では出さない。俺、ゼノム、トリス、ベル、ミヅチの誰かと組になる。だから最小でも二人、最大だと四人、今の殺戮者から抜けるからな。覚悟しとけよ」

 やっと出てきたビールのジョッキを傾けると更に続きを話す。

「但し、これから先二軍と三軍の迷宮行を一軍のサポートに切り替えてでも深部を目指す時が来る。八層や九層はともかく、十層以降を目指すならサポートパーティーは必ず必要になるだろう。そんな時が来るとフルパーティーでないと先に進みにくくなるだろうから、二軍三軍に出向している奴も途中から合流して貰うことになるだろう」

 そして、最後に付け加える。

「二軍、三軍に出掛けている奴は、今まで通り一軍の魔石の二%に加えて出向先のパーティーで稼いだものの頭割り分を報酬にする。ま、出向手当みたいなもんだ。だが、楽して稼げるとは思うなよ。二軍、三軍を最低でもサポートパーティーに育てる必要があるんだからな。結構大変だし、責任は重いぞ。とにかく、二軍、三軍に行く奴は覚悟しろよ。全責任を持って貰う必要があるからな」

 再度トリスとベルを見つめて言った。彼らは解っているのかいないのか、よく解らなかったがそれでも二人共思う所はあるようで顔つきも締まって見えた。良し。

「次の迷宮行は明後日を予定する。最初のリーダーだが、トリスとベルに行って貰う。トリスにはラルファが、ベルにはゼノムが付いてけ。向こうのパーティー分けは今晩中に俺とカームで話し合って決める。明日の朝にはどういう形になったか話せると思う」

 そこまで言うと出てきたばかりの豚の串焼きを数本纏めてむしゃむしゃと食うと席を立つ。テーブルに金を置きながら「じゃあ俺は宿を戻す。今日までの料金しか払ってねぇんだよ」と言いながら店を出た。

 カイルーグの宿を引き払い、ボイル亭に戻った俺はその足でまた一軒の店へ向かった。さっき顔くらい出しとこうとした店、「奴隷の店 ロンスライル」だ。そろそろ戦闘奴隷について情報が入っていないか確認しに行くと、来月末くらいには王都で奴隷市が立ちそうだと言う情報が得られた。マダムに仕入れについて念押しをしながら「ってことは今回の紛争はもう終わってるんだな」と想像した。

 兄貴達も今頃はバークッド村に着いているだろうか? それとももうとっくに着いていてこちらに向かっているだろうか? 誰も死んでないといいんだが……いや、戦場には兄貴や姉ちゃんも居たんだから、村から戦死者なんか出てない筈だ。そもそも遠征した姉ちゃんはまだ戻ってない筈だし……戻ってねぇよな? 戻っててシカトされてたら素で泣ける。



・・・・・・・・・



 カームと相談した殺戮者スローターズの二軍と三軍だが、ファルエルガーズ以下五人にニューマンとハルレインを加えた七人を三軍、残りは二軍という形にした。三軍で魔法を使えるのはファルエルガーズだけになってしまうが、そこは一軍から派遣されるメンバーで補う形を取ることにしたのだ。どっちにしろ実力が伴わないうちに無理をさせるつもりもないし、場合によっては当分の間一層や二層でオークやホブゴブリンを相手に経験値稼ぎをさせる可能性も高い。一軍とも言うべき、殺戮者スローターズから一人か二人、しかも魔法が使える奴がいれば大丈夫だろう。

 カームとの相談を終えた俺はボイル亭に戻る。すると、俺のベッドにミヅチがでかい面をして居座っていた。まだ居たのかよ。

「ねぇ、その……」

 ミヅチは新品のゴム袋を見せつけながら先っちょの割れた舌で舌なめずりをして誘っている。気持ちは解る。俺もしたい。だが、ちょっと落ち着いて考えたい事もあるんだ。

「何だよ、もう遅いし自分の部屋に戻れよ。キャシーもお前の部屋、殆ど使ってなかったらしいじゃんか。問題ないだろ?」

「ぶぅ」

 この野郎、ガキじゃねえんだからがっついてんじゃねぇよ。もう少しくらい我慢出来ねぇのか。

「何ぶーたれてんだよ。明日はお前も連携訓練見なきゃならないんだから早めに寝ろ」

「ぶぅぶぅ」

「豚か! うるせーから服着て出てけよ。俺はまだやんなきゃならんことがあんの。明日ゆっくり相手してやるから、今日は一人にしてくれ」

「ちっ」

 舌打ちするミヅチを部屋から押し出し、一人になった俺はゆっくりと考えを纏め始めた。その後、部屋に変わった所がないかチェックした。特に変わった所はなかったようで掃除もきちんとされていた。ミヅチの性格から言って散らかしたりはしないだろうと思っていたが、想像通りだったので安心した。あ、掃除は小僧がやるか。

 ふと思いついてベッドの脇の木箱を開けてみるとゴム袋が幾つか減っていた。しかも新型のが四袋も無くなっている! あいつら、僅か一月、それも迷宮にも入っていただろうに……しかもここ数日はそんな余裕なんかなかったと思う。やはりベルは恐るべき女だ。

 通常タイプも減ってはいるが、バストラルとエンゲラは常識の範囲のようだ。木箱に入っている代金を財布に移しながら、こうしてみると皆の事情を知るのもなんだか嫌なもんだな、と思った。



・・・・・・・・・



7445年8月1日

 一夜明けた今日、新生殺戮者(スローターズ)の面々は予め伝えてあった午前八時にボイル亭の前に集合していた。既に全員が朝食も済ませている。皆の前で昨晩カームと相談した組分けを発表し、日光サン・レイが使っていた空き地に移動した。こっちのが広いしな。

「俺、ゼノム、ミヅチ、トリス、ベルの五人のうちの誰かが皆のリーダーとなる。この中で魔法が使えないのはゼノムだけだが、ゼノムがリーダーになる時は他に魔法が使える奴も一緒に送るからそこは心配しなくてもいい」

 旧日光(サン・レイ)のメンバーは頷いてくれた。チーム分けは誰もが予想出来る内容で落ち着いていたし、カームと話し合って決めたことなので特に文句がなさそうだったことは助かった。迷宮内で稼げる魔石の質は段違いだろうから文句が出ないか心配だったが、どうやら杞憂だったようだ。

 訓練については俺とゼノムが主体となって殺戮者スローターズのやり方を叩き込むことにした。魔法については定期的に攻撃魔術を使わせ、一つの攻撃魔術に慣れさせるようにした。魔術の使用には魔力は勿論だが集中力を必要とするので必要なレベルを満たした人は基本的に治癒魔術の練習しかしない。冒険者ならそれに加えて攻撃魔術を一種類、気が向いたら練習する程度だ。

 普通は訓練と言えど攻撃魔術の練習なんかしない。手の内を晒すことになるし、なにより精神的に疲れるからだ。だから、練習する時は迷宮内など誰にも見られないように気を付けてやるのが当たり前だ。しかし、俺にとっては彼らの魔法の手の内なんかどうでもいいので、定期的にMPを半分くらいまで消費させる程度で魔術への熟練度を上げさせる方を選んだに過ぎない。

 当然それについて文句は出たが「元の殺戮者スローターズで一番魔法について未熟なのは覚えたばかりのバストラルを除けばグィネだ。彼女より素早く、かつ多彩に攻撃出来るようなら手の内とか言うのも認めよう。おい、グィネ。あの石と木に向けてそこそこな感じで攻撃魔術を放ってみろ」と命じると、すかさず「フレイムボルト」「エアカッター」と続けざまに放ち、最後に「フレイムジャベリン」を一発、長くても五秒と掛からない程度の精神集中で放ったのを見て文句は収まった。彼女グィネのMPは18残っている。

「おい……十七歳だよな?」
「ああ、そうだな。あの早さで三種類も……」
「私、二十五だけど……「ストーンボルト」だけならもっと早く撃てるけどね。三種類は無理だわ。アローも練習しなくなって結構経つし、ジャベリンは魔力食うからあんま練習してない……十秒はかかっちゃうわね」
「俺も二十五だ。俺も「ストーンアロー」だけならもっと早いが……」
「あれで最低の腕だって?」
「確かにグリード君も凄かったが、まさか……」
「いや、七層で治癒して貰ったけどあん時も……」
「たまげたな」
「じゃあ、あのダークエルフ、それ以上か……」

「このレベルが最低線だ。あと、知っての通り殺戮者スローターズは迷宮の中で魔物から逃げない。余程の事でもあれば別だが、基本的に出会った魔物は全て相手にする。部屋の主も全てだ。だから攻撃魔術は重要だ。回復魔術についても重要だが、それと同じくらい重要な魔術と位置づけている。魔法が使える人はそれを念頭に置いてくれ」

 驚いて近くのメンバーと顔を見合わせる旧日光(サン・レイ)のメンバーに向かって言うと、更に言葉を継ぐ。

「連携訓練の時には魔法を使うこともある。勿論その時は外輪山の向こうの森の中や場合によっては迷宮の中でやる。しかし、皆はまだそのレベルにも達していないから魔法を使った連携については当面は考慮しなくていい。そうだな……パーティー全体で一層を抜けるのに四~五時間、治癒魔術は五~六回くらいまで、二層も同程度。これが出来るようになってから三層を目指す感じかな」

殺戮者スローターズ……」
「道理でね……」
「カームの言う通り日光サン・レイじゃもどかしかったんでしょうね」
「やっぱ出来んのかよ……」

「聞いてる人も居るかも知れないが、殺戮者スローターズは朝迷宮に入ってその日の夕方前には三層の転移の水晶棒の部屋に着く。四層五層は流石にもう少し時間が掛るのでこの二つの層にも半日食われる。あと、基本的に毎日夜はちゃんと休む。朝迷宮に入ってから翌日の夕方には五層の転移の水晶棒の部屋に辿り着ける位になれば、最前線のチームに入れるかどうか位は考えてもいい。勿論、途中の魔物や部屋の主は出会い次第全て倒して魔石も回収して貰う」

 ま、氷なんかで固めないでこれが出来るなら本気で考えるよ。今の殺戮者スローターズのメンバー基準ならゼノムが七~八人とトリス程度の魔術の使い手が二人くらい攻撃と回復役をやり、グィネの地図があるなら相当疲れるだろうが多分出来る。ゼノムクラスはともかく、トリスクラスの魔法使いがごろごろしているとは思えないから無理だけど。俺の知る限りでトップチームにもいない。

 ああ、魔力量の話な。魔法の特殊技能で言うならレベル五はともかく四ならトップチームにも全て揃っている。レベルだけならトリス以上だ。因みにバルドゥックの冒険者で最強の魔法使いは殺戮者スローターズを除けばリーダー以外戦闘奴隷で固めているロズウェラのおっさんだ。元素魔法は全種使えてレベル五、無魔法も六に近い五、レベルだけなら初めて会った時のミヅチを上回っている。もう四十を超えて未だに現役だし。MPにしても総量で五十四もある。彼なら「キュアーオール」だって結構前から使える筈だ。

 とにかく、こうして午前は連携の確認を行い、殺戮者スローターズの皆に旧日光(サン・レイ)の実力を知って貰った。

 いつの間にか本来の殺戮者スローターズはそのまま、二軍は虐殺者ブッチャーズ、三軍はもうすぐ(スーナー)と呼ばれるようになっていた。虐殺者ブッチャーズまでは嫌な名前だけど理解出来無くもないが、もうすぐ(スーナー)ってなんなのさ。それなら殺害者スレイヤーズとかでもいいじゃんか。



・・・・・・・・・



 午後、全員で飯を食っている時に、ズールー、エンゲラ、ギベルティの三人が「買い戻してくれ」と頭を下げてきた。トリスも「私には過ぎた奴隷でした。お願いします」とバストラルの大根役者とは比較にならないくらい演技力たっぷりに懇願してくるので飯を食ったあとで、神社に行き三人を買い戻した。

 その帰り道、先月の給料はどうしたのか聞いてみたら、昨日トリスから既に受け取っていたそうだ。金額は俺の時と同額だった。ま、それもそうか。午後の訓練まで少し時間があったので奴隷たちやミヅチとお茶でも飲んでから向かおうと思っていたら、会いたくない奴に見つかった。

「よぉ、そこを行くのはグリード准爵閣下ではないか。相変わらず糞生意気そうでなによりだ。ちっと付き合えよ」

 緑色団ベルデグリ・ブラザーフッドのヴィルハイマーと黒黄玉ブラック・トパーズのアンダーセンが飯屋のオープンテラス状のテーブルでお茶を飲んでいた。面倒臭ぇな。

 ミヅチに「適当に茶でも飲んでてくれ。後から行くわ」と言って手招きされるまま彼らのテーブルの開いた椅子に腰掛けた。

「おい、上手い事やりやがったな、この野郎」
「本当、まさかこんな事になるとはね……」

「あ、豆茶一つ」

 どうせこんなこったろうと思ったよ。店員に豆茶を注文した。

「噂は聞いてるわ。リンドベルたちももう終わりね」
「ハルクやビーンも加担してたんだってな」

 俺から詳しい話を聞きたそうだ。だが、俺は何も話さないで黙っていた。

「まぁ、俺としては予想が外れたが……困ったもんだ」
「私はゲールの仇を取ってくれたからまぁいいわ。でも、騎士団に突き出すなんてまどろっこしいこと、よくやったわね。迷宮の中で殺しちゃえば後腐れないのに」

 ゲールってのは黒黄玉ブラック・トパーズから御札をエサに引き抜かれた奴だ。自分を裏切って(?)別のパーティーに入った奴の仇を取ってくれたって……相変わらずだね。

「それがこいつの嫌なところだ。抜け目ねぇっつーか、可愛げがねぇっつーか、弱みを見せねぇ。ったく、油断できねぇ野郎だ」
「結局、日光サン・レイ殺戮者スローターズに吸収かぁ……大方自分たちのサポートをさせるつもりでしょうけど……まさか吸収を狙ってたとはね」

 豆茶が来た。

「あ、炒り豆くれ」

 軽くしか飯食ってないから豆くらい食ってもいいだろ。豆茶と炒り豆は良く合うし。

「聞けよ!」
「聞きなさいよ!」

 じっと二人の顔を見る。

「な、なによ……そんなに見つめちゃって」
「なんだ、アンダーセン、照れてるのか? 歳考えろよ」
「はぁ!? そんな訳ないでしょ!」

 ぷっと軽く吹き出すと「どんなことになっても文句言わないって約束ですよね?」と言って豆茶を口に含んだ。

「この野郎、やっぱり吸収を狙ってやがったのか! 俺はてっきり、内部分裂でもさせて空中分解の末に全滅でもさせるかと思ってたのに……糞」
「今更いちいち文句なんか言わないわよ。最初から知ってたら一枚くらい噛ませて貰ってハルクやビーン、カーム、ミース辺りを引き抜けたら良いとは思ったけどね、約束もしたし、私としては恩もあるから今更何も言わないわ。ただ……」

「ただ?」

「一応言っておいてやろうと思ってな。俺達は俺達で手を組むぜ。これからは七層を目指す」

 ほう。やはりとは思っていたがな。宣戦布告って訳か。

「ふっ、成程ね。そうじゃないかと思ってました。今回の件なんかよりずっと前からお二人はそれなりに付き合いがあったようですからね……ま、どうせ判ることでしょうから言いますが、明日は私も荷運び(ポーター)を入れて七人で七層目指して迷宮に入ります。既に慣れてますから七層くらい我々にとっては軽いですから問題は無いですがね」

 すぐに出てきた炒り豆をボリボリと噛み砕きながら言ってやった。

「ふん、俺達じゃきついだろうってか? 後で吠え面かくなよ」
「自信があるのね。でも私達を甘く見ない方がいいわ。あんたより先に七層のお宝を見つけてあげるから」

 七層に祭壇の間はねぇよ。ああ、宝石や金鉱なんかはあるかも知れないが探す気もねぇし。そうか、オーガはともかく、他のトップチームは迷宮で鉱石を掘っても居たんだった。日光サン・レイも金だの銀だのの鉱石をよく掘ってたな。勝手にオーガを遠回りして時間を潰してくれ。

 あとは適当にやりとりを重ね、重要な点だけを確認しておいた。多分無いとは思っているが煉獄の炎(ゲヘナ・フレア)とも手を組んだかどうかだ。こちらは予想通り関係がないようで少しだけホッとした。まぁあそこは他と手を組んだり吸収したりされたりなんてあり得ないだろうけどね。一応さ、気になるじゃんか。

 明日はトリス、ベル、ゼノム、ラルファの四人を欠いたまま七層を目指す。
 ま、なんとかなんだろ。
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