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異世界マイペーサー 作者:闇緒 恣恣

形白  ~ Relief in carnation

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十九話 行為交錯  ~ ぜったいのぴんちです

すみません、遅れました
 ねぇ、私ってなんだと思う?

 私は無理やり引き裂かれた。
 私にはアイツしか無かった。
 だけど、あいつは無理やり引き裂いた。
 アレは、私にとって全てだった。
 そして、あれは私自身のように想っていた。
 だけど、あいつは引き裂く。

 アイツが目の前で無くなって、目の前が真っ暗になった。
 アレが裂かれて私は私で無くなった。
 ねぇ、私は誰?
 ここは、何なの?
 私が判るのは名前だけ。
 それでもこの名前もあいつが勝手に付けた物かも知れない。
 私が私である確証はどこにも無く、それどころかあいつに作られたと言う可能性もゼロじゃない。
 だからこそ、あいつが憎い。
 私からあれを奪い、あれを壊したあいつが。
 そしてあいつがアイツの後釜を継いだこの薄情な世界が。

 だからこそ、皮肉にも私はこうして憎しみを込めてこう叫ぶ。
 私の名前は【―――――】だと。


     ★


 あら、あららら?
 なんか黒ずくめの男に攫われたと思ったら。

「な、何でありますかっ!? ここっ!?」

 むしろなんか待遇が良くありませんこと?
 まだ熱が抜けきってなくてポワポワするけど、明らかにこの世界は現実だと思う。
 けど。
 俺が座らされているんだろう、このふわふわでふかふかのベッド。
 それに目立つ家具がこのベッドしか無いにも拘らず、無駄に広い部屋。
 ……どこすか、ここ?
 攫われたことなんか忘れて、純粋にこうなった意味が解らなかった。

 よし、意識もはっきりしてきたことだし。
 ……どうしよ。
 正直なところ何が出来るかもわからない。
 熱のせいか、他に何かがあるのか解らないけど、手がピリピリしていて痺れているみたい。
 動かそうとしても、一応は動く。けど、何か力の籠った事が出来るかって聞かれるとう~ん……となってしまう。
 どないしよ。
 尻尾でも振っておくか。
 悩んだら、行動あるのみ。……たとえそれが無駄な事だったとしても、だっ!
 ていうか、ここ。明らかに上流階級みたいな人んところだよなー。
 そんな事を思いつつも、手足の感覚がはっきりしてくるまで尻尾を振っておくことにした俺だった。




 やっぱり毒だったのか。…そう今は思う。
 なぜなら、俺の身体の痺れとか身体の火照り……熱っぽさが無くなったと同時に人が入ってきたから。
 入ってきた人は、煌びやかな衣装を身に纏ったとかそういう系のお金持ちの風貌を持っている人じゃなかった。
 ……と言うか、服で判断できない。なぜならば。

「私の威を上げるために謀り手に入れたものであったが……、やはり」
「…………何故にぃ」

 服など殆ど来ていないに他ならなかったから。
 顔だけを見るなら老練と言った感じで、深々と顔に刻まれているしわとかで威厳とかありそうだけど。
 お腹が台無しだな、うん。
 太っている……とかデブだとか言えるほどでも無いものの、前世では中年太りとか言われて決していい顔はされない太り方だ。……要は、お腹だけポコッと出てる。
 そんなお腹を軽く隠す程度に羽織っているバスローブみたいなもの。
 それを揺らしながら、俺のいるベッドにゆっくりと近づいてくるザ・おじさん。
 おじさんの姿があまりにもアレだったことで気が付いたんだけど、俺の姿も大概だった。
 バスローブより、明らかに防御力の低いタオル一枚。

「性奴隷にするのも捨て置けん」
「へあっ!?」

 光の巨人よろしく奇声を発してしまったけど、聞き取りたくない名詞を聞き取ってしまいますった。
 性……な、奴隷だとぅっ!?
 奴隷っつーのは、何となく聞いていた。
 なんか言えないような事をさせたりする奴。例えば、人殺しの駒とするのとか。要は使い捨ての人間。
 そして、主に逆らえない事を良い事に社畜扱いしたりする奴。簡単に言うなら、超ブラック企業なのに文句も言えず働かせられる……みたいな。
 そして、この顔だけのおじ様が言った性奴隷。ナニをナニさせたり、夜伽、その他諸々のいろんな意味でドロドロネチョネチョしたような事をさせられたりする奴。『堕ちる』とか言って、それで得られる快感を報酬として止められない奴とかもいるらしいんだけど。
 目が据わっていると言ったらいいのか、それともヤル事は決まっているという目なのか。
 ………身の危険から感じる悪寒で、火照りも収まったのに汗が垂れてくる。

「どれ、壊れてもいかんからの。丁寧に始めるか」
「や、止めっろ!」

 女を相手の意思関係なく襲うとか、強姦!
 丁寧にするとか以前に犯罪!
 まず強姦する時点で丁寧じゃない!
 何から何をどう突っ込めばいいのか判らないけど、取り敢えず生死の言葉を叫びながら頭の中でそんな事を考えていた。
 けど、いかんせん力が強めの獣人であろうと大の大人にガキが適うはずも無い。
 簡単に体に巻き付いていたタオルが外される。

「変っ態…!」
「そんな事は言ってもな、抵抗しきれてないぞ?」

 それは腕力が足りんからだよ! エロいことを想像させるようなこと言うな!
 俺が両手で押し返そうとしても、片手でバスローブを脱ぎながらベッドの上にのし上がってくるオッサン。
 その飄々とした顔がまたムカつく。
 ……ついでにその腹で顔と超アンバランスな癖に、股についた息子さんがさらにアンバランスさを際立たせおってっ!?
 オッサンは俺がそれを見たという事に気が付いたのか、表情を一転させニヤリとムカつく笑みを浮かべ始める。

「その年で、こっちにも興味があるか。クク、つくづく抱き甲斐がある……」
「うっしゃい、デカいんだよ!?」

 ついでに揺らすなー! 見せつけるなー!?
 ちょっと気分が高揚してしまって自分の状況が掴めていなかったけど大ピンチじゃないかコレッ!?
 犯されんのか、コレ?
 でっかい棒でズガンと股を一突きされんのか?
 そう考えれば考えるほど、血の気が引いていくのが自分でも分かる。
 え、ちょっと待って。何々、筆降ろしとかした事無かったのに、異世界で姫初めするの?
 男の初めてはどうでも良い。どうでも良いって事じゃないけど、女の初めてはとんでもなく痛いって話だ。
 想像しただけで、気持ち悪くなる

「私は、その表情が見たかったのだ」
「えぁ、う……」

 虚勢でも張ろうと、声を出そうとしたけど泣きだすのを堪えている時のように喉が緊張して声にならない。
 俺のもみあげの部分の髪をたくし上げるように頬を撫でる、オッサン。
 鳥肌が立つ。
 今まで全く寒くなかったし、どちらかと言うと熱っぽさから身体が熱かった。
 けど、身体の奥底から今は寒い。寒さと言うか悪寒か? そのせいで、身体が強張る。
 逃げないと。
 俺は精一杯の力で、力の籠もらない手を動かす。

「……往生際の悪い子だ。躾が必要だな」

 そんな事を言いながら、俺の首に何かを巻き付けた。
 首輪? いや、手綱っぽいのは無いし、犬に付けるようなアレなものでは無い。
 じゃあ、何で?
 そう思った瞬間。

「えぃあっ!? ん、ぐゅっ、ごぁ……!」

 頭が可笑しくなる。
 視界に映るのは、笑っているオッサン。けど、その視界も可笑しくなってくる。
 頭の中はまるで寄生虫が脳を喰い始めたかのように、不気味に痛み始めてくる。
 視界も何かジャミングが始まったかのように、どんどんとぼやけていく。
 そして、皮膚の内側に手を突っ込まれているような不快感。

「え、ぴゃ……!?」

 正直、口から声が漏れているのは声帯が振るえている感じで分かる。
 けど、耳はまるでイヤホンを付けられているかのように音がくぐもり、どっちかって言うと聞こえていない。
 何から何まで支配されてしまっている感覚。
 キモチワルイ。
 胃を握られて、思いっきり振られているような。
 そこまで考えて。

「おごぁ、げっ、んぇ」

 吐いていた。
 何かが入っているとかそんな感じでは無く、吐いている中も食道を指でなぞられているかのような不思議な感じ。
 不思議ではあるけど、キモチワルイ。
 体勢的には寝ゲロで、キモチワルイどころの話じゃないんだけど無意識に横を向いていたみたい。
 喉には詰まらなかった。
 けど、キモチワルイどころの話じゃない。
 ぼやけた視界の中、オッサンが身体をベタベタ触っているような感じがする。
 触られている事に鳥肌が立つし、悪寒も出る。
 けどキモチワルサは、内から犯されている感じは、非じゃない。

「躾は、お気に召したかな?」
「ぎぁ、ふっ!? ……ゆぉっ!」

 訳が解らない。
 自然と涙が出て来る。
 自分の身体がジ…自分で無くなって行くみたい。
 何かオッサンが驚いている感じがしたけど、そんな事もうどうでも良い。
 もう本来出そうと思って出せる物で無い奇声が俺の喉から生成されている。
 誰か、助け―――

『憎イ』

 憎いとか以前に、誰か助けてほしい。
 助かりたい。
 とにかく助かりたい。

『コノ苦痛ヲ消シ去リタイ』

 うん、そう。
 誰か、この苦痛から解き放って欲しい。
 何か、頭の中が狂っていくこの感じを……。

『狂オシイ程ノ、苦シミヲ……』

 そういう時はどうしたら良いんだろ。
 この身体の奥底まで干渉してきているような不快感。
 身体の中を掻き混ぜられているっていう言い方が随分とマシに聞こえるほどのこの感覚。
 どうすればいいんだろう。

 俺はかつて聞いた声が頭の中に響いている事にすら気付かず、自分の考えのように錯覚していた。
 負の感情を孕んだおぞましい声。
 俺の声っぽいけど本来なら、別人のように感じたはずだ。
 けど身体に物理的に何かねじ込まれている感じと同じように、意識にまで何かが干渉してきている感じのせいで全く気が付かない。
 むしろ、自分の考えのように感じるソレだからこそ、自分の考えだと思っているんだろう。

『“力”……』

 うーん、力かぁ。
 けど腕力なんて適いっこないしな。
 力があれば、ぶっ潰せるのに。
 俺に力があれば、なんて思ってしまうのはやっぱり本来力が無いからかな?

『“力”ハ、アル……』

 あったっけ。
 ……んぅ~、あ、そっか。
 スキルっつー便利なものがあるじゃないか。
 何だっけ、『矛盾』?
 けどどうしたら良いんだろう。
 テレビで見た事ある感じで、タライみたいなのをこのオッサンに落とせばコレは収まるのかな。

『モウ一ツ……。“ワタシ”ガ持ツ能力だ……』

 あぁうン、そう言エば……。
 ワタシは、スキルもう一つ持ってたッケ?
 何ダッただロ……。

『思イ出セ』

 ソうだ、思イ出さナイと。
 確カニ、ワタシは『獣化』『矛盾』以外ニ、アト一つ持ってイタ。
 何ダッタッけナぁ。

『“力”ダ、単純な“力”。ワタシハ“ソレ”ヲ持ッテイル』

 ソウだ、思イ出シタ。

「「引斥操作インセキソウサ……」」

 自然ト口カラ出タ。
 私ノ……イヤ。不完全ナ矛盾トハ違ウ、私ノ能力。

 その瞬間、俺の中で何かが混沌と化した。

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