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男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

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第四十話 パーティー

長いのでウザい人は最初の五分の一くらいと最後の五分の一くらいでもいいです。
7442年10月25日

 うーん、別に話しても問題はない。問題はないが、問題はある。非現実的だと言われ、馬鹿にされないだろうか? 子供っぽいと言われ、軽く見られないだろうか? その結果、契約終了と同時に去られでもしたら……。あ、向こうからは契約切れないか。だけどなぁ……。折角、知己を得、部下にした転生者だ。だが、こんな短期間で本当に相手の性格や心の内など見抜けるはずもない。それは向こうだってそうだろう。わずか数ヶ月で俺の何がわかるというのか?

 濃い交流をすれば期間など関係ないなどという幻想を信じるほど間抜けではない。あれほど俺を可愛がってくれた両親だって、俺の夢を聞いて認めてくれはしたが、共感はしてくれなかった。俺が抱いている夢はそれ程荒唐無稽に近いものだということは理解している。だから、ここで彼女たちに話したら両親ほど俺の事を心配してくれているわけではないだろうから、共感はもとより理解すらして貰えない可能性を慮るとなかなか口に出すのは躊躇われる。

 だが、いずれ必ず言わなくてはならないし、出来れば共感して協力して欲しいというのは本音だ。今後もっと多くの人を集めねばならないが、その大半は俺が彼らに利を提供することが俺に従う理由になるはずだ。別に給料以上の忠誠心などハナから期待するほうがどうかしているというものだろう。

 しかし、俺は神でも何でもないので、全ての管理を一人で出来るなどと自惚れたりはしていない。一人で出来ない以上、腹心は必要だ。問題は彼女達が俺の腹心として、ある意味で給料以上の忠誠を誓ってくれるかどうかということだ。俺には彼女達の心を惹きつける何かがあるなんて思えない。もちろん、二人共出会いはそれぞれの危機を救う形になっているから、俺に対する恩の気持ちくらいはあるだろう。あるよな? 無いと素で泣けてくる。

 十分な報酬を支払い、特別困るような生活もさせていない。扱いだってそれほど悪いことはないだろう。奴隷のように無茶に扱ったことなども一度もないと思う。だから、俺に恩義くらいは感じてくれているとは思いたい。だが、忠誠なんてそれとこれとは全く別ものだろう。幾らかは彼女たちからも情報を得られているのでお互い様と言えなくもないが、それにしたって俺のほうが支払超過なはずだ。

 ちょっと考え込んでしまった。

『そうだな……正直なところ、言うのは構わない。だけど、言うとある意味で軽蔑されるかも知れない、と怖がってもいる、と言うのが本音だな』

 俺がそう言うと、ベルが口を開いた。

『アルさん。先程も言いましたが、私達はそんなに信用がないですか?』

『信用がないとか信用している、と言うのとはちょっと違うなぁ。僅か数ヶ月ではあるが、同じ釜の飯を食ってきた仲だ。信用はしているさ。だけど、そういうのとは違うんだ。そうだな、ちょっと脇道に逸れるかも知れないが聞いてくれ。ベル、君は両親や兄弟の事をどう思っている?』

 いきなり両親や家族を持ち出されてちょっと面食らったのか、ベルは多少言葉に詰まりながらも答える。

『え? 私の両親、ですか? コーロイルの家は多分オースでも一般の準男爵家だと思います。それほど裕福ではありませんでしたが、生活に困るようなこともなかったです。それなりに愛されて育ってきたことも理解しています。でも……どうなんでしょう……どこか本当の両親じゃない気もします。育てて貰った恩は当然感じていますし、私も両親や兄弟を愛していると胸を張って言えますが……結局、私は彼を探す為に、家を出ました。
 当然、最初に言い出した時は反対もされました。多分両親は村に残って従士の誰かと結婚するか、さもなければ別の村の領主の子供と結婚させたがっていたと思います。それは理解できます。自分の娘が安定した生活を送れるように心を砕いていたのは理解できますから。ですが……私はどうしても彼と会いたいんです。逢わなければいけないんです』

 まぁ今まで付き合ってきた中でほぼ推測していた通りの回答だ。

『そうか、ラルファ、お前は? ゼノムをどう思っている? ああ、言いたくなければ無理にいう必要もないよ』

『いっつも思うんだけどさ、何で私だけお前扱いなのよ? 別にいいけど。ゼノムはねぇ、やっぱりお父さんだね。私、転生前は高校生だったけど、両親はあんまり家に居なかったし、正直印象薄いんだよね。刷り込みって言ったっけ? あのひよことかが生まれて最初に目に付いた動くものを親と間違えちゃうの。あんな感じかな? 生まれ変わって気がついたらいつもゼノムが傍にいて、私を守ってくれてた。危ないことも何度もあったし。それでもゼノムは私を見捨てないで育ててくれてた。確かに本当の親子じゃないけど、もう何年も一緒にいるし、すっかり家族ね』

 ま、そんなもんだろ。

『そうか。だけど、扱いについてはてめーの胸に手を当てて考えろ。オメーは生意気なんだよ。それから、ベルの方がずっと可愛いからな。分け隔ては当たり前だっつーの。あと、別にいいならそもそも言うな。黙ってろ、そういうところがいちいち子供なんだよ、お前は』

 こいつは思ったことをズケズケと言うからな。特に俺にだけ。ある意味ミルーに近い。

『はっ、なぁんだ、アル、ベルのこと可愛いと思ってるの? 好きなの? 残念でした、ベルには彼氏いま~す。ベルの胸は彼氏のもので~す』

 こ、このやろ……。このむかつく笑顔を殴りつけたくてしょうがない。おさまれ、俺の右腕よ。

『ああ、ベルは可愛いだろ? お前と違ってこましゃっくれた事なんか言わないしな。あと、お前ごときにいちいち言われなくても彼氏がいることくらい知ってるわ。ああ、ベル、気にしないでくれな。こいつがあんまり阿呆だから『ふふっ、解ってますよ。多分アルさんは私のことは仲間とか部下以上に思ったりもしていないでしょ? そのくらい解りますよ。ラルだって本気で言っていないですから』

 だよな。確かにベルの胸は注目に値するが、兎人族の平均くらいで、種族から見ればそうおかしくもない。日本人的な感覚だと充分おかしいけど。だが、俺はベルの胸に意識を取られたことなんかないぞ。興味がないわけじゃない。むしろある。しかし、胸を注目されていい気になる女も日本人ならそうそういないだろうことも知ってる。

『まぁ、ラルファのことは放って置こう。で、今聞いた件だけど、俺は自分の両親や兄弟は好きだ。今年の春まで一緒に暮らしていたけど、確かに恩もあるにはあるが、そんなものより愛情の方が強い。転生して一つだけ良かったことは、家族が増えたことだと思っているくらいだ。
 だが、いま(オース)の両親もまえ(地球)の両親も俺の中で何一つ変わるところはない、というのは言いすぎかも知れない。君達には実感も少ないだろうが、俺は転生した時は45だったんだ。対して俺の両親は二人共そのとき二十代だ。最初は小僧とか小娘に見えた。何しろ俺よりかなり若いんだからな。だが、一緒に暮らし、面倒を見てもらっているうちに自然と尊敬できるようになった。日本じゃ有り得ない苦労やなんかも間近で見ていたからかもな』

 俺は鋼のような強靭な意思で今にも暴れ出しそうな右腕をねじ伏せ二人を見ると、更に言葉を続けた。

『ベルは、こう言っちゃなんだが、怒らないで聞いてくれ。両親より彼のほうが大切だと思ったから家を出た。違うか? 違わないよな。いや、いいんだ。ある意味で当然だよ。俺だって地球の両親は大切だったけど、それ以上に女房の方が大切だった。極端すぎる例だが、どちらかを選べと言われたら悩むくらいはするだろうが、結局女房を取るだろう。それと同じことだ。
 だが、これも冷静に、感情抜きで考えて欲しい。自分の事を真に理解してくれているのはどっちだ? 自分が大変な間違いを犯したとして、庇ってくれるのは? 仮にだが、俺があまりに下らない犯罪に手を染めたとしても、女房には愛想を尽かされて三行半を突きつけられる可能性はあるが、俺の両親はたとえ俺が間違っていても、叱り飛ばしはするだろうが結局は庇ってくれると思う』

 俺の言葉に二人共考え込んでいる。彼女たちの答えが聞きたいわけじゃないので、俺は続ける。

『話を戻す。俺は家を出るにあたって目的については家族に話している。彼らは馬鹿にしないで聞いてくれた。多分、共感は得られなかったとは思うが、俺の事を認めて、しっかりやれ、と言って許可をくれた。それは俺の事を理解しよう、認めよう、自由にさせてやろう、という深い愛情があったからだと思う。変な言い方になるが、そんなの無理だ、悪いことは言わないからこっちにしておけ、と言うのだって愛情だ。どっちが良いなんてことじゃない。どっちでもいいんだ。ただ、心の底から馬鹿にしなければ、それは愛情だよ。俺はそう思っている』

 二人は俺の目を見ている。

『……ラルファ、ベル。二人共大切な俺の部下だ。だけど……だけどさ、俺の目的を、夢を聞いても俺の両親のように笑わない、なんてことはないだろうと思ってる。むしろ、呆れかえるかも知れない、とか、見捨てられるんじゃないか、とか思って、それが怖かった。申し訳ないが、流石に二人から俺の両親と同じような愛情を感じたりはしてない。二人共そんな気持ちなんかないだろう?
 二人にだって、例えば、ベル、君だって彼に言えなくても、両親には言えるようなこともあるはずだ。ラルファだってそうだろう? お前に彼氏がいたかどうか知らないが、友達でも親友でもいい。彼だか彼女だかには言えないけど、両親やゼノムになら言えることなんかあるはずだ』

 そう言うと俺はラルファを見、ベルを見た。彼女たちは理解したんだかしてないんだか解らないが、それなりに咀嚼はしてくれたようで、頷いている。

『それと、全く逆のこともある。俺は女房には言えることでも両親に言えないこともあった。だが、その場合、重さが違う。この場合、どちらかというと、両親に不安を抱かせないように、心配させないように、という方が強い。結局両親を理解しているから、こんなこと言うと心配させるだろう、とか、いらぬ気を回させてしまうだろう、という方が近い。
 同じように、例えば男同士、女同士でなら言えることもあるだろう。友人でもこいつには言えるがあいつには言えない、なんてこともあったはずだ。だけど、言える内容の許容範囲については自分が真剣に話す場合、家族であり、おそらく自分を一番理解してくれている両親に対してが一番大きいはずだ』

 同意は得られたようだ。ま、ここは人それぞれだろうから一概には言えないんだがね。彼女たちは転生前は若かっただろうし、学生だったらしいから、当時の俺よりはよほど両親に対する依存などは大きいだろう。ラルファも両親とは疎遠だったらしいが、彼女も馬鹿じゃないから、両親に一定の感情は持っていたろう。

『今話した内容は、今まで俺が究極としている夢をこれまで家族以外に話していなかった理由だ……。この後に及んで俺はまだ迷っている……。思い切って言ってしまえ、という気持ちと、言ったら表面上は納得してくれたり、理解してくれていても、俺がいないところで馬鹿にされてしまうんじゃないかという、臆病な気持ちがぐちゃぐちゃになっている。これは決して二人のことを信用していないという事じゃない、というところは解ってくれるか? さっきも言ったが、別に話しても直接害はない。二人がみだりに言いふらしたりしないということも理解している。そのくらいは信用、いや信頼しているよ、だけどなぁ……』

 俺が言葉に詰まると、ラルファが言う。

『ん~、アルの言いたいことは解る、と思う。でも、そんなに変なこと考えてるの?』

 ラルファの後を継いでベルも言う。

『確かに、言いにくいことはあるでしょう。でも、私達は何日も二人で相談してきました。時にはゼノムさんや、ズールーやマルソーとも話したこともあります。皆、最初は不思議がっていました。でも、あるときゼノムさんが私達に言ったんです。長くなりますが聞いてください。「ズールーとマルソーはアルの奴隷だから、この際置いておこう。だが、俺達三人はアルに金で雇われているに過ぎない。使用人と一緒だ。使用人がみだりに主人の心に踏み込むべきではないだろう。だけど、お前達二人は唯の使用人じゃない。もしアルが心を開いてくるなら、それは同じ転生者であるお前達だけかも知れない。ベルとの出会いの件もある。転生者だからと言って決して味方になる奴ばかりでもないだろう。だが、それでもアルは仲間が欲しいんじゃないかな? 自分の心の内をそっくり吐き出せるような、家族に近い存在が欲しいと思う。多分アルにはアルの考えがあるだろうし、意地もプライドもあるだろう。そこは配慮してやらんとアルに限らず誰の心を開くことも出来はしないだろう」って言ってました。一言一句同じじゃないですが、意味は同じです』

 そっか、ゼノムがな。

『もう三ヶ月以上は毎晩話してるね。大抵はベルと二人だけど、ゼノムやズールー、マルソーも入ることもあったよ。それこそ、いろいろ考えてきたよ。アルがお金を稼ぎたいというのは本当だと思う。これはハッキリしてると思ってる。だけど、何のために? 生活費くらいだったら一応貴族なんだし、まじめに働けばそうそう困ること無いでしょ? 迷宮での稼ぎだって、私たち、すごいじゃない。一層や二層でならアル一人だけでもものすごく稼げるよね? もっと贅沢な暮らしだって出来ると思う。
 正直な話、私達も生活していくだけなら商売とか料理屋でもやればそこそこいけそうな気持ちはあるよ。昔はそうでもなかったけど、お陰で元手は相当出来たからね。ゼノムと二人でなら充分何か小さい商売や店くらいは出来るとは思うわ。でもね、アルが求めてるのはそんな、何百万とか何千万Zとかいう金額じゃないんでしょ?』

 そうだな。何百億って単位だよ。

『私達もいろいろ考えてみたんです。それだけの大金が必要なことってなんだろう? 奴隷を買う必要があることってなんだろう? って』

『ま、幾つか考えて結論も出したんだけどね。一、奴隷を沢山買って何処かいい土地の開墾をして正式な爵位を得て領主になる。二、とても大きな商売を始めたい。外国と大きな商売をするとかね。その商売の資金。三、お金を貯めて賄賂に使う。ロンベルト王国で国に、公務員? として働くのに就職活動のためにお金が必要。宮廷魔術師を目指すのかな。四、三に近いけど同じく賄賂に使って騎士団に入団して騎士を目指す。運がよければどっかの領主の騎士団長に拾ってもらえそう。五、海賊王に俺はなる。このどれかって思ったの』

 一と二は至極真っ当だが、三や四ってどうよ? そんな事しなくても俺なら……ま、いいや。それに五は一体何だよ。どこかで聞いたフレーズだが。っつーか海賊王って完全無欠な大犯罪者じゃねーか。世界中どこ行ってもまともに相手にされねーよ。こん中では一番近いけど。ま、一と五の一部を足した感じが一番近い。

『今のアルさんの話を聞いた限りだと三や四ともかく、一や二ということもなさそうです。ひょっとして、ゴムの実でも食べたんですか? バークッドで』

 ベルも冗談言えるんだな……。

『まさか、本当に海賊王目指してるわけじゃないでしょうけど、たとえそうでも私は笑わないよ。もうアルの強さ知ってるもん。あれだけ魔法使えるのって凄いよ。私なんか魔法は使えるようになったけど全然だしね~』

 ラルファ、お前って意外と……いいやつかもな。

『そうです。私たちはアルさんの目的を聞いて笑って馬鹿にするようなことは決してありません。そこは保証します』

 ベルも、ありがとう。だけどさ……

『二人共、ありがとう。この通りだ』

 そう言って二人に頭を下げる。そして、

『だけどさ、怖いんだ。いい年したおっさん、いやもう爺さんか。が何言っているんだって言われそうでな……』

 本当に二人の気持ちは有難いし、嬉しい。俺と一緒で見た目は小娘だが、二人共30を超えている精神年齢のはずだ。うん? 30を超えている?

『……ちょっと……ちょっと待ってくれ……』

 俺はこめかみを右手で掴み、左手の掌を二人に向けると、考えを整理した。

 俺の精神が肉体年齢にある程度引っ張られているのは本当だろう。後から考えるとどうも本来の俺では考えられないような行動を取っていることもある。その時は違和感なく行動しているが、後々自分の行動やその結果について整理している時などに度々気がついていた。

 ある意味で『自分の国を作りたい』という夢だってそうだと思っている。中学生くらいの年齢で、無茶苦茶な暴力を振える膨大な魔力を持ち、恐らくだが既にロンベルト王国の宮廷魔術師のなんとか侯爵を超えた魔法の特殊技能レベルを誇っている。レベルアップなどのルールにも固有技能のおかげで気がつき、更にはその為に必要な経験値の効率は最終的に他人の三倍に達する。レベルアップ自体でも一般の人よりも大きく成長でき、こちらも三倍だ。

 魔法の技能とそれを支える膨大な魔力のおかげで、先に敵対的な相手を発見できさえすれば、迷宮の中でも苦戦すらしない。本気でやろうと思うなら、銃や大砲のような遠距離から精密に狙える兵器が存在しない(おそらく存在したとしても精密に狙えるのはいいところ数十メートルが関の山だろう)オースの世界でなら俺一人で数百人からことによったら千人くらいの軍隊なら文字通り全滅させることも出来るだろう。資金と時間さえ許すのなら、腕のいい鍛冶職人などを雇い入れ、オースでは大量破壊兵器とでも言うべきものすら作り出せる自信もある。

 こんな状況で度々だかいつもだかは判らないが(多分、いつも、という感じが正しいと思っている。そうでなければちょっと説明がつきづらい)中学生並みのメンタリティーであれば『自分の国を作りたい』というのも頷ける。正直な話、日本の戦国時代の成りあがりの代表格、斎藤道三には俺は小学生の頃から憧れていた。織田信長や豊臣秀吉、徳川家康に武田信玄、上杉謙信など、日本では大人も子供も憧れている人は多い。むしろ、いい社会人や組織の管理職、会社経営者たちが真剣に「豊臣秀吉に学ぶ人心掌握術」とか「先を見通す戦略眼:織田信長」とかいうビジネス書を読みふけっているのだ。

 全員、立身出世物語は大好きだ。俺だってそういった本は何冊も読んだ。歴史小説も結構読んだ。俺の周りの同年代の人たちもかなり読んでいたように思う。少なくとも管理職になってから勉強を続けないようであればそれ以上の昇進なんか難しい。お堅いビジネス書だって少しでも読者に手に取って貰いやすいように人気のある戦国武将から名を借りてきたりしているのだ。

 それはともかく、俺が肉体に精神が引っ張られている状況であれば、彼女たちにもそれは当てはまるのではないだろうか? 十四歳といえば大人への入口の年齢と言えなくもないが、所詮はローティーン。たかが知れている。何しろ俺だって後々思い出して悶えるようなことはある。そりゃ、多少は笑われるかも知れないが、今の様子から考えて、笑うだけで済まされることもないだろう。慰めるくらいはしてくれそうだ。

『ま、いいか……。俺の目的は、国を作ることだ。いつか、自分の国を興して、その国の国王になりたい。今は、その為の資金稼ぎの期間だと思ってる。金は出来るだけ沢山必要だからな……。っはは……笑ってもいいんだぞ。そうだな、怒ってもいい』

 俺の言葉を聞いていた二人は、お互いちらっと見つめ合うと吹き出した。……やっぱな。そうだよな。こうなる気がしてた。だから言いたくなかったんだよ……。こりゃ明日から面倒くせぇな。ベルはともかくとして、ラルファはからかってくるだろう。だいたい、ベルだって俺の目的を聞いて笑って馬鹿にするようなことは決してありません、とか言った舌の根も乾かないうちにこれか……。仕方ないといえば仕方ないが。

『ちょ、ベル、聞いた? 俺の国を作る、キリッ、だって。一緒じゃん』

 ……どうしてやろうか?

『っぷ、確かに聞いた。でも、私の勝ちね』

 え?

 私の勝ち? 勝ちって、賭けでもしてたのか? ベルとラルファが? 俺の目的当てクイズ? は? なに? 俺ってここまで舐められてたの? ふつふつと怒りの感情が湧き上がってきた。このガキ共、俺をダシに遊んでやがったのか? 荒唐無稽だとか、子供っぽいとか言われて笑われるのであれば仕方ない。そういう意味なら馬鹿にされるのも覚悟してた。

 だけど、内に秘めた想いをネタに賭けをしていただと? 人を小馬鹿にするのも大概にしろ。煩いことは言いたくないが、俺は彼女達よりも年上だし、且つ雇用主だぞ。ここは我慢して後々二人だけの時にでも隠れて笑うのならまだ我慢も出来る。だが、面と向かって「賭けをしてます」だと? そして笑いものか。俺はつくづく人を見る目がない。いや、転生者だからと言って傍に置いたのは俺の意思でもある。俺の傍にこいつらが現れた運が悪いってことか。二人共社会人経験もないまま死に、まともな方法で働きもせずその後子供からやり直したのだ。

 ああ、前世の部下たちが懐かしい。彼ら彼女らはまともだった。真剣な話し合いの場で上司を面と向かってあからさまに馬鹿にするようなことはなかった。TPOを弁えた立派な社会人だった。腹の底では何を思っていたのかは解る訳もないが、常にさりげなく俺に敬意を払ってくれた。俺も自分の上司にはそうしていた。俺は営業部次長兼営業一課長として、上司である取締役営業部長やその上の肩書き付きの経営陣には常に敬意を払って接していた。処世術ではない。それは当たり前のことだ。

 きっと俺は今、苦虫を噛み潰し、額に青筋でも立てているかのような表情でいるんだろう。前世の十四の頃の俺なら手が出ていてもおかしくないくらい腹を立てている。感情が肉体年齢に引っ張られているとは言え、経験もあるし、その経験を下地にした性格もある程度は醸成されているだろうから、ただの十四歳ではないのだろうが、腹が立つものは立つ。

『お前ら……舌の根も乾かんうちに……畜生……』

 そこに直れ! 素っ首叩き落としてやるわ! 出来るわけねぇけど。だが、これを放っておいたら彼女達の今後にも良くない。説教が必要だ。怒鳴りつけたい言い訳にも丁度いい。面と向かって目上の人間を小馬鹿にするリスクを解らせてやったほうかいいだろう。何も、心の底から尊敬しろとか言うつもりもないし、そんな事これっぽっちも思ってもいない。別に心の中では馬鹿にしてたっていいさ。尊敬に値しない上司などゴマンといるだろうしな。だがそれを表には出すな。上司は上司という、ただそれだけで尊敬し、敬愛するに値する存在だ。そういう上司の方が尊敬に値しない上司より数多く存在するのも事実だ。そういう人だからこそその立場まで出世できたのだから。もしくはそういう人を出世させ管理職として用いている組織の方が強靭で大きく成り易いとも言える。

『アルさん、笑ってしまったのは謝ります。ごめんなさい。でも、決してアルさんの夢を聞いて、それを馬鹿にして笑ったのではありません。私の予想とぴったりだったから嬉しくて笑ってしまったんです。聞いてください。私達は先ほど、アルさんの目的について沢山話し合って来た、と言いました。
 その中で一つ、建国、というのがありました。それを言ったのは私です。私はいい夢だと思います。小さくまとまるより、よほど男らしくて大きな夢じゃないですか? 何も恥ずかしいところは無いと思います。確かに、もし日本でそんな事を言う人がいたら私も馬鹿にして笑っていたかもしれません。でも、ここは日本ではありません。オースです。建国のチャンスは幾らでもあると思います』

『そうね。笑ったのは悪かったわ。謝る。ごめんなさい。ベルが言ってたことと同じだったからね。私はねぇ、アルはお金稼いでそれを裏金にして袖の下使って宮廷に入り込んで裏から国を乗っ取るとかそういうのかと思ってた。それはそれで面白そうだと思うんだよね。でも、結構健康的じゃない? アルはもっと……腹黒いタイプかと思ってたんだよなぁ。遠くからバレないように魔法で邪魔なやつ殺すとか、アルなら誰にも知られないで出来そうじゃない?
 で、その責任を全然違う人に擦り付けてその人がやったように証拠を作るの。魔法で。言い逃れできないように証拠を作り上げて責任引っ被せて殺すとかさ。そうして段々出世していって気がついたら大臣? だっけ? ああ、摂政ね。ありがと。そんな感じで政治家の最上位になって国王とか王族はすっかりアルのことを怖がってアルの顔色窺いながら暮らすとかさ。で、私たちはそんなアルのこと知ってるからアルにお金貰って幸せに生活するの』

 ……怒鳴りつけてやろうかと思ったが、賭けてたわけじゃないのか? まぁ当てっこくらいな感じか? いや、そんな事よりやっぱラルファ、お前さ……。一体お前の中で俺はどうなってるの?

『……まず、俺の夢の内容について予想したりしてたのはいい。そのくらいは別に問題ないよ。だけど、もしそれで賭けをしていたのなら怒るぞ。ベルも……俺のことを馬鹿にして笑ったんじゃないということは信じるよ。だが、ラルファ、お前は本当に馬鹿だな。そんなこと言って俺が嬉しがると思うのか?
 何が私達はお金をもらって幸せになるの、だよ。ふざけんな。仮にそうなったらお前みたいなアホは真っ先にぶっ殺して後顧の憂いを断つわ。だいたい、お前、俺の事そんな風に思ってたわけ? なにその陰険な感じの奴。誰? え? 俺? 俺なの? 俺今までお前に陰険に当たってきた事無いよね? お前、そんなに俺の事陰険野郎にしたいの? 何か俺に恨みでもあるの?』

 一気に言うとどっと疲れた。

『ばっかねぇ。別にアルに陰険になって欲しいんじゃないよ。そうやって行けるくらいのコネや頭はあるでしょ? お金さえあればそのくらいアルなら出来るでしょ? あんた、頭良さそうだし、力もあるしさ。成功率考えたら私の案の方が安全な上に実現性高いじゃない? 感謝して欲しいのはこっちだよ。アイデア料でボーナスくれてもいいんだよ?』

 もういいや、こいつは。だけど、こいつもよく考えたら俺の夢の内容について笑ってたわけじゃないんだよな。大方二人で予想している時にベルが俺のセリフと同じかソックリなことでも言ったんだろうということは解った。なんだか毒気も抜かれたし……さて。

『うるせー、馬鹿。何がアイデア料だ。お前の案は却下だ。採用に値せん。……それより、ちょっと真面目な話、どうなんだ? 変だと思わないのか?』

 俺はそう言うと二人を見た。

『アルさん、アルさんは気付いているかは解りませんが、私は思うところがあります。ラルには否定されましたが……聞いて貰えますか?』

 ん?

『最近、私の頭が変なんです。あ、いや、頭がおかしいとか気が狂ってるとか病気だとかとは違うんです』

 ベルが喋りだすとラルファが口を開いた。

『ベルは考え過ぎだって。私は何も感じないし、変だとも思わないけどな』

『だから、ラルは元々若かったから……私も若かったけどラル程じゃないから。アルさん、まず、先程のアルさんの質問の件ですが、私は変だとは思いません。それどころか、羨ましいとか、わくわくする、という気持ちすらあります。実は……何年か前から思っていたことが関係していると思います。聞いて貰えますか?』

 ベルは再度俺に質問をしてきた。しかし、俺の夢に対して、羨ましいとか、わくわくする、だと?

『話は私の精神性についてのことになります。私は転生する前に21歳でした。学校の成績もそれなりに良い方だったと思っています。だけど、たまに思うんです。これ、私の考え方じゃないかも知れない、私はこんなことで喜んだり、ここまで悲しんだりしないはずだって……。でも思い返してみると十代の半ばくらいであれば充分に納得できたりもするんです。私が一番おかしいと思ったのは、私が生まれて暫くした頃のことです。上の兄弟にあやされた私は別に大したことでもないのにすごくおかしかったり、悲しんだりしてしまっていたんです。
 そういった感じは年と共に段々と減っていきました。でも、どう考えても二十歳過ぎたいい年の大人が、文字通りの子供だましのようなあやされ方で一喜一憂したりしているんです。その時は別に問題に思ったりはしないのですが、後から考えると明らかにおかしいんです。そういった事は赤ん坊の時だけじゃありません。今、この瞬間もです。怒らないで聞いてください。私はアルさんの夢について実はある程度推測していました。勿論、建国以外でも何の不思議もありませんでしたけど。建国、というのもあるかも知れないなと思っていたんです』

 ……。

『私たちは二十一世紀に生きていた日本人です。失礼な言い方ですが、その日本人が国を作りたい、と言うのには違和感があります。今ある国の中で出世したい、力を示して有名になりたい、とかの方がまだしっくりきます。それだって、充分に変わっています。普通なら内閣総理大臣になりたいとか言うのって、小学生ですよね。
 一億人以上の人口がいる中で内閣総理大臣に上り詰めるのは大変な困難が予測されるからです。個人の力だけではどうしようもないでしょうし、お金も、出来れば親が政治家でその票田を受け継ぎでもしたとしてもなかなか難しいことは十代も前半くらいで理解している人がほとんどです。まだプロスポーツ選手を目指した方が現実的だと思います。それだって幼い頃から目標に定め、適切なトレーニングを積んだ上に、才能に恵まれないと難しいでしょう。タレントなどの芸能人もしかり、です』

 ベル……。

『今のオースはアルさんも以前言っていた通り、文明レベルも、文化レベルもいいとこ戦国時代です。一部江戸時代くらいに発達してる部分もあるとは思いますが、下手すると奈良とか平安時代かと思うようなところも多くあります。専制封建政治が行われ、血筋で身分も分けられ、奴隷が当たり前のようにいて、尚且つ魔法があり、魔物がいます。ステータスオープンや技能など、ゲームみたいなところもある、変わった世界です。こんな世界にアルさんや私たちは生まれ変わってきました。はっきり言って、こんな世界で日本人の知識を持っているのであれば、いろいろなことが出来るでしょう。
 国を作るなんてこともその一つだと思います。能力と、それを支える強固な意志があれば何をやってもいいのです。軍隊を組織して土地を侵略するなんて、当たり前のことじゃないですか。モンゴル帝国を築いたチンギスや、鎌倉幕府を開いた源頼朝だって沢山人を殺し、殺させたはずです。中にはなんの罪もない人たちや赤ん坊だっていたでしょう。そりゃあ、人殺しは良くないことです。
 でも、そんなの当たり前のことです。チンギスや源頼朝だって理由もなく人を殺したりなんかはしなかったでしょう。究極的には自分の覇道に邪魔だ、という理由があったはずです。だからと言って二十一世紀の日本人は彼らのことを残虐だと言って責めたりはしていません。なぜなら、その当時において普通のことをやっただけだからです。当時、国王や豪族になりたがる人は内閣総理大臣を目指す小学生より多くいたのではないでしょうか。勿論、非常に困難な道は予想されますから、諫められたりして諦めたりした人も数多くいたでしょう。非現実的だと言って笑う人だっていたに違いありません。
 それは、その当時だと内閣総理大臣やプロスポーツ界の頂点を目指すようなことだったからでしょう。でも、でもですよ、私たちは普通の人とは違うんです。確実に才能に恵まれています。肉体レベルの上昇具合は三倍なんでしょう? その上固有技能もあります。いいじゃないですか、新国家建設。だいたい、考えてみてください。バルドゥックの迷宮だって、本来数年がかりでなきゃ足を踏み入れられないような階層に数ヶ月で辿り着いたんですよ。勿論、それはアルさんがいなければ無理です。でも、どうですか? あんなに体が大きくて、戦争にも行ったことがあるズールーより、ラルの方が強いんですよ?』

 ベル……お前。ベルはくたっと垂れた耳を髪とともに撫で付けて位置を修正しながら続けた。

『そういった事が事実として判明している以上、国王を目指すなんていいじゃないですか。国を作るなんて格好いいじゃないですか。私は笑いません。アルさんなら出来るんじゃないか、とすら思いますよ。困難があったとしても何とか乗り越えて行けるんじゃないかって……。こんな感覚を受ける私がおかしいのも解っています。とても成人を過ぎ、更に十何年も経った人が思う感覚じゃないことは理解しています。でも、そう思ってしまうんです。これは、私の気持ちが本来の年齢相応ではなく、今の年齢に近くなっているからだ、と思っています。私たちは記憶や経験は持っていますが、また赤ん坊から成長し直しているんです。感性は若くなっているんですよ、きっと。
 だけど、記憶があるからこういう事は恥ずかしいことだって思うんですよ。記憶があるからリスクばっかり考えて失敗することも心配してしまうんです。そりゃ、私だって冷静に考えて建国だなんて難しくて大変で、いくら能力や特別なレベルアップに恵まれていても失敗して死んじゃうかも知れないって思います。でも、そうならないための記憶と経験じゃないんでしょうか? 私たちは学んできました。こういう時代で建国に成功した事例を。失敗した事例を。それを知っているだけで能力だとか特別なレベルアップだとかよりすごいことだと思います。
 私は、いろいろ考えていた中で、建国、ということに思い当たったとき、納得と憧れを感じました。やっぱり私を助けてくれた人は凄いんだなって思いました。私は、恋人が転生していることを知ってから、彼にもう一度会うために無我夢中で、それ以外のことを冷静に考えることすらしていませんでした。生活の全てを彼と会うことだけに傾けて、余裕なんかなかったというのが本音ですが、これは言い訳です。
 勿論、彼のことは好きです。愛しています。もう一度会いたいです。でも、それだけじゃ日本での人生の続きを生きることが目的みたいですよね。その通りなんですが、それだけでは恥ずかしいと思います。私は彼ともう一度、オースで生きるんです。日本ではありません。彼の子供を産み、育て、オースに根を張るしかないんです。彼に会ったその時、私が子供のように彼と会うことだけを目的に、何も考えず、ただ生きて来たなんて思われたくありません。
 私は彼と未来を作りたいんです。彼と、子供に誇れる人生を送りたいと思います。彼と会えたらお手伝いしたいくらいですよ』

 ベル……お前……長いよ。でも、そうか、ベルも精神が肉体に引っ張られていることについて気づいていたのか。ラルファは元々が若すぎたから気付かなかったのかな? クローはともかく、マリーはその辺どうなんだろう。

『ベルはさ、難しく考え過ぎなんだよ。私はあんまり変な感じはしないね。でも、それはそうとして、アルが自分の夢を言ってくれたのは嬉しかったよ。やっと認めて貰えた気がした。私も別にアルの夢については笑ったりしない。アルがいいならいいんじゃないの? でも、そうなったら給料上げてよね。下手したら今より大変になるじゃない?』

 ラルファ、なんだよ、お前……。馬鹿じゃねぇの? 国作るんだぞ。そう簡単に行かないんだぞ。糞。給料分以上にこき使ってやるからな。覚悟しとけよ。

『……そっか。二人共ありがとう。それとベル、彼氏が、洋介さんが反対したらどうするつもりなんだ?』

 ベルは意外そうな顔をして言ってきた。

『え? 洋ちゃんは反対しないと思いますよ。むしろ喜んで手伝うかもしれません。私が話せばきっとわかってくれると思っています』

 ふーん、そうなのか。洋ちゃんのことは全く知らないからコメントしようもないけど、女に言われたくらいでそうそう手伝うかね? まして、手前の女に危険が及ぶかも知れないんだぞ。ま、今から心配しても始まらない。そん時はそん時か。

『わかった。洋介さんのことは今はいいや。その時改めて考えることにしよう。ラルファ、ゼノムはどうなんだ? 何か言っていたか?』

 ラルファは椅子の上で右膝を立てていたが、体を左に傾けると、ぷぅっと屁をこいた。本当に女か、お前。

『あ、ごめんごめん。おならでちゃった。出物腫れ物所嫌わずってね。えへへ』

『えへへじゃねぇよ! 屁ぇこいてんじゃねぇよボケ! ベルも何とか言ってやれよ!』

 ベルは眉根を寄せてしかめっ面をしていた。心なしか耳の垂れにも力強さを感じられない。もともと力強くなんかねぇけど。

『ラル、行儀悪いって言ってるでしょ。それに、今は真面目な話中よ』

『だからごめんって。で、何だっけ? ゼノム? ゼノムはねぇ、それでアルと友達になれるなら好きにしたらいいって言ってくれたよ』

 友達? 誰が? 俺が? ラルファ(こいつ)と? 何で? いや、確かに以前ゼノムからラルファには自分が連れまわしていたせいで友達がいない、と聞いたことはあるが……。

『そうですね。友達ですね。友達なら相手の夢に協力したっていいのではないですか?』

 ベルも頷きながら言う。え? お前もか? 俺、別に友達なんかいなくったって……。日本でも友達は何人かいたが、オースでは一人もいなかった。俺はそれでいいと思っていたし、変に情に流されたりする可能性もあるからいらない、と思っていたくらいだ。だけど、友達か……

『お前が俺の友達とか片腹痛いわ。少なくとも俺と同じステージに立ってから言え。馬鹿』

『ふっふーん、そう言いながらアル、にやけてる』

『にやけてますね』

『にやけてねぇよ。痒いだけだっつーの。アホ』

『ま、いいけどさ。でも、友達であって彼女でも何でもないからね。勘違いしないでよ。あ、これツンデレじゃないから。ああ、アルはツンデレとか知らないか。私、そもそもアルの顔、好みじゃないし』

 はぁ、もういいや。こいつには何を言ってもダメだ。俺だってお前なんか好みじゃねぇわ。

 だが、今日、俺たち三人はパーティーになったと思う。

 俺に仲間が出来た。

『あ、そうそう、もうひとつ教えて? アルは休みの日とか早く引き上げた日、繁華街の食堂で何やってるの?』

『は?』

『だって、ベルが言ってたよ。繁華街の食堂で道を眺めながら何か真剣にメモ取ってたの見たことあるって』

『はい?』

 思わずベルの顔を見る。まさか、性病のチェック、見られてたのか!?

『え? 私はたまたま見かけたことがあるだけで……見かけた時に声を掛けようとしたら、真剣な顔で食堂に入っていって、何かメモを取っていたから今後の作戦でも落ち着いて考えようとしているのかなってラルに言った事はありますが……』

『え? ああ、見られてたのか。いろいろな、計画とか……その、迷宮でのフォーメーションとか? 考えてたんだよ』

『ふーん、ちゃんと色々考えてるんだね。頑張ってよね。言ってくれれば私もベルも手伝うからさ。ねっ?』

 誤魔化せはしたようだが、なんか、いろいろ台無しな気分だ。身から出た錆だが。


 
無駄に長くてすみません。

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