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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第一部 幼少期~少年時代

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第十四話 魔石

2013年9月16日改稿
 午後、いつものようにヘガードの背中の住人になる。
 今日は耕作地より外の林だ。
 昨日耕作地を見回った時に、切り開いた耕作地の外側はまだ未開の森が広がっていると聞いたためだ。どういった樹木が生えているのか確かめたかったし、一度はゴブリンが村の外れのケリーの家の傍まで来ているから、村の外に出ることに対するヘガードの反応も見たかったからだ。

 少し及び腰になりながら、ヘガードに耕作地の外の森について見たいと言ったところ、あっさりと了承されたので、いささか拍子抜けしてしまった。ヘガードは他に3人の大人を連れて歩き始めた。やはり完全に安心できるような場所ではないのだろう。鑑定してみると全員が20代でレベルは6と7だった。また所属は全員グリード家の従士になっている。

 村の中央部を流れる川に沿って北北東の方へ一時間ほど歩き、南西へ方向転換する。木は鬱蒼と茂っていたものの、下草は思ったほど生えてはおらず地肌が見えているところも多かった。地面の凹凸や木の根に注意するぐらいで歩行が困難というような場所ではないな、という印象だ。二時間ほど歩くと一瞬潮の匂いがした。気のせいかと思ったが、ここから数時間歩くだけで海に出るらしい。

 植生はある程度ごちゃまぜなようだ。最初に歩いた村の北方にはスギっぽい針葉樹が生えていたが、今はナラやケヤキなどの広葉樹も混じって生えている。このくらいなら生前の日本でもあったので別に不思議ではない。海の方に行くともうちょっと種類が増え、またちょっと変わった木も生えているらしい。

 大きな木の傍まで来た。ここで一休みすることになった。ここからバークッド村まではほぼ真東に1時間半の距離だそうだ。ヘガードは籠の住人となった俺を抱き上げて降ろしてくれた。掌はごつごつして剣ダコがいくつもできているようだが、丁寧に抱き上げてくれた手は温かかった。水筒として使っている革袋からヘガードに水を飲ませて貰い、喉を湿らせる。ヘガードは村を出てからずっと俺を背負っていたが、あまり疲れてはいないようだ。一体どれだけ体力があるのだろう。流石15レベルだ。しかし、領主であるヘガードが俺という荷物を背負っているのに、誰も代わろうとしないのは何か解せない。

 ヘガードに聞いてみると理由は簡単だった。ヘガードの実力が飛び抜けているため、俺を一番傍で守るのにヘガード以外だと力不足だかららしい。領主自らが重い思いをして守ることについてはヘガードは何とも思ってはいないようだ。そんな会話をヘガードとしながら休憩して20分以上経った頃だろうか? いきなり全員立ち上がり剣を抜いた。

 俺は一瞬、何が起きたのか把握できなかったが、これは、あれだろう。怪物とか魔物とかモンスターとかそんな類の奴の出現ではなかろうか? 普通の獣、と言う線もあるが、全員の顔つきが尋常ではなかった。ヘガードは皆に落ち着くように注意すると長剣を構えたまま一人で前に出る。おいおい、こんな時まで領主が前に立つのかよ。俺は後ろを今まで休憩に寄りかかっていた大木、前と左右を残った男達に守られながらそんな不満を抱えていた。

 俺の前に立っている男が邪魔になり近づいてくる相手が何者なのかはまだ分からないが鑑定で探してみる。100mほど先に20人ほどいるのが判った。ゴブリンだが数が多い。向こうもこちらに気がついているようで、歩くくらいの速さでゆっくりと近づいてくるようだ。興味を覚えゴブリンを鑑定してみる。そう言えば魔物はまだ鑑定したことがないな。

【 】
【男性/20/11/7426・小鬼人族・ファグ氏族】
【状態:良好】
【年齢:2歳】
【レベル:1】
【HP:16(16) MP:1(1)】
【筋力:2】
【俊敏:3】
【器用:1】
【耐久:2】

 ゴブリンの集団の端から続けざまに5人ほど鑑定してみると、多少の違いはあるが全員がこんな能力だった。誰も固有名を持っていないのは命名ネームドの儀式をしていないからだろう。能力的にはレベル1のファーンはおろか、ミルーより下だ。年齢も下だし、これはしょうがないのか? しかし、20人相手になんとかなるのだろうか? 俺はここで死ぬのか? まずいぞ、びびって感情の制御が効かなくなりそうだ。

 ヘガードが叫ぶ。

「ショーン、付いて来い! 俺の後ろを守れ! あとはその場でアルを守れ!」

 ショーンと呼ばれた男が俺の前から駆け出し、ヘガードのやや左後ろに着いた。そのまま50m程前進したところのちょっと開けた場所で止まる。俺を一番傍で守るとか言う話は俺の空耳だったのかよ! 俺は矢も楯もたまらず、

「ねぇ! 大丈夫なの!?」

 俺の周囲を固める2人に聞く。すると、若い方の男――こいつはダイスという名前だ――が

「大丈夫ですよ、お屋形様は元冒険者ですし、このあたりのゴブリンでは相手になりません」

 と、多少の緊張を見せながらも笑みを浮かべて言う。もう一人の男――こっちの名前はラッセグ――も

「それにショーンが後ろにいますからね、問題ありません。万が一ゴブリンが多少流れてきても我々が居ります」

 こちらは表情に幾分の余裕があるようだ。その表情を見て多少安心するものの、相手は20人だ。しかも先日のファーンとの戦いを思い出すと、相手は完全にこちらを殺しに掛かってくるだろう。今回のゴブリンたちは見たところ刃物の類は持っておらず、棍棒で武装しているようだが、流石にあれだけ離れていると長めの棍棒なのか、短槍なのかの区別はつかない。先端が光を反射していないようなので金属のようなものがついている感じはしないし、ちょっと太めな感じもするうえに、突くような構えを取っているものも見られないのでただの棒だろうが、危険なものは危険だ。

 ゴブリンの集団はヘガードとショーンが立ち止まったのを見ると一度動きを止めた様だが、すぐに一人がギャーだかギョエーだか叫んだ。それを合図に集団はヘガード達を包囲するかのように広がり、すぐに半包囲の陣形になった。

 ヘガードは半包囲が完成するより前に雄叫びを上げながら稲妻のような素早さで前進し、正面のゴブリンに剣を突き入れると、相手を蹴り飛ばし剣を抜いた。ショーンもヘガードのやや左後ろに位置しながらゴブリンに剣を突き入れる。あっと言う間に二人のゴブリンを葬るとヘガードは蹴り飛ばしたゴブリンの右のゴブリンに剣を突き入れた。ショーンも剣を突き入れたゴブリンを蹴って剣を抜くと今度は突きではなく剣を右から左に振るい、ゴブリンを遠ざけた。なるほど、ショーンは左利きなのか。先ほどの薙ぎ払いは左手一本でやっていたようだ。だから少し左側にずれていたのか。

 そうこうしているうちヘガードは次から次へとゴブリンを倒していく。ほとんど全てを一撃で突き殺す。たまに剣の旋回半径の先の方の丁度いい場所にいる相手にだけ喉を剣の先端で切り裂くだけで剣の刃を殆ど使っていない。棍棒で殴りかかってくるのを避けきれない時にだけ剣で受ける、と言うか殴られる前に棍棒を叩き、相手の体勢を崩したあとで突いているようだ。ショーンはそれをうまくサポートする位置につき、ヘガードの死角にゴブリンを寄せ付けないように防御に専念している感じだ。当然隙を見せたゴブリンには容赦のない突きをお見舞いしている。

 あれよあれよという間にゴブリンは半数の10人くらいが倒された。見ていた感じではヘガードもショーンも一回も殴られてはいない。圧倒的じゃないか、我が軍は。俺はさっきまでびびっていたのが嘘のように気分が高揚してくるのを感じた。全く何が感情の制御だよ。びびってんじゃねぇ、冷静に考えて見ろ。ヘガードのステータスで見たHPや筋力などはいま相手にしているゴブリンの10倍くらいあったはずだ。

 付き従っているショーンのレベルは7とヘガードの半分弱だが、こちらも軒並み15くらいの筋力や俊敏さを持っていたではないか。ヘガードのように剣を上手に使うことの出来る成人が、棍棒を持っているとは言え筋力から何から5歳児の女の子程度の集団に囲まれたところで蹴散らせない道理がないではないか。しかも向こうは半包囲に近い状況とは言え、ろくに連携もせず、ただ殴りかかってくるだけだ。

 見た目がちょっと不気味なぐらいで、どうと言うことはない、は……ず?

 やばい、今まで見えなかったが一匹はファーンを襲った奴のように粗末だが短槍を持っているのが見えた。槍をヘガードの方に向けながら何やら声を出している。あれが仲間への指示や命令だとすると、こいつがこの集団のリーダーなのかもしれない。慌てて鑑定してみる。

【 】
【男性/19/1/7424・小鬼人族・ファグ氏族】
【状態:良好】
【年齢:5歳】
【レベル:3】
【HP:23(23) MP:1(1)】
【筋力:3】
【俊敏:4】
【器用:2】
【耐久:3】

 うん、確かに他のゴブリンよりは強いね。劣化ミルーが劣化ファーンになった感じかな。一応、粗末とは言え金属製の武器も持っているから気は抜けないだろうが。そう思えば安心して本格的な戦闘を見ていられるな。

「ほら、大丈夫だと申し上げたでしょう? もうゴブリンを10匹もやっつけた。お屋形様はあんなにお強いんですよ」

 とダイスが俺を安心させるかのように言った。
 俺は適当に返事を返しながらヘガードとショーンの戦闘に目を奪われていた。まるで冒険活劇映画の主役であるかのような強さに心を奪われている。また1人、ゴブリンがヘガードの剣によって倒された。あ、そう言えば俺はゴブリンを1人2人と数えていたが、皆は1匹2匹と数えているようだ。この辺は日本語に近いんだよな。でも、何故匹なのだろう? まぁ、そんなことは後でいい。

 もう1人か1匹を追加で倒したところでリーダーらしきゴブリンが退却を命じたのだろう、残っているゴブリン達は散り散りに逃げ出す。こちらには向かって来ないようで安心した。ダイスが俺を抱き上げて籠に入れ、ラッセグがヘガードの傍まで運んでくれた。

 ヘガードとショーンはゴブリンの死体の傍にしゃがみ込み、ナイフで死体を切り裂いている。悪趣味だな、と思ってじっと見ていたら、俺を守っていたダイスとラッセグの二人もナイフを取り出すと、同様にゴブリンの死体を切り裂き始めた。一体何の為に何をしているのか、不思議になってそのまま見ていると、ヘガードとショーンが立ち上がり、また隣のゴブリンの死体を切り裂き始めた。

 そう言えば死体を鑑定してなかったな、と思い、端っこのまだ切り裂かれ始めていない、死にたてホヤホヤの死体を鑑定して見ると、状態の欄が死亡になっているだけであとは生前と一緒だった。ついでに切り裂かれた死体を鑑定すると

【死体(小鬼人族)】
【小鬼人族】
【状態:良好】
【生成日:19/3/7429】
【価値:10】
【耐久値:1】

 と出た。無生物を鑑定した時のウインドウ項目になっている。どう考えても死後ヘガード達に切り裂かれてこうなったとしか思えない。切り裂かないで放っておけば生き返るとでも言うのか?

「お屋形様、死体はどうしましょう?」

 ラッセグが言うと

「お前がいるなら持って帰ってもいいぞ」

 と冗談めかしてヘガードが答える。

「マセキを取ったあとのゴブリンなんぞ何の役にも立たないので、結構ですよ。で、埋めますか?」

「ここから村まではそこそこあるし、放っておいても大丈夫じゃないか?」

「しかし、森トカゲが食うかも知れんぞ」

「別に放っておいてもいいんじゃないですか?」

 ゴブリンを切り裂く手を休めて、皆が口々に言う。

「よし、明日シャルに焼かせる。それでいいな」

 ヘガードが決定し、全員作業に戻った。

 帰り道で「マセキ」とやらについてヘガードに尋ねてみた。「マセキ」は「魔石」であり、本当は「魔晶石」と言うのだそうだ。これはこの世界の植物以外の生き物全てが体内に持っているもので、だいたい心臓の傍にあるのだそうだ。魔石は体内を巡る魔力が結晶化したもので、強大な生き物ほど色が抜けて透明度や大きさが増して行くらしいが、拳くらいの大きさが限界で、ドラゴンみたいな大きな生き物だとそれが2つとか3つとか複数体内に生成されることもある。さっきゴブリンを切り裂いていたのはこの魔石をゴブリンの体内から抜き取る作業をしていたのだ。見せてもらったが、いびつな形をした大人の小指の先ほどの黒っぽい結石のようにしか見えなかった。

 なんでこんな物を取るのか聞いてみたら、魔石は売れるのだそうだ。売れるからには使い道がある。薬の材料にするのが代表的らしいが、高級な道具の電池のような使い道もあるそうだ。もっとも、ゴブリン程度の魔石は魔法でいくつも固めないとそういった電池的な使い方は出来ないらしい。ヘガードはそう言うと「帰ったらシャルに魔石を結合させるところを見せてもらうといい」と言って笑った。

 あ、魔石を鑑定してみたら良かった。後でやってみよう。



・・・・・・・・・



 暗くなるちょっと前に家に着いた。ヘガードは見回りの途中でゴブリンの集団に出会い、これを撃破して魔石を回収したことをシャルに話し、明日死体を処分するので一緒に来い、と告げて自分は剣の手入れをすると言って家の外へ出ていった。

 魔石をヘガードから受け取ったシャルは中身をテーブルの上に並べ、一通り検分した。勿論その間に一つ鑑定してみる。

【魔晶石(小鬼人族)】
【小鬼人族】
【状態:良好】
【生成日:19/3/7429】
【価値:174】
【耐久値:2】

 全部で13個ある魔石は価値が微妙に異なるだけであとは一緒だった。そうか、どんな生き物から取れた魔石かわかるのか。シャルは立ち上がると戸棚から巾着のような袋を出し、そこから一つの魔石を取り出した。親指くらいの大きさで灰色をしている。形は今日取って来た物よりもだいぶ球に近い。鑑定してみると

【魔晶石】
【 】
【状態:良好】
【生成日:17/8/7428】
【価値:49621】
【耐久値:2】

 と出た。あれが固めて結合させた魔石のようだ。原材料名がないのはいろいろな生き物からとった魔石をくっつけたからだろうか? シャルは左手に今取り出した灰色の魔石を、右手に今日取って来たゴブリンの魔石を乗せると、俺に見ているように言う。シャルの手が青く輝くと同時に右手の魔石を左手の魔石の上にコロコロと転がり落とした。13個全てを左手に移すとその上に空いた右手を蓋をするように被せて揉み込むような動作をした。手を開くと魔石は1つになっていた。さっき取り出した灰色の魔石だけが左手の上に乗っているだけだ。一緒にあったはずのゴブリンの魔石は影も形もない。

 俺が不思議そうな顔で見ていることに気づいたシャルが説明してくれた。今のは魔法で魔石を固め、一つにしたのだそうだ。鑑定してみると魔石の価値が49600位だったはずだが今は51500程になっている。なるほど、結合か。夕食までもう少し間があるのでその後は夕食までシャルに魔石や魔法についていろいろ話を聞いた。ついでにゴブリンの数え方を聞くと、人型をしていても言葉を喋ったりこちらと友好的なコミュニケーションが取れない魔物は匹になるらしい。

 そのうちにミュンが食事の用意を終わらせて料理を並べ始めたので夕食を取る。食事の話題は勿論今日行われたゴブリンの集団との遭遇戦だ。ファーンが見れなかったことをしきりに残念がるが、それをシャルとミルーが笑いながらからかう。いつものように今日が終わる。

 また今晩も夜中に起きられるか不安だったが、悩んでも仕方ないのでまた鑑定を使い切って寝た。夜に起きるには起きられたが、戦闘を見て興奮して疲れたのだろう、ちょっと起きる時間が遅かったらしい。しょうがないので自然回復するMP6まで自分を鑑定してまた寝た。

 
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