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異世界の嫁

流行の最先端って言われるとイマイチなもんでもよく見える

作者: 吾井 植緒

軽いノリで気持ち下品なので、広い心で読んでいただければ幸いです。

異世界の婿



「お前が来るのが遅いから、マリアが行き遅れの姫とか言われちゃったんだぞ。」


その方を召喚後にいきなりふんぞり返って文句を言ったのはコノ国の王様こと父上です。

この世界では最近異世界の嫁ブームになっていて

某帝国とか某王国とかが、異世界人の嫁貰ってウハウハしてるから

うちもそうしようぜってことで、わたしの相手は異世界人と決めたらしい。


で、決めたはいいが下手な男だと困るってコトで

某王国の神様に打診してみたりとかいろいろしてるうちに

わたしの適齢期が過ぎてしまったのだ。


四捨五入すれば30になるわたしも一応王族なので

異世界人と結婚しろと言われて、ハイソウデスカと返すしかないし。

今日のこの日を迎えたのですが。


魔導師がゴニョゴニョ呪文を唱えると、その場に現れたのは大きな人間。

兄上くらいはあるでしょうか。

コノ世界にくる異世界人はなぜかニホンという国からというのが定説なので

きっとこの方もニホン人なのでしょう。

特徴はたしか、黒髪黒目で小柄だったはずですが

現れたのはミルクティーのような髪に青い瞳で190近い大きな男性でした。


「え、ちょ、なに?ドッキリ?・・・マジヤベー、コスプレ?」


混乱しているらしい男性に、いきなり冒頭の暴言を父上が吐きますがその男性は首を振るだけ。


「・・・よくわかんねーけど、何なん?」


困ったように笑う男性は意外と端正な顔をしていた。



 ※ ※ ※


「あんたが第二王女?」


お茶会に現れた男性はアヤノと名乗った。

ぶしつけな言葉使いに侍女がいきり立つが、わたしは手で制して黙らせておく。

実をいうとこういう人は嫌いじゃない。

言葉が丁寧でも嫌味をチクリなんて、もう飽き飽きしているのだ。


「マリアです。アヤノ様。」


「ん、よろしくね。」


どかりと座り、長い足を組んで紅茶をすするアヤノは召喚時の擦り切れたズボンでなく今は騎士の隊服を着ている。

彼は体格はいいのでそれなりに似合っていた。着崩したその風貌は不良騎士だ。


「俺あんたと結婚しないといけないらしいけど、大丈夫?」


ちらりと此方を見ながらテーブルのクッキーに手を伸ばすアヤノの真意がわたしには見えない。


「どういう意味でしょうか。」


「んー。つうか、コノ結婚て強制らしいけど、俺マリアのコト何にもしらないし。マリアも知らないジャン?

とりあえずやることやれば子供作れるだろうけど、俺そういうの嫌いなんだよね。」


「奇遇ですね、わたしもイヤです。」


間髪入れずに思わず答えたわたしにアヤノは驚いた顔をしていました。

おそらく宰相あたりに子供早く作れよとか言われたのでしょう。


「まあ、わたしは第二王女ですし。よその王族に嫁いだわけでもないので、子供を作るのは強制ということもないと思いますが。」


「んじゃ、決まり。とりあえず結婚しようか。」


わたしの補足という名の逃げに彼は乗ったようですが、結婚しようとの言葉から言ってどうやら即決するタイプのようです。

そんなあっさりしてていいのかなぁ。


 ※ ※ ※


「っマ、マリア~。」


いや詳細を表現できないのが残念ですが、色々汁を垂れ流しているのは父上です。

結婚式前にそんなに水分出し過ぎじゃないかと思いましたが、感動の場面という臣下たちの空気にわたしも乗っかることにします。。


「父上。今までお世話になりました。」


「こんなに早く決めなくてもいいじゃないかぁ。辛かったらすぐ帰ってきていいからな。体は大事にな。」


お前が決めたんだろうという突っ込みは心の中だけにしておきましょう。

いろいろ言ってる父上もわたしを大事に育ててくれたのですからね。

そう思うわたしは慈愛の微笑みが出来ているでしょうか。


「・・・王宮の隣の離宮で暮らすんだから、そんなに大げさに嘆かんでも。」


うるさい、宰相。

感動の親子の場面に水を差すもんじゃありませんよ。



「「バンザーイ!」」



「なんかすっげーな、王族って。見せモンじゃん、完璧。」


白のタキシードに身を包み、笑顔で手を振りながら言うアヤノは少し疲れているようです。

臣下の手が入って、身を整えられたアヤノは黙っていれば、美丈夫な紳士に見えていますので

国民の歓声に黄色い悲鳴も混じっていました。


「コレで式は終わりですから我慢してください。」


「マリアってクールだよねー。」


きっと国民には二人見詰め合って微笑む、というように見えたと思うのでわたしは満足でした。



 ※ ※ ※


初夜は寝るだけ。

文字通りです。


アヤノはそれなりに経験があるとのことでした。


「俺、処女はちょっとね。」


その失礼な言動にまたしてもわたしの侍女は憤慨してましたが、わたしは少しホッとしてました。

いくら覚悟していてもやっぱりソレはちょっと怖いなあ・・・という思いがあったので。


「マリアと俺の気が合って、気が向いたらってことにしようよ。」


そういうとアヤノはニッと笑いました。

アヤノはよく笑います。


「様つけんのやめてよ。」


「暇だなー、ココって何もないのな。」


「三食昼寝つきって俺の理想だったんだけどねー。」


どれも不満を述べてるのに、彼がニッと笑うとそういう気がしないのです。


「マリアっていつも何考えてんの?」


「マリアは暇じゃねーの?」


「いつもクールだよなぁ、マリアは。」


たまにわたしの私室でお茶を飲んでは、彼はわたしに笑いかけます。


「たまには出かけない?」


珍しく彼からお誘いがあったその日。

侍女も勢いよく支度をしてくれました。


「どこへ行くのですか?」


「うーん、とりあえず外行こうよ。」


そういえば彼は異世界の人。

コノ国をよく知らないのでした。

そのことを思い出したわたしは傍仕えの騎士に街への外出手配を取らせました。


馬車に揺られながら、頬杖をつくアヤノを眺めます。

つまらなそうに窓を見るアヤノになんだかわたしも心苦しくなりました。


強制的に結婚させられたわたしよりも、コノ国に縛られてしまった彼の方が。


「アヤノ、大丈夫ですか?」


思わず出た声にわたしもびっくりしましたが、彼もかなりビックリしていたようでした。


「何が?」


返される言葉もいつもより硬く聞えます。


「・・・いえ、アヤノは大丈夫なのかと思って。」


「何言ってんの?大丈夫だよ。」


「本当に?」


「だいじょーぶ、だよ。」


「本当に?」


真剣にだったり、冗談ぽくだったりした大丈夫に、わたしがしつこく食い下がると

アヤノの笑みがなくなっていきました。


「しつっこいねー、マリア。俺がそんなに心配?」


「心配です。」


間髪入れずに返すわたしにアヤノは顔を覆って溜息をつきました。

どうしたんでしょう。

身を乗り出して、アヤノにわたしの手が触れそうになったとき。

近付いたおかげでその小さい声は聞えました。


「・・・あんまり大丈夫じゃない。」


ゆるゆると、ミルクティー色の髪を撫ぜると根元が黒くなっているのがわかります。

やはりアヤノもニホン人その髪は染めていたのですね。


「あんまり優しくしないでよ。」


顔を上げた彼は惚れてまうやろーっと笑いました。


 ※ ※ ※


彼の髪が半分くらい黒くなった頃、わたしの耳に侍女がささやきました。



白い結婚



数年契約の結婚。

それがわたしたちの真実でした。

彼が最初に持ち出した提案も、きっとコレを言い含められていたからでしょう。

最初から紙切れだけの関係であったのでした。


わたしに覚悟が足りないばかりに。

彼が真実を述べてくれなかったことに対する憤りが無かったと言えばうそになりますが

それよりも思ったのは、彼と本当の夫婦になろうとする覚悟がわたしになかったからコノ生活が成り立ってしまったということでした。


食事は一緒にとりますが、話すのは大体彼の方。

お茶にきてくれる彼が来るのをやめれば、わたしは一人部屋にこもりきり。


ショックでした。

彼は暇をつぶす為にわたしの部屋に来てくれたのかもしれませんが

わたしは一切彼に歩み寄ることすらしていないのです。



わたしは覚悟を決めました。



 ※ ※ ※


「え?ちょ、なに?」


夜は静かで娯楽もない。

護衛が同行しないと出かけられないとくれば寝るしかない。

しかも俺は王族の婿。

女遊びもできやしない。

がんじがらめの生活もウンザリしていたが、まさか。


夜 這 い ?


「あ、ちょ、まずいって!」


布団に入り込んだナニモノか―たぶん女性だと思う、やらかいし―は俺のナニを探るべくなのか際どいところをまさぐっている。


「・・・・・っ・・・いい加減に!」


布団をめくると月明かりに浮かんだのは、一応妻のマリアだった。

クールな彼女は夜這いもクールに行うらしい。

表情は冷静そのものでちょっと俺は怖い。


「マリア、ナニしてんの?」


気持ち俺の声が上ずるのはカンベンしてほしい。

すでに急所は握られてしまったのだ。


「ナニです。」


えええええええええええ!王女さまがそんなこと言っていいわけ?


「わたしの気持ちと貴方の気が向けば、ということでしたね。」


淡々と言う言葉が何か怖い。

怒ってるのかな、マリア。

普段からクールな彼女はいつも表情が読めなくて俺はちょっと怖かったりする。

ビビリですまんね!


「覚悟を決めましたので、貴方の気を向かせることにしました。」



ちょっと俺の思考が乱れるのは、ちょっと言葉にいえないことをマリアがちょこちょこしてるからで。

なんでそんな冷静に動けんの?

ホントに処女なのコノ子!


「貴方は帰れないということを知らないのでしょう。」


だから白い結婚なんかを了承した。


そう呟きながらもマリアは手を止めてくれない。

マジでヤバイ!

てか、俺帰れないのかよ!アノクソジジイだましやがったな!


「わたしが貴方の何もかもを貰うことにしました。」


あー、ヤベーなんかもうすごい愛の告白受けてる気になってきた。

決してテクニックに負けたわけじゃないんだからね!


「わたしが貴方の家族になります。」


上に跨っていたマリアがそういうなり、俺はマリアと上下を逆転。

マリアの動きを止めるのに成功っつーのと、押し倒すってーのと。

のしかかれば、マリアはハッとして息を呑む。

やっぱ可愛い顔してんだよなーって思いながら。


「じゃあ、さ。家族作ろうか。」


俺がニッて笑えば、マリアの頬が緩んでいく。

わかってたんだよ。

ホントは彼女が可愛いことも。

俺が彼女に惚れてるってことも。


でもクールなマリアはそんなの関係ない顔してるし。

クソジジイは偽装結婚しろっていいやがるし。

あと何年かで帰すからって言葉に俺もやけになってたんだよ。



まさか異世界で年貢の納め時が来るとは思わなかったけど。

なるようになるっしょ。

今を生きるってやつよ!


「処女はお嫌いだったのでは?」


「それはそれ、これはこれ。」


いっただっきまーす。









ちなみにアヤノは綾野 正文といいます。

残念大学生なので、名前が先でマサフミ アヤノになるとか思いつきません。

青い目はカラコンです。

本人は知りませんが白い結婚を破れば、城で何かしら仕事を与えられてこき使われる予定でした。

クソジジイとは宰相のこと。


きっとこき使われながらもテクニシャンwマリアと子沢山で幸せに暮らすでしょう。

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