The cross.プロローグ
今日もまた、この教会の中庭に白くまぶしい鳥たちがいる。でも鳥たちはこの場所に留まることなく別のところへ飛び立っていく。
空に浮かぶ雲も止まることなく流れていく。
世界もうごいている。
でも僕はうごかない…。僕はずっとこの教会に留まっている。この大きな十字架を掲げる教会に…
だから僕は、あまり外の世界は見たことがない。
ここの教会は、それなりに大きい。でも、世界から見ればちっぽけな存在。
そして僕も、ちっぽけな存在…。
「ラウ。昼食の用意ができましたよ。席に着いてないのはあなただけです。」
背後から声がした。とても透き通った優しい声。僕が振り返ると神父さまがにこやかな笑みで僕を見ている。
どうしたらあんなに笑えるのか、僕にはわからない。神父さまの白い衣服のせいで、笑顔が余計にまぶしい…
「何ぼーっとしているんですか!早く中に入りますよ!」
突っ立ている僕の頭に神父さまが、ぽんっと優しく手を置いた。大きくとても優しい手。ぼくはこの手が好きだ。
「僕、お腹すいてない」
「また嘘をつくんですか?本当はすいているでしょう?」
神父さまは何をいうときも笑顔のままだ。
「別に……。」
僕が短く返事をすると、神父さまは小さくため息を吐いた。
嗚呼、呆れているのか。
「ねぇ、ファーザー。そんなに笑ってて疲れないわけ?」
神父さまは、少し驚いた表情をつくった。
本当にこの人は、表情豊かな人だ。きっと神様も味方してるんだろうな。うらやましい…。
「笑っていて疲れたことなんて一度もありませんよ。むしろ、私には笑ってないときのほうが疲れますよ。さぁ、早く中に入りましょう。せっかくの料理が冷めてしまう。」
神父さまは一度僕を見て、にこっと笑ってから歩き出した。でも僕が歩いていないことに気づくと、くるっと振り返って、
「早くしなさい!」
と、腰にてをあてながら言った。そして僕のところまで早足で戻って来ると、突然僕を担ぎあげて歩き始めた。
「おや?今日はやたらと大人しいですね?」
「ファーザーに担ぎあげられたら、何をしても逃げられないからね……。」
「フフフ……よくわかっていますね。」
「まぁね……。」
こういう時に、神父さまの黒い笑みはこぼれる…
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