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エト・エウトクタ
作:隆伊



かさなった符号


 オイル缶で焚き火をした周りに、全員が車座になった。ショッピングモールの屋上駐車場だ。ここに動く凍死者の姿はない。パーキングの登り口は放置車両でふさいだ。しかし、だからと言って油断はできない。悪魔であれば天から降りてくるだろう。店舗入り口であるエスカレーターを死者がよじ登ってこないとも限らない。だが、一夜を明かすには現時点でこれ以上の場所はない。
 アイコはこの出会いを奇跡的なものと捉えていた。アニナは三年前、日本に来たときの友人に会った。その彼はエレボスのいとこを連れてきていた。
 アニナとその祐二は仲良く話している。祐二は精悍な感じの青年だ。このなかで唯一大人の男の背中をしている。その祐二が話す。
「核融合の条件は決まっているけれど、呪術の条件というのは実は不明確だ。比較的発動しやすいと思われるアクションを取り呪文を唱えるが、常に同じ結果がでるとは限らない。残念だけど。だから全ての悪魔に対してさっきのような効果は期待できない」アニナがふむふむと頷いている。英語で喋っているから他の人間は会話に入れない。
 エレボスとそのいとこの少女は相変わらずだ。冷戦状態。
 エレボスは確かに人間離れしている。獣? 漂う雰囲気に獣の匂いがする。ううん。それ以外の何か。虚無? 狼に似たその眸の奥が見えない。
 川野という少年は若いが達観したところがある。不良少年でも群れるタイプじゃない。好感が持てた。
「とにかく、もう、九州からは出られない」アイコは全員に言った。橋は落ちた。トンネルはつぶれている。一艘の小船も残っていない。全員がその事実を認識していた。
「わたし達にやれることをやりましょう」アイコは福岡ドームへ行く気だった。
 頷く目を見てわかった。他の全員の意志も同じ。
 アスルーを倒し『眩く輝くもの』を封印する。封印の方法はわからない。だけど行かなければ。それは全ての破局となる。「宇宙を覆す策略」オル・ゼヴァブの言葉が耳に蘇る。
 わたし達にはエレボスとサムヤサがいる。まったく無力ではあり得ない筈。この災いのときに、エレボスとサムヤサの血を濃く引くものが同時代に生きていて出会った。この日本の。その災禍の中心地で。それは奇跡と言うよりも運命。
 わたしは? 不意に心に疑問が浮かんだ。わたしは何のためにここにいるのだろう? 学徒として? 宗教史の? はじめはそうだった。だけど……。
 わたしは……。エリゴールの知り合いであるらしい。しかし、それは教えてもらえない。死の瞬間まで。現状では、悪魔を召還し情報を得る以外、能力はない。バティンらの策略に対しては無力だ。動く凍死者達に対しても。ショットガンの腕も自信ないし。
 彼女は輪から離れた。一人歩いた。上を見上げて。澄んだ空気の奥に星空が広がっていた。その星々を見ながら夢想した。あのなかのどれかからサムヤサたちはやってきた。
 あのなかの!!!!
どれ!!!!
 サムヤサたちがやってきたのは……。どれでもない!!!!
 その瞬間、全ての符号が彼女の頭のなかでつながった。
『霧に閉ざされた星』『千年毎に歴史を失う人々』『魔物』『悪魔』『塔』『ウィルオトス』『地平は霞たち空へとのぼり』『サムヤサたちは船を見つけた』『眩く輝くもの』『全てのはじまりとなるもの』『宇宙を覆す災い』
 彼女はその推論を頭のなかで繰り返した。駄目。この推論には一点の曇りもない。パーフェクトだった。
 彼女は空を指差した。
「アレは……アレは、何故、あそこにあるの?」声が震えた。












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