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異世界マイペーサー 作者:闇緒 恣恣

戯函  ~ Lupus in fabula

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五十一話 展開転々  ~ ま、まってくれませんか!?

 あっはっはっはー。
 まるで事件を起こした不良少年の気分じゃないですか、ヤダー。
 そんな冗談が通じる所では無く、もちのろん絶体絶命でした。
 正直に言ってしまえば、楽なんだろうし。
 そもそもお父さんが根回し足回ししてくれてたお蔭もあって、一応の理解が及んではいるらしいんだけど。

「いや、あの天上人の養子だからねえ。何があっても不思議じゃ無いとは思ったが……」
「あ、あのー」

 場所は校長室、のようなもの。
 俺が今肌で感じているのは、ただの尋問室のようだけど。
 そもそも学校の天辺の人が校長って役職なのか分からないから、少なくとも校長室かも知れない何処かってところだ。
 そんな所で、つまりは校長先生に呼び出された。

 天上人、お父さんらしい。
 天上人って時々聞く言葉だったけどお父さんのことだったとは。
 なるほど、お父さんの事だからよく聞いても普通か。
 ……ってなる人は、まずは居ないでしょ。
 何だよ、天上人って!? 人につけて良いあだ名じゃないよ!

「天上人って……?」
「あのザグラッドの事さね。十で宮廷勤めになるならまだしも、二十になるまでに最高峰の鑑定士になるし」

 きゅーてー勤め? 鑑定士?
 ハテナが飛び交い、ただでさえ意味不明だったのが余計に訳分からなくなる。
 首を傾げるだけだったのが、思わず頭を両手で抱えてしまう。

「世の中に『詠唱破棄』なんて言葉を生み出しただけじゃ無く、干渉魔術を戦闘に取り入れるし、空間に干渉する「転移装置ポータル』なんてお伽噺の産物まで生み出すし……!!」

 う、うわー何か聞いてるだけで色々と凄いのが判って来たかも。
 特に目の前のお婆さんの眉間のしわの入りようで。
 取り敢えずひとつわかった事。
 ……あのポータル、お父さんが作ってたんだ。
 それ以外は何と無く詠唱短縮だけでホルワさんが驚いていたので『詠唱破棄』は理解できる、かも知れない。
 取り敢えず俺は、現実逃避をした。




「でだ、やらかしちまったーつー訳さ。黒狼ちゃん」
「ふ、……ふぇ?」

 なんと言うか、お父さんが勤め先の宮廷をバックレたという話辺りから聞いていなかった。
 と言うか、現実逃避のために目を閉じてたら、寝てしまっていた。
 正確には寝ていないんだろうけど、意識が飛んで、よだれが垂れていた時点で、似たようなもの。

 さて、と。
 なんと言うか話を降られた気がしたので目が覚めた。
 目の前では大きくため息をつきながら、見るからに落ち込んでるおばあさんがいた。
 窓を背に、何か良くネタで使われるポーズをとっていた。

「……話を戻すよ」
「はい、お願いします」

 取り敢えず寝ていたことはなかったことにして、校長先生の話に耳を傾けた。物理的にも。
 さっきまでぶつぶつとお父さんへの口を漏らしていた事を無かったことにしたいようで、校長は何もいってこなかった。
 ただ俺の言葉にゆっくりと首を振った。

「試験結果は筆記できないものの上々。頭の回転は鈍そうだけど、勉強は大丈夫そうだね」

 さらっと罵倒された!
 耳と尻尾が校長先生の発言で思わずこわばって、ピーンと毛が逆立った。

「そう面白い反応をしなさんな。問題は実技、魔術適正のところだね。基本元素の外れた凍結……いや、氷の魔術を行使した上で、詠唱短縮。まあつまり、学院には過ぎた実力を示しちまった訳さ」
「うおう……。えっと、協議に掛けられたり……? 悪ければと言うか、もしかしたら学院に入学できないとか」
「緊急議会は今してる。入学できないとか……は、無いだろうね。多分あんたの処遇についてだろうさ、アタシは参加しない会議だから分からないけどね」

 処遇、か。
 いわゆるところの、新入生の成績優秀者が代表して挨拶する感じの。
 俺がどうなってしまうのかは、その議会で決まってしまうらしい。

「まあザグラッドの養子だって知ってるのはアタシぐらいさ。多分変に持ち上げられることはないだろうね」
「そ、そうですか……」

 本当に、お父さんについて色々しっかりと聞いてみたい気もするけど。
 ちょっと色々なにをしたのか、知るのが怖いような気がする。
 ……そんなことよりも、俺への待遇か。
 いったいどうなるもんかな。
 そんなことを考えていると、校長先生はキセルを取り出して吸い始めた。
 なんと言うか甘い臭いが漂ってくる。
 タバコの煙特有のあの感じはしない。
 何なんだろ、この臭い。

「この臭いが気になるかい、やっぱり獣人てのは鼻が利くんだね。……まあアレは別の意味で鼻が利くんだろうけど」

 俺が鼻をスンスンと鳴らしていることに気づいたのか、くわえていたキセルを離した。
 校長の口からモワーッと煙が漏れ出て、何か魔物みたいだ。
 俺は興味津々な目をしていたのか、返事をする間も無く校長が再び口を開く。

「ここは一応子供のすみか、大人の教師や親はその辺りを考えて行動しにゃならんのさ。だから、口が寂しくなればこれでごまかすってのが教師のルールさ」
「へー、初めて見ました。でも、大人の人も結構入ってきますよね」
「そこは教師と同じルール」
「ですか」

 椅子にこしかけて、窓の方を向く校長。
 ただ老いただけのお婆ちゃんじゃなくて、老練な雰囲気があるからこそ様になっている。
 後、キセルを持っているのもポイントが高い。

「因みに、このキセルを考えたのもザグさ。全く、何でもできるって怖いね」

 そんな言葉を漏らす校長。
 さっきの悲痛といった雰囲気とは違って今はどこか落ち着いている。
 黄昏ているという表現がぴったりだ。

 暫く校長に倣ってボーッとしていると、俺に呼び出しがかかった。


     ★


 場所は、会議室。
 状況的にはあまりに例のないことだから決着がつかず、当人が飛び出された……という感じ。
 表情が険しい人が多いし、多分苛立ちもあってここに俺を来させたんだと思う。
 辺りを見渡してみると、あの抱き付き先生とか、試験官の二人の先生、見るからに体育系の教科を担当してそうながっしりとした人もいる。
 ……猫耳のおじさまっぽい人もいた。
 司会にはいった瞬間にいろんな意味で表情が崩れそうになったけど、頑張って耐えた。
 俺、偉い。
 ここで吹き出してたら、「不敬だー」とかで問答無用で叩き出されてたかもしれない。

「ここに呼び出したのは他でもない、君へいくつか問答をしたかったからだ」
「はっはい……!」

 右手前にいた人がそういった。
 机に向かって五十人くらい座ってるまさに円卓。
 職員室の机を全部集めたらこんな壮観が見られるのかな。
 そんなことを思わず考えてしまいそうになるも、少し周囲の違和感に気づいた。

 何か、漂ってる。
 なにかというよりも透明なものがここに散布している。
 何か、見たことある気がするんだけどなー。
 すると、黄金の部屋が想起された。
 あ、魔力か。
 そういえば最近魔術とか見てなかったから忘れぎみだった。
 いや、実技試験で見たな、うん。
 完全にどわすれだ。

「どうかしたのか」
「いえいえ、何でもないです」

 俺が暫くボーッと虚空を眺めていることを不審に思ったらしい。
 さっきと同じ人が再び口を開いていた。
 俺は反射的に何でもないと伝えるも、この魔力は何なんだろうな……と考えてみる。
 魔石がどうのって言ってた気がするから、ここにも魔石があるんだろうか。

「いまいち私は信じられんな、詠唱短縮なんて代物。氷の魔術は北方の民は自然と使えることもあるようだから、なんとも言えんが」
「詠唱短縮は魔術師の夢みたいなものだしね、魔法学院に来る意味ないじゃん」
「しかし逸材なのは確かです」

 一人が口を開けば、また一人、また一人と。
 だんだんと発言が大きくなり、騒動となった。
 俺が理解できたのは、最初の数人が限度。
 そう言えば騒音の中から一つの音を聞き分けるってのは、前から苦手だった気がする。
 思わず耳がへたれてしまっていた。
 嬉しくないけど、その瞬間の抱き付き先生の奇声嬌声だけは聞き取ることができた。
 本当に、嬉しくないけど。

「静かに。まあ話は大体伝わっただろうから、話は省こう。要は詠唱短縮は色々と物議があってだな。それを目で確認しようと訳だ」
「えと、良いですけど、何をすれば」
「よしわかった、俺が嬢さんの魔術を受けてやろうではないか!」
「いや待て、干渉魔術か灯火ブライト辺りで……」

 さっきの腕組をしながら座っていた人が立ち上がる。
 お父さんよりは大きく、筋肉もお父さんより隆々としている。
 そんなゴツい人に慌てて腕押しするそぶりをする右手前の人。
 なんと言うかそんなに面白いことをしていないにも関わらず、コントみたいな雰囲気がそこに漂っていた。

「はあ、まあ良いだろ。奴は見た目通り固いから心配しなくとも大丈夫だ。むしろ傷でも追わせてやれと言いたいところだが、……まあよろしく頼む」
「え、えと、分かりました」

 この二人はこんな感じだけど、要は仲良いんだね。
 ちょっと笑顔をひきつらせながらも返事した俺は、かなり広い会議室の、円卓という障害物のないところへと歩く。
 ゴツい人は仁王立ちで向こうの壁側に、俺はその反対側の壁付近に立つ。

「俺はこんなだが、魔術強化もできる。気楽にかかってこい!」

 と言うことは干渉魔術使えるのか。
 くっ、羨ましい。
 思わず歯軋りをしてしまった。
 ついでにさりげなく挑発をしてきてる……でいいんだろうか。
 手招きをする形で手を動かしていた。
 まあ、身長差が二倍くらい……いや、それ以上あるからそうなっても仕方ない。
 逸れにまだ俺は学生にもなってないいわゆる見習い。
 教師のその人が強気になるのが普通だ。
 けど、さぁ。

 俺は手をゆっくりとあげて、体を横に向ける。
 相手に向けられた包帯の巻かれてる手とからだがいっちょくせんになる。
 ただの命中しやすさのためだ。いわゆるこの動作は照準合わせ。
 取り合えず、できるだけ魔力を込めて……。
 人を教える立場にいるんだしさあ。

 やっぱり変更。
 こもった魔力を分散させて、幾つかの塊にする。
 避けられてもいいようにだ。
 ひとつ以上にするから命中力は下がる。けど大丈夫。
 これは詠唱短縮を見極めるというだけ。
 命中の威力も問題じゃない。
 やっぱりさあ、しっかりとした大人らしい振る舞いをしてほしいじゃん。

 取り敢えず何となくむしゃくしゃしたので、全門解放。
 俺のできるだけの攻撃を発動させた。

「“穿て”『空槍エアスピア』」

 それは俺が口を開いて動いて閉じる、一瞬の出来事だった。

「っが!?」
「はい!?」

 ゴツい人の周りが一瞬でえぐられ、中央の人は腹部に穴が開いていた。
 血を吐きながら奇声をあげるおじさんの声と、俺の驚きの声は重なった。
 なんと言うか、思った以上に威力が出た。

「アトゥ!!?」
「いええいあ、えと、どうし、どうしたらっ」

 完全にパニックだ。
 血をはいてる以上、そう言うところに穴が開いたんだと思う。
 さっきのやりとりをしていた男の人がアトゥと呼ばれたゴツい人に駆け寄った。
 みんなはポカンとしていて、俺は自分の耳が拾う通り訳も分からず狼狽えるだけ。
 血が、血があ……!




 俺が尻尾やら腕やらをワタワタと動かしている間に事は収拾がついていた。
 若干気を失ったと呻いていたアトゥことアトゥーラ先生。
 隣の細身の男の先生、ガイス先生に肩を貸されながら起き上がった。
 俺を見る目は色々といたい子を見る目。
 俺は目をギロリとこちらに向けられた瞬間、耳がピクリと跳ねた。

「……嬢さん、アレを打つときどんな感情だった?」

 呼吸は整っている。
 俺の初めて見た『治癒魔術』によると、力を入れなければそれほど痛まないらしい。
 けど顔色は普通に悪い。
 アレだ、俺がパニックになった原因、大量出血のせいだろう。
 なんと言うか俺を見る目が痛いので、アトゥーラ先生の言葉に正直に返した。

「……ちょっとムカついたので、力を込めて撃ちました」
「……そうかい、やっぱりな。おい皆さん方、俺はこの嬢さんをランクEに入れることを提案する」

 俺の発言を聞いたアトゥーラ先生は、後半みんなの方を向いてそう唱えていた。
 肩を貸していたガイス先生はその発言に驚く。
 みんなも同じだった。
 ランクEって言うのが何かわからないけど、少なくともみんな驚くことなんだろう。
 皆が発言に気圧されているなか、一人に男性教師が手をあげて俺に近寄ってきた。

 俺は今無意識のうちに寒気を感じて、右手で左の二の腕をキュッとつかんでいた。
 口も同じく固く閉じられている。
 俺の攻撃で人間を一人傷受けてるんだ。
 気落ちして仕方がないというところ。
 男の先生、試験監督をしていた男の先生だった。
 俺は先生の顔を見上げた。
 逆行でいまいち見えにくいけど、眼光で睨んでいるように感じた。

「う」
「俺は別に怒っていない、生まれつきの目だ。ひとつ確認したいことがある、聞いていいか」
「はい、どうぞ……」

 口はクスッと笑っていたけど、目はいまいち変化がない。
 そんな表情を見て何となくその通りなんだろうと感じて、力の籠っていた右手を緩めた。

「詠唱短縮を得た経緯を聞かせてくれないか? ああいや、言いたくないならそれでいいんだ」

 俺は一瞬、なんのこと? と思って先生の目を見つめていた。
 それを何か嫌なことと関係していると思って、慌てて言葉を付け足していた。
 俺は取り敢えずその言葉通りと受け取って、コテンと首を傾げた。
 若干気持ちが落ち着いてきたのもあるんだと思う。
 俺は、軽い気持ちで口走っていた。

「えと、詠唱が覚えられないので」

 その瞬間、辺りが騒然となった。
 そんななか、目の前の先生はゆっくりと再び手をあげて。
 なんと言うか辛そうに、眉間を押さえながら口を開いた。

「…………スマン、俺もランクEに賛成だ」

 はて?
 取り敢えずランクEって言うところに二表入っている。
 そういうことだけはわかった。

 回りを見るとみんな苦笑い。
 目の前の先生以外アトゥーラ先生も苦笑いしていた。
 俺には一体なんのことだか、さっぱりわからない。

「なんと言うか、百聞は一見にしかず、だったね」
「あの言葉はまさにこういうことだな、うん」
「はあ、会議室で座ってた時間が無駄になった……」

 え、なに!?
 何でみんな解散ムードになってるの!?
 みんな苦笑い、疲弊そのどちらかの表情をして卓上の荷物をまとめ始めた。
 俺はみんなの方を見るけど、なんとも言えない視線を送られてくる。
 それは、憐れみみたいな。

「ちょっ」
「君のクラスは、四階の隅にある教室だから。アトゥーラ先生についていきな」

 好青年といった感じの人が肩にポンと手を置いてそう言ってくる。
 そして、入り口の方へ流れていく人混みの中に紛れていった。
 ワケわからないんですけど!
 親切にするなら最後までしていって!

「ちょ」

 皆、待ってくれませんか!?
教師陣ばっかり名前が出ましたが、多分覚えなくて大丈夫です。
多分……。これから出るクラスメイトの方が重要なので。
作者は既にこんがらがってます。
+注意+
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