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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第百一話 責任2

書ききれませんでした。
中途半端でごめんなさい。
7444年12月14日

 いきなり就職を希望してきたバストラルに少し驚いたものの、今は彼の面接をしている時じゃないだろう。だが、何もせず放っておく訳にもいかない。

「お顔を上げて下さい。あの、これは単なる確認なのですが、バストラルさんはお二人とはどういうご関係です?」

 付き人を引き抜くような形になるのは避けたいからな。ファルエルガーズとヒーロスコルは苦い顔をしてバストラルを見ていたが、何も言わなかった。バストラルが口を開いていいものか迷っているうちに横から口を出された。言わずと知れたラルファだった。

「その人は奴隷だったんだって。先月この二人が買って、王都まで連れてきて自由民に解放したんだって」

 へー、まぁ転生者はそれだけで有用だし、俺ももし奴隷のバストラルと出会ったならば、その時に金に余裕がありゃそのくらいはしてやったろうな。だが、解放するかどうかは奴隷として生まれついたのか、犯罪の結果罰金が払えなくて奴隷に堕ちたのか、税金の滞納なのか、そのあたりは調べるだろうけどな。

「そうですか……それはまた……まぁ雇用の話はまた後程、可能であればお話ししましょう」

「お、お願いします!」

 必死になって俺に頭を下げるバストラルをなだめ、話を元に戻す。

「まぁ私としては稼ぎに見合った報酬は払っているつもりです……ですが、その報酬の多寡について、本人ならともかく部外者である貴方がたにとやかく言われる筋合いはない、と思うのですが……」

 出来るだけ真摯に見えるように表情を取り繕いながら話をした。隣でトリスとベルがそうだそうだと言うように頷いている。

「……なるほど、確かにそれなりの報酬は渡してはいるようだな……彼らが報酬には満足していると言っていたのは納得したよ」

「そうですか、ご理解いただけましたようで何よりです」

「だが、離職の自由意志の制限や生命に関わる問題以外への命令服従の義務を強要することについてまで納得行く回答を得られたわけじゃない。また、まだ足りない部分もあるな。仲裁条項が無い。当事者間で紛争が起きたとき、どう解決するつもりなんだ?」

 こいつアホか? 日本じゃあるまいし、国や領地の法律なんておおっぴらに張り出してもいねぇよ。管轄裁判所なんて似たようなのは裁きの日になるんだろうが、基本的に刑事事件しか扱わない。民事なんて貴族が上級の貴族に依頼して裁いて貰うか、上級の貴族なら国王に裁いて貰うかしかないだろう。

 俺はギリギリ準貴族だから、泣きつけばウェブドス侯爵なら裁いてくれるかも知れん。今や国王は宛に出来ねぇしな。……確か国王もあんたらの実家、そう、ファルエルガーズ伯爵家とローダイルだかクロコダイルだかの侯爵家の300年前の借金問題をお裁きしてやったんだろ? ため息しか出ねぇよ。

 ……そもそもこの問題となっている雇用契約書の作成と締結だってラルファが言い出した事だ。後で知ったのだが雇用契約なんて誰も結んでない。バルドゥックに来るまでに通ったドランの代書屋でも大口開けて呆れられたし、バルドゥックに来てからも行政府に持って行く度に「こいつ阿呆か」というような顔で役人に見られてたんだ。俺が好きで始めたもんじゃねぇよ。乗りかかった船とばかりに使えるなら利用しようとは思ってたけど。

「……ふぅーっ。なるほど、ではお答えし易い所から順にお答えしましょう……。まず、仲裁条項ですが、お二人はオースで何らかの商取引などのご契約書を締結されたことは?」

「ない」
「ない。が、契約当事者間の紛争を想定してそういった条項を盛り込むのは当然ではないかね? まして誠意条項が存在せず、判断を雇用主に委ねるのであれば、契約の公平性を維持するために尚更必要だと思うのだがね」

「なるほど。お二人は正騎士にまで上り詰めたようですから御領地……ファルエルガーズ伯爵閣下の御領地での裁きの日の警備や刑の執行に携わったご経験もおありかと存じます……ええ、その裁きの日ですよ。あれに代表されるように軽犯罪程度であれば小さな村や街の領主が同様に裁きます。ああ、当然ご理解頂いていらっしゃる事は認識しています。話題性のある犯罪や、重犯罪であれば大きな御領地での首都などまで裁判は移送されますよね? で、私どもの拠点は王直轄領のバルドゥックです。何か揉め事があれば国王陛下の代官に訴え出ることは可能です。そうですね。私が給料を未払だったりした時などではそうやって訴え出る事によって私に給料の支払いを強制させることが可能です。ここまではいいですね」

 なんだか真面目な顔を取り繕うのにも疲れてきた。だが、ここで面倒臭がってぞんざいになっても意味がない。気を引き締めるか。

「ここで思い返して頂きたいのは逆のことです。罰則条項がありません。きちんと報酬を支払っているにも拘わらず、私の命令に不服従であった場合や、私に損害を与えた場合についての罰則についての規定もありません。変な例えですが勝手に離職したと言い張って私の元を自主的に離れて行った場合でも、私は契約を盾に戻れと主張する以外の道は採れないのです」

 そんなことは気が付いている、とでも言いたげな顔だな。まぁ、あれだけ契約内容の不備を指摘してきたんだ。気が付いていない方がどうかしているだろうから当然だろう。ちらっと横を見るとトリスとベルは驚いたような妙な顔つきだった。ラルファは口を半開きにしてるし、グィネはなんだか難しそうな顔つきだ。正座組は放っといていいだろう。

「確かに、そういった各種条項を盛り込んでいないのは私のミスであると謗られても致し方ありますまい。正直に言うと書いている途中で面倒になったということもあります。ですが、一方的に彼らの雇用主である私を責めるというのも公平性を欠いてはいませんか?」

「……それについては後程言うつもりだった。だが、我々はちゃんと契約内容を聞こうとしたし、おそらく聞いた契約内容はほぼ正確な内容だったろう。全部で十条らしいからな」

 十条だっけ、八条のような気がするが……。少し思い違いでもしていたのだろうか? ま、いいや。俺が首を捻っているとグィネが教えてくれた。

「多分ラルと私たちの契約の違いは最初の一月の収入の部分と魔法をアルさんから教わる部分が多いからだと思います。私のとの違いはそこでしたから」

 あ、そうだっけ? そんなとこまで覚えてねぇよ。済んじゃった事だし。今後に関係ねぇし。
 俺はグィネに「そうか」と言って頷くと返事を口にする。

「で、そろそろ本意をお伺いしたいものですね。昨日から貴方がたは私の商会の従業員である、ゼノム・ファイアフリード及びその娘のラルファ・ファイアフリード、そしてグリネール・アクダムの三人と色々お話をされたようです。ああ、休日に彼らが何処で誰とどんな話をしようが全く問題はありません。彼らから雇用契約の話を聞いた貴方がたは、その契約が不当なものであり、雇用主である私に問題があるとお感じになられた。それについても私が関知する事ではありませんのでどうでもよろしい」

 すっかりぬるくなったお茶を一口飲んだ。

「しかし、一晩経っても帰らない従業員を心配し、王都まで駆けつけたものの、私の商会でやっと会えたと思ったら、私の知らない三人組と今朝からずっと話していたと言われ、よくよく聞いてみたらその三人は元日本人。ま、これも良いでしょう。しかし、私の所有する家屋敷で、我々に心配を掛けた元凶に対して罰を与えたことについてなじられ、あまつさえ従業員を騙して利用しているとか、ましてや『洗脳』しているなどと糾弾され、上手く回っていた我々の関係にヒビを入れられかねない状況に追い込まれました。今まで何の関係もなかった貴方がたが横から口を挟んで来た事が原因だと私は思うのですがね……」

 ラルファが青くなっている。お前はそこで座ってちょっと反省してろ。

「確かに同郷の、しかもうら若き女性が食い物にされている、とお思いだったのでしょうから、これも良いでしょう。ですが、一体何の権利があって我々の契約内容にまで口を挟むのですか?」

 そこまで喋るとじっとヒーロスコルの目を見つめた。

「それこそ知れた事だ。だが、まずは確かに詫びねばならんようだな。一切の権利などないまま口出しし、足りない情報のまま判断し、一方的に糾弾したことについては謝罪しよう。申し訳なかった。どうかご容赦願いたい」

 あら、結構素直に謝ってきたのね。俺は肩をすくめて謝罪を受け入れた。

「だが、少ない情報から判断してしまった事は我々の先走りではあるが、同郷の女性の危機と感じたのだ。それを見過ごすことはどうしても出来なかった。まして、その少ない情報で得たのは彼女らの雇用主である君もまた日本人であるという事だ。同じ日本人が同胞を食い物にしているのかと勘違いしてしまった。ご迷惑をおかけしたようだ」

 ヒーロスコルは結構簡単に頭を下げてきた。言い訳臭かったけどな。……ふむ。

「ま、ここでだらだらと我々だけで話を続けても仕方ありません。そろそろいい頃合でしょう。では離職についても一度精算しましょうか。全員の契約を今この場で解除しても結構ですよ。勿論今月の給料は先日払っておりますが、日割り計算して返却しろなどとも言いません」

 テーブルを囲む全員を見回して言葉を続けた。

「希望するなら契約を解除しよう。バルドゥックに戻ってから契約書を燃やす。勿論、行政府に預けてある物も含めてだ。希望者がいたら言ってくれ」

 急な俺の宣言に全員が黙ったままだった。

「……いないようだな。ならいい」

 またヒーロスコルに視線を戻した。苦虫を噛み潰したような渋い顔だ。

「あれだけ不備を指摘されたにも関わらず誰も契約解除を申し出ませんね。納得ずくという事です。では、これ以上私どもの内部事情に関わるのをご遠慮願います」

 俺はそう宣言すると今日初めてソファに寄りかかっておもむろに足を組み、右手の肘を肘掛についてじゃんけんのチョキをするように形作って頭の横に立てた。ミヅチがすかさず駆け寄り開いた人差し指と中指の間に玉羊羹を挟んだ。火のついたタバコじゃないところが締まらないが玉羊羹の端を歯で噛みちぎり、つるんと出てきた羊羹ヨーモを食って糖分を補給した。

 なぜだか知らんがヒーロスコルとファルエルガーズがちょっと羨ましそうな顔をして見ていた。よく気が利く奴だろ? 玉羊羹を包んでいたゴム風船を後ろに控えていたミヅチに渡すと、目の前の二人はまだ彼女を目で追っていたらしい。目の角度からして尻でも見てるのか?
 確かに顔つきはエルフの血も入った非常に整った顔だし、プロポーションだって十六の割にはいい方だが、あの肌の色を受け付けるとは、あんまり趣味良くねぇな。顔のでかい傷はともかく、薄蒼い紫色の死体みたいな感じなんだぜ。

「では、バストラルさん。貴方の件です。当グリード商会に就職をご希望とのことですが……」

「ええ! お願いします! 言われた事は何でもやります! 是非、俺、私を雇ってください!」

 話が変わるとバストラルは身を乗り出して来た。ファルエルガーズとヒーロスコルはどう思うのだろう? 一応確認しておくか。

「ちょっ、ちょっと待って下さい。ファルエルガーズさん、ヒーロスコルさん。彼はこう言っていますが、問題はありませんか? もし問題あるのであればこの話は続けませんが」

 俺がバストラルから目を外し、二人を見つめるとファルエルガーズがぼそぼそと答えてきた。

「……問題は無い。日本人が奴隷階級に身をやつしているのを座視出来なかった。何か商売をさせて救ってやりたかった。勿論、掛かった費用は返して貰うつもりだが」

 そうか、なら問題は無さそうだな。ヒーロスコルもそれを聞いて頷いている。だがな、気持ちや言いたい事は解るが、あんたら、二人揃って残酷だな。転生ではなく、普通にオースに生まれついた人なら関係ないし、何とも思わないって事だろ? 俺が憤慨しているのはその考え方じゃない。考え方自体は理解出来るつもりだし、俺だって似たような事を思いもするだろう。俺が思ったのは、ゼノムばかりかズールーやエンゲラに聞かれる可能性のある場所でよくそれを口に出来るな、という事だ。

 まぁ、感じ方や考え方は人それぞれという事なんだろう。今のセリフだって、聞く人が聞いたら、同郷人に対して暖かい考えの持ち主なんだな、と思うかも知れない。まぁ、別にどうでもいいけど。

「もし、当商会で採用、という事になった場合、ファルエルガーズさんが立て替えたとおっしゃる費用については私が立て替えても結構です」

 何しろ若いのを使って散々荒稼ぎしていますからね。俺にもこのくらいの嫌味を言う権利くらいはあるはずだ、と思ったがそこは言わなかった。後で言い過ぎだってミヅチやゼノムあたりに注意されるだろうしな。

「……しかし、うちの商会の雇用契約は今お聞きの通り穴だらけです。現状の契約者はそのままで良いとしても、新規に採用する方にまでそれを押し付けるのも変な話です。……それ以前に貴方は何を以て役に立てますか? 因みに、店員は間に合っていますし、お得意様への配達も今のところ問題を感じていません。ですので、当然ながら警備員として雇い、私たちと一緒に迷宮に挑んで貰う事になりますが……」

 転生者の日本人を店番で使うとか、勿体無くて出来る訳ねぇ。さっき見た鑑定だと今のところ何の役にも立ちそうにないが、若いんだし何年か鍛えりゃ、男でもあるからグィネよりはマシになるんじゃねぇか? 今のところ売上(利益ではない。毎月の給料や迷宮への入場税、迷宮内で使う道具類、消費する通常の食料は俺が全て賄っているのだ。と言っても売上の粗利率は99%とかあるだろうけど)の2%というボーナスを六人にそれぞれ払っている。売上から合計12%の支払いだ。20%、場合によっては25%くらいまでは許容範囲だと思っているから多少人数を増やす分には問題は無い。

 無いのだが、支払いは出来るだけ抑えたい。同時に古くからいるメンバーに対して納得もさせねばなるまい。ミヅチのように実力が飛び抜けて高ければ納得もされるが、彼の場合、つい先日まで奴隷だったと言うし、レベルだって相応だ。最初から同等に扱うのは難しいだろう。

「ぐ、さ、最初は荷運びでも何でもします! 武器だって扱いを覚えるように努力します!」

「魔物と戦った事はありますか?」

 ねぇだろうけどな。一応な。

「それは……ありません。でも、やります! 俺は、やらなきゃいけないんだ。絶対、絶対に金を稼いで……」

 へー、何やら目標もありそうだ。永遠に俺の手下でいることはないかも知れないが、何も目標がない奴よりは余程いいだろう。金を稼ぐ、という解り易い目標も素晴らしい。問題はそれが口だけじゃないかどうかという所だ。こればっかりは「嘘看破ディテクト・ライ」でも引っ掛らないしな。

「当面は武器の扱いや訓練等、地味なものになると思いますよ? また、迷宮の中では私を含め、先輩の言う事は絶対です。反抗や反論は許しません。口論しているだけで時間も経過し、危険も迫りますからね」

 このセリフは初めて言うな。だが、そろそろ必要なセリフだろう。

「それは勿論です! 何でもお言いつけください!」

 暫くバストラルの顔を見て、真剣にこちらを見つめていることを確認し、ラルファ、グィネ、ゼノム、ベル、そしてトリスの顔を見た。ま、いいか。

「解りました。バストラルさん、貴方を雇いましょう。待遇などは別に話し合って決めるとしましょうか」

 心配そうな顔つきでいたバストラルは満面の笑みを湛えて「よろしくお願いします!」と礼を言って来た。ラルファは俺の視界の隅で息をついていた。自分の動きが全くの無駄にならなかった事に安堵したんだろう。相変わらず馬鹿だな。お前。転生者を引き止めておいたことは大手柄だよ。連絡の有無とは異なるさ。

「さて、ファルエルガーズさん。彼を解放するのに掛かった費用はいか程でしょうか? 立て替えましょう」

 俺がそう言った時だ。

「あー、少し待ってくれないか? 行き掛かり上、私たちは彼を解放したが、きちんと見届ける責任があると思っとる。だいたい、迷宮に挑むと言っても当然そこは危険なのだろう? 若い女性も多いし、色々と危ないんじゃないのかね?」

 そうだよ。危ないよ。

「……だからこその命令服従ですし、それなりの報酬です。既にご理解頂いたものと考えていたのですが……」

「それは理解しているつもりだ。だが、せっかく知り合った友人がみすみす危険に足を踏み入れるのを黙って見ているというのもな……性に合わん」

 ……もう俺には半眼になって見つめることしか出来なかった。

「ヒーロスコルさん、先程から黙って聞いていれば、一体なんなんですか? 偉そうに。うちのグリードは最初から今の今まで敬意を持って応対しておりました。貴方たちに説明する義務もないのにですよ? 元日本人だからとかそうじゃないとかそんな事、何の関係もないじゃないですか」

「止せ、トリス」

「いいえ、アルさん。もう黙ってられません。ファイアフリードへの躾の件もそうです。『体罰』がどうとか仰っていましたが、そんな事我々の内部の問題です。確かにみっともないですが、今躾けなきゃいつ躾けるんですか。彼女はそれだけの心配を掛けたのです。理由は関係ありません。連絡する方法は幾らでもありました。それを怠ったのが問題です。他人の目の前だろうがやる時にはやるべきです。ラルの為にも必要なことです。アルさんにとって貴方たちとの関係や印象よりラルのこれからの人生の方がずっと大切だと考えている証拠です。大体、『正座』くらいで体罰とは『おかしくてヘソで茶が湧きますよ』」

 あー、命に関わる命令以外服従だったよね? 君ともその契約を交わしているよね? 序でに言うと、ラルファとグィネに正座させるより恥ずかしいんだけど、これ。

「そもそも、日本人がどうとか、今更そんな事言ってて恥ずかしくないんですか? 私たちはもう日本人なんかじゃない。三十九人揃ってあの時死んだじゃないですか。これから何十年かこのロンベルト、オースで生きて行くんです。確かに同郷の人間が無茶な契約で縛られていそうだから助けようという、そのお考えはご立派です。なかなか出来る事じゃないとも思います。実際に奴隷のバストラルさんも救っているようですしね。だからと言って、何ですか、その偉そうな物の言い方は」

「おい、トリス」

 いい加減止めさせなければ、と思って口を開きかけたとき、反対側からベルが手を伸ばして俺の左腕に手を掛けた、ベルの顔を見ると冷たい表情でファルエルガーズたちを見ていた。コーロイルよ、お前もか。だがな。

「トリス、いい加減にして暴言を謝罪しろ。ヒーロスコルさんはファルエルガーズ伯爵の騎士だ。ましてファルエルガーズさんは同様に騎士にして伯爵閣下のご長男であらせられる」

「生意気な事を申し立て、申し訳ありませんでした。どうかご容赦願います」

 俺に強い口調で言われ、トリスは沈黙し、続いて俯いて謝罪した。

「うちの若いのが申し訳ありません、大変失礼いたしました」

 うへ、どっかのヤクザの親分が言いそうなセリフだわ。
 って冒険者でもあるし元々あんまり変わらんか。

「どうかお気を悪くしないで頂きたい」

 そう言って頭を下げた。

「ですが、今カロスタランが申し上げた事をよくお考え下さい。どうも貴方がたお二人は未だ日本人の気質を持っていらっしゃるとお見受けします。その気骨は大変にご立派だと思います」

 そう言って微笑んだ。現代日本人の価値観で行動するような人がいるとは驚いたけど、そんな人がいたっていいだろう。むしろ、十六年もオースに生きてきて未だその価値観を保っているのは大したものだとすら思う。それによって救われた人だって目の前にいるんだしな。

「確かにそのカロスタランさんが仰った通りです。無礼でした。日本人と話しているとどうにも癖が抜けず、申し訳ありませんでした。済みませんでした」

 ヒーロスコルはそう言って頭を下げた。いや、別にいいさ。

 
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