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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第五十三話 新たな謎

7443年4月20日

 戦闘も問題なし、地図作成も問題なし。用心するのは罠の位置だけ。トリスとグィネが合流してから罠、と言うか落とし穴限定だが妙なやり方を考えついた。水魔法で水を通路に沿うように細長く、深さ数センチくらいに薄く出す。戦闘もあまり困難ではないので遠慮なく「ライト」の魔法も使う。落とし穴があればその隙間から水が流れ落ちるのが近くまで行けばすぐに判る。この方法を思いついてから探索は劇的に効率が上がった。

 そろそろ三層の地図は空白が残り二~三割だろうと思えるくらい埋まってきた。僅か一月ちょっとで半分近くを埋められたという、驚異のペースだ。一層にあった空白もほんの一部ではあるが埋めることも出来たし、二層も少しだが空白が埋まった。通り抜けるだけの一層と二層だが、グィネの固有技能のおかげでバラバラの縮尺で使いづらかった部分も少しは改善された。

 新入りのレベルも上昇した。特にレベルが低かったグィネを中心に経験値を優先的に稼がせるようにしたので彼女のレベルは急上昇している。最初に彼女にばかりモンスターを殺させる理由として「戦闘経験が圧倒的に足りないので少しでも早く殺生に慣れるため」と言うアホくさいことを言ったのだが、皆それなりに心当たりがあったようで納得していた。

 特にラルファが、

「ああ、それ、解るわ。私も小さい頃ゴブリンとか殺すの嫌だったしねぇ。生きている相手に躊躇なく武器を振れる様になったのって結構時間掛かったから……。初めての時は無我夢中だったから出来たけど、それから暫くは鉈を振り下ろすのが怖かったしね」

 と言っていた。お前、子供の頃は鉈使ってたのか。斧よりは軽いだろうし、別にいいけどさ。ベルも、

「そうですね。私が初めて殺したのは弓で撃った野兎でしたけど。ちょっと嫌でした。食べるためには仕方なかったから直ぐに割り切りましたけど」

 と言った。転生者だけが全員「そりゃ共食いだろ」というような顔で見ていたがゼノムやズールー達はそれぞれの顔で頷いていただけだった。その後、ベルは

「マルソー、あなたはどうだった? 同じ女性として意見が聞きたいわ」

 とエンゲラに振っていたが、

「私は最初の殺生が迷宮でしたから……当時のご主人様の命に従っただけですので、特には何も……」

 と平気な顔で返していた。まぁオースの人は街中で育ったのでもない限り子供の頃から動物は沢山殺し慣れている。家で飼っている鶏を絞めたり、近所で飼っている豚の屠殺を手伝ったりなどは当たり前のことだ。バークッドでは狩りはドクシュ一家の専売特許だったが、専門の狩人がいない村なら領主や従士達がパトロールのついでに獲物を狩ることくらい日常的に行われているであろうことは想像に難くない。トリスも

「ああ、俺も白毛鹿を狩ったなぁ。ありゃ旨かった。だけど、従士の矢が当たった白毛鹿に止めを刺すときは最初の頃は何度も吐いた」

 と言っていた。ズールーとエンゲラはベルとトリスの話を聞いて少し驚いていた。食べるのに必要な獲物を狩ったり、家畜を食べるために殺すことは殺生に入らない、とでも言うかのようだ。

「グィネ、解っているとは思うけど、何かを殺すことは慣れないうちは心にストレスを溜めることもある。確かに君は冒険者たちが間近で魔物を殺し、解体するところも見たことがあると言っていたが、見るだけと実際に自分でやるのとでは大きな開きがあると思うんだ。
 だけど、こればかりは避けて通れないし、最終的には自分の身に危険が迫った時、躊躇なく決断できることに繋がる。これについては君の希望がどうあれ、聞き入れるわけにはいかないから、そもそも君の考え方については聞かない。契約にある強権を発動させる。これは雇用主としての命令だと思ってくれ。だから、もし心身に強いストレスを感じるようなら俺の命令だから仕方なしにやったんだと思えばいい」

「はい、でも大丈夫だと思います」

 グィネは俺の目をしっかりと見ながら答えた。だが、こればっかりは実際やってみないことにはなかなかな……。

「そうか、ならいい。じゃあ、トリスとグィネは初めての迷宮だからな、最初は何が出るかな……」

 そう言って「オーディブルグラマー」の魔術で魔物の一団を呼び寄せたら普通にゴブリン達を端から槍で突いて殺していたし、魔石も文句ひとつ言わずに採ろうとした。流石にゴブリンの魔石は時間の方が勿体無いので止めさせたが、俺の心配は杞憂だった。



・・・・・・・・



 今月末くらいには鎧の納品で兄貴達もまた王都まで来るはずだから、それが済んだら本格的に四層へ挑戦するつもりだ。ちなみに王都の不動産屋からの連絡はまだない。いい場所が空くということはあまりないから、いい場所の建物の持ち主を調べて、所有者から賃借している奴を探しているらしい。そいつの店の経営状態が思わしくないようであれば更に家賃の支払い状況についても情報を調べる。滞納なんかしていたら最高だ。

 それを理由に大家と交渉して建物を買うか数年分の家賃を前払いするなど言って交渉すればなんとかなるらしい。だが、あの大都市でいい場所に店を開いている商会が経営不振で家賃も払えないなんてことあるのかね? ちょっとそのあたりについては俺は懐疑的だ。

 まぁ不動産の取得については立地条件もあるし、何より相手のある話だ。焦っても何も出来はしないし、餅は餅屋。下手に俺が何かする必要はないだろう。本当に今年中にどうにもなりそうになかったら、その時こそ騎士団なり王家なりに土下座する勢いでお願いすればいいだろ。

 それより、俺が気になっているのはもう一人いるはずの転生者だ。年末に見かけたのはグィネかと思っていたが、彼女は「そうかも知れませんがよく覚えていません」と言っていた。勿論彼女であれば問題はない。しかし、彼女とは別人の冒険者かも知れない。

 だが、できるだけ多くの転生者を確保したいのは本音だ。そもそも見かけたのがグィネかも知れず、別人だと言う確証も得られないことと、これ以上時間を無駄にすることは難しいのが問題だ。確実に別人であれば多少時間を無駄にしても確保に動く決断を下すことはできるのだが……。

 また王都で網を張って年末に見かけた冒険者なり商人なりの転生者を探し続けるという手もあるにはある。しかし、以前と比較して二人もいっぺんに増えたこともあるし、現在のところ迷宮での戦力不足を感じているということもないので、どうしても網を張る決断が出来ずにいる。尤も、四層や五層の敵にもいつまでも同じやり方が通用する可能性は低いとは思っているので遅かれ早かれ網を張ることになるような気もしている。

 いつだったか黒黄玉ブラックトパーズのリーダーのアンダーセンが、

「アイスモンスターには気をつけなさい。本来は五層に居るはずのアイスモンスターは氷の息を吐いてくるわ。対抗するには最低でも4レベル以上の高位の火魔法が必要になるのよ」

 みたいなことを言っていたのは忘れてはいない。氷の息というのが単純に物理的なものなのか、魔法なのかは不明だが(氷の息という時点でどう考えても魔法的なもののような気がするけど)、魔法での氷漬けやそれに近いものだとしたら不意打ちでも食らったら大変なことになる。規模が大きかったり、仲間との距離が遠かったりしたら俺の「アンチマジックフィールド」もMPが足りるかどうか。

 十回や二十回なら正直なところどうと言うこともあるまいが、相手が何匹も同時に出てこられたりしたらかなり厄介だ。俺が「アンチマジックフィールド」で氷を消している(「フレイムスロウワー」や「ファイアーウォール」で溶かしても良いのだろうが、それなりに時間がかかるだろう)間にどんどん新しい氷を作られでもしたら抵抗むなしく全員で氷漬け窒息死、という可能性さえ否めない。

 何しろ相手がどれくらいの魔力を込めて氷を作っているかわからない以上「アンチマジックフィールド」には多めにMPを使わざるを得ないし、万が一、万が一だが魔法ではない氷なら時間をかけて「フレイムスロウワー」なり何なりで地道に溶かすしか抵抗の方法はないだろう。まぁその時はさっさと「ファイアボール」や「ストーンジャベリンミサイル」をぶち込んでやってゆっくり溶かせば……本物の氷で氷漬けの場合、一気に消せない以上、窒息死の目も残るのか……。

 だがいくらバルドゥックのトップチームとは言え、俺ほどMPがあり、且つ魔法の特殊技能のレベルが高い奴なんかいるはずもないからそこまで心配しなくてもいいのだろう。万が一の用心だけ固めておけば……いやいや、黒黄玉ブラックトパーズもアイスモンスターを倒したとか言ったわけではない。他の一般の冒険者同様、特に五層なんて深い階層のモンスターとの戦闘は避けていると考えたほうがいい。油断は禁物だ。何か対策を考えておく必要があるだろうな。思いつくか怪しいもんだけど。



・・・・・・・・・



7443年4月25日

 兄貴達が鎧の納品に来た。何も月曜に来ることもないと思ったが、それは仕方のないことだ。兄貴やバークッドの従士達にまた会えることは歓迎すべきことで間違いなく素直に嬉しいことである。

 とりあえず、グリード商会の本拠地を探しており、王都のいい場所は難しいことを伝えた。高めに買い取るにしても先方に売る意思がない限り買えないことは道理だし、どうしても急がなければいけない話でもないので長い目で見てくれるつもりのようだ。

 ラルファとベルから聞いていたのか、グィネは兄貴に纏わりついていた。お前、惚れやすいのな。黄緑色に髪を染めたグィネは同じような髪の色からか、どうしてもシャーニ義姉さんと比べてしまう。最近義姉さんの顔を見ていないけれど、多分誰が見ても義姉さんの方がずっと美人だと思うだろう。残念だがラルファと第二夫人の座を争っても二人共それぞれの理由で全く目はないと思う。

 ベルならなんとか対抗できるかもしれないが、種族が違うし、そもそも兄貴は義姉さん以外の女性に対して今の所目は向けていないように見える。昨年末はベルも兄貴にきゃあきゃあ言っていたが、今はトリスがいるので落ち着いているように見える。因みにトリスは深緑色に髪を染めた。

 王都の第一騎士団の王城本部へ出向き、第三中隊の人へ納品を済ます。同時に次回の注文受付を行ったが、今回は流石に予め整理しておいたらしく、混乱は起きなかった。副団長のビットワーズ準男爵、第一中隊長のゲンダイル子爵(この人は上級貴族のゲンダイル侯爵の息子らしい)、第二中隊長のバルキサス士爵のほかは、第一中隊の人たちが今回の主要な顧客となった。その中にはロンバルド公爵(国王の長男で26歳の平騎士だ)も含まれていた。

 後で兄貴と一緒に姉ちゃんに聞いてみると、ロンベルト王国の軍制についてだいぶわかった。田舎者の俺と兄貴はよく理解していなかったが、王国の軍隊の制度はまるで近世の軍隊のように元の身分(爵位)などはほとんど関係ない。軍隊内での階級(位階)がモノを言うらしい。とは言っても流石に第一王子であるロンバルド公リチャード殿下は特殊過ぎるのでそれなりに敬意は払われているらしい。

 今後の参考にしたかったのでうるさがる兄貴と姉ちゃんに食いついていろいろ聞き出した。だいたい戦闘部隊を基準にしているが、戦闘部隊でない場合、ちょっと階級は落ち、昇進も難しくなるのが普通らしい。

・位階は国王である第一位階一位を筆頭に第九位階四位が一番低い。全て数字が小さくなるほど偉いということらしい。

・第九位階は俺の知る自衛隊で言うと士にあたり、基本的には戦闘員は歩兵となり、戦闘員以外でも下っ端といってもいい。なお、常設軍には第四騎士団にしか存在しない階級で、ウェブドス騎士団みたいな郷士騎士団にも通常は存在しない。バークッド派遣部隊の従士や指揮官である親父も違う。バークッド派遣部隊にはいなかった自由民の徴用者と、もしいたら戦闘奴隷がこの位階になる。第九位階は四位から一位まであり、戦争(紛争)への参加回数で位は上がるが、位が高いからといって位の低い兵隊への命令権はない。滅多にないけど国家的な大戦争の時にここの人数は膨れ上がる。

・第八位階はバークッド派遣部隊だと従士に相当する歩兵連中だ。自衛隊だと三曹くらいの下級下士官に相当するといっても良いかもしれない。常設軍だと第二から第四騎士団には平時からいる。第九位階から昇進するか、平民以上の歩兵と思うとわかりやすい。第八位階も四位から一位までの階級があるが、こちらも戦争(紛争)への参加回数で位は上がる。第九位からも問題なく上がれるらしい。普通は人数が一番多い階級とのことだ。

・第七位階はもうちょっと上の下士官だ。自衛隊だと二曹とか一曹だろうか。実は下級者への指揮権はここから発生する。バークッド派遣部隊だと従士長くらいとのことだ。常設軍だと第一騎士団も含めた全ての騎士団にいる。第一騎士団だけは戦闘員ではなく、輜重などの補給部隊や後方メンバーの最下級者らしい。第一騎士団以外の第二から第四までの騎士団に入団した従士の最下級がここらしい。ウェブドス騎士団でも従士にあたる歩兵なんかはこの階級だ。自由民も平民も一緒で出身による差別はない。クローやマリーなんかが戦争に行くと王国の常設軍からは第七位階として扱われるのだろう。第七位階は三位から一位まであるそうだ。昇進には紛争参加は勿論だが、座学の試験も出てくるようになる。

・第六位階は自衛隊だと曹長とか准尉に相当するような階級だ。分隊指揮官といったところだろうか。バークッド派遣部隊に相当者を無理やりに当てはめるとお袋だろうか。第二から第四騎士団、ウェブドス騎士団だとここから正騎士として叙任される。昇進には座学の試験が必要だ。第一騎士団のみ従士はここからスタートだ。第六位階は五位から一位まである。また、重要なことだが、この階級から騎乗が許される。兄貴はこの最下級で退役したことになる。第四騎士団には戦闘奴隷にもかかわらずこの階級に達した人もいるそうだ。当然彼の所有者は国王だけど。

・第五位階は自衛隊だと三尉とか二尉の感じだ。バークッド派遣部隊だと部隊長である親父がここになる。ウェブドス騎士団だと小隊長とか中隊長くらいみたいだ。第一騎士団では平騎士がこの階級からスタートとなる。この階級が一番複雑で、九位から一位まであるが特別に人数が多いわけではない。大抵の騎士団だと爵位を持った人なんかでスタートが変わるらしい。姉ちゃんは今第五位階六位にまで昇進しているという。

・第四位階は自衛隊だと二尉とか一尉くらいだろうか。ウェブドス騎士団だと中隊長とか副団長にあたるそうだ。第一騎士団ではこの位階から小隊長となる資格を得られる。ぶっちゃけた話、この階級より上に上がるには普通は戦争でそれなりの手柄が必要になる。五位から一位まである。第三とか第四騎士団には自由民のままこの階級に達している歩兵部隊の指揮官の人もいるらしい(勿論、騎士の叙任は受けているし、騎乗も問題ない)。

・第三位階は自衛隊だと三佐から一佐という感じだ。大隊長とか連隊長とかかな。ウェブドス騎士団だと団長だ。第一騎士団では中隊長程度らしい。四位から一位まである。ここからは国内でも数十人といった程度で数えられるくらいらしい。

・第二位階は自衛隊だと将補だろうか。一般的に師団長とか将軍と言っても良いかもしれない。第二から第四騎士団の団長クラス。第一騎士団の副団長と古参の中隊長であるゲンダイル子爵くらいしかいない。片手で数える程だ。三位から一位しかない。

・第一位階は自衛隊だと将以上だろう。王国内だと第一騎士団の団長が第一位階二位、国王が第一位階一位で合計二人しかいない。陸軍しかないからこれでいいんだろう。

 基本的に軍隊内ではこれらの階級に従って統制されるので爵位とかは関係ない。勿論、爵位に応じた敬意は払われるが、上意下達の命令とは異なる。初代国王のトーマス・ロンベルト一世が国法として厳格に定め、いかなる理由があっても変更してはいけないと言い残していたそうだ。なんだか初代の国王が本当にオースの人なのか疑わしい気がしないでもないが、馬鹿な貴族に悩まされたことが切っ掛けだったらしいから、国王になるような人であればこれくらいのことは頭が回ってもおかしくはないと思う。

 これが周辺諸国なんかでは全く異なっており、貴族の爵位なんかで軍隊内の力関係や発言力も異なってくるらしい。確かに神が言った通り、ロンベルト王国というのはこの世界でも幾分は進んだ文化があるのだろう。

 昇進制度は王国騎士団の制度を中心に説明してもらったが、兄貴によるとウェブドス騎士団なんかだと爵位もそれなりに重要だったりするみたいだ。例えば、兄貴があのままウェブドス騎士団にいたとしても団長にはまずなれないらしい。超頑張って大きな手柄を立て続けて副団長になれるかどうか、というところらしい。

 あとは各騎士団の部隊編成なども聞けたが、第一騎士団の特異性のみが際立っていた。騎士団という言葉がいけないのか、俺の勘違いも多かった。騎士団とは自衛隊だと連隊とかそういう各兵科を集めた一つの単位だ。所属しているのは騎士だけではない。従士も騎士に付き従うというわけではなく、歩兵の別の呼び名だと思ったほうが近い。勿論、小姓のように専属の従士を付けている騎士もいないわけではない。実際、近隣の諸外国だと言葉のイメージの通りらしい。

 だが、ロンベルト王国では騎士とは「騎乗が許された軍隊の士官以上の人」という意味だ。当然従士や戦闘奴隷で構成された歩兵部隊もあるし、その部隊長は騎乗しているかしていないかに関わらず騎士と呼ばれる。まぁ大抵の場合は騎乗しているらしいけど。この場合は高い位置から命令を大声で発するという必要性もあるのかも知れない。補給部隊もあるし、数は多くないけれど弓兵ばかりの部隊だってある。

 普通の騎士団では一番人数が少ないのは騎士らしい。従士などの歩兵や直接の戦闘員ですらない人の方が多いのだが、第一騎士団のみ従士より騎士の方が多い。第一騎士団全体で見た場合、構成員の半数以上が騎士と従士の戦闘員であり、後方部隊は半数に満たないほどだ。実際に第一騎士団がフル出動したと仮定した場合、従士の大部分は後方部隊とその警備に割り振られ、戦闘員は正騎士と一部の従士のみになってしまう。騎士団の戦闘部隊は騎兵だけで構成されるという、恐ろしく攻撃にのみ特化した歪な部隊構成だ。

 これは第一騎士団のみでの戦闘行動を想定していないからなんだろう。戦争時の特別な攻撃部隊とか、各騎士団に熟練の指揮官や参謀を送り込むための制度だと思ったほうが近いようだ。ある意味で第一騎士団はロンベルト王国の指揮幕僚個人戦闘統合コースの軍大学校兼最精鋭実戦部隊と言ったほうが良いかもしれない。地球なら20世紀くらいの物凄く進んだ考え方だ。

 ジンダル半島みたいなド田舎のウェブドス侯爵領なんかだとそこまで進んだ考え方はなかなか受け入れられ難いし、未だに爵位がモノを言うことも多い。だから、第一騎士団への所属には舐められないよう個人の戦闘力も重要視されているのだろうが、オースにおいては異常とも言える程に組織運用について深く考えられていると思われる。

 なるほど、この国軍と温暖な気候、肥沃な土地あってのオーラッド大陸西方一の大国なんだろう。

 ロンベルト一世もバルドゥックの迷宮で財を成し、ロンベルト王国建国に乗り出したのが三十歳近くと言われている。建国には十年の歳月を必要としたらしい。あの斎藤道三も美濃を支配したのは40代半ば頃のはずだ。北条早雲だって結構時間がかかっていた。確かに俺には鑑定と天稟の才が備わっているが、俺を斎藤道三や北条早雲と比較するのは彼らに失礼だろう。二つの固有技能をもってしてやっと互角かそれ以下と見たほうがいい。

 まして、ロンベルト王国のような大国の傍だとかに国を作ろうとするならロンベルトとは友好的に行きたいものだ。バークッドの両親や兄貴夫婦、姉がロンベルト国軍に仕えている以上敵対行為は避けるに越したことはない。

 元々そんな気は更々なかったが、改めてそう思いながら、故郷へと歩を進める兄貴達を見送った。

 ところで、俺の【天稟の才】はレベルがMAXに達した。

 ここで重要なことに気がついた。【天稟の才】がMAXになってから、魔法の経験値にも【天稟の才】による増加が加わっている気がする。改めて【天稟の才】の鑑定のサブウインドウを見てみた。

【固有技能:天稟の才;レベルに応じて入手経験値が増加する。レベル当り20%の増加。小数点以下切捨て。MAXレベルの拡張能力は経験値の増加が特殊技能にも及ぶことである】

 なに? 「MAXレベルの拡張能力」だって? 普段からいちいちサブウインドウまで見ちゃいなかったので気付かなかった。……ベルとトリスの固有技能は俺と会った時には既にMAXレベルになっていたはずだし、その時にしっかり鑑定のサブウインドウもチェックした。改めて鑑定してみたが、特に変わったところは見られない。これは一体どういうことだろう。確かに俺の【天稟の才】の鑑定内容は今までなかったはずの一文が増えている。何故だろうか? ベルもトリスも会った時には既にMAXレベルになっていたから、彼らの固有技能は最初から増えている内容で鑑定している可能性が高い。

 が、しかし、俺のは「MAXレベルの拡張能力」という文章が追加されているのだ。ベルの【射撃感覚】にもトリスの【秤】にもそんなことは一切書かれていない。【天稟の才】だけの特別な能力なのだろうか? まぁそう考えるのが普通だろうと思う。

 これは一体どう考えたものだろう。検証の必要がある気がする。折を見てベルにでも聞いてみよう。聞き方に注意しないとな。だけど、もうひとつ有効な検証方法がある。何しろ俺には固有技能が二つあるのだ。【鑑定】のレベルもMAXだ。誰かに確認するより前に自分自身で検証が出来るのが俺の強みの一つだろう。【鑑定】の固有技能のサブウインドウも特に変わったところはない。「MAXレベルの拡張能力」とやらが存在するのは【天稟の才】だけなのだろうか?



・・・・・・・・・



7443年8月20日


 そして時期はそろそろ夏も盛りの頃を迎えようとしていた。【天稟の才】の拡張のおかげだろうが、無魔法もついにMAXになった。既に第四層の地図も七割近くが埋まっていると予想される。着火の魔道具を使う普通のやり方だが、トリスとグィネも無魔法を使えるようになった頃だ。レベルも俺が18に近い17、ゼノムが17、ラルファが12、ベルも12、トリスが11、グィネが10、ズールーが12、エンゲラが12に近い11になっていた。

 そろそろ五層を目指しても良さそうな時が来た感じがする。

 しかし、固有技能のMAXレベルの件の謎は依然としてそのままだ。

   
【アレイン・グリード/5/3/7429 】
【男性/14/2/7428・普人族・グリード士爵家次男】
【状態:良好】
【年齢:15歳】
【レベル:17】
【HP:148(148) MP:7434(7434) 】
【筋力:24】
【俊敏:30】
【器用:22】
【耐久:24】
【固有技能:鑑定(MAX)】
【固有技能:天稟の才(MAX)】
【特殊技能:地魔法(Lv.8)】
【特殊技能:水魔法(Lv.8)】
【特殊技能:火魔法(Lv.8)】
【特殊技能:風魔法(Lv.8)】
【特殊技能:無魔法(MAX)】
【経験:807624(810000)】

【ゼノム・ファイアフリード/5/4/7416】
【男性/19/1/7402・山人族・ファイアフリード家当主】
【年齢:41歳】
【レベル:17】
【HP:124(124) MP:9(9)】
【筋力:25】
【俊敏:10】
【器用:27】
【耐久:21】
【特殊技能:赤外線視力インフラビジョン
【特殊技能:小魔法】
【経験:693841(810000)】
※加齢により能力値が減少している部分もあります。

【ラルファ・ファイアフリード/25/12/7429】
【女性/14/2/7428・普人族・ファイアフリード家長女】
【状態:良好】
【年齢:15歳】
【レベル:12】
【HP:121(121) MP:15(15) 】
【筋力:17】
【俊敏:22】
【器用:20】
【耐久:19】
【固有技能:空間把握(Lv.6)】
【特殊技能:地魔法(Lv.2)】
【特殊技能:火魔法(Lv.2)】
【特殊技能:無魔法(Lv.3)】
【経験:255942(270000)】
※ラルファは7レベルまでレベルアップ時のボーナスはMPに入らなかった代わりに能力値やHPがちょっと高いです。

【ベルナデット・コーロイル/4/4/7429】
【女性/14/2/7428・兎人族・コーロイル準男爵家次女】
【状態:良好】
【年齢:15歳】
【レベル:12】
【HP:115(115) MP:80(80) 】
【筋力:17】
【俊敏:24】
【器用:17】
【耐久:16】
【固有技能:射撃感覚(Max)】
【特殊技能:超聴覚】
【特殊技能:地魔法Lv3】
【特殊技能:水魔法Lv3】
【特殊技能:火魔法Lv3】
【特殊技能:無魔法Lv4】
【経験:214492(270000)】
※ベルは最初のレベルアップ時にアル同様にMPがそこそこ増えた設定です。種族の性質と相まって能力値はちょっと低いです。

【トルケリス・カロスタラン/13/5/7429】
【男性/14/2/7428・精人族・カロスタラン士爵家三男】
【状態:良好】
【年齢:15歳】
【レベル:11】
【HP:117(117) MP:36(36) 】
【筋力:16】
【俊敏:22】
【器用:19】
【耐久:17】
【固有技能:秤(MAX)】
【特殊技能:赤外線視力インフラビジョン
【特殊技能:地魔法Lv1】
【特殊技能:水魔法Lv1】
【特殊技能:風魔法Lv1】
【特殊技能:無魔法Lv2】
【経験:151862(210000)】

【グリネール・アクダム/2/7/7429】
【女性/14/2/7428・山人族・ロンベルト王国ロンベルト公爵領登録自由民】
【状態:良好】
【年齢:15歳】
【レベル:10】
【HP:110(110) MP:22(22) 】
【筋力:19】
【俊敏:13】
【器用:23】
【耐久:18】
【固有技能:地形記憶マッピング(Lv.8)】
【特殊技能:赤外線視力インフラビジョン
【特殊技能:火魔法Lv1】
【特殊技能:風魔法Lv1】
【特殊技能:無魔法Lv2】
【経験:137869(150000)】

【ダディノ・ズールー/3/6/7442 ダディノ・ズールー/20/7/7422】
【男性/24/5/7421・獅人族・グリード士爵家所有奴隷】
【状態:良好】
【年齢:22歳】
【レベル:12】
【HP:126(126) MP:5(5) 】
【筋力:22】
【俊敏:20】
【器用:12】
【耐久:19】
【特殊技能:小魔法】
【特殊技能:瞬発】
【特殊技能:夜目ナイトビジョン
【経験:233024(270000)】
※加齢により能力値が増加しています。

【マルソー・エンゲラ/15/8/7442 マルソー・エンゲラ/12/8/7422】
【女性/14/9/7422・犬人族・グリード士爵家所有奴隷】
【状態:良好】
【年齢:21歳】
【レベル:11】
【HP:104(104) MP:5(5) 】
【筋力:15】
【俊敏:19】
【器用:12】
【耐久:17】
【特殊技能:小魔法】
【特殊技能:超嗅覚】
【経験:208809(210000)】
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