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異世界マイペーサー 作者:闇緒 恣恣

戯函  ~ Bumpy road

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三十三話 幕屋幕間  ~ キャンプのじかんです

ニ……三週間ぶりの更新、ですかね?
お待たせしました…

少し明るい話です
 森さえ抜けきれば、コッチのもんよ!
 まさにそのような感じ、という事をアヴェンさんから聞いた。
 何でも、この後一つの村と言うか町と言うかに着くまでの道のりは、あまり遮蔽物がない。
 詰まる所は、森の前の情景が広がっていた。
 あまりどちらも悪くない目を精一杯見開いて確認したけど、確かに辺り一面何も無かった。
 けど、地平線見えてるんですけど。
 歩いて着けるのかな?
 大丈夫だよね?

 …とまあ、王都までを徒歩で行こうと一時期本気で考えていた俺に似つかわしくない想像をしていた。
 一応、視界に入ることは無いけど、海が近いらしいこの辺り。
 そのせいか、結構風が頻繁に吹いて来ていた。
 ……そう言えば、あんまり気候が崩れたところを見た事が無い。
 雨が降った事はあったんだけど、台風なんてものは来なかったな。
 あれは日本が凄いだけなんだろうか。

「アヴェンさん、どうしますか?」
「もう少しだけ、歩いてみようか」
「判り、ました」

 ほんの少し地面に座り込んで休憩を取っていた。
 辺りは段々と暗くなってきて、手のひらの小さい皺を見るには手元に光源が欲しいくらい。
 光源はあの僅火とかあるし、アヴェンさんも行燈のような物を持っているらしい。
 普通に“アンドン”って聞こえたから、頭の中でそう変換されてしまったけど、正直行燈の用途は知らない。
 提灯みたいなものだと思っている。

 立ち上がり、再び足を動かす。
 立ち上がった時に、若干足がしびれていて一歩目に力が入らなかった事は無視。
 アヴェンさんは苦笑いしていたし、ばれていたのかも知れないけど。
 痩せ我慢じゃないし、只いう必要が無いと思っただけだし。
 というか、アヴェンさんの方が痺れてたかもしれないんだし。

「アヴェンさん、足…痺れました?」
「うん。変な所が圧迫されてたのかな?」

 ヤッタね。
 俺の推測が当たったよ。
 そんな事を言っていると、辺りはどんどん暗くなってきた。
 逢魔が時ってこういう時のことを言うんだろうか。
 完全に日は暮れていないけど、地平線とぶつかって少し眩しい。
 最後のあがきって感じだな。
 歩くことでは無く、その太陽の最後の光に集中していると、何時しか本当に沈みきった。
 その瞬間にヒュオッという風が鳴いた。
 火が沈んだせいで、かなり寒くなる。
 寒くなるけど、耐えられる寒さだ。
 耐えられるからと言っても、これはアレ。
 多分気温は十度台。
 アヴェンさんが辛そう。
 もっと歩こうかな?
 ……そんな冗談は冗談で済ませておいて、と。

「アヴェンさん、この辺りにしましょう! 平たいです、石無いです、眠れます!」
「いや、何故にいきなり片言……」
「私が立てます!」

 バンバンバン。
 何度も催促するように、地面を叩く。
 その度に俺の手の下からは、砂埃が起こっていた
 アヴェンさんのを眺めて、一通りは覚えている。
 それに俺の言う通り、この辺りはテントを張りやすそうな感じ。
 ごつごつとした感じもないし、そのゴツゴツの元となる石も無い。
 石が無ければ嫌な寝にくい体勢になる事も無い。
 それにテントの布を張るのに使う杭も刺さりやすい。
 成程、ここで寝ろって神様が言ってるんだね。

「…アヴェンさん、テントってもう一つありますか?」
「あるにはあるけど…」
「出してください。後ついでに、他にも…」
「ああ分かった分かった。適当に出して使ってくれていいよ」

 あれ、何か違和感が。
 まあ、アヴェンさんの事だしどうせ特に何も無いでしょ。
 俺はゴソゴソとリュックを漁る。
 あまり腕を押し込み過ぎれば、破裂してしまいそうなので程ほどに。
 毛布でしょー、毛布でしょー。
 …あっ、これがテントとのコンパクト状態か。
 木の枝の束に、布が巻かれてある物が出てくる。
 確かに、二つあった。
 一つは俺が良く使う、迷彩柄に入ってそうな薄暗い緑色のテントセット。
 もう一つは同じく薄暗いけど、カラーリングが赤だった。…言い方によれば茶色って言えるかも。

「じゃあ、始めますね?」
「大丈夫かな……」

 そんなお約束を言うのならば、その通りにしましょうか。
 なんて思ってしまったけど、今日くらいは普通にする。
 今日くらいというか、今日は初めてだし、あまりからかうのは無しにしよう。


 えーっとまずは、と。
 力を込めて、ぐるぐると端と端が合わさった部分を紐で締め上げ、余った所で紐を結ぶ。
 それを四つ作り、四角の枠を作る。
 頂点を結んで、今度はくの字のような組み木を二つ作る。
 それで頂点の所に紐で輪っかを作って、そこに杭を通して地面へ打ち込む
 これで骨が出来たので、後は布。
 被せて、出入り用を除いた二辺の部分に杭を打ち込み、固定する。
 これで、終わりだっけ。
 止めていないピラピラした部分を紐で枠組みと結べば、大丈夫だと思うんだけど。

「アヴェンさーん、これで良いんですか?」
「良いんじゃないかな」

 後は中に毛布を詰めてー…と。
 よし、完成!
 後は二つ目だ。



 時刻は……判らない。
 完全に日が沈んだのが五時くらいとしたら、今は八時くらいかな?
 テントに焚火、それらを囲むようにして等間隔に置かれている石。
 その中に、俺とアヴェンさんはいた。

「アヴェンさん、この辺りで作ってたら魔物寄って来ませんか?」
「大丈夫、この辺りには魔物はめったに来ないから」
「そうですか。一応の安全処置なんですね、この石」

 石は魔導石だったか魔石だったか言う物。
 石に魔術が籠もっていて、然るべき順序で使えば魔術として起動する。
 お父さんの紙に書かれた魔法陣のような物と同じなんだろう、きっと。
 この前お父さんの紙に魔方陣が書かれているのを見た。
 アレで何かを発動するのかなと思ったけど、魔力が籠もっているみたいにモワモワとしたものが見えたんだよな。
 俺の眼が見えるのは、もしかしたら魔力だけじゃないかも知れない。

 …話が逸れた。
 そんな事で、等間隔に置かれている石はとある魔術を行使する儀式のような物。
 『清域(デトックス)』らしい。
 なんだか「毒す」みたいで毒薬的な感じがするけど、俺の直感は正しかったらしい。
 「デトックス」って言うのは『毒素を抜く』とか言う意味らしい。
 …ん、直感とは百八十度違ったけど、一応毒だったじゃん。

「こういうのがあれば魔物は入って来れないんだ。威人さんもなんだけどね」
「何かそう言う感じなのですか」
「あー…、学校で教わると思うよ。教えたてしまったら、多分楽しくないだろうしね」
「それもそうですねー」

 そんな事を放しながらも、手元で魔物を裁いていく。
 何故か頭の中で肉を切らして骨を断つて言うのを思い出したけど、この場合「肉を切って骨も断つ」って感じだった。
 どんどんと小さくなって行く猪の魔物。
 小分けになった肉は、俺の魔術でヒャッハーだ。
 味付けとしては微妙な所だし、服なんてものを持ち歩いている。
 そんなこんなで他に要らないものはかさばるので持ってきていない。
 それにこっちで初めて食べた肉みたいに血抜きしてなかったから、鉄臭かった。

「ん、それでもまあまあ美味いです」
「魔物の肉は普通の肉と違って特徴的だからね。魔力がしみ込んでるって言うのかな?」
「こ、これは魔力の味なのですかっ!?」
「いや、そうじゃ無いんだけど。どういったものかなー」

 衝撃の事実…かと思ったけど、いまいち容量の得ない回答が返ってくる。
 アヴェンさんは成人男性だけあって、結構な量に齧り付いていた。
 取り敢えず、素材の味なんだけど素材本来に旨味が付いているー…みたいな、不思議な感じ。
 塩すらかかっていないのに、血のせいか少し塩分の味がした。
 どういったら良いんだろ?
 まったく味付けしていない只の肉をホルワールさんに食べさせられたことがあったけど、溢れ出す肉汁には油の味しかしない、噛んでも噛んでも肉本来の味しかしない、かと言って不味いとか言えるほどでも無い、微妙な味。
 そんなのとは全く違う。

「何なんでしょう?」

 骨に絡み付いたすこし表面が黒くなった肉を眺めながら、魔物の肉の凄さを考えてみる。
 ……これは俺が最初に試した物だった。
 それで見事、ウェルダン以上の代物が出来上がっている。
 表面をかじり取ってから、中の若干赤みがかった肉を頬張るみたいな、少し前準備が要ったけどそれもまた一幸かな。
 アヴェンさんのはちゃんと焼いたけど、中までちゃんと火が通っているかは判らない。

「うん、内側がまだ赤っぽくてもなかなか美味しいね」
「……すみません」
「はい?」

 どうやらアヴェンさんのも、中が生焼けだったみたいだ。
 素直に謝っておくことにした。…外は良い焼き加減だったんだけど。
 お腹は壊したこと無いから解らないけど、たぶん大丈夫でしょ。

 食後、魔物の肉を焼いておくと長持ちするという事を聞いて実行していると、アヴェンさんが外套を抜き出した。
 その下には、隆々たる筋肉が……在る訳も無く、それに至るまでのワンクッション、服が現れる。
 あ、よそ見してたせいでちょっと燃やしちゃった。
 ……いいや、食べちゃえ。
 アヴェンさんが起こした突然の行動に目を奪われて、蝋燭に火を灯すとかのちょっとした火種にする『僅火(エンバー)』より、燃やす事を目的とした『焼火(バーン)』の操作を間違えて肉を燃やしてしまった。
 取り敢えずアヴェンさんは木刀を掴んで素振りを始めたようで、コッチの行動には気が付いていない。
 横眼でチラチラと見ながら、やっと半分ほど焼き終わった頃。

「ブフッ」
「ん、どうかしたかい」
「いや、何で脱いでるんですかっ!?」
「……あー、ごめん。少し離れておこうか?」
「いえ、裸を見るのにどうこうじゃないんですけど。寒くないんですか?」
「うん、物凄く寒い」

 俺は狼だけあって基本ポテンシャルが人と違うし、焼いているから熱源も近くにある。
 要は、全く寒くない。それどころか、火の加減を変えれば熱くなってくるくらいだ。
 けどまるで露出狂のように突然脱ぎだしたアヴェンさん。
 ………めっちゃ、震えてる。
 カタカタどころじゃなくて、ガタガタ、ブルブル、それ位で説明できているのかと思う程、震えていた。
 アヴェンさんはさっきまで、服を脱ぐに至るまでにしていた素振りのせいで、火の光を反射する程度には汗を掻いていた。
 要は、寒い程度だったのに、今のアヴェンさんは凍えていた。

「何やってんですか!?」
「いや、運動すると汗を掻くからね。それに肉の動きを確認したいし」

 とか言いつつ、素振りを開始するアヴェンさん。
 し始めてからは寒さが消し飛んでいるのか震えは止まっているけど、それで良いのかアヴェンさん。
 周りは寒いのに、一人だけ青春しているようなオーラを纏っているですけど。

「……って、あぁっ!? 消し炭にぃっ!」

 焼いていた肉の分が、口に入れるのも憚られる暗黒の物質へと様変わり。
 炭になっていた。
 アヴェンさんの方をゆっくり振り向くと、苦笑いしながらも素振りを続けていた。



 夜も更けてくる。
 暗さは相変わらず。
 だけど、光を失った直後のような薄暗い空が、だんだんと夜特有の神秘的な星模様をしっかり映し出すようになってきた時間。
 やっとこさ、寝支度が始まった。

「あ、ケイ。二つも立てる必要があったのかな、広さ的にも充分だったけど」
「ああ、忘れる所でした」

 テントのもう一方に、毛布を敷き詰めフカフカさを確保する。
 うむ、これで充分。
 俺がテントの内側に毛布を敷き詰めた後にうんうんと頷いていると、アヴェンさんが近寄ってきた。
 なんか困ったような表情をしている。
 いや、まあそりゃあ言いたい事も解るけどさ……。
 こういうのって、こういうものでしょ。
 俺は近寄って来たアヴェンさんを押し倒した。
 押し倒すというより、押して転ばせるって感じで動作は繋がっていない。

「な、ケイっ!?」
「ふっふっふ」

 わざとらしい笑い声を出す。
 まあ、わざとじゃなければこんな事で笑う事も無いか。
 けどあまりにアヴェンさんの顔が困惑って感じだったので、調子に乗ってみる事にする。
 伸し掛かるようにして、倒れたアヴェンさんの上に身を乗り出した。
 そして、グイッと顔をアヴェンさんの顔へ近付けていき、笑う。

「今日くらい、ゆっくり休んでくださいっ♪」

 文章にするならば語尾に音符が付くような感じだったかな。
 あまりに滑稽だったので、若干本音の混じった笑みでそう言い放って、アヴェンさんが入ったテントの入り口を閉めた。


     ★


 あれ、何か足がゴソゴソする。
 そんな事で夜中目が覚めた。
 紙のような、板のような。薄い何かが足にチクチクと当たっている。
 寝ぼけ眼で『僅火エンバー』を灯して、それの詳細を探ってみた。

「………」

 俺は、その正体…もとい、ソレをそっと持ち上げる。、
 のっそりと起き上がった俺の顔は不機嫌だったかもしれない。
 何分寝起きだし、元々目付きは鋭い方。
 そんな訳で、アヴェンさんの居るテントへと進んだ。
 入り口をゴソゴソとしていたら、アヴェンさんが目を覚ましたよう。
 丁度その時、入り口に隙間が生まれた。
 なので、思いっきりその薄い板を中に投げつける。

「ん、ケ……ケイ、か―――ぐおっ!?」

 俺はアヴェンさんの腹にソレが命中したことを確認するとアヴェンさんの顔を確認してから俺のテントへと戻って行った。
 ソレ…日本語で言うならば、春画か。
 まったく、何を毛布に挟んでいるんだか。
 その後、アヴェンさんのベッドから唸り声のような悲鳴のような、くぐもってて良く判らなかったけど、「ぐおー」とか言う声が聞こえた……ような気がした。
少し今までの流れからムードが変わった……と言うか、なんか文体が変わってるような気が。
気のせいですかね?

そしていつかの『変な物』、登場しました。
アヴェンさんは『いじられ兄さん』と作者の心の中で…コホンコホン、……な訳ですので。
+注意+
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