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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第一部 幼少期~少年時代

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第十六話 幼少期の終わり

 5年経った。

 俺は6歳になり、鑑定の技能レベルはMAXの9、MPは5284にまで成長した。昨年からは剣の修行も開始された。
 自分で言うのも何だが、魔力に関しては超人レベルと言っても過言ではないだろう。

 魔法の技能レベルも四大元素がそれぞれ5、無魔法は6になっている。
 シャルは火と水、あと無魔法が5レベルだったので、既にシャルを超えている。
 尤も実力は隠すようにしているのでシャルよりちょっと劣る程度だと思われている。
 それでも充分に異常なことらしいが。

 しかし、自分自身のレベルは2だ。
 1しか上昇していないのには訳がある。
 鑑定技能レベルが8になったとき、自分自身も含めて全ての経験が数値となって見えるようになった。
 MAXの9になったとき(何故MAXか判ったかというと、レベル表記が9ではなく、MAXと表記されたからに過ぎない)、次のレベルに上昇するまでに必要な値もわかるようになったからだ。

 自分のレベルが1から2に上昇するのに必要な経験値は2500だった。
 因みに、一生懸命修行に励み、剣を握る掌の肉刺をいくつも磨り潰した日で2くらい経験値が上昇する。普通に肉刺をかばいながら修行した場合は1だ。
 その為、5年もかけてやっと2になったのだ。
 レベルアップした時には満遍なく能力が上昇すると思っていたのだが、MPが5上がり、筋力が1上がった。正直な話、MPは上昇しなくても各能力値が上がって欲しかった。

 満遍なく上がると思い込み、レベルアップが近くなるとワクワクしていた自分がバカみたいだ。
 精神年齢で50歳を過ぎているのに自分のレベルアップが待ち遠しくて仕方なかった。
 その日の剣の修行をしていると急に剣が少し軽く感じられた瞬間があり、予感がしてそっと自分を鑑定してレベル欄が2になっていることを確かめ、見慣れた筋力や耐久などがほとんど変わっていなかったことに落胆した瞬間が昨日のことのように思い出される。

 その日の夜に魔力を連続で流している時に、鑑定のレベルアップのサブウインドウに書いてあることが急に理解できた。
 サブウインドウには『レベルアップ時にはその直前のレベルでよく使用した能力のうち1番目から6番目の』と書いてあった。
 筋力とMPしか使ってなければその他の能力は上昇するはずがない。
 俺は今まで一度もHPが減った経験はないし、素振りしかしていないので誰かを傷つけたり回避運動を取ったこともない。
 当然、素振り中に目標を変えたり、走り込みなどもまだしていない。
 今後、その辺りをどうするかは課題だ。

 それはともかく、小魔法キャントリップスを複数使えない期間が長かったので、自然と夜は0時くらいに一度目が覚める体質になったのは助かった。
 そうなるまでには1年近くかかったのだが、今は確実に夜中に目が覚める。
 そして、無魔法の魔力放出を使って一気にMPを0にして気絶するがごとく眠る。
 これを繰り返してMPはものすごく伸びた。

 なお、ファーンのMPは予定通り329まで成長し、ミルーも855ポイントにまで成長している。
 この二人のMPが10くらいになった時点でシャルはあまりの魔力増加に驚いていたが、何を思ったのかすぐに表情を引き締めて魔力を流す修行を継続したのが印象的だった。
 その夜、ベッドの上でヘガードに子供たちの魔力上昇について興奮しながら報告し、仕切りに仮説を立てていた。
 ヘガードは黙ってそれらの話を聞いていたが「サーマート爺さんはそんなに魔法に明るくはなかった筈だ。だが、魔力が増えることは子供たちにとって良い事だから今の修行を継続したほうがいい」という事を言っていた。

 その時俺はまだ赤ん坊だったので両親の部屋で寝ていたから聞けたことだ。
 かなりヒヤヒヤしながら聞いていたが、話が俺にまで言及しなかったのでホッとした記憶がある。

 その日以降、魔法の修行は誰にも見られないように母屋の中の閉め切った領主執務室(屋根裏部屋だと思っていたが執務室だったらしい)で行われるようになったので両親にはいろいろと思うところがあったのだろう。

 俺にとっても都合がいいので助かった。ただ、屋内であるため火魔法についてあまり実践の機会がなかったので結局ファーンは火魔法を使えるようにはならず、ミルーも着火の魔法が精一杯だ。

 ファーンは既に13歳になろうとしているのでだいぶ前からMP増加のための修行は止め、本格的な魔法修行に移っているが地魔法と水魔法、無魔法しか使えない。
 これでも攻撃系統の魔法は使えるし、治癒も出来る。また、レベルも順調に上がっており、地と水は3、無魔法は4レベルになっている。
 低く感じるが、修行だけでまだろくに実戦もしていないのでこれでも十分に異常だ。MPがふんだんにあるので修行時間が多く取れるのが要因だろう。

 ヘガードは充分に満足しているようで、治癒魔法も使え、剣も人並みに使えるのであれば今後、村を守り、戦争でも死ににくくなるので、領主としては理想的だそうだ。
 来年には成人前だがウェブドス侯爵の騎士団に従士として入団させ、2年の修行の後、正式に国から次期頭首として認定されれば適当な嫁を貰い家督を継がせたいらしい。

 一方、ミルーの方は10歳以降もなぜか魔法を使い切ることに執着している。
 必ず午前の魔法修行の終わりに魔力を流してMPを使い切っている。
 既に1年くらいやっているが10歳の誕生日以降増えたMPはたった3なので、800以上もMPのあるミルーにとってはあまり意味のある修行だとは思えなかったが、本人がこだわりを持つこと自体は悪くはないので放って置かれた。
 だが、シャルから「魔法を使える者は常に魔力の半分程度は、余程の事が無い限りいざというときの為に残しておくものだ」という、ある意味での常識を聞き、最近はMPを使い切ることに迷いが見られる。
 ミルーの魔術技能のレベルは地魔法が4、水魔法が4、火魔法が1、無魔法は5と、ファーン以上の才能を見せているが、これもファーンの3倍近いMPがなせる連続修行の成果だと思う。
 ミルーはどうやらシャルのような魔法使いに憧れているらしく、魔法の修行に熱心だが、憧れている母親の言う事は何でも聞くようで、剣の修行も怠ってはいない。

 俺は早くから全ての四大元素魔法を習得したので全元素と無魔法を全て組み合わせて使われる初歩の魔法の『アンチマジックフィールド』を最初に覚えさせられた。
 理由は魔法の修行で生成される土くれや水を『アンチマジックフィールド』で消すためだ。
 この『アンチマジックフィールド』の魔法はMP消費にも非常に有効で(全ての系統の魔法を同時に使うのでレベルが低くてもそれなりにMPの消費は大きい)、独自に改良を加えていまでは5000以上のMPでも10分弱で空に出来るし、ものすごく微量だが全属性に経験値も入る。

 また、ファーンは既に大人顔負けの剣の腕を持っているが、ヘガードに言わせればまだまだだそうだし、ミルーも剣は相当に上達しており、修行内容は既に木刀での模擬戦を従士たちとしている。
 俺は修行を始めてから1年ほどしか経っていないので手に肉刺を作り、剣道を思い出しながら素振りの毎日だ。本当は銃剣道の方が得意だったので短槍を使いたいのだが。

 今ではヘガードもシャルもMP増加の原因である「幼少期のMP使用における成長」をほぼ完全に見抜いている。
 だが、一般的な魔法使いであるシャルのMPが44である(加齢によりMPが増加した)ことを考え、当家の秘伝とする考えのようだ。
 MPの正確な値はステータスオープンでは見ることが出来ないが、シャルは自分の魔力総量や使える魔法の消費魔力からかなりの精度で見当をつけているようだ。
 しかし、俺についてはいまいち掴みかねているらしい。
 自分の百倍以上のMP総量を推し量るのは難しいだろうな。

 とにかく、当家の魔法修行については門外不出の扱いを受け、ファーンやミルー、俺に対しても「絶対に自分の魔力総量を悟られないようにすること」と「小魔法キャントリップスからでない魔力と魔法の修行法に関して絶対に口外しないこと」をこれ以上無いほどの真剣さできつく言い渡された。

 家族のことはこれくらいにして、さらに判明した社会的なことを述べよう。
 バークッド村の人口は約430人で領主であるグリード家を含めて62戸の家がある。
 領主の下には、従士として平民の自作農が8戸あり、軍人兼農家となっている。
 その他、自由民としてシェーミ婆さんと猟師を営んでいる狼人族のケリー一家がある。
 残りは全て農奴だ。村には商店や宿、酒屋などはない。
 そのあたりは宿を除き、全て自由民のシェーミ婆さんが治癒院のかたわらで経営している。
 村に来た人間が宿泊する場合、グリード家か従士を務める平民の家に宿泊する。

 農奴は自分の所有者である自作農や領主の許可を得るか、奴隷階級から解放されるまで引越しや移民などについての自由はない。
 しかし、土地以外の財産については持つことは出来る。
 定期的なのかは判らないが、給料も出ているようだ。
 そして、結婚はおろか自宅建物や衣服や農機具など、普通に生活するうえで必要なものについて、ほぼ全て農奴個人または農奴の家庭の財産にすることについて問題はない。
 また、財産を配偶者や子供などが相続することについても問題はない。
 所有者の異なる農奴同士の結婚や、生まれた子供の所有権などまだ不明点は多い。

 奴隷という言葉からイメージされるような陰惨で過酷な労働が課される事はまずない。
 奴隷はそこそこ安価に購入出来るらしいが、それでも奴隷を所有していない一般的な平民の自作農でも相当切り詰めた生活を数年した上でないと購入資金を贖う事は出来ないらしい。
 折角買った農奴を使い潰すような事などもってのほか、と言う事だろう。
 イメージとしては現代日本の小作農だ。
 地主に大部分を搾取されているような悲惨な境遇ではなく、どちらかというと自作農が経営している農業会社で働く従業員のような感じだろうか?
 現代の感覚で言うと重労働でブラックであることは間違いないが、外が暗くなれば農作業は出来ないため、夜は確実に休めるのだ。

 グリード家でも数戸の奴隷は所有しているし、今、村にいる奴隷階級以外で奴隷を所有していないのは自由民の2戸だけだ。
 つまり、バークッド村の住民の8割以上が奴隷だということには、知ったときにちょっとだけショックを受けたものの、それが普通のことらしいので、俺は奴隷階級に転生しなかった幸運を喜んだ。
 なにしろ、奴隷階級だと一生もしくはかなり長い間生まれた土地に縛られそうだからな。

 奴隷は税を納めることはない。
 税を納めるのは自由民以上の義務だ。
 自由民で一人当たり金貨1枚ということらしいが、その価値が良く判っていないので高いのか安いのか、妥当なのか判断がつかない。
 平民は所有している畑の面積で税が課せられる。
 基本的には全ての耕作地で小麦を栽培していると看做され、収穫量の6割税が掛けられる。
 収穫量は昨年度の収穫量を基本値として計算される。
 新たに開墾した耕作地は開墾後5年間は税が免除される。
 また、所有している奴隷に対する人頭税もかかるようだが、金額までは分からない。

 領主は徴収した税のうち6割を更に上の領主へと納税する。
 残った分を生活費や所領のインフラ整備、戦争時に使う馬の飼育や従士の育成などに充てると、恐らく手取りはたいしたことはないであろう。
 勿論そこらの豪農程度とは比べ物にならないが。
 数年おきにあると言われている隣国のデーバス王国との小競り合いの軍費も大きな出費だろう。

 俺が集められた情報はこんなものだ。
 情報収集も大切だが、今は今後一番大切な資本となる体を作るときだとの判断から、魔法の修行と体を鍛えることに集中していた5年間だった。
 それでも小麦の収穫時期に年端も行かないような奴隷の子供たちや年寄りが扱き棒を使って手で脱穀しているのを見かねて千歯扱きだけは作った。
 本来江戸時代の日本で発明されたものだが、脱穀の能率は飛躍的に向上したのでヘガードからも大変褒められた。



・・・・・・・・・



 ミュンの様子は毎日観察しているが全く怪しいそぶりを見せることなく、俺に尻尾を掴ませない。
 根掘り葉掘り聞いて回って怪しまれるのも得策ではないので、ゆっくりと慎重に、それと悟られないように情報を集めた。
 5年間の調査でミュンが当家に奉公を始めた経緯について解ったことはいくつかあったが決定的な情報は未だ得られていない。
 ミュンは8年前、つまり俺が生まれる2年程前にあった、いつものデーバス王国との国境線の小競り合いに当家が駆り出された際に、従士のトーバス家の家長であるダングルに拾われた戦災孤児であったらしい。

 ダングル・トーバスは当時50代になろうかというおっさんであるが(今は57歳で完全無欠な親父である)、その前の戦で一人息子を亡くしており、そのままだと家系が断絶することは明らかであった。
 既に両親は他界しており、彼の妻も俺の祖父さんが持ち帰った流行病で亡くなっていたため、寂しかったと言うのも多少は影響があったのだろうか?
 小競り合いの収束後の戦果確認で戦場跡の調査に行ったダングルは兵士の死体の傍でぼうっと佇むミュンを発見し、連れ帰ったのだそうだ。

 このオース世界では養子に家を継がせることや、婿を取り家督を禅譲することは一般的だ。
 ダングルにはそういった考えもあったのだろう。とにかく当時成人直後の(多分偽装していたのだろう)ミュンを連れ帰り、自分の養女として引き取ったのだ。
 ヘガードは同情心もあったのだろうが、メイドとして奉公させることを許し、いずれ他の従士の次男でも婿を取らせる腹積もりだったようだ。
 俺の予想では従士のデュボア家の次男であったダイスと結婚させようと考えていたのではないかと思う。

 しかし、ダイスは今から4年前に他の村の平民の娘と結婚してその村に婿入りしてしまったので、ミュンは未だに一人身である。
 ステータスウインドウでは22歳なのでまだ結婚適齢期ではある。
 彼女は粛々とメイドを続け、誠心誠意働いているように見えるが、依然としてステータスの偽装は続いている。
 また、たまにだが鑑定で観察すると数十~数百程度だが経験値が増えていることもある。
 どうやってそんな経験を稼いでいるのか興味は尽きない。

 
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