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ワールドオーダー  作者: 河和時久
旅立ち編
30/70

30:新たなる旅立ち

 翌朝、昨日と同じようにみんなが起きる前に外にでてカードを引く。

 

 

No117C:模倣人形 対象と全く同じ姿かたちの人形を作成する。


No212C:物体透視 物体を透視できるようになる。


No218C:精力絶倫 対象の精力が大幅に上がる。


No224C:恐竜召喚 恐竜達を召喚する。恐竜は召喚位置から2km以内しか移動できない。召喚される恐竜はランダム。


No247C:謎便利店 謎のコンビニへ行くことができる。店内はセルフ。店を出る際に商品代金分の魔力を消費する。店内滞在時間は最大1時間。時間が過ぎると強制退出される。


No259C:残像攻撃 自身の攻撃に1テンポ遅れた残像が付く。残像にも攻撃判定がある。







 コンビニは被りだが、それ以外は新規カードのようだ。コンビニは何枚あっても問題ないからいい引きだといえるだろう。

 

 117は何で作られた人形なのかわからないが、身代わりに使えるのかな? 今のところ使い道が思い浮かばないな。

 

 212は男の夢、透視か!! どこまで透けて見えるようになるのか解らないが、服だけ透けるなら個人的にSR認定してもいい。でも大抵内臓まで透けて見えるとかなんだよなぁ……

 

 218は……魔法使いの俺に一体どうしろと……。一夫多妻のハーレムにでもならない限り使う意味がなさそうだ。うん、俺には縁が無さそうだ。

 

 224は以前伯爵の屋敷で使った虫地獄の恐竜バージョンか。虫みたいにさらに巨大化してたらやばいな。しかもこれよくみると対象だけ襲うって書いてない……しかも範囲指定できないから使った瞬間逃げないと俺も襲われるってことか!? やばすぎる。使い所が難しそうだ。

 

 259は昔格闘ゲームでみたことがあるぞ。たしかオリジナルコンボだったか? ジャンプ攻撃の後にすぐ下段攻撃で上下同時攻撃とかえげつないことができた気がする。残像のタイミング次第で同じ事が出来そうだ。でも実際はノックバックがあるから前後か左右同時にでもしないと空振りしそうな気がする。

 

 

 そろそろカードのNoを覚えるのが辛くなってきた。これが対戦ゲームならすぐ覚えられるんだが、特に対戦相手もいないものなのでなかなか辛い。まぁとっさに必要になりそうなものだけは覚えているからいいか。俺はカードをしまって隠れ家に戻った。

 

 部屋に戻り朝食を作っていると臭いに釣られてかマオちゃん達が起きてきた。みんなで食事を取りのんびりとしていると、もの凄い勢いでライドさんが入ってきた。

 

「どうしたんです? こんな朝早くに」

 

「伯爵が死んだ」

 

 片付けをしながら尋ねる俺にライドさんは息を切らせながらそう答えた。


「なんだって!? いつ?」


 サピールが驚いたように尋ねる。

 

「今朝方、教会の職員が伯爵の寝てる部屋を覗いたら、全身穴だらけになって死んでいたそうだ」


「穴だらけ?」


「ああ、体の至る所に穴が開いていたらしい。それと何故かはわからないが現場に宝石がいくつも落ちていたそうだ」


「宝石……どういうことだ?」


「一応、魔石のようだったが詳しくは調べてみないとわからないだろう」


 2人が俺を見るが俺はさぁ?という顔をしてシラを切った。実際その宝石がどういった物なのか俺にも解らないからだ。特に興味もないしな。


「しかし、伯爵が死んだのならここにもう用はないな。今日出発するか」


「ずいぶんと急だな」


「元々伯爵が死ぬことを確認するまで待っていただけだからな。この娘達の親御さんも心配してるだろうし」


 そういってマオちゃんの頭を撫でる。食料は毎日コツコツと買い込んでため込んである。一応今日も大量に買っておくか。

 

「そうか。寂しくなるな」


 ライドさんはそのままここで職員を続けるが、来月にもアマンテさんと結婚する予定らしい。

 

「あんな美人と結婚とか死ねばいいのに」

 

「おいっ!? 心の声漏れてるぞ!」


「おっと失礼」


「相変わらずお前はきついな。まぁこうして笑っていられるのもお前のお陰だ。お前には感謝しきれない程の恩を受けた。この恩はいつか必ず返すからな。また絶対尋ねてこいよ」


 そういってライドさんは笑う。

 

「俺も同じだ。命を助けて貰った借りは必ず返させて貰う」

 

「その前にお前はドジ踏んで死んでそうだけど」


「縁起でもないこというなよ!?」

 

 そう言ってみんなで笑う。何にせよ笑える時間があるってのは幸せなことだろう。ライドさんはそのまま調査に戻り、俺達は鍛冶ギルドへと向かった。その際、ライドさんから支部長からだと手紙のような物を預かった。パトリアに行く際に困ったら見ろとのことらしい。封がされているので開けずにそのまま鞄にしまっておいた。

 

 鍛冶ギルドにつくと裏庭に通された。そこにはでかい馬らしき物が2頭いた。どうやらここにすでに馬屋が運んでくれていたらしい。馬屋の人も一緒にいる。恐らく一緒にいないと馬車につなげる前に馬に攻撃されてしまうことを恐れたんだろう。

 

「おおっきたか。全くトンでもない馬買いやがって。お陰でつなげるだけで一苦労だ。まぁこいつならこの馬車でも十分引けるだろうが」


 そういってちびのおっさんが愚痴を垂れる。俺だってこんな馬になるなんて思わなかったよ!

 

「まさかスレイプニルとは思わなかったんでちょっとつなげるのに調整がいる。昼頃にまた来てくれ」


 仕方ないので俺達は食料の買い込みに行くことにした。この娘達の村までどれくらいかかるかわからないから、食料はいくらあってもいいだろう。収納にしまっておけば腐らないだろうし。

 

「その娘達は何?」


 買い物をしていると聞き慣れた声がした。振り向くとシェリム達が勢揃いしていた。


「おかえり。鉱山はどうだった?」


「結構掘れたぞ。今から鍛冶ギルドで鑑定してもらうところだ」


 そうフォルサが答える。なんでもそのまま持って行って実は魔鉱石じゃありませんでしたなんてことになると大変なので、一旦最寄りの鍛冶ギルドで鑑定してもらい、鑑定書と一緒に納品するのだそうだ。多少鑑定にお金はかかるが、王都までの往復の時間と再度掘ってくる時間を考えると一番効率がいいのだろう。まぁ鑑定料は依頼主が報酬と一緒に払ってくれるのが普通らしいが。依頼主も鑑定書があればわざわざ鑑定する時間が必要無くなるから一石二鳥だ。

 

「そんなことよりその娘達はなんなのって聞いてんの!」


 何故かはわからないがシェルムが怒って聞いてきた。犬耳妹が怯えて姉の後ろに隠れてしまった。ソフィアはかわいい!!と叫んでマオちゃんをなで回している。マオちゃんはされるがままに撫でられているが手は俺のズボンをつかんだままだ。

 

「何怒ってんだよ。怯えちゃうだろうが。この娘達は誘拐されてここに連れてこられたんだよ。俺が助けてこれから家に送るところだ」

 

「誘拐? それでなんであんたがそこまで面倒みるの?」


「こんな小さい子達を助けてほったらかしにできるかよ」


「全く、責任感が強いのかただのお人好しなのか……」

 

 シェルムが額に手を当てて呆れている。まぁ子供じゃなきゃここまで面倒みようなんて思わなかっただろうけどな。

 

「これからパトリアに向かうから当分会えないな」


「パトリア!? あんた馬鹿じゃないの!? 今のパトリアがどんな状況かわかってんの?」


 そういうと驚いたような顔でシェルムが問い詰めてきた。

 

「危ないってのは前に聞いたから知ってるよ。だからといってこの子達を放っておくわけにもいかないだろう。まぁ親子共々この街にでも引っ越してくれるのが一番だが」

 

「だからってなんであんたが……」


「心配してくれるのか? やさしいなお前は」


「べ、別にあんたなんか心配してないわよ!」


 見事なツンデレを披露してくれた。うん、最高だ。

 

「シェルムはかわいいなぁ」


「やっぱりキッドさんもそう思います?」


「な!? ななな何いってんのよあんた達は!?」


 真っ赤になって焦る姿がまたかわいい。2次元以外でこんな生き物初めてみたよ。ソフィアが同意してきたがやはり同性からみてもかわいいのだろうか。

 

「今は特に亜人の集落近くは相当やばいらしいから気をつけな。まぁお前なら心配いらないと思うが」


 全然空気を読まずにフォルサが忠告してくれる。なんだかんだでこいつもいいやつだ。リーダーは全然口聞いてくれないが。

 

「心配いらないっていう理由がよくわからないが、忠告はありがたく受け取っておくよ」


「それよりも伯爵が死んだって噂が流れてるが本当か?」


 それまで口を開かなかったリーダーが突然尋ねてきた。

 

「なんで俺に聞くのかは知らんが、朝方にギルドの職員に聞いたらそんなこと言ってたな」


 栄光の道のメンバー全員がじーっと俺を見つめてくる。

 

「なんか遺体は穴だらけで見るも無惨な姿だったらしいし、屋敷の方も酷いことになってたって話だ」


「へー」


 フォルサの説明に無関心な声を返す。

 

「どうやったのは解らないけど、そういうことするやつに私1人だけ心当たりがあるわ」


「奇遇だな、俺もだ」


 シェルムとフォルサの2人が俺がやったんだろうというあからさまに疑う視線を向けてくる。


「全く……俺がやったみたいに言うのはよしてくれよ。前にもいったけど伯爵は呪われていたんだよ。その呪いが一気に現れたんだろうよ。だいたい証拠もないのに俺のせいとか言いがかりにも程がある」


 掌を上に向け首を振り、やれやれといったポーズを取る。

 

「貴族に逆らってそんなマネするやつ、あんたくらいしか知らないんだけど」


「お前が知らないだけで他にいるんだろうよ。大体個人とは限らないだろ? むしろ1人でそんなマネできるとは思えん」


「むう、確かにそれもそうか……」


 シェルムだけじゃなくみんな悩んだ用に考え込む。


「それより鍛冶ギルド行かなくていいのか? 俺達も後でいくけど」


「おっとそうだったな。それじゃな」


 そういって栄光の道は立ち去っていった。ソフィアはマオちゃんと離れるのを寂しそうに、シェルムはずっと考えこむようにして。


「あいつらもお前の事知ってるのか?」


 買い出しから帰ってきたサピールが話しかけてきた。サピールはちょっと離れた場所に買い出しに回ってくれていた。

 

「オーガを倒した時に一緒だったくらいだな。詳しい能力なんかは知らないよ」


「そうか。栄光の道は最近結構名が売れてきてるんで、紹介でもして貰おうと思ったんだがな」


 なんか有名になってきてるらしい。良かったな。

 

「鍛冶ギルドいったらまた会うだろ。その時紹介してやるよ」


「おおっ助かるよ。情報屋としてはいろんな方面に面識が多い方がいいからな」


「あいつらがなんの情報の役に立つかはしらんがな」


 それから俺達は昼ちょっと前だが早めに昼食を取ってから鍛冶ギルドへと向かった。その途中で仕立屋に寄る。実は以前、この子達の服を注文していたのだ。マオちゃんはひらひらのスカートのワンピースだが犬耳姉妹は両方ともズボンだ。何故かというと狼族は下着を履かない種族らしく、スカートにしてしまうと下が一部の人が絶叫してしまうような幸せなことになってしまうからだ。なんでも狼族は尻尾が大きいので下着は邪魔らしく、一々下着に穴を開けて尻尾を通すもの大変なので基本的に直にズボンを掃くのが普通なんだとか。ズボンのほうは背中の腰辺りに切れ目があり、その両端にボタンが付いている。尻尾を通した後に上をボタンで留めるような造りになっている。ズボンはベルト代わりに細いヒモを使って縛っているので尻尾の邪魔になることもなくズリ落ちる事もない。マオちゃん達のような虎族は尻尾が細いので下着は履くようだ。なのでマオちゃんには下着も買っておいた。

 

仕立屋を後にして、俺達は鍛冶ギルドへ向かう。到着すると居ると思われた栄光の道のメンバーは居なかった。鑑定ってそんなに早く済むものなのか、それとも鑑定している間どこかで時間を潰しているのか。

 

 ギルドの奥へと行くとちびのおっさんが待ちかまえていたようにこちらにきた。

 

「おう、やっときたか! できてるぜ」


 そういって馬車を見せた。巨大な2頭の馬らしきものに巨大なうっすらと青みのかかった四角い箱。背面の扉は開いており上から布がかかっている。一々扉を閉めていたら普段の出入りが大変なため、普段は布を掛けるだけにしておくのだろう。まぁ扉っていうか蓋なんだけど。


「名付けて、行け行け我らのフェヘイロ1号だ」


「却下で」


 0.5秒で却下した。馬車の名前なんて呼ぶことないから正直どうでもいいんだが。

 

「なぜだ!? すばらしい名前だろう!?」


「そんなことより、もう乗れるんですかこれ?」

 

「もちろんだとも。仕事は完璧だ!」


 そういってちびおじさんは誇らしげにする。面倒なので名前の話は逸らした。俺は荷台に上がり食料と一緒に買ってきた布と布団を敷く。一番下に厚めの布を2重に敷き、その上に羽毛布団のようなものをさらに2重で敷くことで堅い床でもふわふわの寝床になった。本来は荷馬車のはずなのだが、今回は子供を送り届けるための旅なので快適さを重視した。さすがに石の上に直に座りっぱなしになるのはきついだろうしね。これでかなり快適な環境になるはずだ。羽毛布団があるのにも驚いたが値段も高かった。ちなみに収納バッグも2つほど余計に買ってある。荷物が結構多くて嵩張るから、鞄にいれて置けば重量的にもいいだろうとの判断だ。こうして金が異常にかかった馬車は完成した。


「馬車に荷物を置かずに布団を敷くとはな。もう荷馬車とは言えないなこれは。しかしずいぶんと快適そうになったじゃねえか」


「今回の荷物は子供達ですからね。やっぱり道中は快適な環境のほうがいいでしょう」


「たしかにそうだな。まぁこれなら一日中だって寝てられそうだ」


「よし、じゃあみんな乗って。出発するよ。あっと靴は脱いで隅っこに置いてね」


 そういうとマオちゃんが荷台に飛び乗ってゴロゴロと寝転がる。気に入って貰えたようだ。でも靴を脱いでないのでそのまま靴を脱がせて馬車の端っこに置く。犬耳姉妹も靴を脱いで荷台に上がるとふわふわの感触が気に入ったのか、マオちゃんと同じように寝転がってゴロゴロする。なぜかサピールも一緒になって寝ころんでいる。

 

「なんでお前まで寝てんだよ」


「いいだろちょっとくらい!! っていうかこれ高級宿のベッドだってこんな寝心地良くないぞ。どんだけ金かけてんだよお前……」

 

 魔法とか秘薬とかこっちの世界にはいろんな不思議な物があるが、どんなアイテムを使おうと最終的に人間は眠らないと根本的な体力が回復しない気がする。だからぐっすり快適に眠られる環境を作るのにケチくさいことはしない。まぁ夜中は外で見張りしないといけないから、中でぐっすりってわけには行かないだろうが。

 

「それじゃギルド長お世話になりました。長旅になりますが終わったら報告にきます」


「おお、元気でな。報告待ってるぞ」


 ギルド長にお別れを言いつつ、俺は馬車を出発させた。


「サピールはそのまま付いて来んのか?」


「そう行きたい所だが、何分仕事があるんでな。放棄するわけにもいかん。残念だがここでお別れだ」


「パトリアはどっちだ?」


「この道を真っ直ぐ4日程いけば関所がある。そこを超えればパトリアだ」


「関所超えるのになんかいるか?」


「いや、精々荷物検査くらいだな。ハンターならギルドカード見せればすぐ通れるさ。お嬢ちゃん達もパトリアからこっちに来るなら色々とまずいことになったかもしれないけど、こっちから向こうなら特に問題ないだろ。それに支部長から手紙預かってるんだろ?」


 そういえば今朝ライドさんから何か貰ったな。中は見てないけど。

 

「たぶんそれを見せれば大丈夫だ」


「中見てないのによく分かるな」


「パトリアに行くのにハンターギルドの支部長がわざわざ渡すなんて大体想像が付くよ」


 なんだろう。許可証みたいな物か? まぁ困ったら中を見ることにしよう。勝手に開けるわけにも行かないしな。

 

「色々と世話になったな。元気でな。生きてたらまた会おう」


「おう、そっちこそ死ぬんじゃねえぞ。まだお前に借りを返してないんだからな」


「その借りは10日で5割づつ利息が付いていくからな」


「悪徳にも程があるだろ!!」


 闇金並の利息だ。まぁ闇金所か借金すらしたことないから実際の利息とかよく知らないが。

 

「じゃあパトリアにしゅっぱーつ!!」


「おおーっ!」


「おー!」


「にゃーっ!」


 俺が叫ぶと元気な声で荷台の3人娘が声を上げた。こうして俺達はサピールの見送りを受けながら、パトリアへと出発した。

 


あんまり空くのもなんなのでとりあえずきりのいいところまで上げました。次回更新は未定ですが10月に入ればなんとか時間ができるんじゃないかと思ったり、思わなかったり。

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