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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第四十五話 模擬戦

7442年12月28日

 何だか妙なことになったなぁ、でも、姉ちゃんをアピールする良いチャンスだ。あまり恥ずかしいところは見せられないよな。まぁ、いざとなったらさっさと氷漬けにしちまえばいいだろ。昔姉ちゃんもローガン男爵にやったらしいし。どう考えても普通の模擬戦形式で一対一なら俺に負ける要素は無い。ズールーやエンゲラにもいいとこ見せてやらなきゃな。

 馬に乗って贅沢税の納税のために行政府へと向かいながら一人にやにやしていた。さっさと行政府で税金を払い、適当に何か腹に入れて河川敷に向かわなければな。

 税金を払う前、適当な飯屋を見つけたのでそこで食事をした。馬を店の裏の厩に預け、道沿いの席に陣取った。ベーコンと豆のスープと豚肉のピカタに、白いパンだ。さすが大人口を抱える王都だけあって、ちょっと高い気もしたが、満足できる食事だった。精算は後払いだし。それにしても、オースでピカタを食ったの、初めてだったな。どっかで豚カツでも作ってねぇかな? 所謂日本のソースはないだろうが、マヨネーズはあるし辛子だって探せばあることはわかってる。ああ、これで米があれば言う事はないんだが、無い物ねだりをしても仕方ない。

 いつものように豆茶を追加で頼み、くちくなった腹に満足して通りを眺めていた。少し先のブロックを行商人の馬車が通ってゆく。御者台に山人族ドワーフらしき男と女、護衛に普人族の男が二人に、あれは背が低いからまだ子供だろうか? 女も一人いるようだ。どこでも見られる風景だ。ん? あの護衛だか行商人の子供だかの女……髪を一本の大きな三つ編みにしているようだが、黒い髪だ。

【グリネール・アクダム/2/7/7429】
【女性/14/2/7428・山人族・ロンベルト王国ロンベルト公爵領登録自由民】
【状態:良好】
【年齢:14歳】
【レベル:3】
【HP:65(65) MP:11(11) 】
【筋力:11】
【俊敏:6】
【器用:15】
【耐久:11】
【固有技能:地形記憶マッピング(Lv.8)】
【特殊技能:小魔法】
【特殊技能:赤外線視力インフラビジョン
【経験:7821(10000)】

 おっと、黒髪だからと言ってつい意味もなく鑑定しち……何? 今赤字があったよな? 細かく見る前に彼女が視界から消えちまったから判らんが、赤字があったと思う。固有技能だ! こうしちゃいられん! せめて声くらい掛けておかねば!

 俺は席を立とうと隣の椅子に立て掛けてある鞘付きの銃剣を手元に引き寄せる。あまり慌てすぎて血相が変わっていたのだろう、ちょうど豆茶と持ってきた給仕の女が「ひいっ」と叫んで豆茶を零していた。俺は銃剣を引っ掴んで

「馬を回せっ」

 と叫び店の外に飛び出した。しかし、店から

「食い逃げだ、食い逃げだぁっ!」

 と叫び声が上がる。しまった。

「後でちゃんと払うよっ」

 豆茶はともかく飯の金払ってねぇ。だが、あとで十倍払ってやるよ。と厩舎に向かって駆け出そうとしたとき、腕を掴まれた。くそ。

「グリード君じゃないか? おいおい、食い逃げはいかんぞ」

 だだだだだ団長じゃねぇか! まじかよ……。

「ああ、金は後できちんと払い「どれだけ急いでいるのかは知らんが、今きちんと払いなさい。そうでないと見過ごせなくなるよ」

 ……あああ、畜生。

「はい。……ほれ、代金だ。釣りはいらねぇ。それより馬を回してくれ、急いでな」

 そう言って財布から銀貨を一枚探り出すと店の給仕に渡す。クソ高い800Zの昼定食代加えて豆茶代に10倍以上の10000Z払ってやるわ。

「グリード君。どうしたんだ? 君らしくないな。貴族たるもの、もっと余裕を持ちなさい。そんなに慌てんでも演習場は逃げはせんよ。まだ多少時間に余裕もあるしな」

 はっとして周りを見回すとローガン男爵の他、ビットワーズ準男爵と、名前の知らない騎士団の団員らしき人達も数人いて、意外そうな顔つきで俺を見ていた。……ダメか……。馬を急いで回してくれたとしても、ある程度時間もかかる。この昼食時の人通りの多い王都では馬車一台なんかどこか道を曲がりでもしたらあっというまに見失ってしまう。ああ、こんなことなら、馬をお茶代代わりに預けて後で取りに来るとか、さっさと先に金を払って、馬は預けたままに必死に走れば何とかなったかも知れない。

 転生者らしき人物を見つけ、興奮のあまり我を忘れるなんてなぁ。……正直無理もないとは思うけどね。

 頭をガリガリと掻き、照れくさいのを誤魔化すと、

「お騒がせしました。よく考えれば慌てるようなこともありませんでした。税金を払いに行くの失念していたのを急に思い出し、つい慌ててしまいました。お見苦しいところをお見せしてしまいました。大変申し訳ございません」

 そう言って頭を下げた。

「大丈夫だよ。贅沢税は販売証明の日付から一ヶ月以内に支払えばいい。心配はいらないよ。だが、君でも大金を持っていると慌てるんだな」

 そう言って笑ってくれた。確かに今一億Zを上回る大金を持っている。恥ずかしいがそういうことにして流したほうが良さそうだ。俺は再度頭を下げ、ようやく引き出されてきた馬に跨ると念のため先ほど馬車を見かけたあたりまで行って見る。しかし、やはりと言うべきか既に馬車の姿を見つけることは出来なかった。

 行商人か護衛の冒険者か、とにかくロンベルティアまたはロンベルティアを巡回路にした転生者がいるらしいことははっきりした。最悪の場合、一ヶ月くらいしたらこのあたりで網を張っていれば引っかかるかも知れない。その時はラルファやベルだって捜索には協力してくれるだろう。

 とぼとぼと行政府まで赴き、税金を支払うと、河川敷の演習場に向かった。



・・・・・・・・・



 演習場には姉ちゃんを始めとして兄貴達やゼノム達も既にいた。俺が遅れて到着すると、早速質問攻めにあった。夜説明するって言っていたはずだが、まぁ仕方ないだろう。既に王家に『鞘』を納品していると伝えていた筈の兄貴までびっくりしていた。いくら王室に納入しているからといって身分の高い王族と直接顔見知りになっているとは思わないだろうしな。

 無理もない。縁あってゴム製品を直接納品していると言って誤魔化した。姉ちゃんにはウォーターベッドの修理で直接顔を合わせたことがあると言っていたのでそれ程不思議そうには思われてはいなかったようだが、流石に王妃達全員が俺の事を知っていたのは意外そうだった。ついでにユールとマリーンが視察に訪れることも言った。

兄貴と姉ちゃんと俺でみんなから離れて話をする。

「ミルー、団長と副団長、それに中隊長だったか……どのくらいの腕なんだ? あと魔法は使ってもいいのか?」

 兄貴が姉ちゃんに聞いた。

「そりゃそれぞれ凄く強いわ。魔法は……どうかしら。私たちが魔法を使うと簡単に勝てちゃうし、私は最近模擬戦の時に魔法は禁じられているのよね……」

 姉ちゃんが返事をする。まぁそうだろうなぁ。単なる魔法合戦で俺達に勝てる奴なんてそうそういないだろう。いつもいつも魔法ばっかり使っていたら稽古にならんし。

「アル、とりあえず魔法をどうするか始まる前に確認するが、ミルーの話だと多分魔法は使えないと思ったほうがいいだろう。俺達がそれぞれ誰を相手にするかはわからん。だが、ただではやられるな。絶対に粘れ。模擬戦の内容によるが、いいところまで勝負できたようなら、最後に俺達がミルーを相手に模擬戦してギリギリで負ける。いいな」

 うん。それでいい。できれば姉ちゃんの援護になるようなことをしてやりたい。

「ああ、わかったよ。正直、俺は第一騎士団の人相手にどこまでやれるかはわかんないけど、できるだけ粘るよ。姉ちゃん、槍使ってもいいんだよね?」

 兄貴の考えに賛成すると俺は肩にかけていた銃剣を握り直した。

「別にいいけど、あんたのは刃を潰してないしダメよ。木剣じゃその槍の中に入れられないでしょ? 私達姉弟の稽古じゃないんだから真剣でやるわけないでしょ? それに、今日は鎧を新調した人もいるから金属製の模造刀も使わないでしょうね」

「木槍はあるんだろ、それでやるさ」

 全部の技は使えないだろうが何とかするしかない。

「あんたが使ってるくらいの短い木槍もないわよ」

 おえぇ? 俺、勝目ねぇ気がする……。そりゃ俺だって剣はそれなりに使えるよ。親父や兄貴ともいい勝負くらいはできる。だが、第一騎士団の人相手は……流石に無理だろ……。魔法も使えない、銃剣もダメ、ああ、これで粘るとか、地獄だな。まぁレベルアップで地力は上がっているはずだからそっちで何とかするしかないのか……。あ、そうだ。

「や、槍に鞘つけたままならどうかな? エボナイトの鞘だし、これなら「中身は鉄でしょうに。……だいたい、ユールスフォル妃殿下とマリーネン妃殿下もお見えになるのでしょう? 大怪我させる可能性のある物は無理に決まってるじゃないの」

 一刀両断だった。仕方ねぇ。

「アル、まぁ頑張れ。槍を使えないと厳しいなどと言っていて迷宮の冒険者は務まるのか? 贅沢言わないで用意されたものでやるしかない。俺だって、第一騎士団の方相手にそう簡単に勝てるなんて思っちゃいない。でも、やるしかないんだ。いい機会だと思って胸を貸してもらうしかない。その上でミルーをアピールできるように頑張るだけだ」

 そう言って兄貴が締めた。俺がげっそりと青い顔をしてゼノム達のところに行くと、ラルファが声をかけてきた。

「アル、頑張ってね。応援するからね」

 おう、俺が半殺しになるのを見ててくれ。だが、せめて一太刀くらいは入れてやりたい。

「アルさん、頑張ってくださいね。私も応援しますよ」

 ベル、応援は有難いけど、お前に治癒魔法の練習させてやれそうだ。どうせ使わないだろうが魔力は温存しておけよ。

「ご主人様、ご主人様でしたら例え正騎士が相手でも勝てるでしょう」

 ズールー、お前、デーバスの出身だから第一騎士団をそこらの適当な騎士団と一緒にしてるんだろ? そんなんだったら俺も気が楽だよ。

「ご主人様、大丈夫です、いつものように魔法で弱らせればいいのです」

 エンゲラ、魔法使っちゃいけないそうだ。格好いいとこ見せてやれそうにないかも。

「アル、お前さんなら第一騎士団が相手でもそこそこやれると思う。いつもみたいに得意の槍をぶん回してやれ」

 ゼノム、銃剣も使用禁止が言い渡された。剣でやるしかねぇんだよ。まぁ蹴りも使ってもいいだろうし、土を蹴り上げて目潰ししてもいいだろう。こちとら騎士じゃねぇし、正規の軍人ですらねぇ。普通科連隊上がりの泥臭い冒険者の戦い方を見せるしかねぇだろ。手裏剣は封印だけどな。

 あ、そういやいいもんあった。最近ご無沙汰だったあれだ。こいつも使ってなんとしても一太刀くらいは浴びせないと格好がつかねぇ。そうこうしているうちにだんだんと騎士団の人達も午後の訓練もあるから集まってきた。河川敷の隅に建っている掘っ立て小屋みたいな物置から練習用の木剣や木槍も運び出され、用意されていく。

 俺はその様子を横目に一人装備の点検を進める。体の各所を防護するプロテクターのズレを修正し、屈伸したりジャンプしたりしながら違和感を潰していく。腰の草摺にDリングでぶら下げてあった水筒や小物入れなど邪魔なものは全て外し、少しでも身軽にする。

 ヘルメットをサドルバッグから出して被り、顎当ての脇で緒を締める。同じデザインのヘルメットを被った俺たち兄弟はお互いを見てにやっと笑う。兄貴は首をコキコキと鳴らすようにしてから肩を揺すり訓練用の木剣を手にした。姉ちゃんも両肩を一回転ずつ回してから木剣を引き抜いた。

 俺は、手を開いたり閉じたりして握りを確認し、同様に手頃な木剣を手にすると一度素振りをしてバランスを確かめた。俺達から少し離れた所ではビットワーズ副団長が従士二人に助けられながら板金鎧フルプレートアーマーを装着している。ケンドゥス中隊長も重ね札の鎧(スプリントメイル)を従士の補助を受けて装着している。ローガン団長だけは俺たちそっくりなゴムプロテクター姿だ。

 団長が歩いてきて言った。

「すまんが今日は魔法なしな。怪我したら治療できる奴は沢山いるから安心してくれ。ああ、グリードに治療して貰ってもいい。二本先にいいのを入れたほうが勝ちな。あと、グリード君は騎士の経験もないらしいから騎乗はしない。これでいいか?」

 予想していた通りだ。今更否やは無い。

「「解りました」」
「はっ、了解」

 姉ちゃんだけ軍人口調だ。現役だし、当たり前だけどな。

 さて、俺の相手は誰かいね?

 もう両手両足を封じられているようなもんだし、誰が相手でも勝てないだろう。せめて一番強い人が俺の相手をしてくれれば兄貴と姉ちゃんの援護にはなる。でも、どうせ三人とも無茶苦茶強いだろうし、あまり意味はないか。

 今のうちに鑑定しておこう。

【ロッドテリー・ローガン/28/6/7426】
【男性/20/5/7402・普人族・ローガン男爵家当主・ロンベルト公爵騎士】
【状態:良好】
【年齢:40歳】
【レベル:17】
【HP:135(135) MP:25(25)】
【筋力:23】
【俊敏:23】
【器用:18】
【耐久:21】
【特殊技能:地魔法Lv.2】
【特殊技能:水魔法Lv.3】
【特殊技能:火魔法Lv.3】
【特殊技能:風魔法Lv.3】
【特殊技能:無魔法Lv.4】
【経験:726253(810000)】

【ジェフリー・ビットワーズ/21/7/7438】
【男性/2/6/7405・普人族・ビットワーズ準男爵家当主・ロンベルト公爵騎士】
【状態:良好】
【年齢:37歳】
【レベル:17】
【HP:140(140) MP:15(15)】
【筋力:23】
【俊敏:20】
【器用:20】
【耐久:24】
【特殊技能:風魔法Lv.4】
【特殊技能:無魔法Lv.4】
【経験:687921(810000)】

【セーガン・ケンドゥス/28/9/7440】
【男性/17/6/7414・普人族・ケンドゥス士爵家当主・ロンベルト公爵騎士】
【状態:良好】
【年齢:28歳】
【レベル:14】
【HP:138(138) MP:16(16)】
【筋力:23】
【俊敏:19】
【器用:18】
【耐久:23】
【特殊技能:地魔法Lv.2】
【特殊技能:水魔法Lv.3】
【特殊技能:風魔法Lv.2】
【特殊技能:無魔法Lv.3】
【経験:439160(450000)】

 三人が三人とも猛者と言ってもいいんだろうな。魔法が無しなのであれば三人の実力はあまり変わらないのかも……いや、騎士団の訓練と戦場で練り上げた実戦経験を考慮すれば団長と副団長が別格に強いんだろうなぁ。ケンドゥス士爵のレベルは今の俺より低いが、実力は確実に俺より上だろう。

 もう仕方ねぇ。やれるところまで全力で頑張るしかない。各能力の値では俺も負けてない。できる限りそれを活かして踏ん張るしかない。よし、皆見てろ。どうせなら薄汚くても足掻いて、足掻きまくって負けてやる。向こうだって流石に姉ちゃんの言葉を鵜呑みにして姉ちゃんより強いなどとは本気で思ってねぇだろ。確かに技では及ばないかも知れないが、俺だってもう何匹もの魔物を剣や槍だけで倒してるんだ。それこそ掠らせもしないでな。チビの頃一対一でホーンドベアーとやりあった時ほど絶望的なわけでもない。

 バークッドが舐められてたまるか、一泡吹かせてやる。

「んじゃ、総当りな。全員一回ずつやろうか」

 団長がそう言った。Oh.....予想外。治療さえきっちりできるならまぁ予想してしかるべきだったな。

「妃殿下方が到着し次第始めるぞ、体を温めておけよ」

 副団長が言う。模擬戦とは言え本物の金属鎧プレートメールどころか板金鎧フルプレートアーマーを着た人とやるのは初めてだ。あんなのどこにどうやって打ち込んだら有効と判定されるんだよ。

「あまり硬くならないようにな。ウェブドスの黒鷲こくしゅうの実力、楽しみだ」

 中隊長もそう言って笑う。俺なんかおまけくらいだろうな。だが、見てろ。多分あんたが一番与し易いだろ。

 そうやって俺達の気持ちを和らげようと話しかけてくれているうちに妃殿下達も演習場に到着した。全員、跪いて臣下の礼を取る。

「よい、面をあげてください。無理を言って急に出張ってきたのは私達なんですから、気にしないでください」

 ユールがそう言ってにっこりと微笑んだ。って、二人共鎧姿だ。胴回りだけ金属鎧プレートメイルであとは重ね札の鎧(スプリントメイル)のようだ。なんて言うんだっけ。まぁいいや。それにしても見事な鎧だな。各所に装飾も入っており高価そうだ。

「よし、全員起立。始めるぞ、付いてこい」

 団長がそう言って少し離れた円形の訓練場に向かった。あそこでやるのか。



・・・・・・・・・



 向こうの一番手はケンドゥス中隊長が相手らしい。なら最初は俺だろう。俺は兄貴に「お先に」と言って訓練場へと歩き出す。最初に俺がやれば相手の手の内を少しでも引き出せて、兄貴が楽になるだろう。……やったるわ!

【アレイン・グリード/5/3/7429 】
【男性/14/2/7428・普人族・グリード士爵家次男】
【状態:良好】
【年齢:14歳】
【レベル:15】
【HP:134(134) MP:7425(7431) 】
【筋力:21】
【俊敏:27】
【器用:20】
【耐久:22】
【固有技能:鑑定(MAX)】
【固有技能:天稟の才(Lv.8)】
【特殊技能:地魔法(Lv.8)】
【特殊技能:水魔法(Lv.8)】
【特殊技能:火魔法(Lv.8)】
【特殊技能:風魔法(Lv.8)】
【特殊技能:無魔法(Lv.8)】
【経験:461085(560000)】

 な? 各能力の値だけなら俺もそう見劣りはしないだろう? 最近意識して伸ばしている俊敏がどれだけのもんか試してやる。俺はケンドゥス中隊長の目前までゆっくりと歩いて行って向き合うと木剣を構える前に一礼し「よろしくお願いします!」と頭をさげた。そして後頭部にいいのを貰って這いつくばった所を蹴られ、背中を木剣で叩かれて負けた。なんじゃそら。木剣とは言え、ヘルメットがなかったら死んでたわ。

「グリード君、演習場に入った瞬間に戦闘は始まっている。敵に頭を下げる必要はない。君の負けだ」

 審判をしている第二中隊のバルキサス中隊長がそう言った。流石に俺は文句を言ってやろうとしたが、兄貴と姉ちゃんが渋い顔をしていたので諦めた。くそう。そんなんありかよ。怖くてゼノム達の方を見れねぇ。ラルファとか馬鹿にするだろうな。負けた方が残るのが一対一の模擬戦のルールらしい。治療するような傷は受けていなかったので、そのまま続けられる。魔法で治療してもそう簡単に痛みが消えないほどの大怪我を負うか、相手が一巡するか、勝つまでこの演習場から出られないということらしい。

 次は副団長が相手のようだ。今度こそ何としても食らいついてやる。俺は覚悟を新たにして油断なく構えていた。重厚な板金鎧フルプレートアーマーに通常のものよりもふたまわり近く大きなカイトシールドを構え、長剣を模した木剣を上段に構える副団長には隙がない。今度こそ俊敏さを活かして、重い金属鎧プレートメールを着込んだ相手を翻弄し、死角から狙いすました一撃を加えてやる。

 副団長はじりじりと摺足で近づいてくる。

 土の表面がむき出しの演習場に12月の冷たい風が吹き土埃が舞う。

 俺は両手で木剣を青眼に構えたまま同じように摺足で左方に移動する。盾を使わせたくはないし、右手一本で剣を振るなら相手から見て右に位置したほうが相手もやりにくいはずだ。彼我の距離がだんだんと縮まってゆく。

 5m……。

 4m……。

 3m。

 もう少し。

 と、その時、副団長は俺の予想を上回る速度で踏み込んできた。バークッドのゴムプロテクターを身につけた平均的な従士並の速度だ。速い!

 気合いとともに俺の右肩から袈裟懸けのように木剣を振り下ろしながら踏み込んでくる副団長が着用しているのは本当にあの重そうな板金鎧フルプレートアーマーなのか?

 そう思うのも束の間、袈裟懸けに振り下ろされてくる剣を潜るように右側に体を投げ出して何とか初撃を躱すのに成功した俺は、右手一本で副団長の胸を狙って突きを入れるが、盾に阻まれ、虚しく左方向へと剣先を逸らさせれてしまった。

 しかし、そのまま俺から見て左方向に逸らされた右手の運動に逆らわずに左腕を後方に振るようにして左方向に回転しながら腰を落とし、左足で副団長の左膝を狙って回し蹴りを放つ。「徒手格闘」「銃剣格闘」「短剣格闘」における「関節蹴り」の変形だ。

 エボナイトで固めた俺のブーツの踵がガラ空きの左膝の裏を外側から掬うべく回転する。

 左足の踵を副団長の左膝を覆う装甲の端に引っかけることができた。このまま足を振り抜いて膝カックンのように体勢を崩すのが狙いだ。

 だが、何と言う事か、確かに遠心力まで利用して踵を左膝を覆う装甲の端に当てたはずなのに、びくともしない。左の腿から爪先まで膝の裏に筋のような隙間がある以外完全に覆われた板金鎧は確実に膝の裏に当てない限りは変な方向に曲がらないのだろう。

 すぐに足を丸めて右前方に転がった。寸前まで俺の左足が伸びていた場所に盾が垂直に振り降ろされ地面に突き立った。あ、危ねぇ……。

 転がった勢いを利用して立ち上がると右手に握ったままの木剣を右に振りながら今度は右回転して副団長に向き直る。その間に副団長も盾を地面から引き抜いて方向転換を終えていた。

 位置を入れ替えてほぼ最初の状態に戻った。流石第一騎士団の副団長を張るだけあって、見事な身のこなしだ。まともに行ったらどう考えても俺に勝ち目はない。

 今度はこっちが先手を取りたい。いくら身のこなしが上手く、早かろうがあれだけの重量物だ。俺ほどではない。落ち着いてフェイントを織り交ぜながら翻弄し、スピードを活かして勝機を見つけるのだ。

 右手に木剣を握り、左手はバランスを取るように心持ち左に伸ばし、前に踏み出した右足に体重をかける。

 今度は盾が構えられている右方向へと飛び込む。副団長は俺に追従して盾を開いていく。今だ! 盾に隠れるように腰を落としたまま飛び込んだが、盾に隠れて俺の左腕の動きは見えまい。盾の右側面に左手を掛けると思い切り左に引いた。上手くいけば副団長は盾を左側面から身体の正面にずらせるはずだ。同時に右手に持っている彼の木剣は上手く振れないだろう。

 そう思ったが。俺が盾に左手をかけた瞬間に判断したのだろう。俺の左手の動きに逆らうことなく、副団長は右方向に回転し、遠心力も利用して右手に握った剣で俺を殴り倒すことにしたようだ。

 このままだと俺は思ったより抵抗がなく、軽い感触のまま勢いに任せて左方に体が開いてしまう。だが、これでいい。予定とは違うがこれも昔から散々やってきた動きだ。右手に握った剣を立てて体に引き付けると肘を突き出して回転中の副団長の背中に肘打ちを入れる。

 背中まで装甲のある板金鎧フルプレートアーマーとは言え、背中に肘打ちを入れられて体勢を崩さずに耐えられるものか。

 背中に綺麗に肘打ちが入り、回転を止められた副団長はたたらを踏んだ。その隙に今度こそ理想的な形で副団長の右膝の裏に関節蹴りを入れてやると、簡単に体勢が崩れた。後ろからヘルメットの飾りに左手を伸ばし、それを掴んで下に引き降ろしながら、後頭部に右膝蹴りを叩き込んだ。

 本当なら脳震盪だ。だが、流石に板金鎧フルプレートアーマーのヘルメットは頑丈らしい。それとも後頭部の隙間にクッションでも入れてあるのだろうか。勿論ダメージはあるようだが、そのまま背中から地面に倒れても副団長は唸りながら動いていた。だが、もう何もできまい。俺の足元に仰向けで頭をこちらに向けて倒れている副団長の頭部に剣を当てた。

「グリード君の勝ち!」

 審判がそう宣言した。相手を仰向けに倒し、その頭を抑えている。一撃どころか好きなように打ち込める。だから勝ちになったのだろう。おおおっ! 勝った! 副団長に勝ったぞ! 両拳を握り締めて演習場を後にした。演習場の外に出て兄貴の横に立った。誇らしかった。兄貴は低い声で「良くやった。次は俺だ。見てろ」と言ってニヤリと笑みを浮かべると俺と入れ違いに演習場に足を踏み入れた。

【ファンスターン・グリード/1/4/7438 】
【男性/21/1/7422・普人族・グリード士爵家長男・ウェブドス侯爵騎士】
【状態:良好】
【年齢:20歳】
【レベル:8】
【HP:94(94) MP:339(339) 】
【筋力:15】
【俊敏:16】
【器用:12】
【耐久:14】
【特殊技能:地魔法(Lv.6)】
【特殊技能:水魔法(Lv.6)】
【特殊技能:無魔法(Lv.6)】
【経験:74969(80000)】

 見劣りするように見えるが、そんなことはない。この内容は経験値以外今年の春に家を出た頃となんら変わりはない。だが、僅か9ヶ月くらいで9000もの経験を得ている。相当稽古したのだろうし、精力的にパトロールもしたのだろう。

 兄貴は油断なく木剣を構えながら副団長が起きあがるのを待っている。板金鎧フルプレートアーマーだと一人で起き上がれないのかと思ったがそんなことはないようだ。転がって俯せになると腕立て伏せのように手をついて上半身を起こし、同時に膝立ちになり、そのまま木剣と盾を手にして上半身を起こすと、続いて両膝を付いた状態から片足ずつ立ち上がった。

 まぁ一人で起きれないとか、俺の膝蹴りで脳震盪を起こすとかだと、戦場で馬から落ちたくらいで気を失って簡単に死んじゃうだろ。それに近くで見たし、実際に打撃を与えたりして判ったが、あれって重そうだけど、重量は全身に分散されているようだし、結構身軽に動けるのな。

 そのまま兄貴と対戦するようだ。俺のような邪道の、正統派ではない剣術相手にさぞ戸惑ったことだろうが、兄貴は正統派だ。俺と同じようなもんだと思ってると頑丈な板金鎧フルプレートアーマーを着込んでいるとは言え、怪我するぞ。

 俺は姉ちゃんと同じように木剣を地面に突き立ててそれに手をかけながら兄貴と副団長の模擬戦が始まるのを見守っていた。

 副団長は俺の時と同じように盾を構えている。兄貴は右手に木剣を握り、左手は軽く添えているだけだ。

 兄貴が先に仕掛けた。親父譲りの稲妻のような速度で踏み込み気合とともに木剣を上段から振るう。副団長はそれを盾でいなすと、右手に握った木剣をやはり上段から振り下ろす。

 左下腕の簡易盾で受けたようだ。直径1cm程の鉄の棒が四本も仕込まれている。痛いことは痛いだろうが、骨は折れないだろうし、痺れもすまい。その証拠に左腕で副団長の木剣を受けると同時に外側に腕をふるい、木剣の軌道を体から逸らしている。

 それと同時に兄貴は後方に飛び退るとすぐに木剣を両手で水平に構え突きと共に突進した。今度は左手が柄の傍にあり、木剣も心持ち左腰に寄せられている。右手は添えるだけ。

 副団長もすぐに対応し、右手に持った木剣で下腹部を狙って突き込んできた兄貴の木剣の軌道を逸らし、左手の盾で殴りつけようと振りかぶる。それを兄貴は予測していたのか。

 木剣に添えていた右手を伸ばし、副団長が振り上げた盾の下端に手を当てるとそのまま上に突き上げた。そして、盾の下を潜りざまに左手の木剣で胴に斬り付け、副団長の右横を潜り抜けていった。

 ゴン、という鈍い音がして明らかに有効打と判定されたようだ。審判のバルキサス中隊長が左手を挙げる。だが、まだ、一本を先取しただけだ。模擬戦はそのまま続く。その後もまるで両手利きであるかのように右に左に副団長を素早い動きで翻弄するとともに殆ど一方的に攻撃を繰り返すが、有効打はなかなか出なかった。

 もう一分近くそんな状態が続いている。流石に兄貴と言えど疲れもあるだろう。そろそろ決めないとまずい。俺と模擬戦をしていた時も、俺が防戦に徹して、それが上手く嵌ったときは兄貴の体力切れで勝つこともあったのだ。

 兄貴が右上段から袈裟懸けにしようと剣を構えて副団長に突進した。ああっ! それはまずい! と、突進しながら盾に木剣を振り下ろすかに見えたが、兄貴は狙っていたようだ。木剣を盾に当てることなく角度をずらして振り下ろし左手に持ち替えるとそのまま下から盾を迂回するような、地を這うような動きからゆっくりと上昇し、副団長の右腿に突き入れた。

 今回の模擬戦で最初の方に下腹部を狙って左突きを放って以来、攻撃は全て上段や中段からだった。初めて見せた下段からの攻撃に副団長は戸惑ったのだろうか。とにかく兄貴の下段からの攻撃は綺麗に決まった。

「グリード卿の勝ち!」

 兄貴がにやっと笑みを浮かべながら戻ってきた。「いや、流石だ。勝てたのはほとんど偶然だろう。同じ鎧なら負けていたろうな」とぜぇぜぇと息を吐きながら言っているが、勝ちは勝ちだ。俺は一戦負けた(なんて思ってはいないが)が俺達兄弟で第一騎士団の副団長からそれぞれ一勝ずつ勝ちをもぎ取れたのだ!

 さぁ、今度は姉ちゃんの番だ。

【ミルハイア・グリード/15/12/7439 】
【女性/2/2/7424・普人族・グリード士爵家長女・ロンベルト公爵騎士】
【状態・良好】
【年齢:18歳】
【レベル:8】
【HP:82(82) MP:866(866) 】
【筋力:14】
【俊敏:15】
【器用:14】
【耐久:11】
【特殊技能:地魔法(Lv.6)】
【特殊技能:火魔法(Lv.6)】
【特殊技能:水魔法(Lv.6)】
【特殊技能:無魔法(Lv.7)】
【経験:66241(80000)】

 さて、姉ちゃんの剣を見るのは今年の頭に休暇で家に帰って以来、ほぼ一年ぶりだ。第一騎士団で仕込まれた剣はいかほどのものか。

 木剣を構えながら演習場に向かった姉ちゃんは左腕のアタッチメントに取り付けたバックラーシールドも構えつつ腰を落とした。

 兄貴には及ばないものの明らかに年初より進歩を見せた素早い動きから右手一本で木剣を振るい、副団長と互角に戦っていた。重い鎧を身に付け、その割には素早い動きだが、それ以上に早く動き回る姉ちゃんに防戦に追い込まれている。だが、兄貴ほど上手く翻弄できてはいないようだ。お互いにまだ有効打は一度もないが……。

 姉ちゃんの動きにキレが足りなくなってきた。副団長もそれなりに疲れているようで、幾分速度も落ちてはいるようだが、その割合は姉ちゃんほどではない。

 くそっ、頑張れ!

 ああっ、副団長の盾のぶちかましが綺麗に入った。体勢を崩し、片膝立ちになったところに上段から雨のように剣撃が振り下ろされている。それを左腕のバックラーシールドと右腕の木剣まで使っていなしながら、なんとか体勢を整え、立ち上がろうとするもついに右肩に一発いいのが入った。

 審判の右手が上がる。

 だが、まだ模擬戦は継続している。踏ん張れ。ここから逆転だ!

 副団長の木剣を受けながら左に転がった。その勢いを利用して距離を稼いで立てばいい。だが、副団長の猛攻でかなり体力を奪われていたのか、大分キレが落ちている。

 副団長も相当疲れてはいるようだが、姉ちゃんほどではない。俺から数えて三連目だとは思えないほどの底なしの体力だ。だが、姉ちゃんだって負けてはいない。確かに体力も落ち、動きにキレも無くなってきてはいるが、そのおかげで基本に立ち返ったかのように技が丁寧になっている。

 俺は思わず声が出そうになったが、ここはぐっと我慢だ。拳を握り締めて心の中でだけ声援を送る。

 しかし、数分も粘ったのが功を奏したのか、副団長にも動きに明らかにキレがなくなってきた。いくらなんでもあれだけ重そうな板金鎧フルプレートアーマーに身を包んでいりゃ疲れもするだろうし、汗など熱気も篭るんじゃないか? 底なしの体力だと思えたが、やはり限界もある。今こそ最初のようにスピードで翻弄すべきだ。これならなんとかなる。

 左足で地面を蹴りつけ一瞬で右に移動した姉ちゃんは右上段から狙いすました一撃を振り下ろした。このタイミングならもう盾での受け止めは間に合わないだろう。一本取れる!

 だが、副団長は無理矢理体をねじ曲げると右腕に持つ木剣を姉ちゃんに向かって突き上げる。

 副団長の左鎖骨の辺りに姉ちゃんの木剣は振り下ろされたが、同時に左の腿に副団長の突きが襲いかかる!

 姉ちゃんは副団長の体勢からそれを見越していたかのように空中で体を捻ると木剣を手にしたまま転がった。すぐに立ち上がり再度副団長の右側に回り込んでもう一撃を与えた。

「グリード卿の勝ち!」

 バルキサス中隊長は左腕を挙げながら宣言した。

 やった! 俺達全員が副団長に勝った! 思わず左腕だけでガッツポーズを取ってしまう。おっと妃殿下方の前ではしたなかったな。だが、誰も俺のことなんか気にしちゃいないだろう。どよめきが場を支配している。え? 姉ちゃんが副団長に勝ったのって初めてだったのか。そうか、そりゃ良かった。嬉しいだろうな。

 副団長は姉ちゃんにも負けたが、これで相手が一巡したので交代だ。
 ……と、俺か。良し! 俺も頑張ってまた勝つぞ!

 五分近く粘ったが、団長は強かった。俺は全身全霊で立ち向かったが、ゴムプロテクターに身を包んだ団長は親父よりも速い速度で俺を翻弄した。足技なんか繰り出す暇もない。縦横無尽に繰り出される木剣にたちまち防戦一方に追い込まれ「あっ」と思った時には斬られ一本取られてしまった。更に粘ってもどうしようもなかった。どうにか隙を見つけて土を蹴り上げて目潰しに使うが予測されていたようで、奥の手を使う余裕もなく再度連続攻撃を受け、結局躱しきれずに負けた。

 俺はこれで三人を相手にしたので交代だそうだ。俺は姉ちゃんに情けない顔を向けたが、頷いてくれただけだった。とぼとぼと肩を落として戻る俺に兄貴は「よく頑張った。最後まで諦めないのは立派だった。……見てろ」と声を掛けてくれた。姉ちゃんはそんな兄貴の背中を真剣な顔つきでじっと見つめている。

 ああ、そうか。姉ちゃんにとってこれは余興じゃなくて訓練なんだな。俺も団長と兄貴の模擬戦から何か得られるものがあるかも知れない。見逃せない。

 
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