挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
男なら一国一城の主を目指さなきゃね 作者:三度笠

第二部 冒険者時代 -少年期~青年期-

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

103/510

第三十話 実験

7442年8月15日

 ズールーと同じように神社で命名の儀式を済ませると、エンゲラは俺に引き渡された。
 ゼノム達には昨晩の食事の際に、新しい奴隷がやっと入荷したので買う事にすると言ってある。
 エンゲラを引き連れて昼食の為に待ち合わせしていた飯屋に足を運ぶ。
 俺がエンゲラを連れて待ち合わせの飯屋に入ると、入口脇のテーブルにいたラルファが声をかけてきた。

「その人が言ってた新しい戦闘奴隷?」

 なんだ、こんな場所の席しか空いてなかったのか。エンゲラを値踏みするような目つきで声を掛けてきたラルファに答える。

「そうだ、昨日腕は見てる。剣はベルくらいだな」

 俺はそう言うとエンゲラに向き直り、言った。

「エンゲラ、ここにいるのが俺のパーティーだ。挨拶しろ」

 俺がそう言うと、エンゲラは姿勢を正して丁寧に言った。

「マルソー・エンゲラです。本日からご主人様にお仕えすることになりました奴隷です。これからよろしくお願いします」

 彼女が挨拶するとベルが口を開いた。

「私はベルナデット・コーロイル。ここに座って。あと、私のことはベルと呼んで」

 そう言うとベルは中腰のまま右隣の席に移り、左隣に座っていたラルファとの間に席を空けた。
 エンゲラはびっくりしたような表情をしながらも、どうしたものかと俺の顔色を覗うように俺とベルの間に視線を泳がせていた。俺はエンゲラに頷いてやると、

「俺のところでは気にするな。座れ」

 そう言って俺もズールーの左に座る。
 エンゲラは「失礼します」と言ってラルファとベルの間に座った。

「私はラルファ・ファイアフリード。私のことはラルでいいわ」
「俺はゼノム・ファイアフリードだ」

 ラルファとゼノムが相次いで自己紹介した。次はズールーか。

「俺はダディノ・ズールーだ。お前と同じでご主人様にお仕えしている。俺のことはズールーと呼んでくれ。あと、俺以外の方々は奴隷じゃないからな」

 うむ、挨拶も済んだようだな。じゃあ、飯にするか。

 給仕を呼ぶと皆口々に食べたいものを注文している。おっと、エンゲラに言っておくのを忘れていた。

「エンゲラ、遠慮はするな。食って丈夫な体を作ることも俺の奴隷の仕事だ。何でも好きなものを食いたいだけ頼め。あ、俺は豚のソテーと魚の煮付け。ケイスァーゴがあればそれにしてくれ。あと、ビール」

「アル。あんたいつも野菜食べないのね。野菜も食べなさいよ。キャベツひと玉持ってきて。四つ割りに切ってね。それから別小皿にマヨネーズもつけて」

 うるせーよ。
 こんな事を言うのはラルファだと思ったろ?
 その通り、この元女子高生はなぜか知らんが、全員に必ず生野菜を食べさせようとする。
 それにはズールーも辟易としているようだが、最近はベルもラルファに同調気味だ。
 お前は兎だから良いだろうよ。
 なお、ゼノムは昔からのことなのですっかり慣れているようだ。

「……その、よろしいのでしょうか?」

 小声でエンゲラがズールーに確認している。

「ああ、良い。好きなものを食べて構わない。俺も最初は驚いたがな」

 ズールーも焼肉を頼んでいるようだ。
 だが、こいつは酒は飲まないんだよな。肉体的には俺より年上なんだから飲めばいいのに。

 確認したエンゲラはそれでも何を頼んでいいかわからないようで、結局ズールーと一緒の焼肉にしていた。
 今日は水曜だから休日だ。
 ズールーは料理が来ると自分の分の料金を支払っている。
 それを見てエンゲラは目を丸くしていた。
 勿論、大した料金じゃない。焼肉だって350Zだし、パンも20Zだ。
 俺は心配そうなエンゲラに微笑むと彼女の分の料理の代金を支払い、言った。

「俺のとこでは奴隷には月末にまとめてその月の給料を出す。今月末まではお前の必要なものは全部俺が出す。それと、迷宮に入るのは月・火・木・金だ。水曜と土曜は体を休めるために休日にしている。ただ、土曜の午前中だけは連携の訓練だ。今後、お前にも給料を出すが、そうなったら水曜と土曜の昼食代だけは自分で出せ。それ以外の食費と宿泊の費用は引き続いて俺が出すがな」

 これは世間一般の常識から言って俺が特別に奴隷を優遇しているわけではない。
 まぁ、払っている額は奴隷に対してはそこそこ多いとは思うが。
 普通は給料を払って衣食住については奴隷の個人裁量に任せるか、全て面倒を見る代わりに雀の涙程度の給料しか支払わないかのどちらかが一般的だ。
 どちらかというと都市部では前者が一般的だが、後者もそれなりに多い。逆に農村部では後者が圧倒的多数を占める。

「それはそうと、今日はこのあと、俺はちょっと用事がある。飯食ったらエンゲラの武具は買いに行くが、その後連携の確認だけはしておいてくれ」

 そう言ってキャベツにマヨネーズを付けてばりぼりと食べる。
 生キャベツには辛味噌が欲しいよなぁ。
 あの、日本の焼き鳥屋なんかでついてくるやつ。
 ズールーはキャベツは苦手なようで、遠慮しているのがありありとわかるが、ラルファは容赦なく、ズールーにも食えと言っている。獅人族なんだから、手加減してやれよ。

 食事が終わり、エンゲラの武具を揃えに行く。
 彼女の得物は剣らしいからどうせなら本人に選ばせてやろう。
 バランスとか使いやすい長さとか、それぞれ好みがあるだろう。あとは……革鎧も必要だろうな。
 ブロードソードを一本、100万Z也で購入し、革鎧もズールーの鎧を作った店で注文した。52万Zだった。

 その後はズールーに連携について皆と良く教育しておけと言って任せることにした。



・・・・・・・・・



 俺は今、一人で迷宮に入っている。
 ちょっと確認したいことがあったからだ。
 このところの迷宮行で、パーティの戦闘力や連携についてはしっかりと把握出来ているし、経験値を得る法則についてもある程度わかってきた。
 次はレベルアップだ。
 レベルアップ時にどういう法則で能力値が上昇するのか、それが知りたかった。
 ある程度仮説は立てているが、それが正しいかも確認しておきたい。

【アレイン・グリード/5/3/7429 】
【男性/14/2/7428・普人族・グリード士爵家次男】
【状態:良好】
【年齢:14歳】
【レベル:11】
【HP:110(110) MP:7425(7425) 】
【筋力:17】
【俊敏:19】
【器用:16】
【耐久:18】
【固有技能:鑑定(MAX)】
【固有技能:天稟の才(Lv.8)】
【特殊技能:地魔法(Lv.8)】
【特殊技能:水魔法(Lv.7)】
【特殊技能:火魔法(Lv.7)】
【特殊技能:風魔法(Lv.8)】
【特殊技能:無魔法(Lv.8)】
【経験:156221(210000)】

 先日のレベルアップで上昇した能力値についてだ。
 俺はランニングのおかげでレベルアップとは別に耐久値が1上昇していた。あくまで予想だが、トレーニングを積んだ効果がミルーのように現れたと言えるだろう。引き続きランニングは行っているので、更にまだ伸びるような気もしている。

 それとは別に、今回のレベルアップでおかしなことがあった。HPが上昇しなかったのだ。その代わり耐久値が2上昇していた。MP、筋力、俊敏、器用、耐久が全部1づつ上昇し、HPが上昇しなかった代わりに耐久が更に1上昇していた。結論から言うとこっちのほうが俺にとって都合がいい。
 レベルアップ時にHPが1上昇するよりも耐久が1上昇した方が結局上昇するHPは2になるし(耐久は合計で2上昇したことになるから耐久の上昇分でHPは4上昇している)、耐久の能力がさらに上がる方がなにかと都合が良いだろうと思えたからだ。

 全ての能力値が上昇しなかったことは昔一度だけ経験している。
 最初のレベルアップの時だ。
 あの時は筋力が1上昇したほか、MPが5も上昇し、他は一切上昇しなかったのだ。

 今回HPが上昇しなかったのはどういうことだろうか?

 実はこれについて昨晩考えていた。
 俺の前回のレベルアップは今年の初め、まだバークッドにいた頃のことだ。あの時は全ての能力値が上昇していた。その時と、今回の違い。その時と最初のレベルアップの違いを考えてみた。
 記憶もあやふやになっているところもあるが、概ねこれだろうという仮説を立てた。

 それは、鑑定のサブウインドウで見られる【レベルアップ時にはその直前のレベルでよく使用した能力のうち1番目と2番目の能力について1ポイント上昇する。能力にはHPとMPも含まれる。但し固有技能を所持している場合、上昇する能力値は1番目~6番目になる】の部分からの想像だ。
 「但し」以降が赤字になっているのは固有技能の絡む転生者のためなのだからだろうが、問題は書いてある内容だ。

 「レベルアップ時にはその直前のレベルでよく使用した能力のうち」という記載があるが、これが曲者だと思う。
 最初のレベルアップの時、その経験のほとんどは魔法使用で得たものであり、あとは剣の素振りだった。
 つまり、魔法と剣を振っていた腕の筋肉だ。

 確か5歳頃のことだ。体全体を使ったきちんとした剣の振りなども出来ず、腕だけで振っていた。
 あのレベルアップに懲りて、出来るだけ運動をしようと思ったし、剣の修行にも熱を入れたのだ。
 更にもっと体を使うため木銃も作って足技も取り入れた銃剣格闘も思い出しながら稽古したんだ。その効果のおかげか、それ以降のレベルアップでは全ての能力値が1づつ上昇していた。

 だが、それを続けていたという意識はあるのだが、今回のレベルアップではHPの上昇はなかった。
 違いはひとつだけ。
 最初のレベルアップと今回のレベルアップで共通し、それ以外では異なっていたもの。
 それは、俺がレベルアップ前のレベルだった時に傷を負ったことがあるかないかということだ。最初の時は赤ん坊から幼児の間の5年間ほど、俺は全くケガらしいケガなんかしたことはなかった。

 勿論、虫刺されくらいはあるし、擦り傷程度の小さな傷もあるが、そのくらいではHPは減少しない。小さな傷くらいではHPが減少することはないのだ。
 多分、体の致命的ではないような場所に縫い針を1cm位の深さで刺すくらいの傷でもHPは何ら変わることはないと思う。それが複数箇所になったとき初めて刺し傷が増えるに従って少しづつHPは減少するだろう。

 そして、今回のレベルアップの前である、レベル10だった期間。
 つまり、今年の一月の終わり頃から先日までの8ヶ月弱の間、俺は碌に傷を負ったことはなかった。
 多分俺が最後に傷を負ったのはミルーとの組手の時だろうから、それ以前のことになる。
 レベル10になってから、長年因縁があったホーンドベアーを親子揃って殺したとき、べグルを始末したとき、その後、バルドゥックへの道中、迷宮での戦闘。
 俺は一度として怪我をしていなかったと思う。

 全く怪我をしないまま、レベル10から11になったのだ。
 だからレベル10の間、俺は一度もHPの能力──と表現するのも変だが──を使用していない。
 俺にはレベル10でいた期間、HPが減少したという意識がない。

 同様にMPを使っていない、とか、筋力なんか利用していなかった、と思えるようであれば意図的にレベルアップ時に上昇する能力を選択できるのではないだろうか。こう仮説を立てたのだ。

 HPはともかく、正直な話、レベルアップの際に伸びず、代わりに別の能力が伸びて欲しいものがある。言わずと知れたMPだ。
 俺の場合、固有技能のおかげで幼少時からMP増加の魔力切れを何度も行っているため、もうこれ以上はいらない。
 現在では意図して魔法を使わなければ使い切るなんてことすら難しいし。それならHPが上昇した方がまだ俺の生存の役に立つ。だから、実験だ。

 多分、もうMPを使わないというのは有り得ないだろう。前衛の援護でも使うし、誰かが怪我をしたら治癒で使う。もうこれは諦める他ない。
 俺は肉弾戦だけでも相当やれるとは思うが、全く怪我をしないなんてのは運の要素も強いから、怪我を一度でもしたらその回復に魔法を使うことになる。

 今回の実験内容は、こうだ。

・魔力を半分位消費するか、二時間だけ行けるところまで行ってみる
・戦闘は出来る限り魔法で戦う。とにかく怪我をしないことだけを念頭に置く
・だが、またMPだけ大幅に伸びても問題なので少しは接近戦も必要
・出来る限り敵を減らし、出来れば一対一の状況で接近戦を行う

 これで実験してみるのだ。
 うまくオークだとかホブゴブリンだとかが出てくれれば数日でレベルアップできるだろう。
 暫く俺の休日がなくなるが、どうせランニング以外は散歩してるか休んでいるかなのだ。このところ戦闘で矢面に立つこともないし、迷宮を進む時は順番に先頭をローテーションしているから精神的肉体的な疲労も最初の頃ほどではない。ダメなら尻尾を巻いて逃げ出せばいい。

 俺は迷宮内に転移すると周りを確認した。
 いつも転移してくるような洞穴の途中だ。

 こっちに行ってみるか。

 地図を確認してもこんな真っ直ぐで殺風景な洞穴内だと、何回かカーブや分かれ道でもない限り現在地の推測すらできないからどっちに向かっても大差はない。

 俺は一方向に向かって足を踏ん張ると同時に左手を前方に伸ばし、風魔法を使う。
 魔力によって生成された大量の空気を無魔法で前方に飛ばす。
 外と違って洞穴内だから生成された空気は洞穴の壁や天井によって拡散する方向が限定されるが、急激に発生した空気で俺の体が後方に飛ばされないように空気を前方に噴出させるために無魔法を使うのだ。
 足を踏ん張っているのはなんとなくそうした方がいいかなぁ、という程度に過ぎない。

 何のためにこんなことをしているのかというと、落とし穴を覆う土を払うためだ。
 今の第一層では、罠のほとんどが落とし穴であり、ごく希に音を立てて脅かすような別の罠があるくらいだ。
 尤も、音を立てると周囲のモンスターをおびき寄せかねないので危険な罠であることは間違いがないし、少しでも戦闘を回避しようとしている他の冒険者のパーティー等からは嫌がられている。

 見たところ罠はないようだ。それでも完全には安心できないから慎重に前進する。ある程度進んだところで今度は目の届く先、前方40m位のところで『オーディブルグラマー』の魔術を連続して使い、大きな破裂音を何度も立てた。これで傍にモンスターがいれば、風には気がつかないか、見過ごしても何事かと思ってこちらに寄ってくるだろう。鑑定を使い前方を見据える。

 とにかくこちらに近寄るまでに出来るだけ数を減らし、可能なら全滅させる方法を考える。
 土や氷で埋めてしまってもいいが、そんなことをすると洞穴を埋めてしまいかねない。まかり間違えて二層への通路を塞いでしまったりしたらことだから、それは避けるべきか。若しくは最後の手段だな。その気になれば面倒ではあるが後で消すことも出来るし。

 また、モンスターはほぼ確実に多数で襲って来るだろう。
 こちらはたった一人なのでその接近時の速度にも本来は注意を払う必要がある。
 だが、俺の目で捉えられないほど速ければ別だが、そんなジェット機のような速度を出せる奴などいるわけもないだろう。
 俺の知る限り鷹だか隼だかの鳥がオースでは最速だ。
 急降下時には時速300Kmとかの超速度が出せるのかも知れないと思うが、洞穴内でそんな速度を出せる生物がいるとはとても思えないから俺が何らかの魔法を使う前に傍に寄られることもないだろう。
 それに、仮にまずい事態にでもなれば魔法も使って50mくらい全力で後退して転移の水晶でさっさと迷宮から外に逃げ出すだけだ。

 数分もするとモンスターの一団が現れた。
 ちっ、ゴブリンかよ、しけてやんな。
『ウインドカッター』を魔力多めで使い、数秒で全滅させてやった。

 数はいちいち数えていなかったが、十匹以上いただろうが経験値は1000弱しか入らなかった。
 一度出るか。
 すぐに転移の水晶棒を握り、迷宮の外、転移の小部屋の脇の小部屋の一つに転移する。
 もう一度転移の小部屋へと向かう。迷宮の入口の建物を出ない限り、何度でも迷宮への出入りは可能だ。

 これを利用してわかりやすい地形へと転移するまで幾度も迷宮に入り直すことまでやっている連中もいる。彼ら同様に俺も迷宮入口の転移の水晶を使って再度迷宮へ転移する。
 同じようにモンスターをおびき寄せ、魔法で遠くから弱い相手数匹を残して殲滅する。
 これを何回も繰り返せばまず傷を負うことなく、経験値を稼げる、と思った。

 何回同じことを繰り返したろうか?
 もう5~6回くらいはやったろう。

 いずれも現れたモンスターはゴブリンだ。魔石の価値も低いので死体はそのまま放っておいたままだが、おそらく70~80匹くらいは殺したろう。

 おお、そう言えばゴブリン自体は弱いし、経験値も低く、魔石も大した価値の無い相手だが、天稟の才の経験値は稼げるな。
 この調子で頑張ればあと数日もゴブリンを殺し続けていけば数日で天稟の才もレベルがMAXになるだろう。
 思わぬ副産物だな、こりゃ。
 じゃあゴブリンが相手だとしても回数さえこなせばいいのだから、ここは頑張っておくか。

 俺の天稟の才の経験値は今1524(2560)だ。
 簡単に言えば俺がこれまで殺したモンスターの数は全部で1524匹ということになるだろう。
 ごめん、嘘をついた。
 模擬戦なんかだと10くらいの経験値が入ることもあるので本当はもっと少ないと思う。
 いいとこ500匹くらいかな? 1500匹は流石に盛りすぎた。
 そのほとんどが蛭とゴブリンだ。ホブゴブリンなんかのような大物は滅多にいなかったしね。当時はせいぜい1~2ヶ月に一回、狩りに行く生活だったし、そんなもんだろ。

 とにかく、あと1000匹くらい殺せば天稟の才のレベルが上昇し、更に経験値は入りやすくなるだろう。ノールでもいいから今日はゴブリン以外の敵をやったら止めとくか。そう思ってまた迷宮に転移した。

 やっとノールのお出ましか。
 今日はこれが最後だと思って、奮発して『チェインライトニング』をて二連発し、一匹を残して全滅させた。
 最後に残ったノールも深手を負っているようで、楽に突き殺せた。
 12匹のノールの経験値は3000を少し上回っていた。
 面倒だが、ノールの魔石を見逃す手はない。一個2000位の価値だ。金額に直すと2万Zだしね。売っても14000Zくらいにはなる。
 迷宮への入場税なんか1個でお釣りがくるんだ。
 さっさと魔石を採取するとこの日は引き上げた。

 予想通り魔石は合計で162000Zくらいの金になった。
 経験値も今日一日で9000くらい稼いだ。
 あと二~三週間くらい休日を潰せば実験結果は分かるだろう。

 
奴隷階級からの解放条件について

1.自分の購入金額、または評価金額の百倍を持ち主に支払う(この場合階級は平民になる)
2.持ち主に解放して貰う(この場合自由民になる)

これしかありません。
通常は2の方法です。元々の持ち主が所有している奴隷を解放するメリットは特にありませんので、多くの場合は誰か別の人に買い取って貰い、解放の為に新しい持ち主が自分を買い取った金額+αを新しい持ち主に支払うことによって奴隷階級から逃れることになります。この+αは事情によってかなり上下します。クローが女冒険者のジェーンに自分を買い取らせ、その後解放してもらったような場合、自分を買い取った金額も含めて支払いはなかったでしょう。僅かな例ですが、才能があると思われる農奴や戦奴を領主である貴族が従士として取り立てるようなケースもあります。こういった場合もクローのように支払いが発生することはないと予想されます。

また「新しい持ち主」をそもそも縁もゆかりもないような人に頼むのであれば相当な金額になると思われます。考えやすい状況ですが、奴隷自身が自分の境遇や主人の扱いに不満を感じてその境遇から積極的に逃れようとする場合などがこれに当てはまりますが、そういった場合、主人は販売自体を渋るかもしれませんし、値を釣り上げるかも知れません。

なお、奴隷への給料の支払いは当たり前のことと認識されています。なぜなら、奴隷は自分の代金の百倍の代金を持ち主に支払うことによって「平民」の身分ごと自分を買い戻せるという大前提があるからです。この習慣、と言うより完全に有名無実化している法律があるため、そのチャンスを奪うことは一般的に悪とされています。従って額はともかく、全く給料を支払わない、という関係は存在しないといっていいです。

農村部では奴隷が一人前に働けるようになった頃(恐らく12~13才前後の年齢になります)、だいたい月に5000Zくらいの給料になります。食料は持ち主が自前で生産しているし、物価は都市部ほど高くないからです。子供の奴隷にも税のかかる六歳以上になったら給料は支払われます。ほんの小遣い程度の小銭でしょうが、これは必ず支払われると思ってください。当然、こんな額では一生かかっても百倍の金額を支払える訳などあるはずもありませんが、建前として行われているようなものです。

対して都市部では奴隷は農奴のような単純労働者ではなく、下働きや職人になっていることが多いです。つまり、生産上かなり役に立つ人材もいることになります。役に立つ職能を持っているなら、給料はきちんと支払われるし、場合によってはかなりの資産を所有できるようにもなります。勿論、百倍は無茶でしょうが、その人柄や職能に目をつけたスポンサーだって出てこないとも限りませんし、主人と話し合いなどを行って、名目上誰かに販売して解放してもらうという手だってあります。

奴隷同士の婚姻については以前クローの幕間でちらっと述べていますが、奴隷とそれ以外の階層の婚姻や既に婚姻をしている奴隷の一方が解放されるようなケースなどについてはまた折を見て書く事にします。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ