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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第百三十二話 食虫花

7445年7月24日

 決行か。合図の赤茶けたボロ布を見ながら思った。気が進まないが仕方ない。誰を選んだものかね……一人か二人、場合によっては三人でもいい。ミースは魔法も使えるし、決定かな。あとは出来るだけ若い奴の方がいいかな。

「こちらの隅で野営しようか」

 コーリットが全員に言った。それを聞き、全員がすぐに野営の準備に取り掛かった。担いでいた毛布を下ろし、リュックサックから食料を取り出し、中央に纏める。メンバーの一人が簡易型の魔石を利用した小型コンロを取り出し、小さな鍋を上に乗せ、コーリットが出した水を鍋に張ってスープを作り始める。

 歪な車座になった皆は疲れきっているのか、火に掛けられた鍋に注目し黙っている。
 鍋とコンロが小さいのでなんとなく広く座りにくい事は確かだが、ケビン、ジェル、そして俺は車座の外に座る格好だった。

 小さなまな板の上で器用にベーコンを刻んでいたキムが同様に刻んだキャベツの葉を塩胡椒と共に鍋に放りこんだ。あの鍋の大きさだと一人当たりの分量はお茶のカップ一杯にも満たないだろう。その間にハムのような燻製ブロック肉からミースがハムを削っている。まぁ、生ハムだな。これと小松菜のようなリッケの葉を合わせ、マヨネーズと一緒にガレットに挟んで食べるのだ。ちなみにリッケの葉は根っこまでほじっていれば土から掘り出しても十日は瑞々しさが保たれるので冒険者の間ではお馴染みの葉野菜だ。ちょっと苦味がありあんまり美味くないが、歯ごたえが良いので好まれている。俺に不満があるとすれば葉っぱは食う前に洗えよな、というくらいだ。

 ジェルが食料の山から予め焼いて用意してあったガレット(すっかり硬くなっている)を一人二枚づつ、全員に配っている。俺は一人一本のきゅうりを配る役だ。そう、日光サン・レイではケビンと一緒にきゅうり係に任命されたのだ。しょっちゅうきゅうりばかり齧っている印象があったので名誉な役なのかと思っていたがそんなことはなかった。それでも大切な食料を預かるのだから重要な役ではあると思って心を慰めた。

 それなりに重いし結構嵩張るから皆嫌がっていたらしい。一食で一人一本。十人いるから一日三十本が消費される。持ち込んだ量は大目に見て三百本にも登ったのだ。日々軽くなるとは言え、訓練中に配られた萎びたものではなく、大きい立派なやつだ。ああ、殺戮者スローターズでは一時期ベルとグィネがズッキーニじゃないかと言っていたが、きゅうりだと思うよ。食ってみればわかる。 

 スープが出来上がる。

 手にカップを持った皆にキムがスープを注いで回り、食事の用意は完了した。いつものお祈りをして楽しい食事が始まる。疲れてはいるものの食事の時は皆に笑顔が浮かぶのはどのパーティーでも共通なのだな。

「さて、そろそろ皆食べ終わる頃のようね……じゃあ、グリード君、もう一度七層の話をして貰えるかしら?」

 今まで散々話してきた七層の話をしろとメイリアに命じられた。最後のおさらいのようなものだろう。

「解りました。七層は今までの迷宮とはガラリと様子が変わります。ここ、六層のように天井はものすごく高いですが、明かりが十分なのでまるで昼間のようです。だから六層とは違って天井まで見えるんですがね。四層や五層の一部に見られたように暗闇になる場所も私の知る限り存在しませんから明かりを持っていく必要はないでしょう」

 手に持っていたカップからスープを一口啜った。

「そのために視界は良好ですが、以前お話しした通り迷宮の通路の幅は何倍にも広くなっています。そこに数百mおきに木が生えていたりしますので視界は良好とは言え、ずっと先まで見通せるわけではありません。木の生えていない場所は草原だったり荒れ地のようになっていたり、砂だらけだったり色々です。また、罠はいかなる種類も見つかっていません」

「出てくる魔物は本当にゴブリンとオーガだけなの?」

 キムが言った。長い縞模様の虎尻尾が脇腹から腹の前に巻き付いている。

「通路で出るのはそうですね。今までの階層にあった主がいるような部屋だと別の魔物も出ますが砂だらけの場所で砂の中に潜む魚みたいな奴くらいしか知りません。砂の中を移動するようですからその部屋に行かないように何度か転移する必要はあるでしょうね」

「ああ、それは覚えてるな。転移先はそんなところに行かないよう、注意して頼むぜ」

 ロッコが尖った耳を落ち着かなげにぴくぴくさせながら言った。

「勿論ですよ。それから、オーガの弱点ですが、基本的に人族と変わりありません。眼や鼻と言った首から上の頭部、胸にある心臓なども弱点といえば弱点ですね。血が沢山出てもすぐに弱って死にます。ちょっと大きな人を相手にしていると考えても概ね問題は無いでしょう。弓は的がでかいですから当てるのは楽だと思いますが、手足に当たっても大きなダメージにはなりません。顔など急所を狙うようにしてください。前に立って戦っている人が居れば十分に近づいて外さないように急所を狙うのも手ですね。明日は最初に出会うのが一匹か……二匹までであれば私が一人で相手にします。それを参考にしてください」

「うん、明日は初めての階層だ。今日はもう休もう。ゆっくりして体を休めてくれ」

 コーリットが締めて俺の話は終わった。ここ数日何度となく話した内容だ。今回は要約だったけど。

「あ、そうだ、ここにもシャワーがあるようだが、使っても問題ないだろうか?」

 何で俺に聞くかね? 今俺は日光サン・レイのメンバーなんだが。ああ、六層のシャワーを共同管理するという事自体は話してなかったな。

「……五層でもお互いに使用して良い事になっていますから良いと思いますよ」

「ん、やはりそうか……ま、念のためだ」

 殺戮者スローターズに文句を言われたら俺のせいにするつもりか。でも、俺がまだ殺戮者スローターズに居たとしても減るもんじゃないし、シャワー使ったくらいで文句なんか言わないよ……。そもそも俺もシャワーは浴びようと思ってたくらいなんだし。

 俺とコーリットでお湯を出して全員で順番にシャワーを浴び、さっぱりした後、武器の手入れをして見張りを残し、全員毛布にくるまった。



・・・・・・・・・



7445年7月25日

 全員で互いの装備を確認し、七層に転移した。当然のことながら周囲はいつもの七層で、別段変わったところもない。ゴブリンやオーガが傍にいて気付かれるとか、こちらが先に気付いたなんてこともなかった。少し懐かしい、「部隊編成パーティゼーション」の感覚もある。皆広さと明るさに驚きの声を上げている。そんな時に頭の中に「飛べ」と命令が入った。ふん、用意は万端というところか。すぐに水晶棒の台座を確認し、矢印の先に置いてあった石を見る。合図はない。戻ろう。

「ここは宜しくありません。戻りましょう」

 六層に戻り、再度七層へと転移した。ここもダメか。

 何度か転移を繰り返した。途中一回だけ五匹くらいのゴブリンが数十m離れた所にいたが、ハルクが武器を振りかざして脅すとこちらの方が数が多いこともあって蜘蛛の子を散らすようにどこかに逃げていった。

 そうして十三回目の転移をした時だ。転移先は林の中だった。水晶棒の台座が指し示す先の木の幹に「市箔荷室」と彫り込みがある。そして、すぐ傍のささくれに赤い糸が結ばれていた。ここでOKだ。周囲を見回すとあちら側に目印の草の結び目があった。方向はあっちか。

「ここですね。魔物の部屋に木が生えていて森になっているエリアは。行きましょうか」

 おそらくだが七層にはモン部屋は四つしかない。層の中央の転移の水晶棒の部屋の東西南北約一㎞程の所を中心にした直径五百mくらいのでかい部屋があり、東西の部屋は砂漠、南北の部屋は森だか林だかになっている。今までに調査出来ている割合は先月末、俺が殺戮者スローターズを抜けた時点で八割強。転移先は百五十あまりだ。このうち百箇所くらいが最終的に行き止まりで八層には行けない。つまり、モン部屋にも行けない。残り五十箇所はどこかのモン部屋に繋がっている。多分転移先は全部で二百くらいなんだろう。勘でしかないがそのうち八十箇所くらいがモン部屋に繋がっていると思われる。で、更にその半分くらいが東西どちらかのモン部屋なんだろう。

 仕込みや確認もあるだろうから完全に判明している正解は十箇所くらい。つまり、二十回も転移すれば一回くらいは正解の場所に行ける感じだ。今回はその半分程で正解に辿りつけたので幸運だ。

「では、私を見失わないように五十mくらい離れて付いて来て下さい。右手を挙げたらその先に私一人で相手を出来る程度の敵が居ます。その時は私の戦い方を見ていて下さい。左手だと私一人では手に余りますので後退します」

 全員の頷きを合図に先頭に立って進んだ。

 罠がないので前進速度は速い。と言ってもモンスターへの警戒は怠れないのでそれなりのスピードには落ちるが、他の階層とは比較にならない高いスピードだ。たまに「生命感知ディテクト・ライフ」の魔術で前方を窺うくらいだ。

 そうして移動を始めて十五分くらい。五百m程前進した頃だ。前方約二百m程に生命反応があるのを感じた。数は二つ。数が少ないからゴブリンではない。距離から言って今居る林の先の草地よりも先にある林の中だろう。おあつらえ向きにその林は森に近いくらいに植生が濃い。

 右手を挙げ振り向いた。五十m程後ろを纏まって付いて来ているのが見えた。右手を挙げた俺を認め、その場に留まったようだ。そっと皆の所に戻り囁いた。

「この先の草地より先の森の中に居そうです。森に入る後ろ姿がちらっと見えました。私はこれから奇襲をかけ、一匹を始末したら草原まで後退してそこでもう一匹と戦います。この林の中に居たままどんな感じなのか見ていて下さい」

 そう言うと「わかった」と言う返事を背に受けてまた前進した。

 草地を背を低くして渡り、用心深く森に足を踏み入れた。オーガまでの距離はまだ百m近く離れている。今までの七層での活動でオーガはこちらを視認するか、三十m程度まで近づかないとこちらを認識しないことは判明している。オーガメイジでも百mを切らなければまず気が付かれることはない。

 五十m程先、森が切れる辺りでオーガが二匹、樹の幹に寄りかかってうたた寝をしていた。左手の手袋を引き抜き剣で軽く傷をつけ出血させた。剣の刃に俺の血を塗りつけすぐに傷を治療して手袋をはめ直す。左右両腕に仕込まれた千本を引き抜いて先端に痺れ薬を塗り用意を終わらせた。一本だけはそのまま手に持っている。それからおもむろに魔術を使う。種類は「アイスジャベリンミサイル」だ。但し、弾頭に魔力を注ぎ込んで形状を変化させる。

 薄く、長いカミソリのように。

 狙いを定めカミソリを飛ばす。

 「ミサイル」はいらなかったかもな。

 即座に目標に到達したカミソリはうたた寝をしていたオーガAの首の前面を右から左に切り裂き、シャワーのような血を飛び散らせる。

 即死ではないがあと十秒と持たないだろう。そして、すぐに石をオーガBに向かって投げつけた。それで目が覚めたオーガBは俺の姿を認めると傍に転がっていた棍棒を握りしめて猛然と俺に襲いかかってきた。やっぱオーガは馬鹿だな。適度な距離まで近づいたオーガBに痺れ薬付きの千本を投げ、命中したことを確認すると即座に振り返って元きた道を全力で駆け抜けた。

 すぐに林から飛び出し、草原に戻る時には俺の右手には刃に血のついた愛用の長剣ロングソードが握られている。まだ薬は回り切っていないらしく俺の後ろ十m程にオーガBの元気な足音が響いている。普通の奴じゃ無理だろうが幾らオーガとは言えど俺の全力疾走には付いて来るだけで精一杯だろう。

 草原の中ほどまで移動する頃にはオーガBの足音に少し変化が見られた。

 さて、なぶり殺してやる。

 振り向いた俺は、俺が走り疲れて停止したと見て取ったのだろう、棍棒を振り被るオーガBの脇の下をくぐるようにして脇の腱を切り裂き、素早くオーガBの後ろに回り込むと、膝の裏を斬り割いた。オーガBの絶叫が響く。すぐに反対側の腕にも斬りつけて傷を与えると少し距離を取った。片足と片腕が使えなくなったオーガなんか物の数ですらない。まして、痺れ薬も回り始めているのだ。

 油断せずに適当に傷つけていくだけでオーガの動きは目に見えて悪くなっていく。そろそろいいかな?

 オーガBの脇を駆け抜け、真後ろに回り込むと心臓のあたりを後ろから思い切り突いてやった。びくびくと痙攣するオーガの脈動を感じながら汚い出来物だらけの背中を蹴りつけて剣を引き抜いた。

 剣についた血を拭き取ると鞘に収めた。千本は引き抜かず、地に倒れ伏したオーガの背中に片足を乗せる振りをしながら腕の筋肉深くに埋め込んだ。そして、笑顔で皆が様子を窺っていたであろう方向を見た。

 すぐに皆が近づいてきてオーガの胸を裂き魔石を採り始めた。
 オーガBから得た魔石に付いていた血を拭き取り、色を見て騒いでいる。

「向こうの森にも私が不意打ちした奴が一匹転がってますよ」

 と言うと大喜びだった。

 こうしてオーガの数が少ない時には全員で当たり、多い時には俺が不意打ちを行って数を減らし、どんどん進んでいった。勿論、要所でバレないように千本を使っている。日光サン・レイもトップチームの一角だけあって複数で当たればオーガは問題なく倒せるようだ。二回、棍棒を躱せずに掠られた奴らが居たが大怪我でもなかったのですぐに「キュアークリティカル」で治してやった。

 分かれ道には予め取り決めた目印があったので迷うことなくモン部屋に辿り着いたのはまだ昼過ぎだった。「部隊編成パーティーゼーション」によるとあの部屋入り口から百五十度くらいのほぼ反対側に近い方向の別の入口に殺戮者スローターズが待機しているようだ。

「では、まず私が偵察してきます。相手の数が解ったら一度報告に戻ります。その後、私が部屋の壁沿いに回り込みます。奇襲のタイミングは報告に戻った時に話しあいましょう」

 昼食を摂り、魔力を回復させる休憩中に提案した。ここまでにオーガを十匹も倒している。日光サン・レイのメンバーはすっかり金に目が眩んでいるようだ。

 偵察に行き、「生命感知ディテクト・ライフ」の魔術を使った。部屋の真ん中辺りに十一の反応がある。こりゃいいね。

 少し時間を潰した後そっと戻り、報告した。

「前にも言いましたが部屋は円形をしていて直径は五百m程です。中心辺りに十一匹のオーガが居ます。動いては居ないみたいですから寝てるか休んでるか、ぼーっとしているだけでしょう。やるなら有効そうな作戦がありますが」

 コーリットにそう報告すると、それを聞いた全員が喜びの表情を浮かべた。だよね。半日もせずに合計二十匹以上のオーガを仕留められたら大儲けだし。

「ふむ、どういう作戦だい?」

 俺はしゃがむと図を描いて説明する。直径一m程の大きな円を一個描き、中心に十一個の小石を置いた。

「まず、私が壁沿いに慎重に移動して魔物とは反対側に回ります。皆は部屋に入り、百m程前進して下さい。慎重に、音を立てないように背を低くして木の幹から幹を伝うようにすればオーガとの距離は百m以上保てますからまず気付かれることはないでしょう」

 小石を九個、円周から二十㎝辺りの所に纏めて置く。同時に一つの小石を真ん中の十一個を挟んで逆側、円周から二十㎝辺りの所に置いた。

「これが私です。このように皆とは反対側に回り込んだ私は慎重に魔法の射程まで少しづつ近づいて行きます。ちょっと慎重に行くので時間も掛かるかもしれません。ですが、魔法の射程にまで入ったら最強の魔術である四レベルの火魔法を使う「フレイムアーバレスト」で一発で仕留めます。なぁに、私に背中を見せている奴の後頭部にでも叩き込めば殺せますよ」

 そう言って俺の小石を中心の十一個の小石まで十五㎝くらいの距離まで十㎝程動かして一番傍のオーガの小石を一個円の外に放り出した。うん、後頭部に真後ろから叩き込むのであればジャベリンでも殺せるだろう。

「すると、奇襲を受けたと悟ったオーガは私の方に向かってくる、又は向かおうとするはずです。場合によっては混乱してうろうろするだけかも知れません。その時は私はもう一発「フレイムアーバレスト」を叩き込みます。流石にこれなら私の方向に気づくでしょう。そして私を殺そうと私の方に向かってくるでしょう」

 皆の顔に理解した色を確認すると続けた。

「そうなるとオーガはすべて皆さんに背を向けることになります。そこでコーリットさんも後ろ向きの奴に「フレイムアーバレスト」を叩き込んでやって下さい。うまく行けばこれで三匹、そうでなくても二匹は確実に始末出来るでしょう」

 そう言いながら残り十個になったオーガの小石をひとつ拾い上げ、外に放り投げた。

「コーリットさんと一緒にミースさんも「フレイムジャベリン」を別のオーガの後頭部に撃ち込んで下さい。カームさんもミースさんと同じオーガに矢でも撃ち込んでやれば倒せなかったとしても戦えないほどの傷を負っているはずです」

 もう一個オーガの小石を拾い上げて外に放り投げた。

「重要なのは私が「フレイムアーバレスト」を当てたらできるだけ早くここまでやる必要が有ることです。まぁ、オーガはゴブリン並みにオツムが弱いですから多少遅れても問題はないと思いますが。この時点で残るオーガは八匹です。オーガは二方向から攻められ二手に別れる筈です」

 オーガの小石を四個づつに分け、一方を俺の方、もう一方を皆の方に向かわせる。

「四匹のオーガが近づくまでに皆さんは魔法や矢でよりダメージを与えるようにして下さい。一匹も倒れないかも知れませんが、弱らせるのは大切なことです。こうなるとオーガの数四匹に対して皆さんは倍以上の九人で当たれる事になります。弱っていればより楽に勝てるでしょう」

 皆の方に向かわせたオーガの四個の小石を外に放り投げた。

「で、私の方ですが、逃げに徹します。もうお判り頂けたでしょうが私はオーガより脚が速いです。そう簡単には追いつかれないよう、でも見失われないように皆さんの居ない辺りを逃げまわります。皆さんはオーガを倒したら私を追うオーガを仕留めて下さい。なぁに、慣れていますからね。二十分やそこらは確実に逃げ回ってみせますよ」

 俺の小石を適当に動かし、それを追うようにオーガの四個の小石を動かした。

「でも、グリード君、君ばかり危険な役じゃないか……ああ、でも確かに脚は速かったな。慣れてもいるだろうし、大丈夫か……それに、確かにオーガも聞いていたほど強くはない様だしな」

 ハルクが石を見つめながら言った。

「ええ、それに囮は一人の方が気楽に出来ますよ」

 脚をぽんと叩いて言った。

「グリード君、君が日光サン・レイに入ってくれて本当に良かった」

 コーリットも嬉しそうな笑みを浮かべて俺に言った。

 ……多分何匹かはオーガメイジだよ。それと、オーガメイジが居れば俺を追っかけるのは多くても三分の一の三匹だろうね。何しろ皆の方からは魔法に加えて矢も飛んでくるだろうし。そっちの方が数が多いのはオーガは無理でもオーガメイジならすぐに判断がつくだろう。ついでに、オーガメイジは無魔法四レベルくらいの魔術を放ってくるぜ。

「じゃあ、もう少し休んだら私は出発します。多分二十~三十分後くらいには後ろに回り込んでいます。私の「フレイムアーバレスト」が合図です。見過ごさないで下さいね」

 そう言ってお茶を飲んだ。

「なぁ、キム、やっぱグリード君ってすげぇな……」
「ええ、自分から危険な囮役を引き受けるし、今まで出会ったオーガも馬鹿っぽいからそれを利用した方法を簡単に思いつくところも若いのに素晴らしいわね。ジェルも学んだ方がいいわ」
「ぐ……でもそうだな……」

 さて、流れにもよるが、トリスやベルの肥やしにしない奴を選ばないとな。無表情になって思案した。余計なことを考えると妙な表情が浮かびそうだ。トリスやベルだけでなく、目的のために罪もない奴や付き合いのある味方を見殺しに出来るかどうか、俺を試す場でもある。ここから何も学べなければこいつらの殆どは無駄死にだ。
今週の火曜は更新できないかもしれません。申し訳ありません。
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