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異世界マイペーサー 作者:闇緒 恣恣

形白  ~ Relief in carnation

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十四話 黒衣黒操  ~ まっくろがおおいです

 真っ黒い服。
 布のような真っ黒い、俺が転生直後に来ていた一張羅。
 この服は、異質だった。
 ……もちろん、見た事も聞いたことも無い物質で織られている、とかそう言う意味では無い。

「……ケイ、何かしたか?」
「う、ううん。ただ、時々着てただけだけど、コレ……本当にアレだったの?」
「あぁ、一応性質は同じだが……」

 俺は目の前の黒っぽい布の塊を見て固まっていた。
 それはザグさんも同じ。何度も魔力特有の微妙なオーラが時々ザグさんから上がっている。
 それは、かつて俺の体を覆うくらいしかなかった布切れのような俺の服。
 だけど、それはどう見ても……。

「「ローブ……」」

 魔法使いとかが決まって着ていそうな、フード付の外套みたいなものに変貌を遂げていた。
 ただ横に長い長方形だけだった布が、黒地の生地をほんの少しだけ加工したような質素のローブに様変わりしていた。

 俺はなんとなく着てみることにした。
 俺が今着ているのは、リベさんの作ってくれた黒っぽい薄地の服。肌触りが以前の時のより幾分も良く、前世の服に近い感じがした。ま、そんなこともあって今は前の灰色の服よりこっちの黒色の服の方が気に入っていたりするんだけど。
 ザグさんが少し躊躇っていたけど、元々俺が着ていた服なんだ。今更だと思う。
 そんな事を思いながらも、若干の進化を遂げた俺の服を掴む。肌触りはお変わりなく、健在な肌心地だった。
 俺はかつてと勝手の違う黒服に戸惑いながらも、羽織った。
 大きさはまるで測ったみたいにぴったり。襟の太さから肩の位置、袖の長さから裾の長さまでピッタリ過ぎた。
 俺は背中にあたるあまりの布部分を掴み、そのフードを被ってみた。
 顔の半分くらいは隠れてしまいそうに目深だったけど、視界を遮るようにはなっていないようだった。
 ……ホントピッタリだな、これ。

「こりゃあ、ヤバいな……」
「……何が?」
「これを着てたら、ケイに完全なる干渉不可の防壁が出来てる」
「じゃ、じゃあ黒狼種ってのも隠せる?」
「あぁ、そうだな」

 干渉系。俺が唯一素養が無いという事で使用できなかった魔術の類。
 干渉系は、技術にもよるけど大抵はあらゆるものに干渉が出来る。
 そして、技術を自称極めたと言っているザグさんに干渉できなかったこの物質を纏っている俺。要は、干渉系に関しては無敵らしい。
 無敵、良い響きだ。ま、無敵だからって、脱がされたら終わりなんだろうけど。

 俺は、また一つ優遇と言っても良い代物と出会った。


     ★


 スキル。
 この世界には魔術だとか魔力だとか以外にも、ファンタジーな要素があった。
 それが、三状だとか言われているステータスに表示される、自分の特殊能力スキル。これだけやけにゲームっぽい感じがするけど、種族間で同じ能力を持つ威人っていう種族もいれば、獣人みたく生まれながらにして変身する能力を備えていたりするので、案外普通だと解った。
 スキルには、ザグさんリベさんによると、三種類があるらしい。

 一つ、種族特有能力。レイシャル・スキルと呼ばれるもの。
 ステータスでは黒い菱形『◆』で表示されるらしい項目。俺のステータスにも書かれてあった奴だ。
 俺の項目には、『獣化』そう書かれてあった。多分だけど、これは獣人特有だと考えていいと思う。
 この項目は、ザグさんの人種には備わっていない事が多いらしい。よっぽどおかしな環境で育たない限りは。

 もう一つ、努力次第で得ることができる能力。ノーマル・スキルだとか、普通にスキルだとかと呼ばれるもの。
 ステータスでは白い菱形『◇』で表示される。リベさんもそうだったように、レイシャルスキルの下に表示されるみたいだ。
 ここは努力次第で得ることができるという事もあり、様々なものがある。
 俺の所には、おそらく俺の持っているであろうスキルの中で一番物々しい内容かもしれない『引斥操作』の文字が。……絶対、秘密にしておいた方がいいな。特殊な干渉“魔法”でもスキルまでは見きれないらしいから、俺が気を抜かなければばれないだろう。…後使わなければ。

 そして、最後。なんでもござれのザグさんですら殆ど知らないとされる、『唯一能力』。ユニーク・スキル、そう呼ばれるモノだ。
 これを持つ人は大変珍しく、今や一千万の人口となっているこの国の中にも片手で指を折るか折らないかくらいしか居ない。要は、一千万の人の中で数人しかこの『★』の項目を持つのはいないみたい。
 俺の能力、『矛盾』とやらは引斥操作という物々しいさナンバーワンには遠く及ばないけど、こっちも充分にアレだ。

 何故に、そんな事を振り返っているかというと。
 ザグさんに問い詰められているからであった。
 俺は最初に、ザグさんへは能力は獣化以外“持っていない”と言っていた。
 けど、以前俺が星形を持っていると言ってしまい、そこの矛盾が生じてしまった所をザグさんに突かれたのだ。
 若干の時間が空いているのは、多分だけど油断させたところを狙ったんじゃないだろうか。うう、ザグさん、酷いですよ……。

「何で、最初は黙ってたんだ?」
「その、なんかアレだったから……」
「アレ?」
「その、凄く名前が……凄かった、から」

 嘘は言っていない。
 名称を目でなぞる様に見なくても、パッと目にとめるだけで分かる。
 「こ、これは……痛々しいッ」と。
 そんな訳で、あまり言いたくなかったんだけど。こうして、公にしなければならなくなっているんだ。

「凄い……? ユニーク欄には『魔力視』って書かれてあるんじゃないのか?」
「あっ………。…う、うん…そうっ! 魔力とか知らなかったから、訳が解らなくって!」

 俺はザグさんが誤解しているという事を全く気に留めていなかった。
 俺は魔力が見えるという事を、ザグさんはケイが特別だといった。なら、その特別が『唯一能力ユニーク・スキル』の事を指していてもおかしくなかった。
 俺は慌てて、ザグさんの発言に話を合わせた。

「……獣人って、嘘を言うのは苦手なんだとよ」
「う………? って、あっ」

 ザグさんが指を指す先。そこには俺の尻尾があった。
 その尻尾は、俺の内診を抽象的に表しているのか、忙しなく暴れまわっていた。
 おーぅう……、ポーカーフェイスじゃなくってポーカーテールの練習をしなければいけないのかも知れない。



 俺は、ザグさんに『矛盾』スキルの事をばらしてしまった。
 矛盾スキルの内容を知るには、その項目に触れれば新しいウィンドウを見るような形で開かれた新しい光の板に書かれていた。
 ……まぁ、一筋縄じゃなかったんだけど。

【やぁ、フォリオーネが代理で済ませてしまったからこれが初めまして、だね! どうも、ほ……創世神ビスガントです!
 君の転生には少し手違いがあって次元が狂ってしまったんだけど、あまりその点は気にしなくても大丈夫! お詫びとして、取って置きのスキルをちょっとした優遇にプラスして、贈呈しようと思う。
 名前は『矛盾』。どう、なんか格好良さそうでしょ?
 力は、この後に表示されるボードに詳しく書いてあるけど、実質僕が作ったような物だからここで少し自慢させてもらうよ!

 この能力は、創造の能力です。創造魔術とは異なり、魔力の消費はありません。
 ただ、創世神の威厳もあるので、創造できる物には制限を設けてあります。
 まず、『物の構成』。あの転生した場所に設置してあった不思議な台座と同じ物質でしか物体を構成できません。物質の色は変色させることは不可能なので、そこで物体の色も『黒』に限定されます。
 そして、『不全』。意味としてはそのままで、干渉魔術などを外部から加えられると物体として不完全なため、付加に耐え切れず文字通り霧散します。
 最後に、『使用者への負担』。この能力は一度発動すれば常時発動となります。発動後には、干渉魔術に過敏になり自身に掛けられると苦悶してしまいます。生まれた時に纏っていた服で何とか防ぎましょう。

 ……以上かな?
 このスキルは僕が手を加えてちょっと面白くしたからね、十分面白いと思うよッ!
 さてさて、ステータス画面を開くことの出来た君に進言しておこう。 
 馬鹿なことは考えないでおくれよ。
 それぐらいだね。じゃあ君にとっての異世界、君なりに充分に楽しんでくれたまえッ!】

 そう言った、創世神からの手紙のようなものが矛盾スキルの詳細の前に表示されたのだ。
 このビスガントっていう神様……、面白いっていうのを間違っていると思うなッ!
 中二病の人が面白いと思うような物ばっかりじゃないかッ!
 そうして、後から表示された、矛盾スキルの詳細。

【矛盾:鑑定不可の物質を操り、物体を創造する能力。創造する物体の体積、重量ともに制限無し。創造に対価無し。一度発動すると、以後自身に掛かる干渉魔術に拒絶反応を起こす】

 ざっくりしてんなぁ…。俺は取り敢えず、そんな事を思いながらもザグさんにそのことを話した。
 干渉魔術を掛ければ壊れてしまうけど、物を創り出すスキルだと。

「確認するぞ、そのスキルを使ったことは?」
「無い。なんか矛盾って名前が怖かったから」

 嘘は言っていないぞ、うん。
 俺がザグさんの俺に対する対応が変わらないかびくびくしていたけど、杞憂だったみたい。
 厳しかった表情は、俺がその返事を出した少しした後に崩れた。

「ふ~、かなり不思議なスキルだな。本当、神話にそっくりだ……」
「どういうこと?」
「黒狼種が神話に登場するっていう話を前したよな」

 溜息を吐きながら、呟いたザグさんの言葉に耳をぴくつかせた。
 俺がその瞬間聞き返すと、ザグさんは苦笑いとともに話し始めた。

「この黒狼種が使う力に対して、こう書き残されている文章があるんだ。
 “黒く染まりし雨。空から降り注ぎ、大地を打ち砕かん”ってな。
 黒狼種の発動した魔法だって書かれてたが、実際にはケイみたくスキルで本当は違ったのかもな」
「………その黒狼種って何?」
「世界を壊そうとした、破壊神だとさ。俺的には、魔ほ……いんや。止めておくか」
「なんで?」
「そんな事よりも、だ。ケイ、ちょっとそのスキル発動してみてくれないか?」
「……ん」

 露骨に話を変えたザグさん。
 神話に出て来る黒狼種の話を聞いていて、かなり気になったんだけど。
 俺はそれを不快にも感じたけど、スキル発動に意識を傾け始めた。
 えっと、スキル発動ね……、うんうん。
 …………。

「スキルってどう発動するの?」
「…、感覚でだ。ざっくり言えば、魔術を発動する感じでだな。リベの『妖気』も感覚で操ってるって聞いたぞ」
「ザグさんは?」
「俺もあるっちゃあるが、感覚で操作するとかいう系じゃないからな」

 目を逸らしつつ、そんな事を言っていた。
 まぁ良いや。
 えと、魔術を使う感じ……か。俺はサーラさんの時目の前に火を顕現したような感じで、目の前に丸っこい球体を顕現する感じで矛盾を発動してみる。
 その瞬間、目の前に球体が突然浮かんだ。

「おぉ、スゲェ」
「あれ、落ちない?」
「魔術と似たようなもんじゃないのか? 此処に出そうとしたから、そのまま留まっているみたいな」
「なるほどっ!」

 俺は発動した瞬間、ごとっという感じで床に落ちるものとばかり考えていた。
 けど、俺が出そうとしたのはこの差し出した手の先。なら落ちなくて当たり前かもしれない。
 目の前に浮かんだままの、黒い球体。外の光を反射して輝いていた。
 大きさは、想像した通りのボウリングの玉ほど。俺の手では胸に抱えるので精一杯位の大きさがある。
 もっと小さいサイズの奴を出せばよかったんだろうけど、俺が真っ先に思い浮かんだのが4~5キロありそうな球だったんだ。仕方ない。

「じゃあ、ついでに試しても良いか? 壊すの」
「うん、いいよ」

 ザグさんの目のあたりに濃い魔力が集まりだして、身体の周りにも薄い魔力が纏わり始める。
 ……そう言えば、この前ザグさんに俺を鑑定された瞬間、物すっごく気持ちが悪かった。
 魔力を認識できるってだけでアレなのに、干渉魔術に拒絶反応が起こるって想像したくないな……。
 目の前の、まるで漫画とかの表現でありそうな光景を眺めながらそんな事を考えていた。
 目の前の光景は、丸い球体が風に吹かれて塵となっていっている……みたいな。もっと簡単に言うなら、鑑定した瞬間から球体は霧のようにちれぢれになって行っていた。


     ★


 初のスキル発動から、一夜が経過した。

「リベには黒狼種の事はばらして、あのスキルの事は黙っておこうか」
「…何で?」
「最近なんか勘ぐろうてしてくんだよ。腹割って話したいが、まだ心配だからな…。一番ばれたらヤバそうなその創造スキルだけ黙っておこうか」
「そうだね」

 ……なーんて、思っていた時期もありました。
 俺はゆっくりと後ろを振り返る。
 物音がして、反射的に振り返るのを理性で押しとどめたのだ。
 けど、好奇心と言うか恐怖と言うかで振り返らずにはいられなかった。
 もちろん、振り返った先にいたのはリベさん。

「ザ~グ~……」

 おぉ、何かザグさんのより幾分も濃い魔力が放出されている。……と言うか、普通に見える位に…かな?
 ザグさんはリベさんの悪魔みたいな目による睨みで、見事に固まっていた。

「アンタは、娘と秘密を共有するってシチュエーションに溺れてるだけでしょっ!? おしゃべりだって言うのは否定できないけど、口は充分に堅いわよっ!」
「い、いやっ…! もしもの事もあるだろうしでだな…」
「ザグさん……、変態?」
「違うっ!」

 いくら子供が出来なかったとは言え、溺愛しすぎだと思う。
 俺はリベさんの後ろに隠れ、ちょっと引き気味に確認した。
 そりゃあ、もちろん断固否定が返って来たけど。



 暫くこのうちの中では唯一の男性であるザグさんは肩身の狭い思いをしていた。
 ま、中身は男だから、比率をちゃんと言うなら1.5:1.5なんだろうけどさ。
 そんな訳で、その間にもリベさんの口が堅いと証明された。

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