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ワールドオーダー  作者: 河和時久
旅立ち編
12/70

12:勇者

「いらっしゃい」


 武器屋というと髭の厳つい頑固親父とかドワーフとかしか思い浮かばないが、俺達を出迎えてくれたのは若いどこにでもいるような青年だった。


「槍を見せて欲しいんだけど」


「槍ですか、少々お待ち下さい」


 そういって店員は奥へいくと槍を何本か持ってきてくれた。


「こちらの槍が王国の兵士が使ってる物と同じやつですね」


 それはなんか無駄に装飾がある派手な槍だった。


「ねぇ、この模様とかなんか意味あんの?」


「戦時に仲間かどうか見分けるのに使えるくらいで槍本来の用途としては単なる装飾以外の意味はないですね」


「こんなのに金掛けるならもっと他のことに金掛ければいいのに」


 店員は苦笑いだ。いろいろと槍を見せてもらったが……うん、無理。どれもこれも長すぎる。こんな物持ち歩くとか嵩張ってしょうがない。お店はいるはびに横にしたり屈んだりしないといけない。さらに店に入ったら入ったで置き場がないし。普段槍使ってる人ってどうしてるんだろ。傘立てみたいに店の入り口に槍立てとかあるんだろうか。気になる。



「もうちょっと短いので嵩張らないなんかいい武器ないかな?」


「短くて嵩張らない武器ですか……そうなると後はショートソード、もしくはナイフやダガーといった物くらいしか…」


 やはりないらしい。ないなら作ればいいじゃない!思いつき、それ大事。


「じゃあ腕のさきから肘までの長さよりちょっと長いくらいの鉄の棒に垂直に取っ手を付けたのを作れる?」


「鉄の棒に取っ手ですか? まぁ付けるくらいならすぐできますが……」


「それを2つ程作ってもらえないかな?素材は鉄じゃなくてもいいんでなるべく丈夫な素材で取っ手は絶対に外れないようにしてほしい。金に糸目は付けないんでいい素材使って」


「わかりました。明日の朝までにはご用意できると思います」


 店員は金に糸目は付けないという言葉に動かされたのかとても愛想がよくなった。


「鉄の棒なんか頼んでどうするんだ?」


「俺のいたとこにはそういう武器があったんだよ」


「へー」


 おっちゃんは対して興味も無さそうだ。


「おっちゃんは魔法の矢とか買わないのか? いくら高いっていっても1本白金貨1枚とかまでしないよね?」


「それだと矢1本で家が4軒はたつな。さすがにそこまで高い矢はみたことないな。まぁ買えたとしても魔法の矢なんて引退した俺じゃ使い道がないからな」


「でも魔法の矢もってたらまたあの熊が出てきたときにちょっとは抵抗できるかもよ?」


「あんなもんそうそう出てこられてたまるか! つーかあんなのと又あったらまず全力で逃げるわ!」


「熊って意外と足はええんだぜ? 逃げられるのか?」


「その辺は運次第だな。熊は手が短いんで坂の上りは滅法早いけど下りは遅いからな。登りであったらまず逃げれないかもしれんな。平地であった場合はそこまで早いってわけじゃないからけん制しながらならなんとかなるだろ」


「まぁいくらハンターっていっても命あっての物だからな」


「よくわかってるじゃねえか。そう、まず護らなきゃならんのは自分の命だってことを分かってないハンターが多すぎる。臆病といわれるくらい慎重でいいんだよ。たとえ逃げても次また挑めばいいんだからな。死んじまったらもう次はないってことをなんでわからん馬鹿が多いのか……」


 おっちゃんはそういって少し悲しそうな顔をした。昔なんかあったんだろうか。


「そういうやつはプライドだけは高いんじゃね?」


「そんなもん犬にでもくわせちまえばいいさ。そいつ1人が死ぬだけならまだしも、撤退判断が遅れると仲間を巻き込んじまうからな」


「まぁ勇気と無謀は別物だしな。たしかに怖いと思った相手から逃げないのは勇気といえるかもしれん……が、勝算もないのに戦いを挑むのはただ無謀なだけの自殺志願者と変わらないだろ。まぁ護るべきやつがそこにいるってんならそいつは勇者かもしれんがな」


「おまえはほんとに極たまにいいことをいうよな」


「たまにはわかるが極ってなんだ! そんなにレアかよ!」


「そうだよな……誰かを護るために勝てない相手に戦うってのは確かに勇者だな。でもそれで残されたほうはどうなる? 敵を討てばいいのか? そんなことしてもそいつは生き返ってくるわけじゃないってのに……」


「おっちゃん……」


「あぁ、すまん、気にしないでくれ」


「勇者ってのは2通りあってさ」


「ん?」


「基本的に自分のことしか考えない無責任なやつと誰かの言いなりになってしか動けない人形と2通りしかいないんだよ。俺の持論だけどね。最初の方の勇者は誰かが犠牲になるような場合にまっさきに自分がなるタイプ。俺の命でみんなが助かるなら……なんて考えるやつ。おとぎ話とかにでそうな典型的な勇者タイプだな。仲間からすれば迷惑きわまりないんだけどな。後者は俺の世界のゲームっていう物語によくあったタイプでな、王様に剣すら買えない端金渡されて魔王倒してこいって言われる。そして王様はなんの補助もしてくれないけどいいなりになって魔王を倒しに行くんだ」


「後のほうの勇者は扱いが酷すぎるな……ほんとに勇者かそれ?」


「まぁ簡単にいうと王様の所持してる奴隷だな」


「勇者のゆの字もなくなってるじゃねえか!」


「まぁあんまり気にするなよおっちゃん。何があったかは知らんが前者の勇者はさ、好き勝手に後に残ったやつに意思を、思いを残していくんだ。だから残ってるやつはそいつの思いを、人生を背負って生きてやるのがなによりその馬鹿な勇者のためになるんじゃないかな。そいつが重すぎるなら誰かと支え合って生きていけばいい。生きるってのはそういうことだ」


「そうか……そうかもしれんな……なんか旨くごまかされた気もするが……ありがとよ」


「別にお礼を言われるようなことは何一ついってないんだが、どうしたおっちゃんデレたか?」


「デレるってのがなんなのかよくわからんがいいこと言ってないのだけはわかるぞ」


 武器屋で思いの外、長くだべってしまった。そして武器屋に来る前に思いついたことがあったのでそのまま防具屋へ向かうことにした。


「いらっしゃい。ってロキか、今日ははどうした?鎧に穴でも空いたか?」


「すみません。手袋ってありますか?」


「手袋? ああ、弓用のやつならあるぜ」


 そういって持ってきたのは指の部分が親指から3本だけの手袋だった。


「これの5本指のやつはないですかね」


「これ以外だと採取用のやつしかないな」


 そういって持ってきたのは生地の粗いごてごてした手袋だった。どうみても軍手だ。


「これを柔らかい皮でつくって指先がでるように先端を切ったような手袋がほしいんですが」


 そう、厨二病患者の夢のアイテム指ぬきグローブだ! 地球じゃ趣味でしか全く使い道がないアイテムだが今の俺なら違う。これがあれば手の甲と掌の部分にカードを予めだしておいて隠すことができ、カードの存在を隠したまま魔法を使っているように見せることができるんじゃないか? そして細かい作業ができるように指先はだせるというまさに今の俺にこれ以上ないくらいの必須アイテム!


「できんこともないがすぐには無理だぞ?」


「どれくらいかかります?」


「時間か? 値段か? 時間は3日くらいはかかるな。値段は特注になるんで銀貨5枚はかかる」


「わかりました。すぐには取りに来られないので先にお金は渡しておきますから予備も含めて2セット程作っておいてください」


「わかったよ。じゃ手の大きさをはかるからこっちにこい」


 そうしてオーダーメイドの厨二アイテムを頼んで俺達は宿へと戻った。







 翌朝、いつも通り4時半に起きた俺は最近の早朝の日課となりつつあるドローを行った。出てきたカードは


No031UC:自然治癒 徐々に体力、怪我を回復する。応急手当より効果は高いが時間がかかる。


No054UC:完全解析 対象の詳細な情報を取得できる。


No065UC:遠隔操作 任意のカードを遠隔操作可能。起動後カードを指定する。指定したカードは離れていても起動できる。指定カードがデッキ内にある場合は起動しない。


No138C:曼理皓歯 対象の肉体年齢が5歳若返る。


No141C:模倣魔法 対象が直前に使用した魔法を使用することができる。セットで魔法を記憶しリプレイのワードで発動。複数記憶している場合は新しく記憶した方から使用される。


No146C:意識不明 対象を気絶させる。


 なかなか便利そうなカードがでてきた。


 31は発動後、即回復はしないがじわじわと回復していくということか。時間がかかるから戦闘中に使うのは難しいが効果は普通の回復より高いと。非戦闘時ならこちらのほうがいいな。


 他にも解析系カードはあった気がするけどおそらくこの54が最上位なんだろう。なにせ完全とか付いてるし。どこまでの情報がそれぞれのカードで入手できるかは一度調べておく必要があるな。


 65は遠隔操作か…そもそもカードはどこまで離れていたら発動しなくなるのかまだ検証していないからなぁ……手に持ってないとできないのか、体の一部に触れていればいいのか、若干なら離れていてもいいのか。これもよく調べておく必要があるな…やることいっぱいだ。


 138はまさかの若返り魔法!? 対象とかいってるから他人にも効果があるということか……これ女の人にばれたら俺捕獲されるんじゃ……しかしこのカード貯めれば貴族とかのおばさん相手に商売できるな。金に困ったら考えよう。


 141は相手と同じ魔法が使えるということか。問題は攻撃魔法の場合、それをなんとか耐えるなり避けるなりしないといけないということだな。即発動してもよくて相打ちだしな。相手の魔法が大きければ大きいほどリターンも大きいが危険も増える。まさにハイリスクハイリターン。使いどころが難しいな。でもこの説明だとリプレイしなければいくつも保持できそうな感じだな。魔法使いと思わせるのにいいかもしれない。


 146はダメージを与えずに捕獲するような場合にいいな。これはいろいろと便利そうだ。人間相手なら気絶させればほぼ勝ちだしな。ただ即座に回復するようなやつがいたらまずい。そうそうそんなやついないとは思うが……


 今のところ明確にはずれというようなカードはないな。使えるカードが多いに越したことはないがまずは現状持ってる全てのカードの効果とナンバーを覚えることからはじめるか。手袋に隠したらいちいちナンバーとか確認できないしな。


 いろいろと考えているとおっちゃんが呼びに来た。どうやらまた長いこと思考の海に潜っていたようだ。朝食を取った後、宿を引き払った俺達はランドさんの元へと向かった。




コモンで10歳は酷いということで5歳にしました。あんまりかわらn

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