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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第百三十話 商売?

7445年7月14日

 ファルエルガーズとヒーロスコルと別れてから一度「カイルーグの宿」に戻り、トリスたちへ所感も含めた報告書を書き、馬具に入れた。それから、ロッコとケビン、ジェルたち怪我人に二回づつ「キュアー」を掛け、他には軽傷を負ったキムに一度「キュアー」を掛けてやった。それが終わる頃には約束の時間も迫っていたので「ミックス」へと向かう。「ミックス」に到着すると聞いていた通り個室が取られていたようだ。入るとリンドベル夫妻が既に着席していた。

「すみません、お待たせしてしまいまして……」

 軽く頭を下げつつ、勧められるままに着席すると結構座り心地の良い椅子だった。

「いや、まだ時間には少し早いし、そういちいち畏まって頭を下げる必要はないよ」

 コーリットが笑みを浮かべて言った。メイリアが卓上ベルを鳴らしてボーイを呼び、本日のディナーコースを三人前注文した。

「ワインでいいでしょ?」

 飲み物を聞かれたので頷いて返事をした。だが、三人分しか頼んでいない、という事はこれ以上参加者がいないことを意味する。てっきり幹部会だと思っていたんだが……。

 暫く他愛のない雑談などで時間を潰し、前菜とワインが運ばれてくると本題に入った。

「グリード君、昼も言ったが今回はよくやってくれた」
「ええ、流石にトップチームを率いていただけあると感心したわ」
「思い切りも良いし、度胸もある。それに加えて一流の魔術師だ」
「いい買い物をしたわ」

 ま、褒められて悪い気はしないが、これで何回目だよ。いい加減食傷気味だ。もう苦笑いしか浮かばねぇよ。そんなに褒められたい脳足りんに見えるのかね? 成人している年齢だとはいえ、彼らは四十代だからガキにしか見えないだろうし仕方ないのかな?

「当然君も理解しているだろうが、魔法は……特に治癒の魔法は冒険者にとって非常に大切なものだ。だが、怪我をして魔法で治してもなかなか完治はしないし、地上に出てからも治癒師の世話になるものも多い」

 まぁそうだよね。仮に腕に攻撃を受け、肉が裂け骨折したとしよう。細かい理屈は置いておいて、この怪我を何とかするには最低二回の治癒魔術が必要になる。筋肉と骨折に対して一度づつ魔法を掛ける必要があるからだ。今「最低二回」と言ったが、これは本当に最低限の話で、怪我の度合いによっては二回じゃ不十分の事が普通だ。

 これが腹部に傷を負って内臓にまで傷が達していたらもっと多くの回数の治癒魔術が必要になることも多い。そんなに連続して治癒魔術を掛けられることなんかまず無いので大抵は一番重い傷や、重要な臓器に対して治癒魔術を掛け、あとは放っておくのが一般的だ。先の例だと骨折のみに治癒魔術を掛け、筋肉や傷口自体は放っておくと言うことだ。

 傷口自体は放っておくと言っても、あまりに不潔にしていない限りは余程大きく、出血も激しい傷口でもない限りはそれが原因で死ぬことはそうそう無いからだ。血止め薬だってあるにはあるし……。だが、本当に放りっぱなしと言うのも当然問題がある。完治までには非常に時間が掛かるし、当然の事だが痛いからだ。

 さっきの例で言ったら筋肉が腱ごと断裂でもしていたら、骨折自体は治したとしてもそちらを治すまでは腕は使いものにならないだろう。骨折だけ治ったとしても「腕を使う」ということについてのみを考えるとあまり意味は無いし、本当に放っておいて何もしなかったら腱も繋がらないまま傷は回復していまい、障碍が残ってしまう。

 だから、怪我をした場合は迷宮を出てからも治癒師や薬のお世話になる奴は山程いる。パーティーの中に治癒魔術が使える奴がいたとしても怪我人が一人なら普通の魔術師程度に魔力があるのであれば充分に治癒を受けられるだろうが、複数の怪我人でもいればすぐに魔力も枯渇してしまうから、結局は治癒師の世話になることが多い。

 どんな治癒魔術でも五万Zで治癒を受けられるのだから、痛みを堪え続けたり、障碍が残る可能性に怯えるよりはマシだろうし、法外に高価だという訳でもない。一種類の傷一箇所に一回でも治癒魔術を掛ければ少なくとも後遺障碍についてはまず安心出来るしね。高価だと感じるのは余程金に困っている貧乏人くらいなんじゃないかな。因みにどの程度の治癒魔術を掛けるかは傷を診た治癒師の方が選択するので患者の方は希望を述べるくらいはするが選べはしない。

 俺も今回の迷宮行では「キュアークリティカル」だけでなく、単なる「キュアー」や「キュアーライト」も相当回数使ったのだ。

「……そうですね」

「痛みが残るから治療が終わるまでそれなりに時間が掛かることも多いしね」

 前菜のベーコンと野菜炒めの冷製を美味そうに食いながら、妙な違和感を覚えさせる微笑みを浮かべてメイリアが言った。

「そうですね」

「高位の治癒魔術だとかなりの勢いで怪我は良くなるが、そこまでの治癒魔術の使い手は多くないしな」

 コーリットが魚の煮凝りのようなものを口に運びながら女房に相槌を打つように言った。あ、彼らは貴族でもないのにきちんとナイフとフォークを使えるようだ。少し感心した。だってこの前は他の皆みたいに手掴みだったんだもん。

「そうですね」

「それに、幾ら上手に治癒魔術を使えるからと言ったって、自分に掛ける訳には行かないしね」

 再度メイリアが言って美味そうにワインに口をつけた。ま、普通は無理だよね。傷が軽いものであれば出来る奴もいるらしいが、まずいない。

「そうですね」

 俺、さっきから同じセリフしか言ってねぇ。

「君は相当魔法の技倆は高いようだが、それでも未だ「完全治癒キュアーオール」を使えるまでにはなっていないだろう? ああ「完全治癒キュアーオール」という治癒魔術は知っているかい? 全ての魔法の特殊技能のレベルが五以上ないと使えないと言われている究極の治癒魔術だ。一度この治癒魔術を掛けてしまえばその傷の痛みは一気に半分以下になるし、それ以降治癒魔術なんか掛けなくても一回でほとんど完治してしまうんだ」

「……」

 ちょっと間の抜けた顔をしてしまった。そこまで常識知らずと思われていたのだろうか?

「おや、その顔つきだと知らなかったようだね」
「あら? ちょっと意外ね……」

 はぁ? 知ってるわい。だいたい、俺、その魔法達人レベルで使えるし。ま、いいや。

「君はまだ若いから知らないのも無理は無いかも知れない。でも、細かい効力は置いておいても究極の治癒魔術の名前くらいは知っておいた方がいいよ。ある意味で常識だからね」

「ソウデスネ……」

 もういいや。このワイン、ちょっと渋いな。

「ここらあたりで「完全治癒キュアーオール」の魔術が使えるのは……宮廷魔術師のような高位の魔術師を除けばまずいないわ。ロンベルティアに居る、トゥケリンと言う闇精人族ダークエルフの治癒師も使えるらしいけどね。急患や予約も多いらしくて、トゥケリンの処に行ったとしてもその時に充分な魔力がなければ使っては貰えないでしょう」

 そりゃ道理だね。そもそもあれだけ人口の多い都市だから患者(?)もひっきりなしに来るだろう。いつでも「キュアーオール」を使える程度の魔力を残しているとは限らないだろうね。と、言ってもミヅチの言う事が本当なら数回は使える程度に魔力を残してはいると思うけど。ま、でもこれは神札の件へのとば口なんだろうね。ファルエルガーズたちが聞いたのはついこの前だったらしいけれど、俺にこんなに早く言うって事は俺の魔術の技能が五レベルになる前に言っておきたかったという焦りかな?

「先日メリーが言ったと思うが、耳寄りな話、と言うのはこの事だよ」

 その後はやはり神社の御札の話をされ、それが如何に大切な物であるかと言う事をとつとつと聞かされた。ふんふんと頷くのも面倒になりかけた頃、やっと話が進んだ。特別なルートでかなり早く手に入れられるというものだ。だが、当然と言うべきか、割増で喜捨をする必要があるそうだ。以前、ミヅチと推測していた内容殆どそのままだな。

「それ、商会を作らないまでも冒険者相手に商売になるのではないですか?」

「そうしたいのは山々だけどね、今のところ商売に出来るほど沢山用意出来る訳ではない。それに、優秀な君なら理解してくれるだろうが向こうさんにも都合ってものがある。少しずつ信用を得てきた我々だからここまで時間を短縮出来るんだ。最低でも一枚あたり倍の二百はお金が掛かってしまうしね……時期や場合によっては三百と言われることもある」
「まぁでもやはり思った通り、流石ね。……話が早くて助かるわ……」

 話が早くてって……ここまで引き伸ばしたのあんたらやん……。俺、相槌しか打ってねぇし。

「冒険者だけを相手にしてもそう沢山は売れないだろうし、今のままだとそう多くの数は手に入れにくいんだ。そこで、君の力を借りたいと思ってね」
「貴方は商会を持っているでしょう? 詳しくは知らないけど、ゴム製品を扱っているそうじゃない。王都の貴族なんかにも顔が利くんじゃなくて?」

 ああ、まぁ、そうだよね。商売として考えるなら貧乏臭い冒険者なんか相手にしたところであんまり沢山は売れない。それでも一定の利益は出るだろうし、一般的に言ってかなりの大金を得ることも可能だから充分と言えば充分だ。元々の札を買いに行かせる人数の動員力が大事だからだ。ああ「買いに行かせる」という表現は適切ではないか。喜捨の対価として商取引の結果得られる物ではなく、あくまで喜捨に対する神社側の気持ちのようなものだからね。ともあれ、逆に言えばその動員力が限られているために自分のパーティー内でしか商売が出来なかったとも言える。

「王都なら人も多いし、神社の数も多い」
「店を構えて貴族相手に高級品を商っている商会であれば信用もあるわ」

 なるほどねぇ。今回迷宮内で仕入れた情報から完全な詐欺行為はしていないようだというのは判った。しかし、それ以前に一軍の中でもチーム分けというか、組を分ける時のメンバーに偏りがあるのが気になっていた。俺が前衛に置かれたりしたのはまあいい。新人だし、元トップチームのリーダーだし、本当の意味で迷宮内での戦闘の実力も測らなくてはならないだろうから納得は出来る。だが、今回の迷宮行で判明したのは犠牲を強いるグループと、実力者で固め、そう簡単に傷つかないグループがあったことだ。

 今回は魔術と弓を得意とする、後衛専門のカームとミースを除いて大きく三つに分けられていた。俺とコーリットのグループ。メイリアとハルクにキムを加えた碌に怪我をしない実力者グループ。それからロッコ、ケビン、ジェルの言うなれば囮グループだ。一度だけならたまたまと言うこともあろう。

 だが、基本的にはこの組分けで探索と戦闘が行われたのだ。組分けをするにしても普通はそれぞれの組にあまり大きな力の差が起き難いように配慮するものだ。まして何かの拍子に転移の罠に掛かってしまうかも知れない六層なのだから、組になるメンバーの実力については念を入れて考慮すべきだろう。

 転移の罠に引っ掛かった場合に何人か纏めて転移するかしないかは彼らは知らない筈だ。知らない以上、纏めて転移する可能性も考慮に入って然るべきだろう。まして、昨年にはゲクドーとその妹のユリエールが同じエリアに転移したという実績もあるのだから。実を言うと俺でさえ纏めて転移はしないだろう、という程度の想像に基づく認識があるだけで、何か証拠を掴んだ上で確信を持っている訳じゃないからね。

 おそらく、この囮三人が基本的にはカモなんだろうな。今まで、一チーム体制でそのメンバーをローテーションしていた時もそういう奴はいたんだろうし、今みたいに二チーム体制で一軍と二軍に分かれてはいても一軍のカモの補充要員の教練として二軍を生け簀の様に利用しているんだろう。あまり好ましいやり方とは言い難いが、明確に悪い事をしていると指摘するのも難しい。

 リンドベル夫妻としてはこういった方法から抜けだして、ある意味で大手を振っての商売をしたいと言うところだろうか。

 トリス、ベル。ちょっと思惑とは違うみたいだな。だが、別にいい。俺としては完全に成功するよりはどこかで失敗してそこから学んで欲しいんだし。その為に日光サン・レイのメンバーの命なんか惜しくはないし、俺の評判なんか幾ら落ちようが多少馬鹿にされようが、九層まで行って大儲け出来れば後々幾らでも取り返しが効く。

 とにかく即答なんか出来る問題ではないし、時間を稼ぐだけにしておけばいいだろ。「考えさせて下さい」というありきたりな返事を繰り返してお茶を濁し、退散した。勿論のこと、神社の札の事自体は現在のメンバーは誰でも知っているし、不思議に思うなら誰かに聞いて確かに効力のあるものを得られることを確認したっていいが、今夜話した肝心の商売に繋がる部分については喋らないように口止めされた。また、当然のことではあるが神社の札についても、メンバー以外には話さないよう、きつく言われた。言われなくても普通は話さないだろうね。



・・・・・・・・・



 「カイルーグの宿」に戻った俺はうまやに行ってトリスたちの指示を確認すると、すぐにまた宿を出た。しかしなぁ、もう少し具体的に書けよ、これじゃ俺が考える余地がありすぎだろ。それに、明日の朝返事が欲しいとか急ぎすぎだ。減点だな。

 ……誰が良いかね。もう八時を過ぎてるし、寝ちゃってる奴もいるかもしれない。そうなると……実家の様子はよくわからんが、夜更かしの可能性があるのは……どっか店に居られたら探すのが面倒だなぁ。

 まばらに飯屋や飲み屋の明かりが灯るバルドゥックの街をてくてくと歩き、とりあえず目的の人物が宿泊している宿に向かって歩いた。そんなに高級な宿ではない。一泊三千Z強程度の宿だ。支配人だか番頭だかに話を付けて目的の人物を呼び出して貰えないかお願いした。当然寝ているようであれば起こす必要はないと言い含めてある。

 だが、数分で目的の人物に部屋に招き入れられた。部屋には明かりの魔道具によって煌々と明かりが灯っており、出てくるまでの時間と服装を見ても寝ていたのではないことを窺わせた。

「こんな時間にどうしました? グリードさん」

 目的の人物、ビンノード・ゲクドーが不思議そうな顔をしながらも、俺のために手ずからお茶の用意をしてくれた。

「いや、夜分に申し訳ありません。少しお聞きしたいことが出来てしまいましてね……誰に尋ねたら良いものか思案したのですが、貴方ならまだ起きているかもしれないと思いまして……」

 彼は准男爵家の出だ。ゲクドー准男爵家は【鑑定】のサブウィンドウの情報によると王直轄領のマートソン村の代官らしい。マートソン村の経営状態迄は解らないが昔のバークッドほど貧しくはないだろうと思った。だとすると生活に灯りの魔道具が取り入れられていた可能性がある。魔道具ではないにしてもランプなどの照明器具を普段から使っていて夜更かしの習慣もあるかと考えたのだ。どうやら正解だったようだな。

 とは言ってもこの時期だと翌朝は四時半くらいには起きるだろう。長くても二十一時には退散しないと。あと一時間もない。

「ビンスさん。実は先ほどリンドベルさん達から神社の札のことをお聞きしました」

 俺の言葉を聞いたビンスは不思議そうだった表情が得心した様なものに変わった。

「ああ、そういう事ですか。納得しました。御札のことを初めてお聞きになったのであれば急ぎ確認したくなるお気持ちは理解出来ます。……私のはこれです。本当はちゃんとしたものを持っていたのですが、昨年の時に……その、使っちゃいましてね」

 ゲクドーが見せてきたものは神札でも何でもない、何度も削った羊皮紙のような安物の紙に書かれた預り証のようなものだった。リンドベル夫妻が書いたものらしい。二百万Zを預かったと書いてある。日付は昨年の十二月だった。

「これは?」

「ああ、神社の御札を得るための喜捨の証拠のようなものです。一年か二年くらいでちゃんとした神社の御札にして貰えるんですよ。すごいでしょう?」

 どこか自慢気に言ってきた。まぁその気持は解らんでもない。

「ほう……やはり、本当に神社の御札になるんですね……」

「それについては私が保証します。実際に使ったこともありますからね。御札のお陰であの時は助かりました。あれがなければ二~三週間は休まなければならないところでした」

 二百万だか三百万だか知らないがその程度の期間休まなくたってそれ以上金を得られる可能性は低……トップチームなら、休んでいる間にすげぇお宝を得る可能性もあるか。それに、痛みがかなり軽減することは場合によっては金になんか変えられないこともあるだろう。迷宮の中で直接役に立つ訳ではないが、得られる効果自体は本物だから普通に考えて保険としてはかなり良いものであることは確かだ。

「不思議にお思いですか? でも、私はありがたいと思っています。私が休まずに迷宮に行けるのは皆の生存率の向上に繋がると思っています。ああ、いや、自分の力がそんなに高いと自慢している訳ではありません。これでも魔術師の端くれですからね。私の魔法によって苦しい戦いが楽になることもあるんですよ。それに誰かが怪我をしても「キュアー」くらいは掛けてやれますから……」

 仲間が危機に陥らないように、か。なかなか立派な考えをすると思った。流石は准男爵家で教育を受けたということかもしれない。いや、根拠なんかないけどさ。

「それに、これはグリードさんだから特別にお見せします。去年ユリエールが死ぬ前に彼女が持っていた彼女の御札です。生きて迷宮を出られなかったので無駄にはなってしまいましたがね……」

「それは……間に合わずに申し訳ありませんでした」

「ああ! いいえ! こちらこそ変なことを言って申し訳ありません! そんなつもりではなかったのです!」

 慌てて真っ赤になってフォローを入れてくるゲクドーに気にしていないと言うと、渡された神札にステータスオープンを掛けた。

【証:ヨランフィーヌ・ゲクドー准男爵次女】

 【鑑定】しても別に変わったところはない。これ自体が「キュアーオール」を掛けてくれる訳じゃないからそれもそうだろう。

 ま、そもそもちゃんと最初の宣言通り本物を渡しているんだから詐欺じゃない。高いは高いが、本来最低でも十年は掛けないと得られない品物だ。高いのも当たり前と言えば当たり前だろう。きちんとした確証が得られた。勿論、ゲクドーが俺を騙そうとしていることも可能性としてはゼロではない。ゲクドーに対して有効な現物を見た訳じゃないし、俺が実際に御札を得て試した訳でもない。しかし、ゲクドーが妹の神札を使ってまで俺を騙す理由については心当りがないが、彼にとって俺よりもリンドベル夫妻により大きな恩を感じている可能性はある。

 だが、全てを疑い出したらキリがない。ゼロに近い可能性なんか考慮に値しないだろう。そんなことまで心配していたら道を歩くことだって出来やしないし、一応は恩のある俺を騙そうとするような人物にも思えない。仮にそうだったとしたら俺に人を見る目がないだけの話で、それで大損をこいたり命を落とすようなことでもあればそれまでの話だったというだけのことだ。

 とは言うものの、これはゲクドーに対して持った俺の印象から来る考えであり、リンドベル夫妻に対するそれじゃない。金を受け取ってから一年とか二年は神札を渡してはいないようだね。二百万とか三百万は大金だ。神札を受け取る前に亡くなっても墓(何てものがあればの話だが)に供えているとか、遺族を探して受け取った金を返しているのであれば詐欺じゃないと胸張って言ったって責めはしないよ。

 ゲクドーに改めて夜分の訪問を詫び、丁寧に礼を述べて彼の宿を退出した。

「カイルーグの宿」に戻り、確証を得られた内容を所見も含めて丁寧にしたため、馬具に入れておいた。

治癒魔術で得られる魔法の特殊技能の経験は回復させたHPの一/○十(丸には使用した無魔法のレベルの数値が入ります)です。
魔法の特殊技能のレベルが高くなればなるほど同じ怪我を治しても得られる経験値は低くなります。これに比べれば攻撃魔術で得られる経験値は高いですが、魔術弾頭は高速と言えど躱されれば得られる経験は空撃ちと同程度の雀の涙なのでバランスはとれているとお考え下さい。
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