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エト・エウトクタ
作:隆伊



遊戯3


 祐二は硬いアスファルトの上で目を覚ました。朝靄に包まれている。何故だか見たことのある風景。九州自動車道だろうか? 高速道路の上であることには間違いない。
 何故……こんなところに……?
 寝起きのハッキリしない頭で考える。が、混乱するばかりだ。俺ひとりなのだろうか?
 足元に自分のショットガンがあった。手に取りいつでも撃てる姿勢で周囲を歩いてみる。
 これは悪魔の仕業か? バラバラにされたのか、俺たちは。それなら殺すことだってできただろうに。何故?
 十メートルと行かないうちに人影が目に入った。朝靄のなか、身を起こしている。人影が声を発した。
「あ、祐二さん」ミキだった。
「一体どうなったンですか? みんなは? ここは何処ですか?」
 どの質問も自分が聞きたいことばかりだった。
「わからない。何も」
 その三点。何が起きたのか、ここは何処なのか、他の仲間は何処にいるのか、全て、まったくわからない状況下にいる。
 ただ、ここは何処なのか、という点については、歩いていけばわかりそうだ。
 祐二はミキを促し歩き始めた。進めば進むほど、見知った風景だという気がする。
「ここ、ひょっとして……」と、ミキが呟いた。祐二も同じ気持ちだ。
 数分たたないうちにそこにたどり着いた。
 朝靄のなか、行く手さえぎる土嚢。
「ここは中国自動車道だ。関門海峡の下関側だ」
 その先には崩落した橋があるだけ。四面楚歌だ。九州に戻る術はない。と、同時に気付いた。
 ここは袋のネズミだ。悪魔の意図が知れた。バラバラにして始末するつもりだ。

 レヴォリューションXOは既に弾切れだ。マガジンを交換する暇もない。アニナはスミス&ウェッソンM500スナブノーズを抜いた。這いよる亡者を粉砕する。頭に当たれば頭を、胸に当たれば胸から上を吹き飛ばした。まるでミニグレネードランチャーだ。しかし五体倒したところで弾は尽きた。リホルバーに弾を込める時間など当然ない。エレボスのほうを見た。駄目だ。彼は彼で手一杯だ。こっちの窮状には気付いていない。
 素手で殴り倒してやる。こんな世界の果ての何処とも知れぬ片田舎で。母国語で呟いたとき、お尻のポケットに無造作に突っ込んである日子の瓊矛を思い出した。
 コレでぶん殴ってやる。こいつらの腐った頭くらいカチ割ってやる。
 飛び掛ってきた亡者に向かいそれをふりおろした。その瞬間起きた出来事を彼女は視認できなかった。バチンという音だけが耳に残った。
 見れば足元に肉塊が転がり、眼前で腰から上を失った足がパタリと倒れた。
 !!?? なに?? 手の中の棒を見た。変わりない。
 今のはなんだ?? 
 しかし考えている暇はない。奴らは次々襲い掛かってくる。新たな敵に向かい日子の瓊矛ふり上げた時、コンマ五秒後が見えた。棒の先端の彫刻の獅子が、大きく膨れ上がり巨大なその牙で敵を噛み砕き、元に戻る。自分の見たものに驚きながら棒ふりおろしたが、その通りのことが起こった。またもや、腰から上を失った足がそこに倒れている。
 再び手の中の棒を見た。スーパーウェポン?? マジカル? オカルティック?
 スーパーマジカルオカルティックウェポンだ。
 たったコレだけで良かったの? 彼女は襲い来る敵次々倒しながら思った。もっと早く使ってみればよかった。とは言え、今がその時だったのかもしれない。華麗に敵をかわし獅子の牙で倒しながら思った。
 さらに気付いた。棒の反対側は石突のように尖っている。こっちももしかしたら……。
 離れた場所にいる立っている敵めがけてふりおろした。が、ふりおろす前に結果は見えていた。先端の尖った棒が宙に弧をえがいて伸び、鋭く目標物を貫いた。
 凄い。どっちも使える。サムヤサは巨猿の背に乗り戦ったそうだから、槍として使うことが多かったのかしら。どっちにしてもこんな便利な武器は見たことがない。まさに無敵だ。彼女は、この亡者の群れが十倍になって襲い掛かってきても生き延びられると思った。
 エレボスが何か叫んでいる。わずかに聞き取れたのはグッドという言葉。武器が使えるようになって良かった、って言ってくれているのか。
 サンキューと答えておいた。
 良いコミュニケーションが取れている。とは、思わないが。
 そのエレボスがじりじりと敵を退け、あるいは一足飛びに敵の頭上を飛び越え、都市高速入り口に向かっている。しきりと前方を指差しアニナに何か言っている。
 上へあがろうと言っているのか。確かにここよりはマシかもしれない。アニナは死者の上を駆けた。飛び掛ってくる奴を素早く避け獅子の牙で倒した。
 合流するとホンダは日本語で何か言った。
 彼女も英語で話した。
「ア・ナネが夢に現れたの。この棒と、あんたの刀なら、災い取り除くことできるやも知れぬと言われたわ」とても重大なことだが残念なことに伝わらない。
 ホンダはコミュニケーションを諦めた様子で、ただ『モモチ』『モモチ』と繰り返した。指差すほうを見れば都市高速道の看板、中国語の地名の下にアルファベットでMOMOTIと書いてある。彼女にも理解できた。そこが福岡ドームのある場所。それにしても発音しにくい地名だ。この地名ばかりではない。日本人はどうしてカタコトカタコトカスタネットのように発音できるのだろう。
 既に背後の死者の群れはふりはらった。高速道路上にいる。転がっている凍死者の数は少ない。道路は二層構造。都市の上をワインディングして伸びている。この道をずっと歩いてゆけば福岡ドームに着くのか。他の仲間も、生きていれば福岡ドームを目指すに違いない。会えると信じたい。












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