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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第一部 幼少期~少年時代

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第十二話 目覚まし時計のない生活

ついにやったぜ、会話なし回。
先ほど帰宅して確認すると、お気に入り登録1000件超えてました。
嬉しいやら、吃驚して腰抜かすやらで思わず脱尿するかと思いました。

2013年9月16日改稿
 昼飯を食うとヘガードが籠を背負ってやって来た。
 親子して同じ考えかよ。

 籠に入れられるとファーンに背負われた時よりも高い視点になり見晴らしもいい。

 今日は村の集落を中心に見て回った。
 集落内に大人を見かけることは殆どない。
 一定の年齢から上は労働力として畑に出ているのだろう。
 村落の内部の地理は大体わかった。

 歩きながらヘガードにいろいろと尋ねた。
 バークッド村の経済や当家の経済状況にはじまり、通貨の単位や各種品物の相場など尋ねる事はいくらでもある。それだけではなく、もっと基本的なところ――人以外の種族や魔法、などについては俺にとってはかなり重要事項だ。

 バークッド村は、オース世界の大陸であるオーラッド大陸の西端にあるロンベルト王国の更に西に伸びる半島、ウェブドス侯爵領のジンダル半島西端にあるそうだ。緯度や経度は不明だし、オーラッド大陸の形も不明だが、新たに分かった事は多い。

 ヘガードはこのグリード家に三男として生まれたそうだ。家を継げる訳もないと、ヘガードは家を飛び出してから冒険者(!)をやっていた。そこでサンダーク公爵――王都の貴族で政治家――の三男の四女で、同様に出奔していたシャルと知り合い、一緒に冒険、というか依頼をこなしていた。冒険者というと格好よく聞こえるが、実際には何でも屋とごろつきを足して二で割ったものに毛が生えたくらいのもので、軍隊を出す程ではない魔物や怪物退治、商隊などの護衛、各種調査などが主な収入源らしい。

 特に一攫千金を狙う場合、迷宮に行くことが多いそうだ。迷宮は至るところに有り、魔物の住処となっている。そこには強力な魔物が住み着いているのでそれを討伐することによって賞金を得ることが目的なのだが、どちらかというとそういった考えで挑戦し、破れて散った冒険者の遺品が金になるのだそうだ。

 だがどこの世界にも一流、と呼ばれる人間が居るようで、冒険者にも「一流の冒険者」と皆から言われ尊敬を集める人間も多々居るらしい。一流の冒険者は並みの人間が出来ないような困難な調査や軍隊を出しても討伐が出来るかどうか分からないようなドラゴン(やっぱりいるのか)のような非常に強力な魔物を討伐したりなど、依頼の出元自体が特殊なもの(国や軍隊などの政府機関、大貴族など)であることが多いそうだ。

 それはさておき、そんな風にある意味気ままに暮らしていたヘガードがグリード家の家督を継ぐことが出来たのは、上の二人の兄が亡くなったからだ。亡くなった順に話すと、次兄はヘガードがまだファーン位の年齢の頃に村の中央を流れる川で水遊びをしている時に事故死し、長兄はヘガードが成人して街を出た5年後に起こった隣国のデーバス王国との小競り合いで戦死したそうだ。当時はヘガードの父(俺の祖父)も一緒に出陣し、重傷を負って帰還したが、一緒に流行病も持ち帰ってしまい、その際にバークッド村は結構な人死ひとじにが出たらしい。

 とにかくヘガードは家を出て冒険者をやっている時に、長兄の戦死と父親の重傷の知らせを受け、急遽冒険者稼業の引退を余儀なくされたということだ。当時長兄は結婚はしていたものの、子供はおらず、長兄の嫁と祖母は重傷を負った父親の看病の際に生還してきた父親や従士が一緒に持ち帰ってしまった流行病で相次いで亡くなってしまったそうだ。この猛威を振るった流行病とは、症状を聞くにどうも赤痢のようだ。当時既に村に居た治癒師のシェーミ婆さんが相当頑張ったらしいのだが、ある程度以上に症状が進んだ病人は助けられなかったらしい。

 また、ヘガードが一緒に連れ帰ったシャルも到着早々に治療に協力したが、こちらもある程度以上に症状が進むとどうしようもなかったとのことだ。しかし、この時の活躍で救われた人間がいたことも確かであり、そのために村人たちはシェーミ婆さんとシャルには敬意を払っているらしい。

 村落内部の地理の把握と同時に今日はこんな話をして夕方になった。

 家に戻り、晩飯を食う。
 ファーンは午後、ずっと剣の素振りをしていたらしい。
 7歳児の癖に、よくそんなこと出来るな。
 驚いたことにミルーもファーンと一緒に素振りをしていたという事だ。

 どうもヘガードの言いつけだったらしいが、そもそもは昨日俺が曽祖父をあやかって言った「必ず一日の最初に限界まで魔法の修行をし、充分休息を取った後に剣の修行をせよ。これはすぐにでも始め、最低でも10歳までは続けよ」という言葉が原因だったようだ。普通、剣の修行は7歳前後から始めるのが一般的らしい。おそらく、それ以前に始めても体が小さいので単純に筋力が低いからだろう。 

 俺の考えが足りないばかりにミルーには申し訳ない気持ちで一杯になったが、今更あれは俺の騙りでしたなどと言えるはずもないので、心の中で土下座をしておくにとどめた。幾らなんでも無茶苦茶きついことはさせないだろう。女の子なんだし。

 寝る前にいつものように鑑定を使いまくってMPを消費する。

 あ、鑑定じゃなくて魔法の修行をしとけば良かった……。



・・・・・・・・・



 翌朝も朝食を摂ってすぐに魔法の修行が始まった。
 昨日同様に魔力を通す修行だ。
 鑑定してみたら、ファーンは増えていなかったが、ミルーのMPが増えていた。

 ファーンは8歳まであと10ヶ月程だ。なので期待値では毎日1回はMPを使い切ればあと150ポイントくらい増えるだろう。8歳から9歳までだと大体120~130ポイントくらいか。9歳から10歳で60~70ポイントくらい増えるはずだ。合計で330ポイントくらいにはなるだろう。恐らくこんなにMPを持っている人はそうそういないはずだ。

 ミルーの方はもっと増える。たぶん850ポイントくらいまで行くだろう。ここまで来るともう使い切るのも大変で笑うしかないくらいだが、これで良い家へ嫁に行くことも出来るのではないだろうか。

 とにかく、MPについての問題は解消された。
 あとは魔法の習得だな。

 だが、こちらも問題はそうないみたいだ。
 正直な話、俺よりも上二人の兄姉の方が魔法との相性は良さそうだ。2人とも魔法の修行を始めてからまだ1日しか経っていないと言うのに、もう数秒で魔力を通すことが出来る。あっという間にMPを使い切って就寝だ。二人で1分もかかってないんじゃないか? 俺は今日も魔力を通すのに時間がかかる。魔力を通そうとしてからイメージが固まるまで10秒くらいかかってしまう。実はこれでもかなり短くはなっているのだが。

 3回ほどやったあと、昨日のように眠くなったふりをしてベッドまで運んで貰い、その後一人で練習してみた。流石に何回か連続でやっていると驚く程上手く行くようになった。ついでに風魔法と水魔法でもやってみる。こちらも数回連続でやってみると、その後はかなり上手に出来るようになった。まさに自転車だな。

 午後はまた昼飯を食ってからヘガードの背中の籠の住人となった。
 今日は畑を見て回るらしい。
 まずは家の傍からだ。今は3月も中旬を過ぎ、小麦の種蒔きの前の畝を作っている時期だ。見たところ、鋤と鍬が主な農機具のようだ。

 牛馬のような大型の家畜を見ることはなかった。理由をヘガードに訊ねたところ、牛馬は通常の平民が購入できるほど安価ではないことが主な理由っぽい。農耕に家畜を利用したほうが良いと意見したら、確かにウェブドス侯爵の直轄領では農耕に家畜を利用しているところもあるらしいことが判った。しかし、バークッドでは未だ開墾地が少ないため、牧草用の空き地が取れないことも家畜を農耕に利用できない理由の一つである事も判った。

 農耕に家畜を利用すれば効率が劇的に向上するはずだが、なぜ利用しているのはウェブドス侯爵の直轄地だけなのだろうか? 突っ込んで訊ねてみると経済的、空間的な理由のほかに文化的な理由もあるようだ。このロンベルト王国にはひとつの物語があった。それは、よくある建国神話に近いもので、建国の立役者且つ初代国王であるロンベルト一世の伝記とも言えるものだ。

 ロンベルト一世の存命中のある戦争で、当時のロンベルト一世の愛馬が身を挺して主人を守り、難を逃れることが出来たそうだ。そしてその難を逃れる最中に牛車を利用したのだが、牛車を牽いていた二頭の牛が体力の限り走り抜き、安全圏に逃れた時、衰弱死したという逸話があるらしい。それにいたく感動したロンベルト一世は、建国後に牛馬を粗略に扱ってはならない、ましてや重労働である農作業に使役することを禁ずるという法を発布したそうだ。勿論これは悪法であり、後にそのことに気づいたロンベルト一世もこれを撤回している。

 しかし、逸話と共に一度国中に効力を持って発布されてしまった為、なかなか牛馬を農耕に使うことは無いそうだ。興味半分でそのロンベルト一世はいつ頃の人物なのかを聞くと大体500年くらい前の人らしい。500年も牛馬を農作業に使わないとか、幾らなんでも頭がおかしいとしか思えないので詳しく聞いてみると、理由はそれだけでも無いようだ。そもそもの牛馬の絶対数が少ないことも大きな原因らしい。なにしろ、当バークッド村にも3頭いるだけ。他の村の状況もどこも似たりよったりらしい。

 そもそも、馬はこのオーラッド大陸の東が原産で、この西の地方では野生の馬なんて一頭もいなかったらしいし、牛に至ってはどうも別の大陸が原産らしい。従って価格は非常に高価で普通は貴族か隊商を組めるような商会や商人でもないと購入することは出来ないそうだ。ここで疑問が湧いてくる。ならば、なぜ増やそうとしないのか? 牛も馬も毎年妊娠・出産が可能なはずなんだが。

 ヘガードに聞くと、疑問が解消した。この世界の信仰の問題で家畜の出産を手助けすることは禁忌なのだそうだ。そのため、せっかく生まれた仔馬や仔牛は出生直後にだいたい半数が死んでしまうそうだ。生き残った半数も産褥熱などで親の乳の出が悪い場合や運悪く死んでしまった場合には、乳を出す親代わりの家畜がいないと確実に淘汰されてしまう。また、出産に失敗して死産であることもままあるそうで、それがなかなか数が増えない主因らしい。

 副次的な要因としては、そういった理由で馬や牛、驢馬といった大型の家畜は非常に高価でもあるため、略奪の対象にもなるし、戦争や紛争で死んでしまったり、おしなべて美味であることが多いので魔物の捕食対象になることも珍しくないそうだ。特に専門の管理者を置く余裕のない小作農を含む自作農の大半は、例え購入資金があったとしても、万が一の損害を考えると購入に踏み切ることは大変に勇気のいることであろうことは想像に難くない。

 ここでこの世界の信仰についても聞いてみた。少なくともロンベルト王国を含む近隣諸国では現代地球のような多数の宗教や宗派はない。宗教という言葉も無いようだ。一番近いのは日本人にはお馴染みの神道だろう。この世に存在する全てのものには遍く神が憑く。八百万の神を全て信仰しているのだ。

 今までの話や風俗から俺は既にある程度予想していたが、まさか他の宗教が存在しないことまでは考えていなかった。先日、俺の命名の儀式を執り行ってくれた司祭も、司祭とは呼ばれていたが日本人的な感覚で言うと失礼な言い方になるが、そこそこの格の神社の神主程度の存在らしい。非常に敬われるようなこともなく「実は俺の実家って○○神社なんだよね」と同級生に聞いたときに感じる程度、という意味だ。政治的に権威があるわけでもなく、宗教で民を煽動したり指導したりするわけでもない。しかし、特定の行事などには欠かせないし、その際には敬意を払われる。そんな存在だ。なので、宗教関係は面倒になるかもしれないとか全くの取り越し苦労だった。

 この日は晩飯ギリギリまで耕作地を見て回った。村の中央を流れる川の護岸工事が一切されていないことに疑問を感じたが、バークッド村開拓以来、氾濫した記録は無いとのことなので、護岸工事については急を要するものでないことは判った。

 晩飯を食い終わって、いつもの鑑定ノルマ……じゃない魔力を通す練習をし始めた時、大切な事に気がついた。

■今までの俺の一日
 ・朝起きる(MP+1)
 ・朝飯
 ・鑑定
 ・寝る
 ・昼起きる(MP+1)
 ・昼飯
 ・鑑定
 ・寝る
 ・晩起きる(MP+1)
 ・晩飯
 ・鑑定
 ・寝る

 と、食事を挟んで1日に3回MPを使い切っていた。
 しかし、今は

■昨日今日の俺の一日
 ・朝起きる(MP+1)
 ・朝飯
 ・魔法修行
 ・寝る
 ・昼起きる(MP+1)
 ・昼飯
 ・ヘガードの背中で見回り
 ・晩飯
 ・鑑定
 ・寝る

 と、1日に2回しかMPを使い切っていない。
 午前中の魔法修行は曾祖父の命令みたいな形で10歳までは続けられそうだが、問題は午後のヘガードとの領内の見回りだ。ここでMPを使い切り、晩飯までのんびりと寝て過ごすわけにはいかない。となると、夜中に一度起きるしかないのか。

 夜暗くなるとすぐに晩飯を食って寝、日の出ちょい前に起きるのが基本的な生活サイクルなので、実は夜の睡眠時間はかなり長い。冬で18時くらいには就寝し、朝5時半くらいに起床する。12時間近く寝ている。夏でも19時くらいに就寝し、朝4時半くらいに起床する。これでも9時間半は寝ている勘定だ(夏の就寝時間が早いが、流石にこの世界の人間でも夏の方が日照時間が長いことは承知しており、夏はまだ明るくても寝てしまう。朝は涼しいので作業効率が上がるから早起きする、という訳だ)。夜中0時くらいに上手く目を覚ますことが出来れば鑑定の連続使用で一気にMPを0に出来る。MPが0になれば問題なくあっという間に就寝することは出来る。

 問題はいかに0時に目を覚ますかということだけだ。体内時計なんて便利なものはあるといえばあるが、俺は前世からあまり上手く使えたことがない。困ったな。問題を先送りにして寝てしまってもいいが、これは確実に後に響いてくるだろう。出来れば早急になんとかしたい。なんとかしたいが、今のところいいアイデアが浮かばない。だからと言って放っては置けない。

 くそ。これはまずいな。ぱっと考えた解決方法は3つだけだ。

1.根性で起きる
2.目覚まし時計の代わりになるようなものを作る
3.魔法で何とかする

 1はちょっと現実的ではないが、頑張って習慣化出来れば理想に近い。
 2は自分だけに効果がないとダメだ。従って音で起こす方式は使えない。水時計しかないか?
 3は今のところどうしようも無い。聞き方を工夫してシャルに訊ねてみるくらいしか出来ないだろう。

 ここまで考えて、また抜けていることに気がついた。そう言えば、何故いつも日が出る少し前に起きられるのだろうか? 日の出とともに起きると一言で言っても窓ガラスがないので、そもそも日の出なんか感じられない。ミュンが起こしているにしてもミュン自身はどうやって起きる時間を把握しているのだろうか? これは明日ミュンに聞いてみればはっきりするだろう。

 今晩は1に賭けることにして鑑定でMPを使い切った。

 あ゛、またやっちまった。

 
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