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セーブ&ロードのできる宿屋さん ~カンスト転生者が宿屋で新人育成を始めたようです~ 作者:稲荷竜

三章 ホーの借金返済

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39話

「ああん? なんだよロレッタ?
 あたしが『銀の狐亭』に来た当時の話?

 ……あきれたヤツだねえ、あんたも。
 そんなことを聞くためにわざわざあたしの長風呂に付き合ったってのか?

 人間族はそんなに長く風呂に浸かれねーだろ?
 風呂好きなので大丈夫?

 にしたってドライアドのあたしに付き合うなんてーのは、正気の沙汰じゃねーな。
 ドライアド。
 ……なんだよ知らねーのか。

 まあ、あんまし有名な種族じゃねーからな。
 王都みてーな人工的な場所には、ただでさえほとんどいねーし。
 全体数も少ないからな。

 でも、ギルドマスターを見たことぐらいはあんだろ?
 そうそう。
 緑色の髪がぶあーって長くてさ。
 肌が褐色で。
 ちんちくりん。

 たしかに似ているな、だって?
 そりゃ似てるさ。
 同じ種族ってだけじゃねーしな。

 髪の色?
 ああ、ババアは緑で、あたしは白だからな。
 それは単純に年齢の問題だよ。
 歳とりゃ緑になる。
 人間だって歳とったら白髪になるんだろ?
 それと同じさ。

 あ?
 ギルドマスターを『ババア』呼びは失礼?
 いいんだよ。


 ……あのババアはあたしの祖母だよ。
 あたしは、ギルドマスターの孫娘ってわけだ。


『大変そうだな』?
 ……ああ、ギルドマスターの孫ってことで、色々あったんじゃないかって?
 出自を聞いて真っ先に『大変そう』って思うあたり、貴族様だな。
 普通は『うらやましい』とか言うところだぜ。


 ……たしかに大変だけどよ。
 その分、得もしてきたつもりだから、チャラだよ。

 え? なんだ?
 ……中腰でずっと風呂にいるのは辛くないかって?
 なんだ今さら……慣れてるからいいよ。
 ここの風呂は、あたしには深いからな。


 風呂番がアレクさんだった時は、あたしだけが湯船に残る時間になるとそれとなく湯量減らしてくれてたみてーだけどな。
 今の風呂番はモリーン嬢ちゃんだろ?
 まだまだだな。

 ……膝の上に来いだと?
 ロレッタちゃんよ、あたしを子供だと思ってねーか?
 これでもあんたより年上だよ。
 まあ、行くけどさ。

 ……なんだよ。
 あんたが言ったんだろ?
 いいじゃねーか。ドライアドだって座って風呂に入りてーんだよ。


 ……で、なんの話だったかな。
 あたしが『銀の狐亭』に来た当時の話か。
 膝を借りてる礼に、少しなら話してやるぜ。


 ……ま、きっかけは、あたしがギルドマスターの孫ってあたりさ。
 どうしても色眼鏡で見られる。
 基本的に強いヤツが偉い業界だからな、冒険者は。
 当然、ギルドマスターだって、強さで成り立つ。

 それだけならいいんだが……
 ギルドマスターの家族で、冒険者やってると、どうしても比べられるんだよ。

 しかも今のババアじゃねえ。
 全盛期のババアとな。

 うちのババアは人類で初めてダンジョンを二つ制覇したとかいう化け物だぜ?
 ……あ、ああ、うん、まあ。
 そうだな。

 今のあたしたちにとっちゃあ、ダンジョン二つ制覇は化け物じゃねーけどさ。
 もっとヤバイなにかがこの宿にいるしな。
 でも当時の感覚だと、化け物だったんだよ。

 で、あたしは弱かった。
 それが嫌で強くなりたかった。
 ババアと並ぶか、越えるぐらいな。

 それと。
 ……当時抱えてたちょっとした借金でな。

 ……早くにババアのところ飛び出して冒険者やってたんだよ。
 焦って難しいダンジョンに挑みまくって、治療費貧乏さ。
 装備をよくすれば強くなれるだなんて勘違いして、武器防具もそろえたなあ。

 特にドライアド用の武器はオーダーメイド品しかねーしな。
 あたしら髪の毛で戦うから。
 髪の毛切られるといてーんだよ、ドライアドは。
 伸ばしっぱなしだ。
 その代わり丈夫だがな。


 ……ああ、心配すんな。
 今ではもう、借金も綺麗に片付いてらあ。

 ……なに、本題?
 あ、ああ……あたしが受けた修行内容を聞きたかったのか。

 そ、そ、そう、そう、そうだな。
 たいしたことは、や、や、や、やって、な、な、な、ない、ない、ぜ。

 ふ、震えてる?
 馬鹿言うんじゃねえ。

 あたしはこの宿の最古参だぜ。
 修行とか、もう、慣れてんだよ。
 ……慣れてんだよ!

 だから、余裕で、教えてやるぜ!
 あたしがどんなに余裕で修行を乗り越えたかをな!

 で、でも、ちょっと待ってろ。
 なにぶん三ヶ月も前のことだからな。

 思い出すから。
 ……覚悟を決めるとかじゃねーよ!
 心の傷と向き合うわけでもねーから!


 だから、悪いが。
 ちょっとだけ、回想する時間をくれ。
 少し長くかかっても、決して恐怖と向き合う覚悟をしてるわけじゃねーからな!

 ……あたしの中に、覚悟はとっくにあるんだ。
 あたしが三ヶ月前の修行で手に入れたのは、まさにそれなんだから」
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