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異世界マイペーサー 作者:闇緒 恣恣

戯函  ~ Bumpy road

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三十四話 失当野盗  ~ しばられてやるのです

タイトルの通りです。
 そう言えば、アヴェンさんって役に立ってたんだなー…と思う今日この頃。
 空は青く、澄み渡っている。
 俺の感情の籠もらない目で見ても、充分に綺麗に思える。
 呆然としていると、視界が強制的に動いた。
 動いた先にはアヴェンさんが居て、寝転んでいた。
 いや、寝転んでいるって言えばいいのか、寝ているって言えばいいのか、転んでる、倒れてるっていう事も出来るかも知れない。
 そんな事を考えていると、声が聞こえた。

「へえ、カタナなんてもんあるんじゃねえか。売ればそれなりに金になるんじゃね?」
「あれはウルシなんたらっつー特別な奴じゃ無かったっけ? まあ良いか、金にならなくても俺達が使えばいいんだかんな」

 二人の見知らぬ声が俺の耳に届いて、ビクリと耳が動く。
 まあそれがわざとオーバーなリアクションにしたとか、ごく自然と感情が耳に現れたのかはさておき。
 俺とアヴェンさんは絶賛縛りプレイの真っただ中だった。
 プレイと言うだけで何故か変態的になってしまった事に驚いてしまったけど、そんな事ですよ。
 ハッハッハ。
 と言う訳でして、絶賛盗賊に集られています。縛られた状態で。

「むぐー、むぐー(むぐー、むぐー)」
「いやさ、口に噛ませられてるのは判るけど、そのまま言ってもね……」

 案外口を押えられても、叫ぼうとしない限り「えおうい」みたいに母音は聞こえるんだよね。
 ムグーとか言う効果音は、実は縛られている本人がわざと口に出しているだけかも知れない。
 盗賊さんには俺の立派な犬歯が脅威に感じたらしく、こうして口に縄っぽいのを噛ませられていた。
 確かにこれなら噛めないんだけどさ。

アヴェンさん(あふぇんひゃん)気合で(いあいえ)助けてください(はふへへふらはい)
「居合でッ!? カタナないと無理だよ!」

 何かアヴェンさんが勘違いしたみたい。
 というか、アヴェンさんの良い分によると居合切りってあるみたい。
 どれだけ東の国って、日本っぽいんだろ。国旗とかあるなら、もしかして日の丸弁当になっているのかな?
 アヴェンさんが騒いだせいで、盗賊さん方お二人はこっちの方を向いた。
 というか、アヴェンさん何かかなり緊張感無いような気がするんだけど。
 何か策でもあるのかな。

「おい、お前ら。今何か話してたよな?」
「どうせ何も出来ねえんだ、ほっとけ」

 何もできないかあ。
 確かになんも出来なさそうなんだけどね。
 ほら、詠唱短縮とは言えトリガーが喋れないと多分魔術って発動出来ないと思うんだよ。
 アヴェンさんに秘策があるみたいだし、アヴェンさんに託してみよう。

「……」
「……なんだい」
「…………」
「…………いや、だから何?」

 しらばっくれてるみたい。

「……ほういはひてふやはい」
「俺は刀ないと何もできないよ。せめて剣でもあれば良いんだけど」

 全く使えない奴ですね!
 確かに、アヴェンさんがテントの中で寝ていなければ夜明けの襲撃は避けられたかもしれないけど。
 そもそも俺が変な気を使ってアヴェンさんをテントに引きずり込まなければ良かったんんだろうけど。
 そもそも、……ってあれ。俺のせいみたいになってるじゃん。
 腕が動いていたら、間違いなく頭を抱えていた。

「ケイこそ、なんか策があるんじゃないのか?」
「むぐー、にゃひ……へふ」

 意識しなかったら「はいです」になりそうだったから、むりやり頑張った結果がこれだった。
 若干恥ずかしかったけど、そんな事はどうでも良い。
 案外、思いつくもんだね。
 いや、俺だけならたぶん間違いなく助かれると思うな、うん。


 化けの皮がはがれたのはその後からだった。
 そんな事を言えば、何かあったのかと聞かれるかもしれないけど、あらかた荷物を漁りきったので盗賊さんたちは狙いを人の身体の方に向けた。
 まあ、そんなこんなな訳ですよ。
 ええ、俺の貞操がピンチだそうです。

「おい、売るならそのままの方が良いんじゃねえか?」
「見ろよこれ」

 そんな訳で、私の大事な所を覗かれました。
 という冗談はさておき。
 俺の尻尾やら毛並みやらをジロジロと眺めるお二人さん。
 アヴェンさんとかお父さんとかに見られるならまだしも、こういう薄汚い野郎に見られるのはムカつくな。

「黒毛種、だな。しかも尾の形が狼人ワーウルフみてーだ」
「だろ? なら、たとえこいつが処女で無くても『かの伝説の黒狼種のガキ』だって言えば高く売れるかもな」
「それに今、王都で黒狼種の噂が立ってるらしいから、流れに乗れるかも知れねえ」

 いや、その……ね?
 たとえ逃げられる訳無いって言う自信があったとしても、ここまで手の内をさらけ出すかな。
 つーか、ガチ腹立ってきたよ。
 あーもう、こういうのってどうも俺駄目なんだよな。
 自己中って言われるかもしれないけど、自分が商品の立場になったらかなり腹が立つ。
 奴隷って飼えるのかなーとか思ったりもした事あったけど、立場が変わればコレだ。
 仕方ないのかな。

「ま、と言う訳だ。そっちの男も恐らく奴隷に成ってもらうだろうが、最後に少しは楽しもうぜ」
「やえろ」

 締りが悪いけど、締りの悪い口にはこれくらいしか言えなかった。
 けど、こっちの方が好都合……って。
 な、何で。

「まあ、暴れられても困るしな。あまり効果は無いが、強制するくらいならどの『首輪』でもいけるんだぜ?」

 俺がおかしくなってしまった原因の、アレ。
 あれだけはヤバい。狂ってしまう。
 俺は多分、相手にとってあの時と同じように「期待通り」の反応をしてしまったんだろう。
 必死に体をよじろうと、動かない手足に力を入れた。
 手足が獣化していたけど、特に改善はせず相変わらず縛られたままだった。

「まあ、泣き叫ぶのを押さえてってのもそそるが、従順が一番だろーな」
「あ、あぁぁぁぁっ!」

『無様だな』

 黙ってくれ、俺は俺だ。
 首元に伸びる盗賊の腕に恐怖を感じつつも、頭の中では例のあれと対峙していた。
 意志の押し付けでは無くなって、意識を押し付けてくるようになったアレ。
 とても荒んだ感じのする声は相変わらずだけど、今はちょっと前と違う。

『力は有るだろう。何故怖がる?』

 お前が乗っ取るからだろうが。
 けど、俺の意識がこいつと対峙している内に、起こる。
 首元に違和感が、それもかなり近い。
 ヤバい、どうしよう。
 もう寸前のところまで来ていた首輪。
 クソッ、こうなったら―――

「ぐぅ?!」

 落ち着けー、落ち着け俺ー。
 行使した『引斥操作』の能力の反動を堪える。
 使った途端に大きくなったアレの声が俺の意識を掻っ攫うように噛み付いてきた。

『 が、ぐ、何故人の魂が……これほどまで え …… 』

 けど、なんか間延びしたようなそんな声が聞こえて来た途端、声はプツリと何も聞こえなくなった。
 あれ、何か呆気なく?
 もっと堪えなければならないと思ったけど、思ったより我慢比べが続かなかった事にキョトンとしてしまった。

 俺は意識して、引斥操作なる能力を使ったことが無かった。
 そんなだから、出来るだけ使いたくなかった。
 そんな訳で、矛盾の方を使おうと思っていたんだよ、うん。
 アヴェンさんなら信用できるし、何よりも俺が古狼云々のくだりを知ってしまっている人の一人だから。
 そんな訳で能力に物を言わせて、盗賊をブッ飛ばしそうと思ったんだけど。

「うげ……」

 アヴェンさんが顔を真っ青にさせて、そんな嗚咽に似た声を洩らしている現実。
 アヴェンさんの見る先には、股間から血を流して倒れている盗賊の一人が……。
 笑いそうになってしまったのは、そう言う痛みから無縁になってしまったからかな?
 取り敢えず、泡を吹いて倒れている盗賊の姿を見て、思わず吹き出しそうになってしまったのは置いておくとして。
 思わず、引斥操作で手ごろな所にあった石をそこそこの速さでブッ飛ばしてしまっていたんだ。

「ほほまへほあ……」

 矛盾の力って言うのは何か座標指定って言うかそう言う感じがあったので、思った位置に出すっていう事が出来るか判らなかった。
 だからできるだけ近づいた所で頭の上に鉄球のような物を出現させる気だったんだよ。
 けど、引斥操作で小石をブッ飛ばしていて、運よく……男の急所にクリーンヒット。
 血を流している所を見ると、棒の方では無くボールの方へ真下からの狙撃があったみたい。
 とても狙ってやったようにしか思えない。
 俺だってそう思うし、ギャグでもここまで狙ったようには出来ない。
 そして、向こうもそうだと思っている。

「てめえ、何しやがった……!?」

 カタカタと震えながら、若干青ざめた顔で必死に厳つい形相をして、威嚇する盗賊の片割れ。
 そんな事は言っているけど、へっぴり腰だった。
 けどかなりの殺気があるようで、今までは脅しにしか使っていなかった剣がチャキリと鳴って、こっちに突き付けられる。
 そして、少し時間が経ったことで恐怖心が落ち着いたのか、前傾姿勢のまま走って来た。
 ……あれ、そう言えば俺ってまだ縛られたままだったよね。
 ……逃げられんじゃん!

「少しくらい、怪我してても、売れるだろ!」

 片割れが地面に突っ伏して泡を吹いているのに、口から出ている言葉は完全に煩悩に包まれていた。
 いやさ、だって普通ならこの流れで「死ねぇ!」とか言いそうなのに。
 あれかな、命に別条がないと判っているのか。
 ……確かに、そっちかな。
 普通に戦闘がある世界なくらいだし、男の急所がソコで強打されれば動けなくなるって言うのは本能的に理解している……みたいな。
 顔がただ事で無く死んでいるように見えても、その辺りは理解しているのかも。
 ……じゃあ、ますます俺ヤバいじゃん!
 距離的にも普通に近く、若干の不自然な動きを抜きにしていれば、直ぐにでも俺は盗賊に切られていただろう。

「っらぁ! ……な、なんだ!?」

 何かちょっとアレな気分になるね。
 そうそう、優越感だっけ。
 俺に斬りかかってきた盗賊の刀みたいに反り返った剣は、突如現れた黒い色のした盾に軌道を遮られていた。
 もちろん黒色のアレな事で判るだろうけど、矛盾の能力。ガキンッという金属がぶつかり合うような音がした。
 あ、じゃあもしかして……。
 俺は空中に固定したナイフを能力で創り出し、口元へそれを持って行く。

「能力、マジ凄い……」

 ナイフを霧散させて、二歩…いや三歩下がって盾の方も霧散させた。
 黒い霧の晴れた先には、かなり気の動転している盗賊が突っ立っている。
 俺は迷わず、もう一度例の攻撃を繰り出す。
 威力そのまま、力の指向性は自分でもイメージしやすいよう指差しで調整。
 そして、ドーン。


 口から泡を吹いて縛られた、男の図がその後出来上がった。
 アヴェンさんは気絶した盗賊を縛り付ける最中も顔を青くしたままだった。

「そんなものでしたっけ?」
「いや、本来は防具付けてる筈なんだ。けど、さ」

 そう言って見せてくれた、その防具らしきもの。
 アヴェンさんが何か縛りにくそうにしていると思ったら、それを回収していたのか。
 そんな事を考えながらも眺めてみると、ひしゃげていた。

「……どういう事ですか?」
「恐らく、ケイの攻撃でこうなったんだろうね。それで内側でグチャッと……おえ」

 ………。
 見なかったことにしよう。
 改良を重ねたら、取り敢えずスプラッタ沙汰にはならないかもしれない。
 ふう。

「取り敢えず、悪は去りました」


     ★


 盗賊を縛り付けた縄の手綱を握っているのは、俺。
 せっかくアヴェンさんを休ませたのだし、それにここからは魔物もあまり出ないらしく、常に音に気を張る心配も無くなった。
 それに盗賊を潰したのは俺だし、俺が処理をするのは当然と言えば当然だろう。
 手足を折りたたんで縛り付けているから、全く動けない。身動き一つできない。
 そんなであるから、重さ以外の点では指して問題も無かった。

「けど、テントの布、アレに被せて良いんですか?」
「あ、ああ。テントと言っても値段はあの布だけだからね。テントの木は手ごろな奴を拾ってきただけだよ」
「な、何と言う簡易性……」

 まさかお金にケチったとは言っていたけど、それしか買っていないとは。
 けど、たしかに布と棒さえあれば、屋根のある場所は作れるか。
 テクテクと歩く。
 アヴェンさんと雑談をしながらも、歩いていると村らしきものが見えてきた。
 明け方に色々とあったけど俺の能力のお蔭で、あまり長引かずに済んだ。
 まあ、能力で解決すれば良いって縛られた直後に思い付いていれば、もっと早く片付けられたんだろうけど。
 そんな訳で、もう少しで村に付きそうだ。

「それにしても……」
「ん?」

 俺が呻き声やら鳴き声やら聞こえる袋詰めの盗賊の方を眺めて呟くと、アヴェンさんが聞いていたようで返事をした。
 相変わらず布が巻いてあるとはいえ、引き摺っているので結構振動は来ているんだろう。
 もしかすると紐とか布がちぎれたしているのかも知れない。

「ああいえ、何かこうして悲鳴を聞くのも悪くないですね、と」
「ケイが壊れたっ!?」

 壊れてないです。
 こうして人の命を弄ぼうとしていたのが今は一転して「助けてくれ」とか「殺さないでくれ」とか喚いていると、こう……アレなんですよ。
 取り敢えず、「ざまあ」みたいな心情なんだろうね。

ときどき「テンプレな展開ってこの作品に出てるのかな」と思うんですけど、どうなんでしょう?
まずテンプレを今一理解していないという……(目そらし
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