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ワールドオーダー  作者: 河和時久
パトリア編
64/70

63:女性陣の実力

「がんばってフェリア!!」


 舞台にあがるフェリアにアイリが声をかける。それに頷きながらフェリアは舞台中央へと立つ。


「かかってきなさい」


 支部長は剣をしまいつつ、フェリアに手招きした。まるで映画に出てくるブルースなんたらさんみたいでちょっとかっこいい。


「いきます!!」


 フェリアは最初から全力であろう速度で突っ込む。その速さはレアンの本気の速度を超え、素早さに特化したミルに届くであろう速さだ。武器を持っていないので素手だが、その腕力から繰り出されるパンチは普通の人なら当たれば十分死ねる程の威力だ。それを感じているからか、支部長は女の拳と油断せずに見事に威力を受け流して避け続けている。


「荒削りだが、なかなか筋がいい」


 やはり身体スペックがどんなに高くても素人に毛が生えた程度では、歴戦の戦士を相手にするのは無謀極まりないのだろう。余裕綽々といった感じで支部長はフェリアの攻撃をさばいている。


「くっ!? なら!!」


 そういって懐に踏み込んだフェリアは胴体への右パンチとほぼ同時に左の回し蹴りを放った。下に意識を逸らした後に獣人ならではの身体能力で高速に繰り出される上方向からの回し蹴りは、初撃を止まって受け止めてしまうと視線の外から蹴りが飛んでくる為、一般人ではかわすのが難しいコンビネーションだ。


「む!?」


 思わず腕でパンチをガードした支部長はそのままそこで踏ん張って蹴りを受け止めた。それに対し追撃すると思いきや、フェリアは蹴りの隙に対しての反撃を懸念して一端間合いをとったようだ。


「ぐっ……まさか蹴りとはな。しかもなんという重い蹴りだ。力を逃がせないとは思わなんだ」


 痺れているであろう腕を抑えて支部長が唸る。基本的に対人戦闘というものが、『武器を持った者に対峙する』というのが前提であるこの世界では、まず素手での組手というものを見かけない。世界中を見て回ったわけではないのでないと断言出来ないが、少なくとも今までの旅で狼族以外には見たことがない。それに狼族も素手というよりは爪のようなものを纏っていたから、純粋な無手かというとまた違うだろう。そういうこの世界での文化的? な側面から足で蹴るなんてことはほとんどの場合存在していない。何故ならいくら脚力が手の3倍の力があったとしても、それより剣で切る方がよほど殺傷能力があるからだ。そして足での攻撃は非常に大きな隙も作ってしまう。その為ほとんど研究そのものがされていないのではないかと思われる。故に素手での一対一という極めて特殊な状況ならそれは生きてくる。知らない技というのは非常に有効な戦闘手段となるからだ。そこでフェリアに漫画で覚えた知識での蹴り等を教えた所、ものの見事に習得してしまった。確か斜め上から蹴り下ろすことによって威力を受け流せないなんてアドバイスをした。だが俺としてはローキックのつもりで言ったはずだったんだが、問答無用で頭を蹴ってきたときはさすがに俺も死ぬかと思った。全然打ち下ろしてないよ!! むしろ首飛んじゃうところだったよ!!


 自分が蹴られた訳ではないのに思わず走馬灯のようにフェリアとの練習風景が思い起こされた。あの蹴りが当たってたら間違いなく首から上は潰れたトマトのようになっていただろう。しかしあのおっさんは初めて見た蹴りをよくガードできたな。レアンはまともにくらって吹き飛んでいったんだが……。しかも鋼殻竜に撥ねられてもピンピンしてたレアンが頭部を蹴られてふらついてたからな。他の奴ならぺちゃんこだっただろう。


「腕が痺れるなぞずいぶんと久しぶりだ。しかもこのようなお嬢さんが相手とは……儂もまだまだ修業が足りんな」


 そんなことを言いながら支部長はガードした右腕をさすりながらフェリアを見据える。言葉とは裏腹にまだまだ余裕がありそうだ。フェリアとしては初見で倒せなかったのが非常に痛い。何故ならあると知られた攻撃は対処が可能になってしまう可能性があるからだ。それどころかそれを狙われて反撃の糸口にされてしまうことも多々ある。だがフェリアにはまだとっておきがある。


「あれが防がれるなんて……それなら!!」


 フェリアは再び突進し今度は左のボディーブローから右回し蹴りを放つ。


「同じ手が通用するか!!」


 支部長は蹴りの威力が遠心力にあると見抜いたのか、その出がかりをつぶしにいく。どんなに凄まじい威力の蹴りでも、威力が乗る前ならさすがにそれほどのダメージはでない。そして捌くことができれば体勢も崩せる。化勁のような技術を使う支部長なら攻撃方法さえ見極めれば捌くことも簡単だろう。


「何!?」


 だが、今度のフェリアの蹴りは上段から下段へと途中で変化した。足を砕きに行った蹴りは支部長のとっさの判断で避けられた。が、地に落ちた足先はそのまま跳ね上がり横蹴りのように支部長の体を捉えた。


「ぐ!?」


 しかし、支部長もさる者だ。あの高速で変化する蹴りをかわした後の蹴りまでしっかりガードしている。さすがに飛んでいる途中を蹴られたためにそのまま吹き飛んではいるが、そう大したダメージにはなっていないだろう。


「あれも受けられるなんて……こうなったらあれを……」


 そういってフェリアは今度こそはと吹き飛んでいる支部長に追撃を行う。


「痛たた、さすがに今のはやばかったぞ。ってもうきてるのか!?」


 支部長は安心する間もなくフェリアの拳による連打を受けるが、全てかわしている。今度は完全に捌くのは難しいらしく、何発かかするようなヒットが見受けられる。攻撃を見せるのは何も悪いことばかりではない。恐らくフェリアが蹴りを見せたことにより、相手の頭に蹴りという選択肢が刻み込まれたのだろう。つまり意識をそちらに割かねばならない為、今までのように余裕で受け流すことができなくなっているのだ。ほんのわずかな違いでも実力が近ければかなりの影響を及ぼす。それでもほとんど捌ききる支部長の回避能力は相当なものである。


 懐に入り込み連打をするフェリアが不意に拳を止めた。そして一瞬呆けた支部長の腕を掴んで引き寄せ、しゃがんで回転しながらさらに懐に入り込む。


「うおおお!?」


 そして相手の手を地面に叩きつけるようにしつつ、後ろ足で相手の腹をけり上げる。これは俺が教えた改良一本背負いだ。唯投げるよりも体が柔らかくしかも腕力のあるフェリアなら蹴りも加えたらいいじゃないと、適当に考えてやってもらったら思いのほか出来が良かった技だ。この技の真に恐ろしいところは密着状態から繰り出される蹴りにある。後ろに対する蹴りだが、密着している為、完全な死角から襲ってくるのだ。しかも腕をとった背負い投げの途中という状態で。お互いの体の中心が合わさったところで蹴りが来た場合どこにそれが向かうかというと……。そう、男性なら一撃死してもおかしくない股間である。元々この技はフェリアを襲ってきた男用に教えた技だから問題ないだろう。だけどまさかここで支部長を殺す気なのか!?


「ぐっ!! ごっ?!」


 この技は蹴り上げた足と同時に反対の足でジャンプし、投げた相手と一緒になって回転した後、地面に落ちた相手をさらに回転して勢いをつけた踵で追撃して完成する。一対一限定の技だから技後の隙なんて全く考えていない。本当なら投げるときに関節も極めて、投げる、蹴る、極めるを同時に行う技にしたいところである。だが動いている相手の関節を決めるのはさすがに難しい。まだまだ改良の余地がありそうだ。


 支部長はさすがに股間への攻撃は避けたらしいが、蹴りを腹にくらったようで、満身創痍だ。これはレアンよりフェリアが強いという訳ではなく、単純に相性の問題だろう。恐らく武器が剣である支部長が素手で戦っている時点で手加減はされているはずだ。しかも初めての素手専門の格闘技が相手ではいくら達人でもなす術がないだろう。


「おいおい、おっさんだいじょうぶか?」


「ぐっ痛たた、さすがに老体には堪えるな。今の技はなんだいお嬢さん? まるで見たことがない技だったが」


「キッドさんに教えてもらいました!!」


「旦那が言うには戦いの時に武器をなくしたから戦えません、なんて理屈は通らない。なら武器のない状態でも戦えるようにするべきなんだとさ。それにしたって無手で相手を殺せるまで技を磨くやつは見たことねえけどな」


「むう、無手の対人戦闘技術とは……確かガルブにそんな技の使い手がいるとは聞いたことがあったが、まさか実際お目にかかるどころか自身がくらうことになるとは思わなんだわ!!」


 そういって支部長は起き上がって大声で笑った。ダメージはそこまで酷くはないようだ。とりあえずフェリアは明らかに殺しにいった気がするが気にしないでおこう。ガルブとはそういえば先日聞いたなんたらいう大会があるっていってたところか? たしか傭兵王国とかなんとか。傭兵王国とすれば確かに対人戦闘に特化してるだろうから、そういう技術があってもおかしくはない。だがあくまで武器がなくなった場合の奥の手という感じだろう。何故なら初めから無手なんて不利な状況で戦う理由がないからだ。


「見事だお嬢さん。合格だ。お嬢さんなら素手でも魔獣を倒せるかもしれん。だがそれでも素手では圧倒的に不利なのは否めない。何かしら武器を持った方がいいだろう。とりあえずお嬢さんも銅5から始めなさい」


「わかりました」


 そういってフェリアは舞台を降り、アイリとハイタッチをして喜んでいる。その姿からは今さっき鬼神のような戦いを見せていたとは到底想像も出来ないだろう。


「次はアイリね!!」


 その言葉にアイリは頷き舞台へと上がる。


「お嬢さんも素手での戦闘術か?」


「いえ、私は精霊魔法で戦います」


「なるほど……。妖精族か。それなら杖を持っていないのも頷ける。それでも妖精族が操る精霊魔法は非常に強力だ。しかも今まで出てきた相手から考えるとお嬢さんも相当な使い手なのだろう。気を抜くわけにはいかんな」


 そういって支部長は剣を抜き、抜けきっていないであろうダメージを感じさせず剣を何度か振った。


「さあ、来なさい」


「行きます。ラ・リヤーフ・デルゥ!!」


 アイリが叫ぶとアイリの周りに風が吹き始めた。


「ファ・リヤーフ・セイフ!!」


 続けて違う呪文のようなものを叫ぶも、見た目にはアイリに何の変化も見当たらない。


「風の精霊魔法か……む!?」


 するととっさに支部長が剣を構えてその場から飛び退いた。


「くっ!?」


 その後も細かく移動を続ける姿は、傍から見ると一人でパントマイムでもやっているかのように見える。だが、気力探知で調べてみると空気が移動して、支部長を襲っているのがよくわかる。これは見えない風の刃が自動でかつ連続で襲い掛かるという凶悪な魔法だ。しかも最初に唱えた方の魔法は常時展開の防御魔法である。つまりこれは自身を防御しつつ、尚且つ自分は何もせずに自動で相手を攻撃し続けるという極悪なコンボだ。詠唱も早いわりに攻撃も防御も全自動とかかなりえげつない。


「くっ!? 溜め無しでここまで連射可能とは……なっ!!」


 支部長は剣を使いながら見えない攻撃を巧みにかわし続ける。

 

「凄いです。ここまで避けられたのはキッドさんとミルさん以外では初めてです」


 実はなんだかんだいっても俺は避けるのが結構得意だったりする。特にアイリのこの魔法は見えない発射台のようなものが1つあり、そこから射出され続けている為、そこさえ潰せば後は防御を突破すれば簡単だ。現に支部長もそれに気が付いた様で、刃をかわしつつ発射台に向けて近寄っている。だが問題はそこからなんだよ……。


「ソ・デートラヘレ・タヒディタ!!」


「何!?」


 アイリの詠唱により支部長の動きが目に見えて悪くなった。詠唱なんて覚えていないので恐らくだが、あの魔法は足に風が纏わりついて非常に足取りが重くなる魔法だろう。前同じようなのくらったしな。そもそも詠唱は無くてもいいらしいが、無詠唱だと効果が薄くなったり曖昧な効果になることがあるので、最近のアイリは短めにだが詠唱をするようになっている。今まではもっと長ったらしい詠唱だったのだが、現在は3小節程で今までよりも強力な魔法を使うことができるようになった。毎日の訓練の賜物であるが、飛躍的に効果があがったのは光の妖精族であるファムのアドバイスがあったおかげでもある。何しろファムは精霊と直接会話出来るのだ。それにより精霊にお願いをする精霊魔法はかなり効果があがった。精霊語というらしいが、それを用いることにより端的に精霊への指示を出せるようになったのだ。うるさいマスコットキャラと思われたファムだが、実際はメリルに次ぐチートキャラだった。それを考えるとその女王を難なく無傷で捕まえた皇帝がどれ程ぶっ壊れたチートなのかがよくわかる。相手にするなら最大限に警戒する必要があるだろう。


「くう!!」


 動きを制限されながらその間も常に風の刃が襲い続けている。えげつない……。この魔法は敵単体に向けて一直線に向かうので、多人数戦闘には向いていない。何故なら見えない攻撃の為、味方を巻きこんでしまう可能性があるからだ。故にアイリも訓練でしか使ったことがない。その為、支部長には気の毒なことにタイマン戦闘特化のような魔法となっている。魔導師が一対一で対人戦闘なんてハンターがそうそうやるものではない。ハンターはあくまで集団戦がメインだからだ。だから支部長もこんな目に遭うなんて想像もしていなかっただろう。集団でギルドに登録に訪れておいて実は各々が個別の戦闘に特化しているとか詐欺にも程がある。ちょっと可哀そうになってきた。

 

「ならば!!」


 このままではやられると判断したのか、支部長は足に気力を溜めて一気に間合いを詰めよる。かなり遅くなっているが、それでも今までよりは格段に早い。そして風の砲台を絶ち切るとそのままアイリ目掛けて駆け寄る。

 

「何!? 防御結界だと!?」

 

「ソ・アスファリーフ・マレウス!!」

 

 アイリの常駐防御魔法に剣を遮られ、その場で一瞬止まった。それが致命的な隙となる。元々最初にアイリがつかった防御魔法は弱めだが常駐型であり、一度使えば後は何もしなくても自身で切らない限り永続して防御してくれるという便利魔法だ。もっと強力な魔法もあるが、使用する魔力も少なく他の魔法を気にする必要が無い為、戦闘開始時に常時展開しておくようにとアイリには言ってある。その一手があるかないかで結果が変わることもあるからだ。そして現在、その魔法によって予想外に攻撃を防がれた支部長は「へぶっ」という情けない声をあげてその場に押しつぶされた。結果からみると見えない巨大な風の塊で上から押さえつけているのだろう。魔力感知すると、避けられないように舞台を覆う程の大きさで押しつぶしているのがわかる。感知出来ても制限された舞台では避けようがないえげつない攻撃だ。

 

 恐ろしいことに砲台を突破させて相手が攻撃をし、それを防御魔法で防いで相手の気がそれた一瞬、避けられない攻撃で潰すという所まで全てアイリのシナリオ通りなのである。訓練の時、俺が相手の場合はもっとえげつない魔法ばかりだったので、これでも実は怪我をさせないようにしているのだ。可愛い顔してこの子、実はかなり怖い……。もともと魔導師はこの世界では物凄く強い立場だ。特に攻撃と防御を併せ持った精霊魔法使いはかなりの強さである。攻防の魔法を同時展開されると対処法がない相手だと為す術もなく、戦闘開始と同時に詰んでいる状態になる。所謂無理ゲーというやつだ。俺でも神気無しでは勝つのは難しい。突破できない防御魔法と無尽蔵な攻撃魔法連射はもはや相手からしたらいじめにしかみえないだろう。

 

 だが、アイリの強さにはいくつかの制限がある。その為、強さを測る時に色々と考えなければならないファクターが存在するので、一概に最強等とは判断出来ない。最強状態のアイリならメリルともいい勝負が出来るだろう。だが、最弱状態ならコウにも負けるかもしれない。そんなあやふやな強さなのだ。支部長にとって運の悪いことに現在のアイリは最強ではないが結構強めの状態である。

 

「まだやりますか?」


「いや、参った参った。わしの負けだ。お嬢さんも相当強いな。優秀な魔導師でもあるしお嬢さんは銅7から始めるといい」


「ありがとうございます」


 一瞬でアイリにランクが並ばれてしまった。俺の立場は……。


「随分と鈍ってるじゃねえか?」


「もう何年戦ってないと思ってるんだ? 全く……体は鍛えても実戦に出てないんじゃ鈍くもなるか……」


 息も絶え絶えにドクの質問に支部長は答える。やはりデスクワークばかりかつ、実戦から遠ざかりすぎて勘が鈍っているのと、決定的に体力が無かったことが敗因だろう。最初のレアンの頃はマシだったが段々と動きが鈍くなっていくのが目に見えて分かった。勘と体力を取り戻せばこの3人とも結構いい勝負が出来るんじゃないかと思わせる技量は持っていた。女性陣にはかなり手加減していたようだし。案外フェミニストなのかもしれないな。まぁ結果だけみるとレアンが噛ませ犬にしか見えないのが何とも言えない所ではある。まともに戦えばレアンは相当強いんだけどなぁ。避けるのが上手い相手に対して圧倒的に相性が悪いというのが難点か。MMORPG的にいうとこれ以上ないくらい優秀なタンクになれるんだが、いかんせんこの世界にヘイト管理なんてものは見当たらない。少なくとも俺がこのパーティーと戦うなら硬いレアンは放っておいて後ろのアイリ達を先に狙うだろう。何かレアンを放っておいたらヤバいという類のものを作らないとな……。


「仲間でこの強さなら、お前より強いというその男の強さは一体どれ程のものか」


 俺の思考を遮って支部長がこちらを見てくる。それに対して俺はおどけた様に首をすくめてみせた。

 

「それで俺の復帰試験はどうするんだ?」


「これだけ強い仲間と一緒に旅をしていたのなら、それなりに手合わせをしているだろうし問題なかろう」


 なんかドクの復帰試験は免除になったようだ。いい加減だなぁ。

 

「君達は強い。新人とは到底思えない程だ。だが対人戦闘と魔物狩り、一対一と集団戦では戦い方が全く異なる。それをよく覚えておくといい」


 きりっとした表情でそう語る支部長は内心「きまった……わしかっこいい!!」なんて思っているのかもしれない。だがその生まれたての小鹿のように膝がガクガク笑っているのを抑えなければ全てが台無しである。

 

「ドクはまたクランを作るのか?」


「いや、俺は旦那のクランに入れて貰おうと思ってる」


「そうか。君達が全員同じクランとすると戦力過剰にも程があるように思えるが……。なんというクランなんだ?」


「まだないらしい」


「新しく作るとしても銅ランク主体のクランに剣王が入るとなると相当やっかみがあるだろう。気を付けなさい」


「ご忠告感謝します」


 どう気を付けろと言うのかよくわからないが、とりあえずお礼を言いつつ、俺達は試験会場を後にした。さっそくクランとやらを作ることにしよう。


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