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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第百七話 噂2

7444年12月26日

 宿に戻った俺とミヅチは日光サン・レイのリンドベル夫妻の木札、と言うか神符と言うか護符と言うか、まぁ神札でいいや、の手口を考えてみた。

案1。これは誰でもすぐに思いつくだろう
1.人を雇う。貧乏人とか浮浪者でいい。数が多ければ多い程有利。解りやすいようにとりあえず百人
2.満月の日にそいつらに五千Z渡し、神札を買わせる
3.二回の満月で百万Z分の神札が集まる
4.神社に冒険者が持って行き、でかい神札に変更して終了

 神社を複数箇所に分散してもいいだろう。ただ、人を雇わなければいけないから経費が結構かかると思う。拘束時間とか考えると本来の金額より五割アップ位までは覚悟する必要があるし、場合によっては持ち逃げする奴もいるだろう。それ以前に同一人物が短期間に大量の神札を交換に来ることについて咎め……ほめられた行為ではないだろうが別に悪い事をしている訳ではないから、問題無く認められる可能性もある。ダメかもしれないけど。どちらにしても雷に打たれる程の行為ではないとは思う。保留。

案2は上記の発展形だ。多分有り得ないが俺ならこうする、これを目指すというだけだ。
1.組織化する。支部を各地に作るのが理想。仮に十箇所
2.人を雇う。これも多ければ多いほど有利。仮に二百人
3.この二百人に各地の支部を巡回の旅をさせる(面を割れにくくさせるため)
4.満月の時に最寄りの神社で五千Zの神札を買わせる。
5.適当なところで誰かが纏めに行く(こいつが冒険者だろう)
6.でっかい神札ゲット

 旅をさせる過程で何か荷物を運ばせ、商売させてもいいだろう。だが、これだけの人数を使って商売させればすぐにそっちの方が儲かって本業になる気がする。ついでに言うと先行投資にむちゃくちゃ金が掛かるし、支部間の連絡も大変だ。うちのトリスやベルクラスの余程信用の置ける奴に支部長を任せないと早晩崩壊は目に見えている。まぁ、ボツだな。

案3。これは正攻法か?
1.金を集める
2.神社の司祭を買収し百万Z以上渡してでっかい神札ゲット
3.司祭共々雷に打たれて終了

 だめだ。っつーか買収されるような奴が神社で神職に就けるとは思えない。

案4。本当に日光サン・レイの言う裏ルートが有る場合
 この場合は……まぁいいんじゃないか? 雷に打たれないのであれば別に問題無いだろうし、逆によく見つけたな、ってなもんだ。

 こうして考えると案1以外は実現性が低い。案1だって実行可能ならその組織力は大したものだ。だが、俺もミヅチもこれらのどれでもないだろうと予想している。金も、力も、魔力も無いなら、自分のパーティー強化には頭を使うしかない。ま、簡単に言うと詐欺だな。神札も本物を幾つか見せ札として揃える必要がある。ある程度の金があるなら可能だろう。

 仮に俺とミヅチがリンドベル夫妻の立場だったら、とにかくある程度の金を貯め、自分でももちろん買うが、満月の日に神社に行って並んでいる奴を買収する。五千Zの神札を場合によっては一万Zで買うと言うのだ。乗ってくる奴はいるだろう。夫妻は二人いるのだから二箇所で行動できるはずだ。半年も繰り返せば可能だろう。

 それを一万Zの神札に替えないまま保持しておく。百万Z分ある必要はない。適当でいい。これが見せ札だ。で、頭が抜けていそうな冒険者に話しかける。

「裏の特別なルートで本来十年かかる神札を一年で揃えられるぞ」
「裏のルートだから誰にも明かせない。雷が怖いからな」
「え? お前も欲しいって? 仕方ない。お前にだけは特別だ」
「だけど、百万Z以上かかるぞ」
「当たり前だろう? 向こうだって無理してくれてるんだ」
「謝礼も必要なことくらい頭の回るお前さんなら理解できるだろう?」
「なぁに、そのくらいの金、俺のパーティでならすぐ稼げるさ」
「ああ、これは誰にも言うなよ」
「また、ちゃんとお参りしろよ。神はお前の信心を試しているぞ」
「よし、お前は右のやつだ、お前は左のやつを相手取れ」
「ああ、一人やられちまったか……残念だよ」
「あいつは先週お参りに行ってなかった。信心が足りなかったから死んだのだ」
「よし、お前は正面だ、お前はやつの後ろに回り込め」
「誰も見てないな。敵も弱っているようだし……死ね!」
「むぅ、残念だ。信心が足りないからこうなる」
「うむ。ちゃんとしたお参りの方法を教えようか……まず贅沢は止めろ」
「そうだ、清貧を持って信心が認められる」
「げぼぉっ! な、なんとか助かった」
「な、ちゃんと神を敬っていればすんでのところでお救いになられるのだ」
「わかった。迷宮での戦利品はリーダーの俺が皆を代表して神社に納めといてやる」

 かなりやっつけだが、恐らくこんなところだろうよ。

 金を払えばすぐに揃う、ではなく、一年程度までに短縮できる。というのがミソだ。別に相手が納得するなら二年でも三年でもいい。この間、こき使って適当に謀殺すれば問題ないのだ。あまりにも実力が高くて夫婦二人掛かりでも倒せそうにないなら、本当に神札をやったっていいだろう。見せ札を作れるくらいなら、本気で一年も掛ければ集められないことは無いんじゃないか?

 これらの過程で神社にお参りに行ったりして誤魔化せばいい。場合によっては新興宗教のようにしても良いかもしれない。長くやってりゃカラクリに気づく奴も出るだろう。信用出来そうなら仲間に入れて手下にしてもいい。ダメなら夫婦で謀殺だ。迷宮の中なら証拠は残らない。「あいつは信心が足りなくて死んじまった」「欲に目がくらんで一人で迷宮に入ったのだろう」とか言っておけば信じるやつもいる。信じないにしても証拠なんか無いし。そんな奴だって場合によっては札びら、もとい金で頬を叩けば靡くかも知れんし、そうじゃなければやっぱり迷宮で始末してもいい。

 とにかく、そんな手下が自分たち以外に二人くらい出来た時、もう新しく入って来てもそれを否定出来る奴はいなくなる。

 当たり前だ。迷宮では背中を預けるからな。下手に否定して援護を受けられなかったりしたら死が見える。最初は半信半疑だっていいのだ。何回か実例みたいなことがあれば教育水準ゼロで純朴なオースの人は信じるだろうよ。え? そんなんで信じる奴はいないって? 嘘だと思うならアフリカやアマゾンの奥地に行ってみな。Tシャツを着て携帯電話を使いながらも本気で精霊だか悪霊だかを信じて怖がっている人間なんか唸る程いるぜ。

 地球で最も優れた商売人は神様を発明した奴だ。と言う言葉があるが、予測通りならリンドベル夫妻の知能は大した物だ。胸糞悪いやり方だが、強固に信頼できる仲間が数人も居れば有効な手段であることは認められる。まぁ胸糞悪いと言うのも俺の個人的な感情だ。本人が納得し、本気で信じているなら例え死んでも幸せと言えるのかも知れない。家族や親戚ならともかく、赤の他人の俺が口を出す事じゃない。

 ヴィルハイマーもアンダーセンもきっと同じ気持だろう。「緑色団ベルデグリ・ブラザーフッド」や「黒黄玉ブラックトパーズ」のパーティメンバーにどんな甘言を弄したか知らないが、その程度でパーティーを抜けられるような信頼関係しか築いて来れなかったリーダーの責任であることは明白なのだから。メンバーの謀殺や見殺しについても同様だ。証拠を掴んだり現場を見た訳じゃない。あのリンドベル夫妻だってある程度蓄財したら揃ってドロンするつもりなんだと思うしな。

『ねぇ、今の殺戮者スローターズで引き抜かれそうな人……居る訳無いか』

 シャワーを浴びてさっぱりした後、お手製の蒸しタオルを顔に当てながらくぐもった声でミヅチが言った。

『居ないな。治癒魔術に旨味は無いし、金で転びそうなのはバストラルだけだが、あいつはまだ声が掛かるような実力じゃないだろ。奴隷は俺が販売を認めない限り解放を餌にすることも出来ないから有り得ない。だいたい転生者なら胡散臭さには気づかない方が……ファルエルガーズとヒーロスコルはわからん』

『えー、大丈夫じゃない? そういうのには引っ掛からないと思うけど……』

『引っ掛かりはしないだろうが、自ら入っていく可能性は否めないんだよなぁ……妙な正義感もあるみたいだし……』

『あー……』

『だいたいメンバーを謀殺しているかどうかなんて想像でしか無い。本当に組織でも作って神札を手に入れていても不思議はない。その場合「キュアーオール」の魔術は確かに魅力的だろうな。正直言って俺の知る限り確実に使えるのはミラ達は別にして俺とお前、あと宮廷魔術師連中だ。あ、王都にいるなんとかって治癒師は使えるらしいな。バルドゥックにも居たらしいが十年くらい前に老衰で死んじまったってさ』

『んー、デュロウだと三十人くらいはいるかな……高位の一位戦士や引退した一位戦士だけど』

『どっちにしろ大した数じゃない。普通の冒険者なら……俺だって全元素について使えなかったら喉から手が出るほど欲しいだろうよ。一人なら躊躇するかも知れんが、二人組なら気持ちが大きくなってホイホイと付いて行くこともあるだろう。何しろ有効なのは間違いないんだから』

『言われてみればそうよね……』

 蒸しタオル、気持ちよさそうだな。俺も作ろう。

『……俺がリンドベルの立場なら……ファルエルガーズ達を取り込むのであれば必死こいて神札を手に入れるだろうな。ファルエルガーズ伯爵の長男のお墨付きでも貰えりゃ箔がつく。で、面倒にならないうちにパーティーから放り出す。そっちのが良い宣伝になるからな』

 よし……っと、こんなもんか。……あー、こりゃいいや。先週から右の頬にニキビが出来たんだよ。毛穴広がったら潰そうかな。……若いっていいな。こんな悩み、何十年もとんとご無沙汰だったぜ。



・・・・・・・・・



7444年12月27日

 朝起き抜けにいつものようにランニングには行ったが、宿に戻り、シャワーを浴びたらミヅチと二人でコンドームを使ってしまった。どうせ今日あたり補給が来るのだ。ケチケチする必要も無い。その後デュロウと一緒に昼飯を食いに行こうと、ロビーに向かったらラルファとグィネがどろりとした粘液質な目つきで俺たちを見ていた。ガキは健康的に缶蹴りでもして外で遊んでろよ。缶なんてねぇけど。

 宿に戻り、狭い裏庭でそれぞれ剣やナイフの手入れを始めた。真冬の寒空の下、背中を丸めてナイフを研ぐミヅチの隣で俺も剣に砥石を当てていた。二万Zもするカンビット産の高級砥石だ。

 十四時を少し回ったくらいだろうか。ボイル亭の小僧が俺を探して裏庭に来た。

「グリード様、お客様です」

 そろそろかと思っていたが、きっちり予定通りの日付で到着したな。流石は義姉さんだ。

 表に回るとバークッドの馬車が停車しており、その荷台には荷物が満載されている。御者一人、護衛二人。軍馬一頭。軍馬とそれに騎乗していたのであろう騎士を除けば最小限と言って良い人数だ。

「やあ、シャーニ義姉さん」

 荷台から何か荷物を下ろそうとしている黄緑色の髪の女性に声を掛けた。

「アル! 久しぶりねぇ! 話には聞いていたけど大きくなったわね!」

 シャーニ義姉さんは相変わらず美しい、けぶるような微笑みを浮かべて俺に声を掛けた。バークッドの従士たちも口々に俺に挨拶を言ってくる。今、俺の身長は175cmというところだろう。男性としては普人族の平均くらいか。若いからもう少し伸びるとは思う。

「名実ともにグリード士爵家第一夫人に成られました由、お慶び申し上げます」

 おどけながらそう言って洒落っ気ある礼をした。もう兄さんはとっくに士爵位を襲爵しているだろうしね。

「もう。ありがとう。あと……言いにくいんだけど、今日はこのまま王都まで行くわ。あんまり時間の余裕が無いのよ……」

 シャーニ義姉さんは礼を言いながらも申し訳なさそうに表情を曇らせて言った。

「ああ、聞いてますよ。出兵でしょう? 王都に食料やら補給品やらは用意させています。でも、今夜は泊まっていけるんでしょう?」

「ええ、それくらいはね。ありがとうね、アル」

 そう言って義姉さんは微笑んでくれた。

「それと、義姉さん、紹介します。彼女はミヅチ、ミヅェーリット・チズマグロル。俺のパーティーメンバーで……大切な女、です。ミヅチ。こちらは俺の義姉だ。兄貴の奥さんでシャンレイドさんだ。俺はシャーニ義姉さんと呼んでる」

 少し上気した俺の紹介を聞いた義姉さんは目を丸くしたが、すぐに微笑んでミヅチに手を伸ばした。

「宜しくね、チズマグロルさん。シャンレイド・グリードです。シャーニと呼んでくださいね」

 ミヅチは薄蒼い頬を真っ赤にしてその手を握ると義姉さんに挨拶した。

「あ、よ、宜しくお願いしまう。ミヅェーリット・チズマグロルです。じ、私の事はミヅチとお呼びください」

 しまうってなんだよ。噛むなよ。

「あと、義姉さん。義姉さんに用立てて頂いたウェブドス侯爵閣下のプレートですが、お陰で助かりました。本当に有難うございます」

 俺がそう言って頭を下げると隣でミヅチもすごい勢いで頭を下げていた。うん、いくら頭を下げても下げ過ぎってことはないよ。お前の場合。

「じゃあ、義姉さん、これから王都に行くなら同行者が何人か居るから呼んで来ますので。少しだけ待っててください」

 そう言うと俺はゼノム、ラルファ、グィネを呼びに宿へ入っていった。部屋で寝っ転がっていたゼノムに声を掛け、ラルファとグィネはグィネの部屋でファッションショーを開催しているらしいので扉の外からノックして声を掛けるにとどめ、ロビーに向かって階段を降りようとしたら、小さな箱を抱えたミヅチが宿に入ってきた。なんだあれ?

『あ、その、し、試供品のご、ゴムだって。ちっとも恥ずかしそうにしないのね……私の方が恥ずかしかった……』

『ん……ベッドの脇に置いといてくれ……』

 外に出ると義姉さんは既に軍馬に騎乗していた。俺も自分のとミヅチの軍馬を小僧に言って引き出させると小僧と二人で手早く馬具を装着した。

「アル、鎧は?」

「ああ、この辺りは大丈夫。必要ないですよ。剣があれば充分です。……魔法もありますしね」

 そう言えば義姉さんはプロテクターをきっちり着込んで剣を帯び、軍馬には槍まで装備した完全武装だ。これから戦地に行くんだし、当然と言えば当然だが、馬車に鎧を置くスペースが無いのが大きな理由だろうな。

「その馬、誰の?」

「ああ、ミヅチのです」

「ふぅん。彼女には私の後ろに乗って欲しいわ。誰か馬くらい乗れるでしょ?」

 え? なんで? そりゃあ俺のパーティーで馬に乗れないのは……バストラルの他は奴隷が乗れないだろう。あとは休日に乗ったりしているし、全員乗って走らすくらいは出来る。

「いいの、女同士、話させてよ」

「あ、はい……」

 ミヅチが戻ってきた。

「あ、ミヅチさん。貴女は私の後ろに乗ってね!」

「え?」

 いきなりそんな事を言われて驚くミヅチに頷いてやり、俺に話しかけてくる従士達を相手にしていた。横目で見るとミヅチは緊張のあまり、ガチガチになっている。

「アル様、あの方とご結婚なさるのですか?」

 今年の秋、兄貴の襲爵のタイミングで従士長を引き継いだショーンが嬉しそうに言ってきた。それまで従士長を務めていたベックウィズ・アイゼンサイドは五十の峠を越え、流石に引退だ。次代のリーダーとしてショーン・ティンバーが選ばれたのは高い実力に裏打ちされた人望から言って当然のことだろう。ショーンなら兄貴を補佐してうまくやるだろう。

「ん、まだわかんねぇけど、ま、一応な……。この前父さん達が来た時にも紹介したかったんだけど会わせられなかったしな……」

「きれいな方ですが、エルフでしょう? 大丈夫ですか?」

 従士のレイノルズが心配そうに言った。彼がベックウィズの長男でゴム担当のエンベルトの兄だが、実力はショーンの方が上なので従士長にはなれなかった。仕方ないことだ。

「ま、そんときはそんとき。なるようになるよ。あまり心配しないでくれ」

「アル様が選んだ方です。私はなんの心配もしていませんよ」

 ジェイミーが俺を力づけるように励ましてくれた。ジェイミーは従士のレンリット家の長女で、非常に好戦的な性格をしている。当然高い実力も兼ね備えている。この三人を納品の護衛につけたのはシャーニ義姉さんを大事にしている兄貴だろうな。グリード家に仕える従士達の中では実力者の三人だ。

「ああ、ジェイミー、ありがとう」

「うひぇー、お待たせ~、あ、ショーンさん、ジェイミーさん、お久しぶりです!」

 ラルファ達がやっと支度を整えてやってきた。何がうひぇー、だよ。恥ずかしいな。

「シャーニ義姉さん、左からゼノム・ファイアフリード。そしてその養女のラルファ・ファイアフリード、一番右がグリネール・アクダム。みんな大切な俺の仲間です。皆、こちらがおれの義姉さんのシャンレイド・グリードだ」

「宜しく。高いところから申し訳ないけど、シャンレイド・グリードです。皆さんのことはファーンから伺っています。いつもアルがお世話になっているようで……」

 ゼノムから順に挨拶を交わし、ミヅチの軍馬にはゼノムとラルファが乗り、俺の後ろにはグィネが乗った。

 出発だ。

「綺麗な女性ひとですねぇ……憧れますよ……」

 俺の後ろのグィネがシャーニ義姉さんを評して言った。そうだろうともよ。兄貴の嫁さんだからな。あれで気立ても良くて誰にでも優しいんだ。口には出せないが夜もすげぇし。

 シャーニ義姉さんはミヅチと何やら楽しそうに話している。ラルファは器用にゼノムと背中合わせに座ってジェイミーと熱心に話している。

 空が暗くなる十七時頃、王都ロンベルティアの外れに到着した。街灯なんかないが、まだ地面もかろうじて見えるし、王都に入ってしまえば夕方も営業している店はたくさんある。問題なくグリード商会まで到着した。ゼノム達は一晩泊まり、明日乗合馬車でバルドゥックまで戻るらしい。休み明けにまた会おうと言い残してロンベルティアの夕闇に消えていった。

 店番をしていたヨトゥーレン達にシャーニ義姉さんを紹介し、リョーグたちが戻るのを待つ間、荷物を店に運び入れた。驚いたことにダイアンが体調を崩していたらしく、二階で休んでいた。すわ、妊娠か、と皆色めき立ったが、ヨトゥーレンが単なる風邪の治りかけだと言い切ったので沈静化した。ダイアンが大事を取って休んでいるので旦那のルークもその面倒を見る傍ら、今日の夕食会の欠席を言ったので、リョーグ夫妻とヨトゥーレン母子達とレストランで夕食を摂った。姉貴は既に出征していた。

 その晩のこと、宿に投宿したミヅチは恥ずかしそうにゴム袋を出した。

『あの……シャーニさんがくれたの……新しいんだって……』

 それを受け取った俺はいつもと少し違う感触に眼を見張る。

『へぇ……ぷっ、こ、これは……!』

 いいのか? これを使って……ええのんか!?

 手の中のモノとミヅチの顔を交互に見やる。

 ミヅチの頬がみるみるうちに上気して赤く染まる。

 これ、まだあるの?

 え? ボイル亭に運び入れたの全部これか……。ゴクリ……。

 今回の納品はゴムプロテクター十一着。サンダル五百足。靴五百足。ブーツ五十足。コンドーム四千パック。そして、別にミヅチに渡した小箱には百パック。もう一つ同じのが別に百パック。今回からコンドームは百パック毎にバークッドと王家の紋章を焼き付けた15×15×20cmくらいの小箱に入れられていた。

『その……折角だから使ってみてどっかに売り込んで頂戴って……』

『お、おう……でも、いいのか?』

 ゴクリとつばを飲み込んで鼻の穴を広げて尋ねた。

『だ、だって……あ、ゴムの畑、一つ増えたんだって……その分、こ、これの製造に回すから心配ないって……』

 ミヅチがシャツを脱いだ。恥ずかしそうに片手で胸を隠しているが、全部隠せないで腕から塊が少しはみ出している。

『お、そう……か』

 俺もシャツを脱ぐ。

『べ、別に私は普通のでも……でも、出来るなら協力し、しないとね、ね』

 ベッドに腰掛けたミヅチは真っ赤になって片手でズボンを脱ぎ、すぐに下着に手をかけた。

『ああ、使わないとどんなもんか、わか、分からないしな……』

 俺もとっくにズボンを下ろしている。ゴム袋の端を噛みちぎり、一つ押し出して手に取るとおもむろに装着した。

『うひぇ、すげぇな。これ。見ろよ』

 腰に手を当てて仁王立ちになるとミヅチに見せつけた。

『もう、見せないでよ』

 ミヅチはぷいと横を向いてベッドに潜り込んだ。



・・・・・・・・・



 新型のコンドームでミヅチを苛め抜いたが俺は普通だった。と言うより使用感は普通のコンドームの方が良かった。あれ、嬉しいの女だけだろ。

 寝不足のまま王城に鎧の納品に行き、義姉さんに「あれ、考えたの誰です?」と聞いたら澄まし顔で「二人で考えたのよ」と言われた。「ゼットとベッキーの手の届かないところで管理してくださいね」と嫌味を言ったが義姉さんは笑っていた。

 義姉さんを端っこに引っ張り出してミヅチが真っ赤になってお礼を言っていた。

 しかし、流石は兄貴。こんな短期間で何のヒントもなくこの領域に辿り着くとは……これが真の天才と言う物だろう。それに、義姉さんも……二人で協力して考えたと言っていたな……まだ完成したとは言い難いかも知れんが……。二人には俺など一生敵わないに違いない。

 王妃を呼び出すとベッキーが来た。当り障りのない会話をして十パック分の納品とともにさり気なく新型を二袋追加して上に置いた。

「ん? これは?」

「はっ。新たに開発を行っているものです。どうぞ良くご確認くださいませ」

 跪いて臣下の礼を取りながら神妙な声で言う。

「……なっ! こ、これは……一体何ですか! これは? いぼ?」

「はっきりと申し上げるのは心苦しいのですが、ご使用になられる男性……陛下より、女性……妃殿下方により重きを置いて開発したものです。お試しいただけますと幸いです」

「こ、このようなもの……大丈夫なのでしょうか?」

 少し心配そうにベッキーが言ってきた。

「レベッカ妃殿下。勿論ですとも。既に私が試してございます。表面に取り付けられているゴムの突起はしっかりと接着されておりますので行為中の脱落の心配は無用です。女性には非常に好評です。ただ、強度確保の問題で鞘自体の厚みが少し厚くなっております。男性はその……どちらかと言うと精神的な充足感の方が大きゅうございます」

 それを聞いたベッキーの声が少し上ずる。

「いえ、品質じゃなくて……こ、こんなの入れ……でも、そ、そうですか……男性は精神的……女性は……下がってよ、良いぞ」

 ああ、品質と共に肢体からだの健康は問題ないだろうよ。大丈夫さ。そっちは保証する。
 でも、感覚は大丈夫じゃないかもね。うひひ。

「はっ、陛下にもよしなに……では失礼致します」

 
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