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エト・エウトクタ
作:隆伊



合流14


 やった。やっと見つけた。音を聞いた時、間違いないと思った。雷のような音。それが立て続けに。やっぱりそうだった。彼がエレボス、エレボスことホンダヨウだ。
 呆気にとられているエレボスに、アイコはエト・エウトクタの話を聞かせてやった。彼にとっては驚倒の連続だったに違いない。
「その話は、何処の世界の何時代の話なんだ?」途中口を挟んできたが、
「それがわかれば苦労しないわ」と皮肉っぽく答えた。
「とにかく」アイコは続けた。
「あなたが言ったとおり、アスルーが福岡ドームにいるのなら、福岡ドームの謎の光源が間違いなく『眩く輝くもの』。あなたにアスルーを倒してもらい、それを封印しなければならない」
「封印しなければどうなる?」
「わからないわ。現時点でわかっていることは全て話したわ。この現状も何者の成した業か、だいたい見当はついている。多分、ブーネかビフロンス。どちらも死者を操る記述がレメゲトンにあるわ。そしてどちらも今現在地上にいる」
「奴らは……倒せないのか」それは彼にとってもっとも欲しい情報だったろう。しかし、彼の欲しい回答は持ち合わせない。
「倒せないわ。他の人間に憑依するだけ。もっとも、今、この地に生きている人間はいないから、倒せばどこか遠方へ行くと思うけど」
 生きている人間はわたし達だけ。そしてわたし達は石をつけている。憑依できない。
「あなたに必要かどうかわからないけれど、渡しておくわ。クリソレトゥスというの。精神崩壊から身を護れるわ」
 渡されたペンダントをエレボスは黙ってつけた。
「海峡へ行くところだったんでしょう。わたし達も韓国からのラジオ放送を聴いたの。あなたのいとこが来ているそうね」
 エレボスはうなずくと怫然とした顔つきで
「追い返す」と吐きすてた。
「俺は福岡ドームに用がある。避難するつもりはまったくない。おそらくあんたの言うとおり、アスルーを倒すのが俺の役目なのかもしれない。とにかく、今の俺にはアスルーを倒すこと以外考えられない。ミキには悪いが邪魔だ」
 アイコには頼もしい言葉だった。アニナも、彼も、人類をこの災禍から救うため戦わなければならない。何をどうすればいいかは、まだ皆目見当もつかない。だが、この地にとどまり真の災いである『眩く輝くもの』に対し何らかのアクションをとらねばならない。
「媚孤朗という妖孤は? あんたの物語には出てこないのか?」
 ホンダが唐突に聞いた。
「媚孤朗?」首を傾げるしかなかった。
「俺に、この刀をくれた。音速(おとはや)の剣と言った……」
「おとはや……音速を超えるのね。多分、その刀はサムヤサとともにエレボス・シ・ルカヤルが地上に持って降りた物。太古から現在に到るまで、様々な因縁があってもおかしくはないわ」
 そう答えると、アイコは今までの話の内容を助手席のアニナに簡単に通訳して聞かせた。
 アニナはリホルバーに馬鹿でかい弾を込めながら話を聞いた。
 亡者達は弾を避けない。彼女の知るバンパイアのように敏捷ではない。彼女の定義によれば蘇った死者は全てバンパイアだ。だがこいつらはゾンビと呼んだほうがアメリカ文化圏では通りがいいようだ。しかし困ったことにこいつらは九ミリ弾では倒せない。お気に入りだったオリーブ色のXDピストルはお蔵入りだ。替わりにスミス&ウェッソンM500リホルバーの登場だ。コンクリートの塊でさえ粉々に吹き飛ばせる。しかし装弾数が少ない。すぐに弾切れになる。後、つかえるのはシグアームズのレボリューションXO。45口径だと二発で敵は止まる。それでも装弾数は九発×二丁。この大河のような亡者の群れにどう立ち向かう。一分経たないうちに弾切れだ。アイコの話も上の空でアニナは前途に暗い暗雲感じていた。
 戦えるのはエレボスひとりじゃないのか。先刻の凄まじい戦いぷりが目に蘇る。亡者の群れ只中にあり、襲い来る亡者を片っ端から斬り伏せ蹴り倒していた。あんな真似はできない。わたしはなんの役にも立たないのかもしれない。












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