挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

118/518

幕間 第十九話 沼岡清悟(事故当時40)の場合

「根元お前さ、さっきなんで何も喋らなかったの?」

「え? だって、沼岡さんが説明するって言ってたじゃないですか?」

 こいつの事がどうにも好きになれない。仕事に熱意が感じられない。言われたことしかやらない、言った事でも忘れることがある。すぐに口答えする。謝ることができない。仕事の要領が悪い。残業も嫌がる。有給は全部消化する。それから……酒も付き合わないし、タバコも吸わない。女にも興味が薄い。趣味はゲームとアニメーション。あと一飜で数え役満じゃねぇか。

「いや、だって、納期の連絡間違えて先方さんに伝えたのお前だろう? なぜ謝らないんだよ?」

「だって、元々間違えたのって生産管理の西田さんが俺に間違えて伝えてきたからですよ? 謝るなら西田さんでしょう? 俺は西田さんに言われた納期をそのまま先方に伝えただけっすよ? なんで俺が頭下げなきゃいけないんすか? 俺の頭はそんなに安くないっすよ」

 小さな子供か? そもそも口を尖らせて言うほどの内容か!?

「え? それは先方には関係ないだろう、ウチの会社が間違えたんだから、担当のお前が代表してまず謝るのが筋だろう?」

「筋ってなんすか? それを言うなら大体、沼岡さんが俺の上司なんだし、沼岡さんが開口一番、謝ったじゃないすか」

 もういい。いつものことだ。こいつには何を言っても無駄だ。

 そう言えば、先日参加したある管理職向けの企業セミナーで講師が言っていた。企業や組織に必要な人材とは、ってやつだ。

1.協調性のあるリーダー
 経営者は社員から信頼されなければならない。リーダーシップがあるのは当たり前。人間的魅力は別に必要ない。求められるのは公平性フェアネスと目標を示す能力。そしてそれに向かって一直線に進む姿勢。

2.発想力のある参謀
 トップダウン式においては経営陣が有能でないと会社が機能しない。リーダーに対して目標達成のための案を提出し、是非の判断を仰ぐ。こちらも人間的魅力などどうでもいい。リーダーの示した長期的な目標達成のため、中期的な目標を提示し、それを達成するために、限られた手駒を使っておおまかな道筋を立てられる能力が大切。

3.教育力のある管理者
 会社を維持する為には次世代の人材を教育しなければならない。求められるのは、短期的な目標を立て、達成のために部下を管理監督そして教育し、自ら率先して導いていく必要がある。人間的な魅力(この人に付いていこう、この人のやることなら安心だ、この人を助けてあげたい)の発露も必要だ。

4.やる気のある平社員

 この中で一番苦労も多く、責任が重いのが3の中間管理職だそうだ。いかに平社員をうまく使えるか、それが現場においての最重要課題。教育も出来ない、管理も出来ない、そんな奴が管理職になればその会社はどんどん落ちぶれていく。やる気のある無能には仕事を教え、やる気のない有能には目標やキッカケを与える。やる気のない無能は上に言ってさっさと切り捨てるか窓際に放置する。これが中間管理職のお仕事。これやる覚悟がないなら一生平社員でいろよ、正直迷惑だからな。と言っていた。

 あれっ? っと思った。ドイツのなんとかという将軍の言っていたこととちょっと違ったからだ。確か勤勉で愚鈍は銃殺にするしかない、とか、そんなことだったはずだ。やる気のある無能ってのは勤勉で愚鈍に該当するのではないか? そう思って聞いてみた。すると、こんな答えが返ってきた。

「それは大昔の軍隊の話ですね。怠惰で優秀なものは前線指揮官に、勤勉で優秀なものは参謀に、怠惰で愚鈍なものは兵隊に、勤勉で愚鈍なものは処刑するしかない、という奴でしょう? ですが、実際には当てはまりません。その発言当時は教育レベルが現在と比較にならないくらい低すぎたので当時はそれでも良かったのです。更に当時の軍隊では教育する期間も非常に短く、人の命も安価でした。現在では当時言われていたようなレベルでの愚鈍な人間はいませんよ。誰でも日本語を解しますし、計算も出来る。つまり、特別な事情でもない限りは一定以上の知能は持っていると見ていいでしょう。
 愚鈍は馬鹿と言い換えてもいいでしょう。馬鹿なので自分の力量を知らないか理解していない、ということです。私の言う無能は馬鹿とは異なります。どちらかと言うと、能力が足りない人、という意味です。利口でも無能な人はいるということです。利口なので自分に能力が足りないことを理解しています。愚鈍な者や馬鹿はそもそも勤勉だろうが怠け者だろうが必要ありません。即刻切り捨てるべきです。また、勤勉とやる気がある、という所も混同しないでください。
 勤勉は美点の一つです。勤勉さは大切な要素ですよ。そもそも勤勉な馬鹿というのは存在しません。勤勉なら普通は馬鹿を脱しますからね。それに対してやる気がある、というのは勤勉とはイコールではありません。やる気があるけど怠惰な人だっています。やる気というのは、必要な時に必要なだけ勤勉になれるということです」

 これを聞いて俺はなるほど、と思った。確かに一番人数も多く、それに比して年齢も若く経験が足りないのが平社員だ。彼らは概して無能と言ってもいいだろう。もちろん優秀な奴もいるが、それは例外とか規格外だ。有能さに合わせた役目を割り振ってやればいい。それを直接管理監督する管理者に求められるのは教育力かも知れない。俺の隣に座っている、こんなやる気のない無能をいつまでも切れないでいる俺も管理職として無能ということか。無能ならまだしも、こいつが会社に存在し続けることで会社にとって害ですらある。俺に人間的な魅力があるかどうかはさて置き、確実にすぐ出来ることはやる気のない無能を切り捨てることだ。

 もう俺は無能な管理職でいるのはいやだ。帰ったら部長に相談しよう。

 腕を組みながらそう考えた。

 バカは俺の隣でスマホをいじっている。

 俺に人事権はないが、直接的な意味での人事権はほぼ現場の管理職が持っているといってもいい。首を切る最終決断をするのは人事部長だろうが、こいつがあまりにもやる気がなく、無能だから切り捨てろと最初に進言するのは俺だからだ。勤務態度や勤務評定、会社が求める水準からあまりにも乖離し、それでもなお良し、とするならそれ相応の覚悟もあるということだろう。

 残り短いであろう会社人生をせいぜい楽しんでおけ。

 その時、列車が急停止をするべく制動をかけたようだ。あまりの急制動にキキーッという派手なスキール音が車内にも大きく響く。同時に慣性によって先頭方向へと進み続ける俺とバカ。

 ゴッという音がしたと思った時には俺は意識を手放していた。



・・・・・・・・・



 一体何があった? 事故か? 根元みたいな阿呆と一緒に乗っていたから事故に遭ったんだろうか? そりゃ言いすぎか? 体が動かしづらい。感情が高ぶって仕方ない。我慢できない。

 いい年した四十男の俺が声を上げて泣き出した。どこか痛めたのだろうか、やけに甲高い声に聞こえるが、あまり不自然な感じもしない。



・・・・・・・・・



 半年か、それ以上か、いや、一年は経ったか。時間の経過とともにぼんやりと事態が掴めてきた。何が起きたのか皆目見当もつかないが、俺はどうやら外国に生まれ変わったらしい。どう見ても俺の体は赤ん坊にまで縮み、それに伴って力や体力、感情までもが相応になってしまっているようだ。ついでに言うと片親だと思っていたのだが、ちゃんと両親共にいると知ったのは最近だ。母親にも髭が生えているなんて、誰が思うよ。

 今まで積み重ねてきた記憶と知識はある。だが、ある時に愕然としたことがあった。あまりに暇なので前世の最後の時を思い浮かべていた時だ。そう、根元のバカのポカのせいで客先にお詫びに行った帰りの電車。

 根元が言っている内容はそれほど変なのか? 変だ。いや、変とは言い切れない。冷静に、集中して考えると俺の知識や常識は変だ、と言うが、もっと奥の方、感情は若干だが根元に賛成しているのに気付いた。あの時以外でも、常々苦々しく思っていた彼の発言の数々……。

「そういうの、社畜って言うんすよ?」
「そんな自分のプライド捨てて、どうすんすか?」
「労働者の権利っすよ!」
「別に会社のために働いてるわけじゃねーすっから、俺の人生っす」

 バカ丸出しの発言の数々だが、俺の心根では賛同の声が上がっている。今までの人生で学んできた知識や経験と照らし合わせて明らかに間違っていると判断できるが、真剣に考えないと、つい何の気なしに「そうだそうだ」と言う俺がいる。なんだこりゃ? 俺は根元級のアホになっちまったのか? まぁ用心して考える癖をつける他ないだろう。

 根元のアホについて考えるのも嫌になったので、妻や息子たちなど家族のことを考える。もうずっと会っていない。元気にやっているだろうか? 病気はしていないだろうか? 生活はどうなっているのだろうか? ああ、勤務中の事故なんだし、会社からかなりの見舞金も出るだろうし、保険もある。息子二人も数年で成人だし、それまで生活するくらいは問題ないか。ん? 会社からかなりの見舞金? 根元にもかよ! あんな奴に一円たりとも会社の資産を払わせるのは忍びないなぁ。

 暇過ぎて仕方ないのでこんなことばかり考えていた。家族のことを考えるとすぐに感情が高ぶり、泣き出したりしてしまうのにももう慣れた。そんな時だ、新しく見る顔の殆どが俺にあることをしているのに気が付いた。彼らは大抵「ステータスオープン」と言いながら俺に触る。この国だか地方だかのお呪いだと思っていた。

 しかし、命名の儀式で神官だか司祭だか僧侶だかよく判らないが、聖職者までもがお呪いを唱えて俺に触った。そして、そのお呪いの時だけちょっと台詞が長かった。最後にはネームドと言っているように聞こえた。言葉の端々に英単語や場合によっては日本でもお馴染みの単語が交じることには気がついていた。だから英語圏ではない、どこか別の国だろうと思っていた。

 簡単な言葉くらいは既に覚えていた。聖職者にネームドと言われたあと、父親は俺に触れるとステータスオープンと言い、直後に聖職者に「確実に名前が変わっている」みたいなことを言っていたのだ。ちなみに俺の新しい名前はズヘンティス・ヘリオサイドだ。ヘリオサイド士爵家の長男で跡取りだ。

 そして気が付く、真のステータスオープンの意味。俺はあまりのことに動転して泣き出してしまうほどだった。【固有技能:予測回避】だと? 意味がわからん。だいたい技能って何だ? 他にも【特殊技能:赤外線視力インフラビジョン】なんてものまであった。特殊技能についてはすぐに理解できた。赤外線視力インフラビジョンと思い浮かべると視界が変わるのだ。なんというか、色とりどりのサイケデリックな視界になる感じだ。しかし、固有技能はイマイチよくわからなかった。何度か使ってみたが、何が変わったのか全く理解できなかった。使ったあとは眠くなってしまうのでさっぱり理解できないので忘れてしまった。

 固有技能について真に理解できたのは三歳くらいのことだ。二つ上の姉と喧嘩したときに思い出して使ってみた。心なしか姉の平手の目指す位置がわかったような気がした。気がしただけでよけられなかったが。喧嘩の間、何度か使ったが、俺が急に眠り込んでしまったので姉は殺してしまったのかと大慌てだったそうだ。

 そのとき、なんとなく理解できた。『予測回避』とは、何か俺めがけて運動している物の目標点を「予測」し、最適な「回避」の為の体の動かし方がなんとなく理解できる、という物だった。使い方を理解するとすぐに固有技能のレベルは上昇し、俺は神に会った。

 許された質問時間の半分ほどを使い、残された家族のことを理解すると、残りの半分は俺が疑問に思っている点を聞いてみた。俺の種族や政治形態、時間の概念、通貨の概念、このあたりでタブーとされていること。魔法については当時知らなかったので聞き漏らしたのは痛恨だった。まぁ、今は問題ないが。あと、固有技能を使うと眠くなることについても聞き忘れた。まぁ今は十回や二十回くらいではちっとも眠くならないから問題ないといえば問題ない。

 世の中のことが朧げではあるが理解できた。もう三年も経っているので今更前世に未練はない。あったが、家族はそれなりにやっているらしいからいいだろう。俺は俺の今後を心配すべきだ。まずは根元のバカを探す必要があるだろう。あんな奴でも一応俺の部下だったのだし、まだ首にする前だ。前世の人間関係を持ち込んでも意味は薄いだろうが、それでも繋がりは繋がりだし、いくらバカとは言え、日本で教育されていたのだからオース一般の人達よりは少しはオツムも上だと思いたい。

 事故死したのはほぼ同時だったろうし、席も隣だったから、意外と近くにいそうな気もする。同じ村にいたりしてな。事故死した人たちは「同時に生まれ変わっている」らしいから同年代だろう。探すのは簡単そうだ。……ちっとも簡単じゃなかった。村には俺と誕生日の近い子供はいなかった。一番近い子でも半年離れていた。念のため、無理を言って会ってみたがどう見ても幼児だ。演技とも思えない。

 そうこうしているうちに七歳になり、剣の修行が始まった。どちらかというと剣よりは斧槍に稽古の重点が置かれていた。山人族ドワーフは大人でも身長が低いので剣の稽古も決して悪いことはないのだが、リーチのある武器か、リーチが短くても手斧など力の込めやすい武器を好む。十歳まではほぼ素振りで型をなぞるだけだが、十歳からは模擬戦も組まれるらしい。俺の固有技能が真価を発揮するのはその時だろう。それまではあまり意味はない。それに、レベルアップ時の成長率も俺は高いらしい。今からあまり固有技能を使ってレベルアップを急いでも仕方ないだろう。最後にモノを言うのは地道な稽古のはずだ。レベルアップは暫く考えず、ひたすら稽古に邁進し、体を作るほうが先だろう。

 オースには魔物もいるらしいから、子供の時分から戦い方を学べることは幸運だ。学生時代は空手をかじっていたこともあるが、魔物を相手に俺の半端な空手が通用するとはとても思えないので、武器は必要だろう。銃でもあれば一番いいのだろうが、あいにくとそこまで文明は発展していない。火薬がないのはともかくとして、金属が青銅だとか鋳鉄だとかで止まっていて鍛造すらろくにしていない。俺にそんな知識なんかないのであるものをうまく活用したほうがいいだろう。四十人近く日本人が生まれ変わっているのなら優秀な奴だっているだろうし、誰か作るんじゃないだろうか?

 そして十歳になり、遂に稽古は模擬戦も交じるようになった。俺はここぞという時に固有技能を使い、村でも負けなしと言われるのにそう時間はかからなかった。十二歳になる頃には攻撃を当てることは微妙だが、相手の、ここぞという渾身の一撃を躱し、たいが崩れたところに必殺の一撃を入れる俺の戦闘スタイルは親父や祖父、従士達にも手放しで褒められた。才能の見込まれる俺は来年からドーヴィン伯爵領の騎士団に入団を推薦されるらしい。

 騎士団か、格好いいな。銀色の板金の鎧を身に付け、馬に乗り、斧槍で魔物を退治する、絵本に出てくる騎士そのままだ。ゲームだと勇者ってやつか。ギガデインとかの魔法も有るのだろうか? 是非覚えたい。一層稽古に身が入った。村の子供と遊ぶ時間なんかも惜しい。昔は誘惑に負けそうになり我慢するのに骨が折れた。流石に今ではもう遊ぶなんて気持ちは無い。急がないと根元はバカだから死んじまうかも知れないしな。騎士になったら冒険者ってやつでもやって探しながらあちこちを旅するのもいいだろう。あ、俺長男だった。まぁ騎士団で出世すれば士爵家は姉ちゃんが適当な婿でも貰って継ぐだろう。

 果たして十三歳になったとき、ドーヴィン伯爵の騎士団の入団試験において俺は優秀な成績で文句なく合格となった。そのころ既に騎士団内でも万全な状態の俺に攻撃を入れられる奴はいなかった。一年後、努力が認められ、才能もあったらしい俺は国内最強の白凰騎士団への転団も決まった。



・・・・・・・・・



 白凰騎士団に入ると、驚きの連続だった。ベルグリッド家の王子にストールズ家の公子、さらには平民だが、サグアルというデーバス王国の諜報を担っている一族の族長の息子まで一年前から入団しており、既に俺の先輩として在籍していた。当然、俺もすぐに彼らに声を掛けられた。

 彼らには更に有力な仲間がいた。一人はゲグランと言って女性だが宮廷魔術師の男爵家の両親の元に生まれた優秀な魔法使いだ。全員彼女には魔法の師事をしており、既に魔法が使えるようになっているらしい。羨ましいことだ。また、もう一人、男性の仲間もいた。バーンズと言う男で、自由民なので騎士団には入れることができなかったそうだ。普段は冒険者としてオース人の仲間とデーバス王領のあちこちを旅して地形の把握に努めているらしい。流石に王子や公子とは言え、十四歳で権力を掌握出来るはずもなく、平民のサグアルを騎士団に押し込むのが精一杯だったそうだ。

 このうちゲグランの方は日本で婆さんだったらしい。しかし、なかなかそれを感じさせない若く豊かな感性を持った人だった。魔法使いに憧れていたらしく、オースに魔法があることを知り、かなり小さな頃から両親に魔法の手解きを受けて育ったとのことで、既にかなりの実力も持っている。もう一人のバーンズと共に数ヶ月に一度くらいだが冒険者として旅をして魔法を使うこともあるらしい。

 そして、俺にも魔法を教えてくれるそうだ。彼女は、

「折角神様が生まれ変わらせてくれた世界よ。誰でも必ず魔法が使えるようになるはずよ。だって、そうじゃなきゃ魔法が存在している意味がないもの。勿論才能に違いはあるでしょうけど、私はそう信じてる。皆魔法が使えるなんて、素敵じゃない?」

 と言って微笑んだ。ドワーフの俺にも使えるのだろうか?

 俺の知らない重要なことも幾つか教えてもらった。まず、俺もそろそろ忘れかけている根元の件だが、探すのは絶望的らしい。事故の犠牲者は一定以上の距離を置いてこの世界にばらばらに生まれ変わっているらしい。おそらく俺や王子達同様に黒髪黒目なのだろうが、名前は違うだろうし、年齢相応の容貌に人種的な特徴が足されているらしい。なお、俺のような亜人に生まれ変わっているというケースは彼らも初めて知ったらしく、非常に驚いていた。

 バーンズの弁によると、地球での両親から貰った遺伝子とこの世界の両親から貰った遺伝子が混ざっているのではないかという推測だった。本当かどうかなんて確かめようもないので、全員それで納得しているらしい。真実を知ったところで別に何かが変わるわけでもない。

 ところで、俺の白凰騎士団入りを一番喜んでいたのはサグアルだった。どうも俺が入るまでは騎士団に残り続け、軍を掌握するという役割を押し付けられていたらしい。そして、俺が入団する以前に出会っていた彼らは皆一様に戦闘が苦手で、一番マシでどうにか白凰騎士団の水準を満たせるかどうかと言うのが、サグアル。次にストールズ公子、そしてベルグリッド王子という順番だったらしい。

 ベルグリッド王子の実力は男性陣で最低だとは言え、ドーヴィン伯爵の騎士くらいの実力はあるから、そう卑下したものでもない。だが、揃いも揃ってこんな有様では軍の掌握は難しいだろう。バーンズはストールズ公子くらいの実力があった。騎士団で正式に訓練を受けたわけでもないのに大したものだが、どうやら前世は高校の体育教師で剣道部の顧問をしていたらしい。なお、ゲグランも貴族なので一応剣の心得もあるが、護身の域を出てはいない。

 確かに指揮官クラスは個人の武力、と言うか剣や槍の技はどうでもいいと言えばそうだが、文明・文化レベルの低いオースではそれなりに戦闘力も大切なファクターだ。その上で交渉力や調整力、政治力がないと侮られやすいことは確かだ。少なくとも軍の中で権力を求めるのであれば、個人の武勇はある意味で不可欠だとも言える。

 そういった意味で俺は白凰騎士団の団長を目指すことを求められた。そう簡単にはいかないだろうが、今後成人し、その後王子が正式に即位でもすればまず問題なくできるだろうとの予測だった。だが、可能であれば即位を少しでも早めたい。

 二十歳は流石に無理だろうが三十前には完全にデーバス王国の権力を掌握し、ベルグリッドが国王、サグアルが内務大臣(大将軍も兼任させられるところに俺が現れた)、ゲグランが筆頭宮廷魔術師を兼任した王立魔法学校の校長(本人の強い希望だそうだ)、バーンズが外務大臣と文部大臣を兼任、ストールズが宰相とそれ以外の大臣を兼任、という絵図を描いているようだった。

 何とも呑気と言うか、捕らぬ狸の皮算用とでも言ったらいいのか、評に苦慮する内容だ。だが、何も示さないよりはよほど良い。彼らの不足している穴を俺が埋めればいいだけだろう。話を聞くに彼らだってそれなりに苦労はしてきたのだ。少しでも国力を高め、将来デーバス王国を発展させよう、という心意気は買える。その為の準備だってやれる範囲ではやってきたことも聞いている。

 デーバスの中枢に日本人が多く集まればそれだけで噂になるし、権力を掌握してからなら何だって出来る。多少無茶だが、黒髪黒目を基準に全国で人探しだって可能だろう。大々的に発表すれば、噂を聞いた日本人が集まってくることすら考えられる。その中に根元もいるかもしれない。あいつは日本人としては愚鈍で馬鹿だが、切り捨てるのは忍びないからな。

 
次の話からまた本編に戻ります。

また、いただいたご感想に全てお返事ができません。
申し訳ありません。
活動報告でまとめてお返事することがあります。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ