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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第一部 幼少期~少年時代

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第十五話 攻撃魔法と間者

2013年9月16日改稿
 翌日の朝の魔法修行は、ゴブリンの死体処分の為、中止になった。残念ではあるが死体を魔法で焼却するとのことで、実はどのようにするのかという興味からちょっと楽しみではあった。

 昨日と同じメンバーにシャルとファーン、ミルーの3名を加えて村を出発した。ファーンは軽装ではあるが剣を帯び、自分で歩いていく。ミルーは俺よりも大型の背負い籠でヘガードに背負われている。俺はショーン、ラッセグ、ダイス――全員父親に仕える従士――の3人に交代で背負われている。昨日の現場まで順当に行けば1時間半程度のはずだが、今日はファーンが同行しているためにちょっとペースが遅いようだ。

 ファーンはしきりにヘガードや3人の従士に昨日のゴブリンとの戦闘について訊ねているが、ミルーはいささか退屈そうだ。俺は適当に鑑定をしながら籠に揺られていた。鬱蒼と茂る木々の間を摺り抜けること2時間程で昨日の戦闘の場に到着した。既に何らかの動物にゴブリンの死体は囓られている様で、柔らかい腹の部分が食い荒らされていた。

 ヘガードと従士たちはゴブリンの死体を一箇所に集めると、その脇に30センチほどの穴を掘った。これで準備は完了らしい。たいして大きくもない穴なので穴掘りの時間を入れても20分ほどだ。シャルは全員に充分離れるように言うと、子供たちに今からやることをよく見ておくように念を押した。当然だ。見逃せるはずもない。

 死体に掌を向け、指を広げたシャルの手がぼうっと青い光を放つ。

 掌から死体に向けてかなりの勢いで炎が吹き出した!!

 炎は一気に死体を焼いていく。

 シャルは真剣な表情で手を向ける方向を調節して満遍なく死体に炎が吹き付けられるように動かしている。魔法の炎は普通の炎とはやはり違うのだろう、死体のシャル側だけでなく、裏側にも火が回っているようだ。肉が焼ける匂いが不快だが、これは我慢するしかないだろう。ファーンとミルーも顔を顰めつつもシャルの手から噴出する炎を見ている。

 5分程続けるとシャルは魔法を止め「ちょっと休憩ね」と言って子供たちのところにやって来た。ヘガードたちは立ち上がり周囲の警戒のため二人ひと組でこの周りを巡回するそうだ。男達が巡回に出るとシャルは、

「今のが攻撃によく使われる魔法『フレイムスロウワー』よ。貴方達はまだ使えないでしょうけれどここでちょっと魔法について勉強しましょう」

 と言い、早速講義が始まった。

 魔法には大きく分けて5系統あるという。地、水、火、風、無だ。そのうち四大元素魔法とも言われている地水火風は読んで字の如くそれぞれの元素を発生させる魔法だ。例えば先ほどシャルが火を出していたが、あの炎は火魔法で現出させたものだ。残る無魔法だが、これだけは特殊で地水火風にとらわれないいろいろなことが出来る魔法だ。多目的魔法とでも言った方がしっくりくる。

 無魔法以外は単独で使うと各元素を放出するだけで、それ単体で使われることはあまりないらしい。例えば火魔法がどんな強力でも火魔法だけで魔法を使うと単に火が出るだけだ。当然火魔法の実力が上昇し、地力が上がれば出せる火の規模は大きくなるが、あくまで火を出すだけで、それを操れるわけではない。

 魔法で現出させた元素を操るためには無魔法と組み合わせて使用しなければならない。先ほどシャルが使った『フレイムスロウワー』の魔法は火魔法と無魔法の『固め』と『持続』との組み合わせだそうだ。因みに『固め』は魔石の結合にも使われる。つまり『フレイムスロウワー』の魔法は火魔法で火を出し、出した火を一方向に『固め』、それを『持続』させることで実現していることになる。

 とにかく、何らかの四大元素魔法を自在に使おうとするのであれば、無魔法の上達は必須であり、一番重要な魔法である、と言える。そもそも、魔法の修行で魔力を流す練習をしているのはこの無魔法を習得させる為らしい。

 通常の魔法の修行は魔力の流れを感知する所から始める、と以前言ったことがあるが、シャルが魔力を流す修行から始めたのには訳があった。魔力感知は小魔法キャントリップスだからだ。従ってMP消費による限界が発生しない。それでは曽祖父の言葉に反してしまう。小魔法キャントリップスは修行回数に限度はあるものの、MP消費の限界を迎えて眠り込んでしまったり、同様に腹が減っている時など、誰かの持ち物を奪ってでも食べようとしないからだ。しかし、普通はMPの量の関係で成人してから魔法の修行をすることが多いらしいので、大方、妙な気を起こしてそれを抑えられず異性に襲いかかったり、トイレに駆け込んだりする不心得者が出たことが本当の理由じゃないかという気もする。

 ここまで説明すると、いつものように魔力を流す修行をする、とシャルは言う。村の外で、且つゴブリンが出るような場所で眠り込んだら危険だと思うのだが、シャルはどうせ子供達は起きていても戦闘の役には立たないから大丈夫だと言い、死体を焼くのに休み休みやるからまだ時間は掛かるからと修行をさせられた。俺たちは眠り込むと傍の木の根元に横たえられた。

 起こされると、何度も念入りに焼いたのだろう、ゴブリンの死体は骨だけになっていた。もうこれで魔物や肉食の獣のエサになることもないだろうと、ヘガード達は穴に骨を蹴り込むと上から土をかぶせた。まだ昼を多少過ぎた位の時間のため、簡単な昼食を取ると今日は帰ろう、ということになった。

 時間的な余裕もあるので皆ゆっくりとした足取りで歩いている。一時間も歩いたろうか、小休止となった。皆、座り込んで革袋から水を飲んでいる。そう言えば、昨日はこんな時にゴブリンが襲ってきたんだよな、とか思っていると本当に襲撃を受けそうな気がしたので、それ以上考えるのを止めた。代わりに魔法の組み合わせについて考える。

 四大元素魔法と無魔法を組み合わせて魔法を使うのであれば、例えばこんなのは出来ないだろうか? 先ほどの『フレイムスロウワー』の魔法に水魔法を更に併せて、温水シャワーの魔法、とか。一見くだらなそうだが、これが可能ならいろいろ組み合わせて便利なことが出来そうだ。

 早速シャルに聞いてみると、そう言った考えは既に有り、いろいろな組み合わせも研究されているそうだ。当たり前か、誰でもすぐに気がつきそうだもんな。だが、シャルによると各魔法に込める魔力の量を調節することで同じ組合せでも別の効果になったりするので研究課題は尽きないらしい。

 小休止は終わり、また籠の住人になる。

 一時間ほどで村に帰り着いた。



・・・・・・・・・



 ファーンとミルーは夕方まで剣の修行らしい。あんなに歩いて疲れているだろうに、本当に偉いなぁ。

 家に帰り時間が出来たので適当に鑑定をする。5分に1MPづつ回復するので最近は空き時間が出来ると鑑定をするようにしていたのだが、自分を鑑定すると鑑定のレベルが上がった。鑑定レベル7で保有している技能の鑑定も出来るようだ。

 さて、これで今まで自分の中で懸念事項となっていたことを確かめられるな。俺はおもむろにミュンを鑑定する。

【ミュネリン・トーバス/19/2/7427 ミュネリン・サグアル/2/12/7409※】
【女性/21/11/7409・普人族・トーバス家長女※】
【状態:良好】
【年齢:19歳※】
【レベル:9※】
【HP:84(84) MP:9(9)※】
【筋力:11※】
【俊敏:18※】
【器用:16※】
【耐久:10※】
【特殊技能:風魔法(Lv.2)※】
【特殊技能:無魔法(Lv.3)※】
【特殊技能:偽装(Lv.5※)】

 ふふん、まぁそんな所だろうな。
 トーバス家は鑑定のサブウインドウではグリード家従士となっており、曽祖父であるサーマートの時代から仕えていた事が判り、問題は無い。しかし、サグアルの方はこうだ。

【サグアル家:デーバス王国従士。叙任日は7247年3月17日】
【勃興:戦闘奴隷、ベーグリー・サグアルが戦功(コーダ渓谷攻防戦における敵将の暗殺)により独立し興す。】
【現在の家督者はボンダール・サグアルで六代目】

 臭い、このメイドからは危険な香りがする。
 鑑定のレベルが上がり喜んで何でも鑑定していたから気づけた。
 結婚もしていない筈なのに名前が二つあった。そして新しいほうの名前の所属になっている。最初は実はミュンは結婚していたのかと思って気がつかなかった。しかし、トーバス家『長女』はおかしい。結婚していたならシャルのように第一夫人なり第二夫人なりになるはずなのだ。

 更にダメ押しをしたのは先日ミュンにステータスオープンを掛けたときだ。
 あのときミュンのステータスには「ミュネリン・サグアル」の名前はなかった。

 鑑定のレベルがアップしたら次に鑑定出来るようになるのは多分技能ではないか、と勝手に当たりを付けていたのだが、これは正解だったようだ。技能の詳細を見るには更に鑑定レベルの上昇を待たねばならないが、これについてはMP回復を待ちながら鑑定していればあと2~3日もすれば上昇するだろう。

 特殊技能に『偽装』が出てから鑑定項目の至る所に※印があるが、これが偽装している項目になるのだろう。状態以外全部じゃねぇか。ちなみに、技能の鑑定が出来るようになるまでは、

【ミュネリン・トーバス/19/2/7427 ミュネリン・サグアル/2/12/7412】
【女性/29/11/7411・普人族・トーバス家長女】
【状態:良好】
【年齢:17歳】
【レベル:2】
【HP:65(65) MP:4(4)】
【筋力:8】
【俊敏:12】
【器用:8】
【耐久:8】

 こんな風に見えていた。
 はっきり言ってこの時点で気づけよ、と思わないでもないが、いちいち日付まで細かくは見ていなかった。しかし、見事に偽装したものだな。

 まぁいい。
 今のところ何か問題を起こしたわけではないし、こちらに害意を見せたわけでもない。つまり、証拠不十分だ。しかし、ステータスウインドウを偽装しているだけで怪しいことは確かだろう。害意云々よりこの時点で証拠充分とも言えるが。だが、今はそれについて言及することは出来ない。

 ステータスウインドウの偽装について糾弾すれば、なぜそれが判ったのかが問題になるだろう。当然だ。だが、鑑定の固有技能についてはおいそれと明かすことは出来ない。明かせば、他国の間者かも知れないミュンにばれるし、それはバークッド村のみならず俺個人に取って不幸な未来しか思い浮かばない。

 だいたい、俺が気付けたのだって鑑定の固有技能があったからだ。それくらいミュンのステータスウインドウ偽装は完璧だろう。しかし、鑑定とステータスオープンでは表示内容が微妙に異なることは面倒だな。例えば、今回わかったことだが、保有している技能のレベルは鑑定であれば俺は自分を含めて他人の技能レベルも見える。しかし、ステータスオープンの場合には自分の技能のレベルしか見えない(つまり、固有技能と同様に技能レベルの表示が暗い赤字になる)のだ。見える部分だけ取っても鑑定のほうが有効なのだが、今まで鑑定では技能を見ることが出来なかったために、最初の鑑定が低レベル時と技能確認が必要なときのみしかステータスオープンを使っていなかった。今後は人前でステータスオープンを使わなければならないなど、特殊な場合以外はMPがあるのであれば全て鑑定で良さそうだ。

 話がそれたが、もう少しミュンの様子を見ても良いだろう。既にグリード家には数年仕えているようだし、潜り込んで来た理由も、どのような方法で潜り込んで来たかも、そもそもトーバス家の当主であるダングルが何故見逃しているのかも何にも判らないのだ。

 今判明しないことは時間をかけて調査すればいいし、偽装の特殊技能の能力範囲も知りたい。これは鑑定のレベルが上がれば判る様な気もするので時間の問題だとは思うが。

 とにかくミュンとトーバス家は要注意だな。

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